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【オープンイノベーションの手引き①】ステップ(1)実践にあたっての心構え"オープンイノベーションは「手段」だ"

【オープンイノベーションの手引き①】ステップ(1)実践にあたっての心構え"オープンイノベーションは「手段」だ"

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日本のイノベーション創出を促進しようと、経済産業省は、事業会社とスタートアップによる連携の手引きを取りまとめています。しかし、そのボリュームは膨大です。本連載は経産省の手引きをベースに、オープンイノベーション支援をおこなうeiicon company(エイコンカンパニー)代表の中村亜由子が、社外との事業提携を成功させるための各種ノウハウをわかりやすく解説するコラムです。業界の第一線に立ち、その課題と動向を熟知したプロがアドバイスします。

そもそもオープンイノベーションがなぜ必要なのか

「オープンイノベーション」。ここ5年ほどでだいぶ使われるようになってきた単語である。やっと市民権を得たといってもよい言葉ではないだろうか。


オープンイノベーションという言葉が生まれたのは2003年。「企業内部と外部のアイデア・技術を意図的に組み合わせることで革新的で新しい価値を創り出すこと」であり、経営学者、ヘンリー・W.チェスブロウが提唱したイノベーションの方法論である。


すなわち、社外のプレイヤーと手を携えて事業創出や研究開発に臨む方法そのものを指す。


そもそもこの手法が注目されてきた背景として常に説明している理由は3つ。 


1つ目は「技術進化による市場全体の加速」と、「消費者ニーズの多様化に伴う製品化の需要供給サイクルの加速」が進み、製品・サービスのライフサイクルそのものの短命化が起こっているということ。

2つ目は、主にテクノロジーの発展によるところが大きいが、今まで脅威とみなしていなかったノーマークの異業種から強力なライバルが突如として顕れることが増えたこと。


新たな製品・ソリューションの台頭によって、既存市場が破壊されてきている記憶に新しい市場の図である。ECサイトの普及が、小売店・書店を脅かしている現状は想像に容易いだろう。


3つ目が、インダストリー4.0。産業革命の歴史において、現在は第4次産業革命の真っただ中だ。簡単に第4次産業革命を説明するならば、全てのプロダクトに通信が入る『IoT』や、AI(人工知能)を用いることで起こる製造業の革新の時代であるということ。


IoTやAI、キャッシュレスなどに代表されるデジタル・ネットワークテクノロジーといった、世界中が注目する発展性がある分野にヒト・モノ・カネを再配分し、国内外を見据えた新しいプロダクト・商品が求められている。


つまり、製品寿命が短期化し、ライバルの数が増え、通信やAIを自社事業に融合させていく必要がある時代であり、効率的かつスピーディーな研究開発活動の必要性を増大させ、持続的に顧客価値を創出し続ける、しかも通信やAIを用いて…と考えるとオープンイノベーション実践は必然なのである。

オープンイノベーションは手段

社外のプレイヤーと手を携えて、新たな価値を生み出すという「オープンイノベーション」はマジックワードとして突如日本企業の中に降臨し、数年間バズワードとして揶揄の対象となっていたが、この1、2年で少しフェーズは進んだように感じている。


『とにかくオープンイノベーションをやるんです』ではなく、オープンイノベーションという手段を用いる理由が整理できており、その手法の活用が『どのようなステップが一番目的としている価値に繋がりやすいか』『社会実装に最短で繋げるためにどうすべきか』と少しずつ、意味のある論調になってきているのである。

実践のファーストステップ『目的の明確化』


まず上記図をみてほしい。オープンイノベーションは方法であり、そのやり方には順序がある。この図でポイントとなるステップを可視化した。このステップが整理されていない会社や取り組みはいまだに散見される。


そもそもオープンイノベーションを実践するにも関わらず実施する背景を整理できていない企業はまだまだ多いのだ。


先に述べたように整理がつき順序立てて進みだしている企業が見られるのは朗報と言える。一方でこの5年、多くの企業がオープンイノベーション実践に新たに乗り出しており、その実践企業の増加数の割合からすると、本質的な取り組みへ進めている企業は減ってしまっているとも感じている。


だからこそeiicon companyとして、「オープンイノベーションとはなんたるや」の部分からハンズオンで支援することにあるわけだが、つまりは背景や目的、ステップを整理するかしないかが後々の成否を大きく分けることになるのだ。


