
国内初、日本通運×日本貨物×T2が持続可能な物流モデル確立に向けた実証実験が始動
NIPPON EXPRESSホールディングス傘下の日本通運株式会社、日本貨物鉄道株式会社(JR貨物)、そして自動運転技術を有する株式会社T2の3社は、2025年6月20日から24日にかけて、日本国内で初めてとなる「自動運転トラック×貨物鉄道」のモーダルコンビネーション(*1)の実証実験を実施した。第一弾では雪印メグミルク株式会社の常温品を北海道から関西へと輸送する。
背景には、物流業界が直面するドライバー不足や働き方改革、そしてCO₂排出削減などの社会課題がある。2024年11月から日本通運、全国通運、日本フレートライナー、JR貨物、T2の5社が共同で検討を進め、今回のプロジェクトが具体化した。
北海道から関西まで、陸と鉄路をシームレスにつなぐ
今回の輸送ルートでは、北海道内の雪印メグミルク物流拠点から札幌の貨物ターミナル駅までを日本通運のトラックが担い、札幌の貨物ターミナル駅から東京の隅田川駅まではJR貨物の貨物列車が担当。その後、隅田川駅で貨物を31フィートタイプの共用コンテナに積み替え、T2が開発したレベル2(*2) 自動運転トラックで関西の百済貨物ターミナル駅まで幹線輸送を行う。最後に日本通運のトラックが百済貨物ターミナル駅から雪印メグミルクの物流拠点まで輸送するという一貫したオペレーションだ。

特筆すべきはJR貨物とT2が共同開発した共用コンテナの存在だ。これにより、鉄道からトラックへの積み替え作業がスムーズとなり、異なる輸送モードをシームレスにつなぐ新たなモデルの構築が可能となる。
労働力不足と環境負荷の課題を解決へ
日本の物流業界では、2024年問題と呼ばれるドライバーの時間外労働規制強化により輸送力不足が懸念されている。今回のモーダルコンビネーションは、貨物鉄道の全国ネットワークと自動運転トラックの機動力を組み合わせ、輸送ルートの複線化や柔軟な輸送力増強を可能にすることで、これらの課題解決を目指す。
さらに、トラック輸送に比べてCO₂排出量の少ない鉄道輸送を幹線に活用することで、環境負荷の低減にも寄与する。このモデルの実用化により、持続可能な物流の実現に向けた大きな一歩となることが期待されている。
2027年にはレベル4自動運転でさらなる進化を
今回の実証実験で使用されたのは、T2が開発したレベル2の自動運転トラックだが、将来的には2027年からのレベル4(*3) 自動運転トラックの導入も視野に入れている。レベル4では、特定の条件下で人の操作を必要とせず、完全に自動運行が可能となる。これにより、長距離輸送におけるドライバーの負担軽減がさらに進むことが見込まれる。
今回の実証では、隅田川駅での積み替え作業、北海道―関西間の一貫オペレーション、輸送品質など多角的な検証が行われた。ドライバーは同乗するが、実際の運行データを蓄積することで、将来的なレベル4運用の基盤を築く狙いだ。
新たな物流の形を示す挑戦
T2の森本CEOは「モーダルコンビネーションは、鉄道と自動運転トラックが互いの強みを生かし合う、これからの日本の物流を支える革新的な輸送モデル」と強調する。雪印メグミルクも、実証において商品の品質検証を行い、実用化に向けた現場目線の評価に貢献する。
ドライバー不足と環境問題の双方を解決しうる新たな輸送モデルの実現に向けた第一歩が、北海道と関西を結ぶ幹線ルートで踏み出された。
(*1) トラックと鉄道の親和性を高め、相互に補完し合う輸送モデル
(*2) ドライバーの監視のもとに行われる特定条件下での高機能自動運転
(*3) 特定の走行環境条件を満たす限定された領域において、自動運行装置が運転操作の全部を代替する状態
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(TOMORUBA編集部)