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地域とスタートアップによる数々の共創事例を披露!「産官学のプレイヤーが語り合う「共創カイギ」を詳細レポート

地域とスタートアップによる数々の共創事例を披露!「産官学のプレイヤーが語り合う「共創カイギ」を詳細レポート

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スタートアップ・エコシステムの形成と充実を図っている愛知県の動きに連動し、豊橋市・豊川市・蒲郡市・新城市・田原市・設楽町・東栄町・豊根村の8市町村は2021年に「東三河スタートアップ推進協議会」を発足させた。2024年は日本最大級のスタートアップ支援拠点「STATION Ai」が名古屋市鶴舞公園南側に開業する年でもあり、愛知県や東三河の取り組みは盛り上がりを見せている。

これに合わせ、これまでのスタートアップ・エコシステム形成に向けた活動で生まれた成果発表を兼ねた「東三河スタートアップ・エコシステム 共創カイギ~Co-Creation Day~」が2月22日に開催された。同イベントでは、地域がスタートアップと共創する「必要性」や「可能性」について、さまざまなプレイヤーがそれぞれの立場から、活発な議論を交わした。

冒頭、愛知県 経済産業局 経済産業推進監 柴山政明 氏が挨拶。「現在、東三河には大規模なエコシステムが形成されつつある。県内全域を見渡してもこれだけ活発な地域はない」と触れ、その上で、「10月にオープンするSTATION Aiと連動して、日本や世界をリードするエコシステムを愛知で構築したい」と意気込みを語った。

また、STATION Ai株式会社 経営企画部 部長 尾﨑裕樹氏がSTATION Aiの開業に向けた進捗を説明したほか、東三河スタートアップ推進協の事務局でもあるサイエンス・クリエイトの事業推進部 部長 夏目 崇匡 氏が東三河スタートアップ推進協議会の活動内容の紹介などを行った。

本記事では、

【1】プロジェクトピッチ「東三河地域のコミュニティ『Higashi Mikawa UPPERS』プロジェクトピッチ」

【2】スペシャルセッション「スタートアップとのオープンイノベーションから見える地域企業の勝ち筋」

【3】プロジェクトピッチ「スタートアップとの共創による地域に根ざしたビジネスの創出」

【4】会場一体型 パネルディスカッション「東三河が目指すべきスタートアップ・エコシステムとは」

を中心にイベントの様子をレポートしていく。

なお、各ピッチのコメンテーターは以下の7名。東三河エリアにおける産官学のキーパーソンが集結した。

・東三河広域経済連合会 会長 神野吾郎 氏

・豊橋市 副市長 杉浦康夫 氏

・国立大学法人豊橋技術科学大学 理事・副学長 若原昭浩 氏

・武蔵精密工業株式会社 常務執行役員 伊作猛 氏

・株式会社エムキャンパス 代表取締役社長 赤間真吾 氏

・株式会社サイエンス・クリエイト 代表取締役専務 稲葉俊穂 氏

・東三河広域連合 事務局長 稲田浩三 氏

【1】プロジェクトピッチ「東三河地域のコミュニティ『Higashi Mikawa UPPERS』プロジェクトピッチ」

まずは、『Higashi Mikawa UPPERS』に参加する4社が登壇したプロジェクトピッチの模様を紹介していく。『Higashi Mikawa UPPERS』は、スタートアップを目指す人とスタートアップを応援する人をつなぐ参加型コミュニティで、起業・新規事業の創出を促進する機運醸成が大きな狙い。行政、企業、大学、インキュベーション施設、金融機関など多種多様なメンバーが応援者として参加し、4カ月単位のプロジェクトを進めている。誰でも参加可能で、これまでの5期で60以上のプロジェクトが推進され、地域内外の500人以上が交流を図っている。

▲豊橋市 産業部 地域イノベーション推進室 主査 桑原裕明 氏が、「Higashi Mikawa UPPERS」の概要を説明した。

<プロジェクトピッチ>

1.水不要。洗い流さないメイク落とし洗顔料による新規市場開拓

株式会社Cogane studio 代表取締役 植村元 氏

同社は洗い流さない擦らないメイク落とし兼洗顔液「CERACLENZ(セラクレンズ)」を開発した。販売したところ、「洗い流す必要がないということは水が不要で、水を使えない状況で活用できるのではないか」との声が寄せられたという。同社では病院や介護施設、キャンプ・アウトドア、災害時・避難場や、腰痛をかかえる人たちへの利用促進を視野に入れたが、最適なアプローチ方法が見いだせなかった。そこで、『Higashi Mikawa UPPERS』に参加し、展示会への出展や防災関係者にサンプル配布するなどした。また、穂の国とよはし芸術劇場プラットの出演者にメイク落としとして使う実証実験にも取り組んだという。

