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【ICTスタートアップリーグ特集 #32:AironWorks】イスラエルの尖ったセキュリティ技術で世界へ。ハッカー目線のプロダクト思想でプログラムを作るAironWorks

【ICTスタートアップリーグ特集 #32:AironWorks】イスラエルの尖ったセキュリティ技術で世界へ。ハッカー目線のプロダクト思想でプログラムを作るAironWorks

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2023年度から始動した、総務省によるスタートアップ支援事業を契機とした官民一体の取り組み『ICTスタートアップリーグ』。これは、総務省とスタートアップに知見のある有識者、企業、団体などの民間が一体となり、ICT分野におけるスタートアップの起業と成長に必要な「支援」と「共創の場」を提供するプログラムだ。

このプログラムでは総務省事業による研究開発費の支援や伴走支援に加え、メディアとも連携を行い、スタートアップを応援する人を増やすことで、事業の成長加速と地域活性にもつなげるエコシステムとしても展開していく。

そこでTOMORUBAでは、ICTスタートアップリーグの採択スタートアップにフォーカスした特集記事を掲載している。今回は、企業向けサイバーセキュリティの訓練プラットフォームを提供しているAironWorks株式会社を取り上げる。もともとイスラエルで起業していたCEOの寺田氏が、サイバーセキュリティ分野で事業を立ち上げた背景や、AironWorksのプロダクトの特徴や強み、今後の展望などについて話を聞いた。

▲AironWorks株式会社 CEO 寺田彼日 氏

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<スタートアップ解説員の「ココに注目!」>

■写真右/石川貴章(株式会社eiicon Platform事業部 PlatformSalesG マネージャー)

サイバーセキュリティの需要が増加しているにもかかわらず、適切な技術やスキルを持った専門家の不足が続いているのが課題です。特に高度なセキュリティスキルを有する専門家の需要が高まっているものの、対応する人材が不足しています。

また一方で、企業のサイバーセキュリティのリスクや重要性に対する一般の人々の認識が不足しており、企業や個人がセキュリティに対して積極的に取り組まない限り、適切な対策が十分に講じられない可能性があります。

まさに社会課題としてクローズアップされているサイバーセキュリティ教育において、AironWorks社の存在は解決ソリューションそのものであると考えます。専門家の養成やスキル向上の機会を増やすこと、一般の人々へのサイバーセキュリティの重要性の啓発を促進させるために、寺田代表のリーダーシップのもと、近い将来あらゆる企業に付加価値を提供してくれる日が来ることを信じています。

サイバーセキュリティスタートアップの聖地・イスラエルで起業

ーー寺田さんはもともと2014年にイスラエルでAniwoというスタートアップを起業していますが、そこからAironWorksを起業した経緯について教えてください。

寺田氏 : Aniwoを創業し、イスラエルと日本の企業と伴走しながらイノベーションを推進しているなかで、いくつかサイバーセキュリティ分野のプロジェクトに携わったことがあります。イスラエルはサイバーセキュリティ分野のスタートアップに投資する額・比率が非常に大きいのですが、私は100億規模の投資を受けるスタートアップを側で見てきた経験があります。

加えて、弊社のCTOを務めるGonen Krakはイスラエル国防軍の特殊部隊「Unit 8200」にてサイバーセキュリティチームを率いた経験があります。このUnit 8200はイスラエルの中でもトップレベルのホワイトハッカー、そしてユニコーン企業の創業者を多数輩出する人材育成機関としての役割を果たしています。2020年に友人である彼とAironWorksの構想をディスカッションしたところ、一緒にやろうと意気投合し、共同創業者となってもらったのが創業の背景です。

サイバーセキュリティの課題の本質的なところはどこだろうと議論を重ねていった結果、「人へのサイバー攻撃」に対するソリューションを作ろうと方針を立てました。PCやスマホ、メタバースもそうですが、最終的には人がインターフェースに関わるので、この課題は当面続くだろうと思っています。

ーー近年、サイバー攻撃によるインパクトの大きい事件がいくつか発生しています。こうした潮流にも課題感を持っていますか。

寺田氏 : そうですね。金銭を奪われるだけでなく、インターネットが重要インフラと繋がっていますから、極端な話をすればサイバー攻撃によって人命が奪われるリスクもあります。そういった部分に対してもソリューションを提供したいです。

我々は現在企業向けのビジネスを展開していますが、重要インフラのケアという意味で政府向けの、国防や経済安保といった分野へのビジネスモデルも展開していきたいと考えています。

「ハッカーだったらこう攻撃する」生きたトレーニングを作り出すプロダクト思想

ーーAironWorksが提供するプロダクトについて聞かせてください。人へのサイバー攻撃にフォーカスしたソリューションだとおっしゃいましたが、どのような特徴や競合との差別化がありますか。