まず最初に絶対的に必要なのは、「目的を明確化」すること。


そして「目的が明確」とは、明文化までを指す。


これが、今後何度も立ち返るであろう今後の指針となるためである。

明文化していくときのポイント

とはいえ、「ぼんやりしていてまだ決められない」「どうすれば良いかわからない」といった声をよく聞くのもまた事実。そのような場合でも“新規事業部署”・“経営企画”であれば全くの方向性がないことはないはずだ。


事業会社として、事業活動を続けていく中で、オープンイノベーションを実践しているからには、方向性がないことは断じて「ない」。


だからこそあきらめずに、一つひとつ紐解いていくことが非常に大切である。明確化できていないと嘆く企業にも下記のような問いかけをすると、輪郭が見え始め、具体的になっていくことも多い。まったくの暗闇のように感じたとしても、まずは一問一答の質問形式で可視化し、ブラッシュアップしていくのも良いだろう。


「会社としてのビジョン・目指していきたいのはどのような未来ですか?」


「そもそも今自社が目指していることはなんですか?」


「それには何が足りていないと認識していますか?」


基本的に、オープンイノベーションとはイノベーションを起こすための方法なのだから、目的は新たな価値創出や、自社だけでは実現が難しい『革新』に紐づくわけだが、その内容は企業によって本当に様々であり、その「目的」が自社の言葉で明文化できていることはとても重要である。


ちなみに、オープンイノベーション実践における目的が明確で明文化できている企業は、実践者、経営陣、実際に携わっていない社員まで同じ「言葉」で語ることができるケースも出始めている。

オープンイノベーションを実践する上での心構え

オープンイノベーション実践でも5W1Hは重要だ。


Who(だれが)When(いつ)、Where(どこで)、What(なにを)、Why(なぜ)、How(どのように)。


その5W1Hの中でもまず最初に明確にすべきは『Why』『What』であって先程の目的の明確化がそれにあたる。


『なぜ(Why)』オープンイノベーションなのか。今回『何のために(Why)』、『何(What)』を目的としてこの手段を取り入れるのか。解決したいことは『何(What)』か。


その次に明確にすべきなのが、『Who(だれが)』。なのだが、これが定まっていない事例も、言わずもがな多いのが実情だ。


『Who』が定まっていない場合、非効率この上なく、責任の転嫁、ボールが浮く、途中で立ち消える等もここが明確になっていないことに起因する。『Who』が定まっていないまま大企業や自治体に代表されるジョブローテーションが起こってしまうのは最悪だ。


どの部署や、セクターが実践者なのか。プロジェクトのヘッドは誰なのか。実践『者』は誰なのか。


隠れてはいけないし隠してもいけない。「だれが」も明確に定めることは、非常に重要である。


オープンイノベーションは新たな価値を生み出す手法であり、経営戦略においては事業を生み出すファクター、要素である。『Who(だれが)』が明確になっていない状態(創造していきたい未来を担えるヒトがいない)で進めていくことは誰もに負こそ生じれど、プラスはない。

まずはやってみることも大事

今回、まずオープンイノベーションを実践するにあたり、目的を明確化すること・誰がやるかを明確にすることをお伝えした。


だが、新規事業において、『“正解”を導き出そうとしすぎる』ことは時としてマイナスである。オープンイノベーションは手法だが、新規事業において、“正解”はない。実践してみて初めてわかることが必ず出てくる。


たとえば、社内リソースを活用できると思っていたが、いざ連携をはじめようとしたときに現場の理解を得ることが出来ずに終わってしまうケースなどもある。当然これらも事前に整理すべき点ではあるが100%確実に進めることができるものはない。


千三つとも言われる事業創出においては、ある意味、数回失敗を繰り返すだけの気概が必要であり、失敗を織り込み済みでリーンに進めていくことをお勧めしたい。


最後に、自社の健康状態を可視化するツールとして、オープンイノベーションプラットフォーム「AUBA」で事業創出にあたって必要となるチェックポイントをまとめたシートを添付しておく。まず状態を知り、実際に実践をスタートする。そのうえでしっかり項目を埋められるようにすすめていくと良いだろう。(解説:eiicon company 代表/founder 中村亜由子)


AUBA オープンイノベーション チェックシート → ダウンロードはこちら

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オープンイノベーションの手引き

eiicon founder 中村が解説!オープンイノベーションを実践する上で必要となるティップスやノウハウを様々なステップに分けて解説します!