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【ICTスタートアップリーグ特集 #34:プロッセル】起業/就職に偏ることなく高専人のキャリア構築を支援!プロッセルが展開するキャリアパートナー事業が見据えるゴールとは

【ICTスタートアップリーグ特集 #34:プロッセル】起業/就職に偏ることなく高専人のキャリア構築を支援!プロッセルが展開するキャリアパートナー事業が見据えるゴールとは

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2023年度から始動した、総務省によるスタートアップ支援事業を契機とした官民一体の取り組み『ICTスタートアップリーグ』。これは、総務省とスタートアップに知見のある有識者、企業、団体などの民間が一体となり、ICT分野におけるスタートアップの起業と成長に必要な「支援」と「共創の場」を提供するプログラムだ。

このプログラムでは総務省事業による研究開発費の支援や伴走支援に加え、メディアとも連携を行い、スタートアップを応援する人を増やすことで、事業の成長加速と地域活性にもつなげるエコシステムとしても展開していく。

そこでTOMORUBAでは、ICTスタートアップリーグの採択スタートアップにフォーカスした特集記事を掲載している。今回は、高専人(高等専門学校に入学した経験のある人)向けのキャリアパートナー事業を展開する株式会社プロッセルを取り上げる。起業の背景、同社の活動や提供サービスの内容、今後の事業の展望について、代表の横山氏に話を聞いた。

▲株式会社プロッセル 横山和輝 氏

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<スタートアップ解説員の「ココに注目!」>

■白岩大(株式会社eiicon Enterprise事業本部 IncubationSales事業部 Account Executive)

・同社はオンラインビジネスコンテストを軸とした任意団体として2019年に創業。翌2020年に法人化し、現在では全国の高専を中心に、三重県や和歌山県の高専にも拠点を構える高専発のスタートアップです。

・「高専人を幸せに。そしてその周りの人へ、」というビジョンを掲げる同社は、高専人向けのキャリアパートナー事業を展開中。高専生たちが将来のキャリアについて考える機会を提供し、実践的な知識やスキルを身に付けられる環境を整えるべく、「Prossell インターン」「Prossell オンコン」「Prossell スカウト」「Prossell スタートアップ」といった幅広いサービスを提供しています。

・日本国内の高専とのネットワークを順調に構築する中、現在はモンゴルの高専の支援を2021年から行っており、将来はベトナム、タイなど海外市場への展開も構想されています。教育分野やEdTech領域のプロダクト開発を行う企業は数多く存在していますが、同社のように「高専」にフォーカスしたビジネスを展開するスタートアップは非常に珍しい存在。今後の事業展開にも要注目です!

圧倒的な就職率を誇る高専生のキャリア選択は「課題がない」ことが課題

ーー株式会社プロッセルを起業した背景・経緯について教えてください。

横山氏 : 私自身が高専出身であり、専攻科まで含めて7年間高専に通っていました。高専ではクラス替えなどもなく、普通の高校生たちと違って大学受験のような節目もありません。何年もの間、同じメンバーに囲まれた閉鎖的な空間で過ごすため、どうしても価値観が凝り固まってしまいがちです。

私は専攻科時代にフィンランドへ留学する機会を得ました。そのときの課外活動で参加したビジコンを通じて、他校の大学生など多くの人たちと出会い、起業も含めてキャリアの選択肢を大きく広げることができました。

このような経験を踏まえ、「全国の高専生にも自らのキャリアについて真剣に考える機会を提供したい」と考えるようになり、2019年にオンラインビジネスコンテスト形式のインターンシッププラグラム「Online Intern Contest」、通称「Prossell オンコン」を立ち上げ、2020年の6月に法人化しました。

ーー「閉鎖的な空間」というお話もありましたが、現在の高専生のキャリア選択には、どのような課題があるのでしょうか?

横山氏 : 高専生のキャリア選択に関しては「課題がない」ことが課題であると考えています。ご存じかもしれませんが、高専生の就職率は非常に高く、そもそも就職先に困ることがありません。

学科にもよりますが、5年間の本科が終わったタイミングで就職する学生は概ね4割程度、残りの6割は大学編入など進学を選びます。私は40人のクラスに在籍していましたが、就職を選んだのはそのうち数人。その数人に対して数百件の求人が集まります。

ーー高専生を採用したい企業も多いと聞きますし、就職については恵まれていると言えそうですね。

横山氏 : しかも、実際にその数人が就職した企業は、誰もが名前を知っている大企業ばかりです。

高専の先輩方が各企業で立派な実績を築いてきたことにより、後輩たちは余裕を持って就職先を決めることができる。このこと自体は素晴らしいのですが、そのような状況だからこそ、高専生たちは自分のキャリアの選択肢について真剣に考えたり、様々な企業について調べたりすることが少ないとも言えます。プロッセルでは、就職だけでなく起業も含めて、高専生たちが自らの可能性や選択肢についてより深く知り、その可能性を最大限に活かしてもらえるようなキャリアサポートを目指しています。

学生のキャリアについてフラットに支援することを重視

ーー「Prossell オンコン」「Prossell スカウト」、さらには「高専キャラバン」の運営など、さまざまなサービスを展開していますが、これらも踏まえて現在のプロッセルの事業概要や事業状況について教えてください。

横山氏 : 私たちは「Prossell オンコン」「Prossell スカウト」といった提供サービスの一つひとつが事業である、という感覚は持っていません。「高専人向けキャリアパートナー事業」という大きな括りの中で、起業と就職、それぞれに興味を持ってもらえるようなイベントの開催、各種サービスの提供、有益な情報の提供などを行うことで、高専生のキャリアの全過程をサポートしています。

高専生向けの就活支援を行う企業は他にもありますし、起業支援をメインに行っている企業・団体もたくさんあると思いますが、起業と就職の両面で支援を行えることがプロッセルの強みです。起業と就職、どちらかに偏った支援やポジショントークをせずに、学生のキャリアについてフラットに支援することを重視しているので、私たちとしては「どちらでもいいし、迷っても大丈夫」というスタンスで支援を行っています。

ーー高専生向けのトータルなキャリア支援に加え、採用なども含めた企業側へのサポートも行っていると伺っています。実際にプロッセルのサービスを活用した高専生や企業からは、どのような反応・評価の声が届いていますか?