植村氏は「地域と連携するには何度も顔を出すことが大事。時には無駄話が起点になることがある」と振り返った。これに対し、コメンテーターの豊橋市 副市長 杉浦氏は「Higashi Mikawa UPPERSに勇気をもって飛び込み、実証実験に前向きに取り組む姿勢に胸を打たれた。思いが実現するよう支援したい」とエールを送り、サイエンス・クリエイト 代表取締役専務 稲葉氏は「非常に可能性のある発想。マッチングを望んでいる企業や団体は多くあるはず」と商品のさらなる拡大を後押しした。

2.ドローンソリューションによる価値の提供

J-Celeste株式会社 取締役副社長 上村武司 氏

同社は赤外線ドローンを使用した点検サービスを行っている。特に活用を進めているのが外壁の検査で、目視では判断しづらい外壁の劣化などを調査する。例えば、「浮き(膨らみ)」の有無を温度変化で判断できるという。こうした検査方法は近年、国も認めているが、認知度が低く、導入が進んでいない現状がある。そこで、同社は『Higashi Mikawa UPPERS』に参加して認知を広める方法を模索した。

交流会などで話し合った結果、「建物を管理する保険会社からアプローチ」「従来の打診検査との違いをSNSなどでアピール」などの案が出され、現在は実証実験まで進んでいるという。上村氏は「4~5月には質の高い報告書を作成し、行政に提出したい」と意気込んだ。

これに対し、コメンテーターの豊橋技術科学大学 理事・副学長 若原氏は「建物の不良個所の診断はもちろん、非常に用途が広い技術。例えば、エネルギー診断などに使えるのではないか」と伝えた。武蔵精密工業 常務執行役員 伊作氏も「価値と可能性は非常に大きい」と同意し、今後の活躍に期待を込めた。

3.東三河の未来を明るくしたい人

株式会社トヨコン DX推進課 高柳祐一朗 氏

同氏はこれまで『Higashi Mikawa UPPERS』の応援者として参加している。同氏は同社で採用・人事・広報を手がけているが、スタートアップなどとの共創はほとんどない。しかし、東三河エリアで展開されるPRなどを通じ、『Higashi Mikawa UPPERS』に興味を持ち見学に行ったとのこと。その際、多くの人が地域の課題と向き合い、解決を模索する真摯な姿を見て、感銘を受けたという。

そこでぜひ関わりを持ちたいと2023年秋から応援者として参加。活動を進める中で、自身の経験も役に立つことがあると実感できたと話す。同氏は「これから始まる第六期の『Higashi Mikawa UPPERS』に発起人として参加しようと考えている。何も決まっていないが、明るい地域にするため、仲間と力を合わせたい」と協業を呼び掛けた。

これに対し、コメンテーターのサイエンス・クリエイト 代表取締役専務 稲葉氏は「郷土への深い愛を感じた。自社でDXを推進していることが活かせるのではないか」と提案した。武蔵精密工業 常務執行役員 伊作氏は「積極的には関与したくないことに課題があることが多い。ぜひ新しい価値の創出を模索し、社会への貢献を果たしてほしい」と挑戦を後押しした。

4.地域の食べ物と一緒にストーリーを届ける「そのとちブック」の開発

株式会社picks design 代表取締役 松浦克彦 氏

同社は地域の食べ物とストーリーを届ける「そのとちぎふと」を開発している。毎月違う地域の食べ物を取り上げ、生産者の思いや食べ物の美味しい食べ方などを同封されたブックと共に伝えている。松浦氏は東三河エリアで実施された工芸の体験イベントに参加したことから同エリアと関わりを持ち、その後「食」をテーマとしてプロジェクトを進めるなどした。

『Higashi Mikawa UPPERS』からは、設楽町の紹介を受け、サーモンのそのとちブックを作成。「emCAMPUS FOOD」や「本の豊川堂」などで販売も行った。松浦氏は「東三河の生産者の方とつながりを深め、さらに地域と食の魅力を伝えたい」と熱意を見せた。

コメンテーターの東三河広域連合 事務局長 稲田氏は「きっと大勢の方が、地域と食を取り上げてほしいと思っている。ぜひ地方創生に一役買ってほしい」と伝え、エムキャンパス 代表取締役社長 赤間氏は「生産者や食べ物の持つストーリーに焦点を当てた点が優れている。味や価格だけでは伝わらない思いを伝えている」と感想を述べた。

