1. Tomorubaトップ
  2. ニュース
  3. フィッシング、マルウェアなどの脅威に立ち向かうサイバーセキュリティ。政府も予算を投じるディープフェイクの近年の状況などを解説
フィッシング、マルウェアなどの脅威に立ち向かうサイバーセキュリティ。政府も予算を投じるディープフェイクの近年の状況などを解説

フィッシング、マルウェアなどの脅威に立ち向かうサイバーセキュリティ。政府も予算を投じるディープフェイクの近年の状況などを解説

  • 13155
  • 13148
  • 13096
6人がチェック!

新規事業やオープンイノベーションのプレイヤーやそれらを実践・検討する企業の経営者はTOMORUBAの主な読者層ですが、こうした人々は常に最新トレンドをキャッチしておかなければなりません。そんなビジネスパーソンが知っておきたいトレンドキーワードをサクッと理解できる連載が「5分で知るビジネストレンド」です。キーワードを「雑学」としてではなく、今日から使える「知識」としてお届けしていきます。

今回のテーマは「サイバーセキュリティ」です。情報化社会が進展する中、企業や個人のデータを守るためのサイバーセキュリティの重要性がますます高まっています。本記事では、サイバーセキュリティの最新の動向や、ディープフェイクなどの新たな脅威、そしてセキュリティ対策のトレンドを解説していきます。

ディープフェイクなど新たな脅威と立ち向かうサイバーセキュリティとは

サイバーセキュリティは、インターネットやネットワーク上の情報やシステムを保護するための技術と対策の総称です。現代社会では、企業や個人が膨大なデータをデジタル形式で管理・共有しており、その安全性を確保することは極めて重要な課題となっています。サイバー攻撃の手法は年々高度化しており、特にランサムウェア、フィッシング、マルウェアなどが一般的な脅威となっています。

さらに、新たな脅威として「ディープフェイク」が注目されています。ディープフェイクとは、人工知能(AI)を駆使して作成された偽の映像や音声を指し、非常にリアルな偽情報を生成する技術です。この技術を悪用すると、個人のアイデンティティを盗むだけでなく、企業や国家の安全を脅かす可能性もあります。ディープフェイクの拡散によって、誤情報や詐欺が増加し、信頼性のある情報を見極める能力がますます求められています。

このように、サイバーセキュリティは日々進化する脅威に対抗するために常に最新の知識と技術を必要とし、ディープフェイクのような新たなリスクにも対応することが求められています。

グローバル・国内ともに高い成長率を維持するサイバーセキュリティ市場

調査会社グローバルインフォメーションが2024年4月に公開している調査によると、世界のサイバーセキュリティの市場規模は、2023年に2,329億5,000万米ドルと推定され、2024年には2,553億米ドルに達し、2030年にはCAGR10.08%で4,563億6,000万米ドルに達すると予測されます。

出典:日本のサイバーセキュリティ市場規模・シェア分析 -産業調査レポート -成長トレンド

また、日本市場を見てみると、2024年に20億3,000万米ドルと推定され、2029年までに35億5,000万米ドルに達すると予測されており、この期間内のCAGRは11.89%となる見込みです。日本市場もグローバルとほぼ同様の成長速度であることがわかります。

この成長は、クラウドサービスの普及、リモートワークの増加、そしてサイバー攻撃の高度化により、企業や個人がセキュリティ対策を強化する必要性が高まっていることに起因しています。特にAIや機械学習を活用した先進的なセキュリティ技術の導入が加速しており、これが市場拡大の大きな推進力となっています。

参照ページ:サイバーセキュリティ市場| 市場規模 分析 予測 2024-2030年 【市場調査レポート】

ディープフェイクを筆頭にした最新のサイバーセキュリティの脅威

現代のサイバーセキュリティは、多様で高度な脅威に直面しています。一般的な脅威としては、ランサムウェア、フィッシング、マルウェアが挙げられます。ランサムウェアは被害者のデータを暗号化し、復号化のために身代金を要求します。フィッシングは偽のメールやウェブサイトを通じて個人情報を盗み、マルウェアは悪意あるソフトウェアを使ってシステムを攻撃します。

これに加えて、最新の脅威としてディープフェイクが急速に台頭しています。ディープフェイクはAI技術を用いてリアルな偽映像や音声を作成し、誤情報を拡散させる手段として悪用される可能性があります。これにより、個人や企業の信用を損なうだけでなく、社会全体に混乱を引き起こすリスクもあります。

国内では総務省もディープフェイク対策に動き出しています。令和5年度補正予算事業の中には「インターネット上の偽・誤情報対策技術の開発・実証について」と題したディープフェイク対策への予算が「4.5億円程度」と明記されています。

この事業の目的は「生成AIに起因する偽・誤情報を始めとした、インターネット上の偽・誤情報の流通リスクに対応するため、対策技術の開発・実証を実施。」と記されています。

事業スキームとしては、技術開発主体を取りまとめる管理団体としてボストン・コンサルティング・グループが一次請負者となり、技術開発主体を公募するスキームとなっています。

