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Helical FusionとMiRESSOが提携、世界初の定常核融合炉実現に向けベリリウム供給を強化

Helical FusionとMiRESSOが提携、世界初の定常核融合炉実現に向けベリリウム供給を強化

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世界初の定常核融合炉の実現を目指すスタートアップ、株式会社Helical Fusion(以下、ヘリカルフュージョン)は、ベリリウムの革新的な精製技術を持つ株式会社MiRESSO(以下、ミレッソ)と業務提携を締結した。核融合炉の中核機能のひとつである「ブランケット」開発において、ベリリウムの調達および仕様設計を共同で進める。

2025年4月某日 、核融合炉の開発を目指すヘリカルフュージョンと、低温抽出技術に強みを持つミレッソが、共同研究に関するオンライン発表会を開催した。テーマは「核融合開発におけるベリリウムの活用」。核融合に不可欠な素材であるベリリウムの調達・供給に向けた両社の協業体制が明らかになった。

▲Helical Fusionが開発する世界初の定常核融合炉のイメージ。緑色部分がブランケット。

核融合で人類は進化する──ヘリカルフュージョンの挑戦

オンライン発表会で、まず登壇したのは、ヘリカルフュージョンの代表取締役CEO・田口昂哉氏。同社は、「2034年までにネットエネルギー を得られる定常核融合炉の開発」を目指すスタートアップだ。ビジョンは「人類は核融合で進化する」。電力供給のみならず、社会インフラ全体の変革を見据えた挑戦だ。

核融合は、CO₂を排出せず、燃料も海水由来と持続可能性が高い。核分裂のような暴走リスクもなく、放射性廃棄物も極めて少ない。「安全性」「安定供給」「エネルギー自給率向上」という観点からも、次世代エネルギーの本命と目される。

同社が採用する「ヘリカル方式」は、1980年代に京都大学で発明された日本独自の技術であり、現在は岐阜県の核融合科学研究所にて世界最高水準の研究が続けられている。ヘリカルフュージョンはその成果を継承し、2021年に創業。CTOを務める宮澤氏をはじめ、核融合科学研究所出身の研究者が経営陣を固めている。

ベリリウム供給の鍵を握るミストの技術

続いて登壇したのは、ミレッソ 代表取締役CEO・中道勝氏。ミレッソは、ベリリウムをはじめとするレアメタルや有害成分を、300℃以下という「低温」で抽出できる革新的な技術を持つ。従来は1,200℃以上の高温処理が必要だったベリリウム抽出を、省エネかつ低コストで実現するこの技術は、核融合のみならずリチウム、白金族金属、産業廃棄物からの有価物再生といった広範な応用も見込まれている。

現在、年間300トンのベリリウム製造を計画しており、その量は2034年以降の核融合炉の安定稼働に必要な量と合致する。生産時に使用したベリリウムは、炉内での使用後も90%以上が再利用可能であり、サーキュラー型の供給体制構築も視野に入れている。

さらに同社はすでに鉱山企業とのMOUを締結しており、今後の供給安定化に向けた正式契約を進める段階にある。現時点で競合する低温抽出技術を持つ企業は存在せず、各国での特許出願も進行中だ。

技術と社会が交差する地点へ

オンライン発表会で行われた質疑応答では、ベリリウムのコスト妥当性や供給タイミングに関する質問も寄せられたが、両社は「価格は量産とリサイクルで最適化し、スケジュールも合致している」と自信を示した。

核融合の実用化には、装置開発だけでなく、素材供給、インフラ整備、そして政策支援まで、総合的な連携が不可欠だ。今回の発表会では、そのなかでも「素材の壁」に対する重要な一手として位置づけられた。

ベリリウムは小さな元素だが、未来のエネルギーの鍵を握る可能性を秘めている。ヘリカルフュージョンとミレッソの協業は、日本発の技術で世界のエネルギー構造を変える大きな第一歩となるかもしれない。

関連リンク:プレスリリース

(TOMORUBA編集部) 

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