寺田氏 : 競合とはプロダクト思想が違います。競合のサービスが「人を訓練する」という観点であるのに対して、我々は「ハッカーだったらこうやって攻撃する」という視点からトレーニングプログラムを作成しています。例えばハッカーは「まずはSNSで仲良くなる」といったような戦略を立ててサイバー攻撃を仕掛けてきますが、AironWorksではそういった状況を再現します。

ーー現状ではどういった企業に導入されていて、利用者からどんなフィードバックが寄せられていますか。

寺田氏 : 顧客の重要な情報を扱うような会社が多いですね。例えば銀行や保険、スタートアップだと法律関連のSaaSであったり、食品のD2C事業を手がける会社なども顧客だったりします。

顧客からの印象的なフィードバックだと、とあるトレーニングを実施した時に「社外秘の情報を基にメール文面を作成しているのか?」と聞かれたことがあります。我々は公開されている情報だけを基にトレーニング用のメール文面を作成していますが、あまり露出度の高くないCSR活動の情報などを参考に文面を作成しているため、他のプラットフォームの訓練では体験できないようなリアリティのある文面を再現できるのです。

▲AironWorksサービスイメージ

ーーリアリティのあるプログラムで、顧客企業の社員をトレーニングしているんですね。訓練の攻撃を受けてしまったユーザーに対しては、どういったプログラムを提供しているのでしょうか。

寺田氏 : 顧客企業のニーズとして、社員のレベルに合わせたプログラムを作ってほしいとか、最新の脅威に合わせたプログラムを作ってほしいといった要望があります。細かいニーズにあわせてプログラムを手作りしていると間に合わないので、AIを活用することで社員のレベルごと、かつトレンドに合わせたプログラムを提供することが可能になっています。 

ーープレスリリースを拝見していると、横浜銀行など、金融機関との提携を多く実施している印象です(※)。金融機関からはどのようなフィードバックがあるのでしょうか。

寺田氏 : 規模の大きい金融機関ほど、個人情報関連のインシデントはインパクトが大きくなります。それに比例して、サイバーセキュリティの意識が高くなっているため、本質的・本格的なトレーニングを行いたいという要望があります。ただそれだけ高品質な訓練・教育となると、それほど選択肢が無いというフィードバックをいただきます。ありがたいことに、そういう観点からもAironWorksのプログラムが選択肢に挙がっているようです。

※プレスリリース:AironWorksと横浜銀行はデザインパートナーシップ締結から共同開発を推進、金融業界全体のセキュリティ対策強化と「共助」の仕組みづくりを目指す

情報産業に強いイスラエルから、尖った技術で世界へ

ーー短期的そして中長期的なビジョンについて聞かせてください。

寺田氏 : イスラエルの尖った技術力を活かしながら向こう1〜2年で日本で実績を作り、セキュリティ分野で第一想起を取れるようなマーケットリーダーになっていきたいです。

イスラエルがサイバーセキュリティにおいて成長している要因として、国と民間の連携がしっかりとれていることがあります。そういった意味では中期的に、今回ICTスタートアップリーグに採択いただいたことで国との連携を深めるきっかけにしたいです。そしてゆくゆくは5〜10年かけて国防など、国に貢献できる領域に関わっていきたいという狙いもあります。

また並行して長期的なビジョンとしてイギリス、シンガポール、アメリカを始めグローバルへ展開していきたいと考えています。すでにGDPRなどの整備により、セキュリティ面での社会課題に対応が進むEUやイギリスでは実証実験を進めていて、英語圏での展開進んでいます。

取材後記

セキュリティ分野はインターネットの発展と共に進化を遂げてきた技術なので、今後XRやメタバースといった市場が発展するにつれてセキュリティ市場も活気付くことが期待されているAironWorksはセキュリティ分野において先進的な取り組みを進めているイスラエルから世界に向けてプロダクトを提供しており、ハッカー目線での攻撃を想定したプログラムを作成している。日本をはじめ、世界のセキュリティリテラシーを一段押し上げてくれるプレイヤーとなれるか、注目したい。

※ICTスタートアップリーグの特集ページはコチラをご覧ください。

(編集:眞田幸剛、文:久野太一、撮影:加藤武俊)

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  • 奥田文祥

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  • 眞田 幸剛

    眞田 幸剛

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2023年度から始動した、総務省によるスタートアップ支援事業を契機とした官民一体の取り組み『ICTスタートアップリーグ』。これは、総務省とスタートアップに知見のある有識者、企業、団体などの民間が一体となり、ICT分野におけるスタートアップの起業と成長に必要な「支援」と「競争の場」を提供するプログラムです。TOMORUBAではICTスタートアップリーグに参加しているスタートアップ各社の事業や取り組みを特集していきます。