横山氏 : プロッセルでは、高専内のコワーキングスペースのコーディネートや運営を行っているほか、実際にオフィスを置かせてもらっている高専もあります。高専内に常駐しているメンバーは、学生たちにとっての頼れるお兄さん・お姉さんといった立ち位置で、キャリアのことも含めて様々な相談を受けることがあり、学生の皆さんからは「とても助かっている」という声をいただくことが多いです。

企業側に関しては、もともと高専とのコネクションやパイプを持っているような大企業は別ですが、高専と接点を持つこと自体が難しいと感じていた企業や、推薦ではなく自由応募で来てほしいと考えていたような企業の方々からは高い評価をいただいています。また、ビジコンなどのイベントを介して高専生との接点を持ちたいと考えている企業の方々からも、「とてもありがたい」というフィードバックをいただいています。

起業支援に関して学生側・学校側の双方が利用できるプラットフォームの開発を目指す

ーー今回のICTスタートアップリーグで取り組みたいことについて教えてください。

横山氏 : ICTスタートアップリーグでは、高専生・学校向けの「起業家教育支援オンラインプラットフォーム」を開発したいと考えています。

現在、私たちはキャリアパートナー事業の一環として、高専生が起業について学習できるeラーニングアプリを開発しています。昨今では高専自体が学校としての起業支援に注目しているものの、学校の先生たちは「どのように支援をすればいいのかわからない」という課題を抱えています。

そのため私たちは、学生だけでなく、学生の起業を支援する先生や学校サイドにとっても有益な情報を提供できるプラットフォームを作っていきたいと考えています。

ーー起業家教育支援オンラインプラットフォームによって実現したいことをお聞かせください。

横山氏 : 私たちは起業家教育支援オンラインプラットフォームの開発・展開を通じて、多くの高専出身起業家を育成するための持続可能なシステムを構築するつもりです。また、私たちは現時点で全国約30校の高専とのつながりを持っていますが、今回のプラットフォームの展開・導入を契機に、さらに多くの高専と接触し、全国各地でつながりを作っていきたいと考えています。

高専生が幅広い選択肢の中からキャリアを選び、歩んでいける世界を作る

ーー今後1、2年のスパンの中で考えられている事業の方向性について教えてください。

横山氏 : まずは現在の高専人向けキャリアパートナー事業や起業家教育支援オンラインプラットフォームを軸にして、全国の高専、さらには高専出身者、企業間のネットワークを広げていくつもりです。

海外展開についても早期に進めていきたいと考えています。現在、日本には全国に58校の高専がありますが、海外にも10校近くの高専があるので、世界各国に事業を広げていく方針です。また、日本の高専生たちが海外で働く、あるいは海外の高専生たちが日本で働く仕組み作りにも興味があります。

ーー5年後、10年後を見据えた中長期的ビジョンについてはいかがでしょうか。プロッセルの事業を通じてどのような世界を作っていきたいと考えていますか?

横山氏 : 最初の話に戻ってしまいますが、高専生たちが「どこで働くか」「何のために働くのか」「起業するのか」「就職するのか」といった、幅広い選択肢を持った状態でキャリアを選び、歩んでいける世界を作っていくつもりです。何となく推薦枠のある大企業を選んだり、何も考えずに地元の企業に入ったりするだけでなく、高専生たちが自分の可能性の大きさに気づき、起業も含めて様々なキャリアを検討できる機会を提供していきたいです。

また、中長期的には、徳島県の「神山まるごと高専」のような事例を参考に、様々な人たちと協力しながら新しい高専を作ってみたいです。

取材後記

高専に進学する中学生は、全国の中学校卒業生の約1%程度とされているが、企業の高専生に対する採用意欲は非常に高い。それゆえに高専生側は自分のキャリアや可能性について深く考えることもなく、就職先を決めていくという傾向があったという。今後、プロッセル社の取り組みによって、高専生たちが起業も含めた様々なキャリアに視野を広げるようになれば、スタートアップ界隈やオープンイノベーションの世界にも新たな風が吹き込まれることになりそうだ。優秀な高専生たちが次々とイノベーションを生み出す時代の到来を楽しみに待ちたい。

※ICTスタートアップリーグの特集ページはコチラをご覧ください。

(編集:眞田幸剛、文:鈴木光平、撮影:加藤武俊)

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  • 奥田文祥

    奥田文祥

    • 神戸おくだ社労士事務所
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  • 眞田 幸剛

    眞田 幸剛

    • eiicon company
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2023年度から始動した、総務省によるスタートアップ支援事業を契機とした官民一体の取り組み『ICTスタートアップリーグ』。これは、総務省とスタートアップに知見のある有識者、企業、団体などの民間が一体となり、ICT分野におけるスタートアップの起業と成長に必要な「支援」と「競争の場」を提供するプログラムです。TOMORUBAではICTスタートアップリーグに参加しているスタートアップ各社の事業や取り組みを特集していきます。