フィッシング、マルウェアなどの脅威に立ち向かうサイバーセキュリティ。政府も予算を投じるディープフェイクの近年の状況などを解説
新規事業やオープンイノベーションのプレイヤーやそれらを実践・検討する企業の経営者はTOMORUBAの主な読者層ですが、こうした人々は常に最新トレンドをキャッチしておかなければなりません。そんなビジネスパーソンが知っておきたいトレンドキーワードをサクッと理解できる連載が「5分で知るビジネストレンド」です。キーワードを「雑学」としてではなく、今日から使える「知識」としてお届けしていきます。
今回のテーマは「サイバーセキュリティ」です。情報化社会が進展する中、企業や個人のデータを守るためのサイバーセキュリティの重要性がますます高まっています。本記事では、サイバーセキュリティの最新の動向や、ディープフェイクなどの新たな脅威、そしてセキュリティ対策のトレンドを解説していきます。
ディープフェイクなど新たな脅威と立ち向かうサイバーセキュリティとは
サイバーセキュリティは、インターネットやネットワーク上の情報やシステムを保護するための技術と対策の総称です。現代社会では、企業や個人が膨大なデータをデジタル形式で管理・共有しており、その安全性を確保することは極めて重要な課題となっています。サイバー攻撃の手法は年々高度化しており、特にランサムウェア、フィッシング、マルウェアなどが一般的な脅威となっています。
さらに、新たな脅威として「ディープフェイク」が注目されています。ディープフェイクとは、人工知能(AI)を駆使して作成された偽の映像や音声を指し、非常にリアルな偽情報を生成する技術です。この技術を悪用すると、個人のアイデンティティを盗むだけでなく、企業や国家の安全を脅かす可能性もあります。ディープフェイクの拡散によって、誤情報や詐欺が増加し、信頼性のある情報を見極める能力がますます求められています。
このように、サイバーセキュリティは日々進化する脅威に対抗するために常に最新の知識と技術を必要とし、ディープフェイクのような新たなリスクにも対応することが求められています。
グローバル・国内ともに高い成長率を維持するサイバーセキュリティ市場
調査会社グローバルインフォメーションが2024年4月に公開している調査によると、世界のサイバーセキュリティの市場規模は、2023年に2,329億5,000万米ドルと推定され、2024年には2,553億米ドルに達し、2030年にはCAGR10.08%で4,563億6,000万米ドルに達すると予測されます。
出典:日本のサイバーセキュリティ市場規模・シェア分析 -産業調査レポート -成長トレンド
また、日本市場を見てみると、2024年に20億3,000万米ドルと推定され、2029年までに35億5,000万米ドルに達すると予測されており、この期間内のCAGRは11.89%となる見込みです。日本市場もグローバルとほぼ同様の成長速度であることがわかります。
この成長は、クラウドサービスの普及、リモートワークの増加、そしてサイバー攻撃の高度化により、企業や個人がセキュリティ対策を強化する必要性が高まっていることに起因しています。特にAIや機械学習を活用した先進的なセキュリティ技術の導入が加速しており、これが市場拡大の大きな推進力となっています。
参照ページ:サイバーセキュリティ市場| 市場規模 分析 予測 2024-2030年 【市場調査レポート】
ディープフェイクを筆頭にした最新のサイバーセキュリティの脅威
現代のサイバーセキュリティは、多様で高度な脅威に直面しています。一般的な脅威としては、ランサムウェア、フィッシング、マルウェアが挙げられます。ランサムウェアは被害者のデータを暗号化し、復号化のために身代金を要求します。フィッシングは偽のメールやウェブサイトを通じて個人情報を盗み、マルウェアは悪意あるソフトウェアを使ってシステムを攻撃します。
これに加えて、最新の脅威としてディープフェイクが急速に台頭しています。ディープフェイクはAI技術を用いてリアルな偽映像や音声を作成し、誤情報を拡散させる手段として悪用される可能性があります。これにより、個人や企業の信用を損なうだけでなく、社会全体に混乱を引き起こすリスクもあります。
国内では総務省もディープフェイク対策に動き出しています。令和5年度補正予算事業の中には「インターネット上の偽・誤情報対策技術の開発・実証について」と題したディープフェイク対策への予算が「4.5億円程度」と明記されています。
この事業の目的は「生成AIに起因する偽・誤情報を始めとした、インターネット上の偽・誤情報の流通リスクに対応するため、対策技術の開発・実証を実施。」と記されています。
事業スキームとしては、技術開発主体を取りまとめる管理団体としてボストン・コンサルティング・グループが一次請負者となり、技術開発主体を公募するスキームとなっています。
出典:令和5年度補正予算事業 インターネット上の偽・誤情報対策技術の開発・実証について 総務省
サイバーセキュリティ関連の共創事例
様々な脅威に立ち向かうために、サイバーセキュリティに関連した共創事例が多く生まれています。ITソリューション開発企業の日本ラッドは2024年4月より、東京大学の山﨑研究室の研究成果であるディープフェイク判定技術を活用して、誰でもディープフェイクを判定できるWebサービス「SeekFake」の提供をしています。SeekFakeでは、擬似的に生成したフェイク画像をAIモデルに学習させることで汎用性の高いフェイク検出性能を実現しています。この技術によって、ファイルをアップロードするだけでフェイクか否かを判定することができます。
参照ページ:SeekFake
また、スタートアップでもサイバーセキュリティのコア技術を持った有力な企業が出てきています。企業のサイバーセキュリティの訓練・教育プラットフォームを開発するAironWorksは、総務省によるスタートアップ支援事業「ICTスタートアップリーグ」に採択されています。AironWorksは「ハッカーだったらこう攻撃する」というハッカー目線の思想でプログラムを開発していることが特徴です。最先端のサイバーセキュリティの聖地とも言われるイスラエルで起業しており、高い技術力でこの分野でのプレゼンスを強めています。
参照記事:【ICTスタートアップリーグ特集 #32:AironWorks】イスラエルの尖ったセキュリティ技術で世界へ。ハッカー目線のプロダクト思想でプログラムを作るAironWorks
編集後記
デジタル技術が普及して高度になるほど、サイバーセキュリティの重要性は高まっており、市場規模の成長率の高さからもそのことが見て取れます。ディープフェイクなどの新たな脅威にも注目が集まっており、総務省がディープフェイク対策に予算を投じたり、同じく総務省が支援するICTスタートアップリーグでもサイバーセキュリティ分野のスタートアップが採択されるなど、社会課題としての優先度が高まっています。
(TOMORUBA編集部 久野太一)
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