【2】スペシャルセッション「スタートアップとのオープンイノベーションから見える地域企業の勝ち筋」

次に、「スタートアップとのオープンイノベーションから見える地域企業の勝ち筋」と題したスペシャルセッションの模様を紹介する。本セッションは行政、スタートアップ、地域企業のプレイヤーが登壇し、それぞれの視点からオープンイノベーションの進め方や取り組むメリットなどが話し合われた。登壇者とモデレーターは以下の通りだ。

<登壇者>

・IXホールディングス株式会社 執行役員 CIO 神山大輔 氏(写真右)

・株式会社スペース 代表取締役 村井美映 氏(写真中)

・豊橋市 産業部 地域イノベーション推進室 主任 澤田恭平 氏(写真左)

<モデレーター>

株式会社eiicon 東海支援事業本部 部長 伊藤達彰 氏

澤田氏は一昨年に豊橋市に入庁し、地域企業の新規事業、スタートアップの支援に取り組んでいる。それまでは7年間は電子部品メーカーに勤めていた経歴を持つ。村井氏は物流の課題解決を目指すスタートアップを設立。独自の中継輸送マッチングプラットフォーム「ドラ基地」を開発し、現在は地域の運送会社、サーラ物流株式会社(東証プライム上場、株式会社サーラコーポレーショングループ)とオープンイノベーションを進めている。神山氏は「おにぎりせんべい」で著名な株式会社マスヤなどをグループに持つIXホールディングス株式会社で、オープンイノベーションを推進している。

3者でディスカッションした最初のテーマは「地域企業がスタートアップとの共創に取り組むメリットとは」だ。神山氏は東京のスタートアップと共創したことを振り返りながら、「最新のテクノロジーについての知識を獲得できる」ことを挙げた。「自社でもネットで調べるなどするが、限界はある。共創することで本当に自社に必要な知識が手に入り、課題も明らかになる」と伝えた。また、「人材育成」にも触れ、共創したスタートアップに半年間、若手社員を送り込んだ。結果、「東京のスタートアップのスピード感やプロジェクトの進め方に理解が深まった」と述べ、引き続き人材交流を進める予定だという。

澤田氏も同意し、「スタートアップと共創することで、ビジネスの作り方がよくわかるようになる」と強調した。他方、スタートアップ側の意見として、村井氏は「あくまでも現時点の話だが、個人の感覚としては、まだ何の価値も提供できていない。ビジョンに共感いただいているので、それを形にして成果を出せるようになってからが、本当に価値を提供できるようになる」とビジネスの成功に向けて決意を新たにした。

続いて、「スタートアップとの共創に向けたはじめの一歩は?」をテーマにした。村井氏は「スタートアップというのは不思議な存在で、起業したばかりなのに、いきなりトップと出会えることがある。反面、まったく話を聞いてくれないということもある。まずは話だけでも聞いていただければありがたいし、共創を行うのは、結局は人と人。出会うことがはじめの一歩になるのではないか」と話した。

神山氏は「実はオープンイノベーションとは、課題を提示すればスタートアップが解決してくれるものだと勘違いしていた。スタートアップと同じ方向に向かうことが大事。また、担当者一人で対応できるものではない。可能であれば、各部門のエース級を当てることが成功の秘訣」との考えを示した。澤田氏も「出会いから始まるものが多くある。多くの出会いが創出されるような環境を、自治体としても整備する。少しでも興味をもったらぜひ参加してほしい」と呼びかけ、セッションを締めくくった。

【3】プロジェクトピッチ「スタートアップとの共創による地域に根ざしたビジネスの創出」

「スタートアップとの共創による地域に根ざしたビジネスの創出」と題したプロジェクトピッチには、地域課題に取り組む2社と自治体などの担当者が登壇した。東三河エリアでは、地域課題とスタートアップとのマッチング、スタートアップの実証実験を支援する「東三河8市町村実証実験サポート事業」が展開されている。ピッチでその成果が発表された。

●お店と地域と人を結ぶデジタルサイネージ

・株式会社スタジオフィルス 代表取締役 高橋健太郎 氏(写真右)

・豊川市 産業環境部 商工観光課 産業振興係 主事 竹下雅大 氏(写真左)

・株式会社道の駅とよはし プロジェクトマネージャー 富永百衣子 氏(写真中)