出典:令和5年度補正予算事業 インターネット上の偽・誤情報対策技術の開発・実証について 総務省

サイバーセキュリティ関連の共創事例

様々な脅威に立ち向かうために、サイバーセキュリティに関連した共創事例が多く生まれています。ITソリューション開発企業の日本ラッドは2024年4月より、東京大学の山﨑研究室の研究成果であるディープフェイク判定技術を活用して、誰でもディープフェイクを判定できるWebサービス「SeekFake」の提供をしています。SeekFakeでは、擬似的に生成したフェイク画像をAIモデルに学習させることで汎用性の高いフェイク検出性能を実現しています。この技術によって、ファイルをアップロードするだけでフェイクか否かを判定することができます。

参照ページ:SeekFake

また、スタートアップでもサイバーセキュリティのコア技術を持った有力な企業が出てきています。企業のサイバーセキュリティの訓練・教育プラットフォームを開発するAironWorksは、総務省によるスタートアップ支援事業「ICTスタートアップリーグ」に採択されています。AironWorksは「ハッカーだったらこう攻撃する」というハッカー目線の思想でプログラムを開発していることが特徴です。最先端のサイバーセキュリティの聖地とも言われるイスラエルで起業しており、高い技術力でこの分野でのプレゼンスを強めています。

参照記事:【ICTスタートアップリーグ特集 #32:AironWorks】イスラエルの尖ったセキュリティ技術で世界へ。ハッカー目線のプロダクト思想でプログラムを作るAironWorks

編集後記

デジタル技術が普及して高度になるほど、サイバーセキュリティの重要性は高まっており、市場規模の成長率の高さからもそのことが見て取れます。ディープフェイクなどの新たな脅威にも注目が集まっており、総務省がディープフェイク対策に予算を投じたり、同じく総務省が支援するICTスタートアップリーグでもサイバーセキュリティ分野のスタートアップが採択されるなど、社会課題としての優先度が高まっています。

(TOMORUBA編集部 久野太一)

■連載一覧

第1回:なぜ価格が高騰し話題となったのか?5分でわかる「NFT」

第2回:話題の「ノーコード」はなぜ、スタートアップや新規事業担当者にとって有力な手段となるのか?

第3回:世界的なトレンドとなっている「ESG投資」が、スタートアップにとってチャンスである理由

第4回:課題山積のマイクロプラスチック。成功事例から読みとくスタートアップの勝ち筋は

第5回:電力自由化でいまだに新規参入が増えるのはなぜ?スタートアップにとってのチャンスとは

第6回:「46%削減」修正で話題の脱炭素。46%という目標が生まれた経緯と、潜むビジネスチャンスとは

第7回:小売大手がこぞって舵を切る店舗決済の省人化。「無人レジ」の社会実装はいつ来るか?

第8回:実は歴史の深い「地域通貨」が、挑戦と反省を経て花ひらこうとしているワケ

第9回:音声配信ビジネスが日本でもブレイクする予兆。世界の動向から見える耳の争奪戦

第10回:FIREブームはなぜ始まった?「利回り4%」「生活費の25倍の元本」など、出回るノウハウと実現可能性は

第11回:若年層は先進層と無関心層が二極化!エシカル消費・サステナブル消費のリアルとは

第12回:「ワーケーション」は全ての在宅勤務社員がターゲットに!5年で5倍に成長する急成長市場の実態

第13回:なぜいま「Z世代」が流行語に?Z世代の基礎知識とブレイクしたきっかけを分析

第14回:量子コンピュータの用途は?「スパコン超え報道」の読み解き方はなど基礎知識を解説

第15回:市場規模1兆ドルも射程の『メタバース』で何が起こる?すでに始まっている仮想空間での経済活動とは

第16回:『TikTok売れ』はなぜ起こった?ビジネスパーソンが知っておきたい国内のTikTok事情

第17回:パンデミックが追い風に。マルチハビテーションが新しいライフスタイルと地方の課題解決を実現できる理由

第18回:Web3(Web3.0)とは何なのか?Web1.0とWeb2.0の振り返り&話題が爆発したきっかけを解説

第19回:フェムテックで先行する欧米と追従する日本。市場が活気づいている背景とは?

第20回:withコロナに「リベンジ消費」は訪れるか?消費者の“意向”と実際の“動向”からわかること

第21回:子供が家族の介護をサポートする「ヤングケアラー」の実態と、その問題とは?

第22回:半導体不足はなぜ起きた?米中貿易摩擦、巣ごもり需要、台湾への依存などを解説

第23回:【ビジネストレンドまとめ】注目を集めた5つの事業ドメインとは?

第24回:長引くコロナ禍で顕著になる“K字経済”とは?格差が拡大する「ヒト」と「企業」

第25回:「パーパス」とはなぜ注目されるのか?誰のためのものか?5分でわかる基礎知識

第26回:NFT・メタバース・Web3はどう違う?注目を集める「新しいエコシステム」5選

第27回:サステナブルのさらに先いく「リジェネラティブ」とは?実践企業や背景を解説

第28回:16年で2倍に膨れ上がった『電子ゴミ』は何が問題なのか。唯一の解決策とは?

