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日本発・世界初の挑戦へ――Helical Fusionが「Helix Program」発表、2030年代の商用核融合炉実現を目指す

日本発・世界初の挑戦へ――Helical Fusionが「Helix Program」発表、2030年代の商用核融合炉実現を目指す

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株式会社Helical Fusionは7月11日、世界初の商用利用可能な核融合炉の実現に向けた基幹計画「Helix Program」を発表した。ヘリカル方式を用いる同社は、世界で唯一「通年稼働」と「正味発電」を両立できる商用核融合炉を目指し、2030年代に実用発電の達成を掲げる。

▲Helical Fusionが開発するヘリカル型核融合炉の中心部のイメージ

Helical Fusionは、国立の核融合科学研究所など日本で70年にわたり蓄積された知見を受け継ぐ形で、商用化に最も近い技術とされる「ヘリカル型核融合炉」を開発中だ。これまでに、核融合反応を起こす高温のプラズマを安定して閉じ込める二重らせん構造のコイルなどを武器に、「定常運転」「正味発電」「高い保守性」という商用核融合炉の三要件を同時に満たす計画を具体化してきた。今回の発表では、装置開発のステップを「Helix HARUKA(統合実証炉)」と「Helix KANATA(商用炉)」に整理し、国内外の産業界と連携して一気に開発を加速する方針を示した。計画では、2030年頃までにHARUKAでの統合実証を終え、KANATAでの商用運転へ移行する。

シリーズAで約23億円を調達、累計資金52億円超に

Helical Fusionは同時に、シリーズAラウンド(融資を含む)で約23億円の資金調達を完了したと発表した。これにより累計調達額は補助金などを含めて約52億円に達する。

出資者にはSBIインベストメントやKDDI Green Partners、ニッセイ・キャピタル、大和ハウスベンチャーズなど国内の有力VCに加え、岡野バルブ製造や能代電設工業、アオキスーパーといった多様な事業会社が参画。エネルギー供給からインフラ構築、地域社会への還元まで、横断型の共創体制を構築している点が特徴だ。

SBIインベストメントの執行役員・松本氏は「SBIR最大交付額の採択に続く追加投資。『地上に太陽をつくる』という人類の夢の実現に向け、全力で支援する」とコメントを寄せている。Helical Fusionは、高温超伝導マグネットなどのコア技術で文科省のSBIR補助金(最大20億円)に採択されており、国の後押しも追い風に2030年代の商用炉稼働を目指す。

【記者会見レポート】定常運転の意義、競争優位性と次の挑戦

7月11日(金)に行われた記者会見では、株式会社Helical Fusion 代表取締役CEOの田口昂哉氏が「Helix Program」の全体像を説明した。田口氏は「核融合は太陽の仕組みと同じ原理であり、暴走のリスクがなく、燃料も無尽蔵でCO₂を排出しない。日本がエネルギー輸出国へと転換できる可能性を秘めている」と語り、核融合の社会的意義を強調した。同社が採用するヘリカル方式の強みとして、「定常運転」「正味発電」「保守性」の三つを挙げ、従来のトカマク型やレーザー方式との違いを説明した。また、これまでに液体金属ブランケットの試験や高温超伝導コイルの開発など、プラズマの長期安定稼働を支える要素技術も進展しているという。

発電の仕組みについては、プラズマ中で発生する中性子の運動エネルギーを熱に変え、その熱で蒸気を発生させてタービンを回していると解説する。その中性子を受け止める壁にあたるのが、遮蔽と熱回収を担う「ブランケット」だ。さらに、燃料の一部であるトリチウムは自然界にはほとんど存在しないため、ブランケット内でリチウムと中性子を反応させて生成し、燃料を自給できる仕組みになっている。

特に液体金属を用いたブランケットは、熱回収効率が高く、構造がシンプルでメンテナンス性が優れている。この液体金属ブランケットについても、4~5年以内に開発の実証を終え、統合実証炉「Helix HARUKA」に組み込むことで、正味発電の達成と高い保守性を同時に実現する方針が示された。

また、高温超伝導コイルの開発についても進捗が報告された。プラズマを安定的に閉じ込めるために必要不可欠なこのコイルは、従来よりも高い温度で超伝導状態を維持でき、エネルギー効率の向上と装置の小型化に貢献すると期待されている。

質疑応答では、2030年代前半の商用炉稼働に向けたスケジュール、安全性や世界初を目指す意義、資金計画などについての質問があった。田口氏は、今後のロードマップとして統合実証炉「Helix HARUKA」は2030年頃までに実証を完了させる計画で、その先の商用炉「Helix KANATA」についても、2030年代の実用発電を視野に立地選定や許認可の取得を進めていると回答した。

▲Helix KANATAのイメージ(周辺機器と建屋を含む)

関連リンク:プレスリリース

(TOMORUBA編集部) 

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  • 後藤悟志

    後藤悟志

    • 株式会社太平エンジニアリング
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