ピッチはデジタルサイネージを活用した情緒あふれる広告の動画から始まり、会場の興味を引き付けた。高橋氏は「デジタルサイネージはコミュニケーションツールで、人と街をつなげるデバイスになる」と強調する。同社はデジタルサイネージのサービス「パッチサイン」をリリース。パソコンやスマートフォン、タブレットなどを使って、場所を選ばずいつでもデジタルサイネージに広告を載せることができるのが特徴で、さらには出稿料を受け取りながら他社などの広告を受け入れることも可能だ。

パッチサインは地域のお土産物や産直品を販売する株式会社道の駅とよはしで活用された。富永氏は「61歳の駅長も簡単に広告をアップできた。また、イベントを告知する場合、これまでは紙のポスターを作成していたが、単発や期間の短いものの場合は作成しないこともあった。しかし、デジタルサイネージなら気軽に出稿できる。利用が増えれば、新しい交流が増えるのではないか」と期待を伝えた。

また、豊川市の天然温泉「本宮の湯」でも使用されており、竹下氏は「デジタルサイネージを設置した翌日には広告が出稿できた。担当者からは既存の素材を使って4つのコンテンツを10分で作り上げたと聞いた。本当に手軽で、デジタルサイネージを通じてた街と街、地域と地域がつながるといい」と意気込んだ。

コメンテーターの豊橋市 副市長 杉浦氏は「デジタルサイネージを通じ気持ちが伝えられる。新しい可能性にチャレンジしてほしい」とエールを送り、エムキャンパス 代表取締役社長 赤間氏は「自分に向けたものではないメッセージでも、目にすることが発見につながることがある。偶然性の面白さが生まれるかもしれず、発展性がある」と述べた。

●東三河ソロトリプロジェクト

・株式会社ホーン ソロトリクエストディレクター 三浦賢 氏(写真右端)

・豊川市 産業環境部 商工観光課 主事 波田野将大 氏(写真中央の右)

・蒲郡市 産業振興部 産業政策課 主事 吉見健児 氏(写真中央の左)

・愛知県東三河総局 企画調整部産業労働課 主事 横家大樹 氏(写真左端)

同社は一人でも楽しめるミッションクリア型周遊企画「ソロトリクエスト」を通じた東三河活性化の実現に向けて取り組んだ。今、多くの人が一人になりたいとの思いを抱いているものの、一人を楽しむものに欠けている。こうした状況のソリューションとなるのが、同社のサービスである。

三浦氏によれば「一人だからこそロングテールな関係を作りやすい。来訪頻度や消費額を重視して地域との持続可能な関係を構築したい」と説いた。東三河エリアとの取組みでは、「地元の方たちが知っている楽しみ方をクリア」することをユーザーに課し、観光スポットや体験コンテンツにミッションやストーリー性を加える「ソロトリクエスト」を開発し、来期の実施を目指している。

波田野氏は新城市の観光の授業を行っている高校で、「ソロ旅」を授業の題材とし、実際にクエストの作成に挑んだことに触れながら「生徒たちが目を輝かせながら、フィールドワークに取り組んだのが印象に残る。地域の事業者の方々から協力したいという声も多くもらった」と伝えた。吉見氏は「来訪者と地域のつながりを作りやすいと感じた。これから積極的に活用し、地元の商工業や産業の活性化につなげたい」と話した。横家氏は「例えば、歴史をテーマとしてボランティアを体験コンテンツにできるのではないか」と考えを示した。

コメンテーターの東三河広域経済連合会 会長 神野氏は「旅は複数人で行う観光から、自分事の旅へと変化するかもしれない。一人ならではさまざまな楽しみ方があり、その上で、新しいコミュニティの形成につなげてほしい」と述べた。東三河広域連合 事務局長 稲田氏は「みんなも良いけど、一人も良いという考えには同感できる。一人が好きという人は増えており、クエストは開発の余地がある」と今後の発展に期待を込めた。

【4】会場一体型 パネルディスカッション「東三河が目指すべきスタートアップ・エコシステムとは」

最後に、 「東三河が目指すべきスタートアップ・エコシステムとは」をテーマとした会場一体型のパネルディスカッションが行われた。登壇者とモデレーターは以下の通りだ。

<登壇者>

・株式会社サイエンス・クリエイト Startup Garage コミュニティマネージャー 勝間亮 氏(写真左から2番目)

・STATION Ai株式会社 コミュニティマネージャー 片岡裕貴 氏(写真中)

・株式会社NEWSTA 代表取締役 CEO 鈴木碩子 氏(写真右から2番目)