第29回:サウナビジネスはグローバルで健全な成長も、国内ではサウナユーザーは激減。サウナビジネスの最新事情

第30回:【ビジネストレンドまとめ】話題となった「社会課題」トレンド6選

第31回:Play to Earn(P2E)はなぜ注目を集めているのか?ビジネストレンドとしての基礎知識

第32回:脅威の市場ポテンシャルが期待されるクラウドゲーム。GAFAMやソニー、任天堂が参入するポイントを解説

第33回:FIRE、マルチハビテーションなど注目を集めるライフスタイルに関連するビジネストレンド4選

第34回:「ロボアドバイザー」はミレニアル・Z世代になぜ人気?コロナ禍で加速する新しい資産運用の形

第35回:加速する人への投資。岸田首相「5年で1兆円」の方針表明で注目集めるリスキリングとは?

第36回:画像生成AIはなぜ「世界を変える」のか?ビッグテックが拒む「一般公開」と「オープンソース」がもたらす影響力とは

第37回:クリエイターの6割が収益化!国内で広がる「クリエイターエコノミー」の実態と事例

第38回:ドローン分野でも特に熱い「空飛ぶクルマ」は加速度的な成長見込み!ユースケースやリードする国内企業とは

第39回:『ChatGPT』の何がすごい?Google一強時代をおびやかすポテンシャルとは

第40回:現実と同等の仮想空間を構築する『デジタルツイン』はなぜ製造業に効果的?東京都のデジタルツイン計画とは?

第41回:小売業に革命を起こす「ダークストア」、激化する大手とスタートアップの覇権争い

第42回:物流の2024年問題とは?人手不足とECの急成長で物流企業とトラックドライバーが受けるリスクとその対策

第43回:各社がこぞってトレンド予測する若者世代の「セルフケア」はなぜ今注目を集めているのか?

第44回:大手SNSが問題を抱えるなか台頭する「次世代SNS」の有望株とは

第45回:介護人材は間も無く32万人不足へ。台頭は必須の『介護ロボット』の現状と先行事例を紹介

第46回:存在感を強める「グローバルサウス」なぜ今注目を集めているのか?定義や背景、直面する課題などを解説

第47回:位置情報を活用する「ジオターゲティング」がマーケティングに新風を巻き起こしている理由とは?市場動向や活用事例を紹介

第48回:「GDPR」はEUだけでなく世界中に影響を与える。国内事業者への影響や改正された個人情報保護法との違いを解説

第49回:驚異的な成長が見込まれる『デジタルヒューマン』の有力なユースケースとは?チャットボットとどう違う?

第50回:Googleの研究で注目される「心理的安全性」とは?リーダー、マネジメント、人事担当者ができることを解説

第51回:ヴィーガン市場が拡大中!ヴィーガンの基礎知識から最新の市場動向、ビジネストレンドを解説

第52回:ビジネスにおける『レジリエンス』の重要性。VUCAの時代を生き抜く、組織と個人のレジリエンスのあるべき姿とは

第53回:『ナイトタイムエコノミー』が観光産業の起爆剤になる理由とは?夜間の観光を活性化させるナレッジと国内事例を紹介

第54回:『プライバシーテック』が注目される背景とは?高まる個人情報リスクと、GDPRなど各国の規制を解説

第55回:『モーダルシフト』が担う3つの重責。環境問題、人手不足、コスト削減をどうやって実現するのか?

第56回:性差をイノベーションに繋げる「ジェンダードイノベーション」に集まる期待と、科学・技術分野の構造が抱える問題

第57回:近年の半導体業界の動向は?台湾ファウンドリが一極集中、米中貿易摩擦によるリスク、日本企業の巻き返しなどを解説

第58回:「SDV」の普及で車両はアップデートする時代に。政府が本腰を入れてシェア3割を目指す「モビリティDX戦略」とは

第59回:小売業者が自らメディアとなって収入を得る「リテールメディア」。近い未来にテレビの広告収入を上回ると予想されるポテンシャルとは?

第60回:時間効率にお金を払うタイパ消費。Z世代が課金するグルメ、エンタメ、ECの特徴とは

新規事業創出・オープンイノベーションを実践するならAUBA(アウバ)

AUBA

eiicon companyの保有する日本最大級のオープンイノベーションプラットフォーム「AUBA(アウバ)」では、オープンイノベーション支援のプロフェッショナルが最適なプランをご提案します。

チェックする場合はログインしてください

コメント6件

  • 八田政樹

    八田政樹

    • 都内の企業
    0いいね
    チェックしました
  • 奥田文祥

    奥田文祥

    • 神戸おくだ社労士事務所
    0いいね
    チェックしました
  • 小岩井悠太

    小岩井悠太

    • 不動産投資会社
    0いいね
    チェックしました