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リチウム、レアアースなどの「クリティカルミネラル」を巡るリスクとは?急増する需要の背景、国家戦略、企業戦略を解説

リチウム、レアアースなどの「クリティカルミネラル」を巡るリスクとは?急増する需要の背景、国家戦略、企業戦略を解説

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新規事業やオープンイノベーションのプレイヤー、そしてそれらを実践・検討する企業の経営者は、常に最新トレンドをキャッチしておかなければなりません。そんなビジネスパーソンが知っておきたいトレンドキーワードをサクッと理解できる連載が「5分で知るビジネストレンド」です。キーワードを「雑学」としてではなく、今日から使える「知識」としてお届けしていきます。

今回のテーマは「クリティカルミネラル」です。脱炭素化やデジタル化の進展によって需要が急増する一方、供給は特定地域に偏在し、地政学リスクの影響を強く受ける資源群として、国家戦略と企業戦略の両面で存在感を高めています。GXやDXの裏側で静かに進む「資源確保競争」を読み解きます。

リチウム、レアアースなど…クリティカルミネラルは重要でありながら供給リスクの高い鉱物資源

クリティカルミネラルとは、産業や経済にとって不可欠である一方、供給リスクが高い鉱物資源の総称です。「重要(critical)」でありながら、「脆弱」という二面性を持つことが特徴です。

代表的な資源には、リチウム、コバルト、ニッケル、レアアース、グラファイトなどがあります。これらはEV用バッテリー、風力発電機、半導体、パワーエレクトロニクスなど、脱炭素・デジタル社会の基盤に組み込まれています。

一般に「レアメタル」と混同されがちですが、クリティカルミネラルは希少性だけでなく、供給集中度や代替困難性といった戦略的観点で定義される点が異なります。つまり、単なる“珍しい金属”ではなく、“止まると産業が止まる金属”なのです。

急増するクリティカルミネラルの需要により注目が高まる

JOGMEC(独立行政法人 エネルギー・金属鉱物資源機構)が紹介しているIEAの予測によれば、主要クリティカルミネラルの世界需要は2030〜2040年にかけて2023年比で数倍に拡大すると見込まれています。具体的には、リチウムは約13倍、ニッケルは約7.2倍、コバルトは約4.3倍、レアアースは約4.4倍へと増加する見通しです。

出典:JOGMEC

こうした急成長は、EV・蓄電池・風力発電などクリーン技術の原材料ニーズが今後一段と加速することを示唆しており、単なる長期的なトレンドではなく産業全体の供給構造と競争力を再定義する要素となっています。

世界で進む「資源確保競争」の最前線

米国では、インフレ削減法(IRA)により、EV補助金の対象を北米や同盟国由来の鉱物に限定する仕組みが導入されました。国内生産の回帰と同盟国連携を同時に進める設計です。

また欧州でも、域内採掘・精製・リサイクルの比率を引き上げる政策が進行しています。域外依存の低減は、エネルギー安全保障と同様の優先事項とされています。

一方、中国はレアアースの精製工程で圧倒的な存在感を持ち、輸出管理を通じて影響力を行使しています。資源は単なる原材料ではなく、外交カードにもなり得る存在です。

日本も、経済安全保障推進法の枠組みの中で、資源確保を強化しています。官民連携による権益取得や、独立行政法人による支援強化など、調達安定化に向けた取り組みが進んでいます。

参照記事:「米国インフレ抑制法(IRA)」がなぜカーボンニュートラルに貢献するのか?バイデン政権が3910億ドル投じる肝入りの政策を解説 - TOMORUBA (トモルバ) - 事業を活性化するメディア

資源リスクを減らすイノベーションが起こせるか、問われる企業戦略

クリティカルミネラルをめぐる競争が激化する中、企業戦略も大きく変化しています。従来のように市場価格に応じて調達するだけでは、価格高騰や供給停止のリスクを吸収できません。いま求められているのは、「調達の確保」「使用量の削減」「循環化」の三方向から資源リスクを下げるイノベーションです。

第一に、調達戦略の高度化です。自動車メーカーや電池メーカーが上流の鉱山権益に出資したり、長期オフテイク契約を締結したりする動きが広がっています。素材を“買う”のではなく、“押さえる”戦略です。これは単なる購買活動ではなく、経営レベルのリスクマネジメントといえます。

第二に、代替技術や省資源化の加速です。代表例のひとつが、コバルト使用量を大幅に削減した電池技術です。たとえば中国の電池大手CATLは、リン酸鉄リチウム(LFP)電池を主力製品のひとつとして展開し、コバルトやニッケルへの依存度を低減しています。エネルギー密度の課題はあるものの、安全性やコスト面の優位性もあり、EV市場で存在感を高めています。素材構成そのものを変えることで、資源リスクを構造的に下げるアプローチです。

参照ページ:CATL

第三に、リサイクルと循環モデルの強化です。日本では、使用済みリチウムイオン電池からニッケルやコバルトなどを回収する取り組みが本格化しています。たとえば住友金属鉱山は、電池リサイクル技術を高度化し、都市鉱山からの資源回収を推進しています。採掘量を増やすのではなく、循環させることで供給源を多元化する戦略です。

参照ページ:住友金属鉱山

こうした動きは、巨大資源企業だけの話ではありません。探査技術の高度化、低環境負荷の精製プロセス、バッテリー回収プラットフォーム、サプライチェーンのトレーサビリティ可視化など、周辺領域に多様な事業機会が生まれています。

クリティカルミネラルの問題は、「資源を持つか否か」ではなく、「資源リスクをどれだけイノベーションで制御できるか」という競争へと移行しています。調達戦略、技術開発、循環モデルを統合した総合戦略こそが、これからの企業競争力を左右する鍵になるでしょう。

編集後記

脱炭素とデジタル化の進展は、エネルギーから金属へと戦略資源の重心を移しつつあります。国家間競争が激化する中、企業もまた、調達と技術の両面で備えを強化する必要があります。

クリティカルミネラルは一時的なブームではなく、今後数十年にわたり産業構造を左右するテーマです。資源を「遠い上流の話」と捉えるのではなく、自社の事業戦略と結びつけて再定義することが、これからの経営に求められる視点といえるでしょう。

(TOMORUBA編集部 久野太一)

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