・株式会社パワーウェーブ 取締役 種田憲人 氏(写真右)

<モデレーター>

株式会社eiicon 東海支援事業本部 寺田圭孝 氏(写真左)

本セッションはスタートアップやエコシステムに理解を深めながら、会場からの質問に答える形で進められた。勝間氏は輸送機メーカー、宇宙ベンチャーなどで勤務した後、長年にわたりスタートアップやイノベーションの創出を支援してきた経験を持つ。片岡氏はスタートアップ支援を行うほか、学生や社会人からの起業家の育成にも力を入れている。鈴木氏は豊川市出身のシリアルアントレプレナーで、現在は東京でスタートアップ起業家やPR顧問・アドバイザーとして活動を展開中だ。種田氏は銀行勤務の後、豊橋技術大学発のベンチャー企業を設立し、第一線で活躍している。

まずスタートアップとエコシステムについて鈴木氏が解説した。鈴木氏によればスタートアップもエコシステムも概念としてまだまだ正確に浸透しきってはいないと話す。その上で、「スタートアップはイノベーションを起こす存在。ただ、最初は新しい未来を夢物語のように感じる話も多いからこそ、支援者が必要になる。スタートアップが生まれ、投資されて最終的にはイグジットされる。今度はその起業家が投資側に回る。こうした循環がエコシステムを形成していく。大きなエコシステムができると、産業全体が強くなる」と話し、現在は国もスタートアップ支援とエコシステムの形成に向け積極的に支援していることに触れた。また、勝間氏からは東三河エリアで順調にエコシステムが形作られ、関係人口も増えていることが伝えられた。

続いて、「理想の東三河スタートアップ・エコシステムに向けて取るべきアクションは」をテーマにディスカッションが進められた。片岡氏は「応援してくれる人がいることがまずは大事。その点、東三河のエコシステムは盛り上がっている。ロールモデルにしたい」と述べた。勝間氏は「出会いがないと意識が変わらない。スタートアップをいろいろなところに連れていくことが必要」と強調した。種田氏は「まずはパワーウェーブとして僕自身頑張ることが必要不可欠。スタートアップは助けてもらうことを前提にしてはいけない。共創する時は、相手側にメリットを提示することが大事」と話した。

会場からは「飲み会は大事か」との質問が寄せられた。これに対し、種田氏は「お酒を飲むかは別にして、ひざを突き合わせて語り合うことでビジョンが共有できることもある」と語った。片岡氏は「チャレンジする人が集まると、自ずときっかけが生まれる。飲み会など最初の出会いを作ることは必要」と伝えた。

これからの東三河エリアのエコシステムについて、勝間氏は「まずはとにかく気軽にかかわってほしい。ラフに話し合うことからスタートしてはどうか」と参加を呼びかけた。片岡氏は「STATION Aiを通じ、最高の支援をスタートアップに届けたい」と意気込みを見せた。鈴木氏は「東京でもスタートアップはなかなか理解されていない存在だったところから、この10年でも状況が大きく変わった。愛知でも同様に盛り上がりを生み出せるはず」と伝えた。最後に種田氏は「スタートアップの運営などで困っていることがあれば相談してほしい。一緒に頑張ろう」とエールを送り、セッションを閉じた。

【クロージング】 情熱を持って動き出すことが大切

クロージングに登壇したのは、東三河スタートアップ推進協議会 会長 神野氏だ。日経平均が上昇していることに触れながら「日本の経済は、新たな展開を見せている。そうした中、イノベーションの創出がより強く求められている。エコシステムはどこでも作ることはできるが、東三河には東三河にしか作れないエコシステムがある。自然、観光、農業、工業が盛んな地域の特性を活かしたい。そのためには、情熱を持って動き出すこと。動き出すことで、生まれるものが多々ある」と力強く語った。

この後、交流会が開かれ、参加者同士で意見交換などを行った。会は非常な盛り上がりを見せ、エコシステムが形作られていく様が感じられるものになった。

取材後記

東三河エリアのエコシステムは形成されつつあり、機能も果たしている。そのことは、Higashi Mikawa UPPERSへの参加者や、スタートアップと地域の活発な交流、共創を見れば明らかだろう。愛知県では2024年10月にSTATION Aiのオープンも控えており、スタートアップ・エコシステムへの注目度も高まりを見せている。こうした状況の中、東三河は他の地域をリードする存在になるはずだ。ますますの発展に期待したい。

(編集:眞田幸剛、文:中谷藤士、撮影:加藤武俊)

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