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“ニューツーリズム”をテーマに沼津で開催された『Pitch&Meetup! SHIZUOKA STARTUP BAY #3』をレポート!観光・旅に新たな価値をもたらすスタートアップ4社の事業とは?

“ニューツーリズム”をテーマに沼津で開催された『Pitch&Meetup! SHIZUOKA STARTUP BAY #3』をレポート!観光・旅に新たな価値をもたらすスタートアップ4社の事業とは?

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静岡県は2023年9月に「スタートアップ支援戦略」を策定し、スタートアップ支援の機運醸成や関係機関との協働の促進に取り組んでいる。同戦略に基づき、県内産業と関連するスタートアップを広く認知させ、企業や自治体などとの交流を深めることを目的に『Pitch&Meetup! SHIZUOKA STARTUP BAY』を開催している。

このピッチイベントは2023年12月から2024年3月までに3回実施。1回目は「ものづくり」、2回目は「フード・イノベーション」、3回目は、沼津市のコミュニティ施設「ぬましんCOMPASS 3F BUZZ」にて3月5日に開催された。今回のテーマは、「ニューツーリズム」だ。

イベントには以下の4社が登壇。静岡県内の観光資源の活用方法や新しい旅行のあり方を模索すると共に、観光が抱える課題の解決を目指す案などが出され、熱気あふれるピッチが繰り広げられた。

<登壇企業及びスピーカー(登壇順)>

・株式会社ホーン ソロトリクエストディレクター 三浦 賢氏

・株式会社kobachi 代表取締役 矢田 裕香氏

・株式会社キッチハイク こどもと地域の未来総研事業部 統括 坂井 亜優氏

・株式会社ウミゴー 代表取締役社長 國村 大喜氏

なお、前回に引き続き、「共創したい」「後で話したい」と記されたフリップを用意。参加者は、ピッチを聞いた後、登壇企業のサービスやプロダクトが共創につながるのではないかと判断した時は、意思表示のフリップが掲げられた。

今回TOMORUBAでは、『Pitch&Meetup! SHIZUOKA STARTUP BAY #3』の模様を取材。以下にレポートしていく。

※関連記事:

”ものづくり”をテーマに、浜松で開催された『Pitch&Meetup! SHIZUOKA STARTUP BAY #1』をレポート!登壇したスタートアップ5社の革新的なサービスとは?

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魅力的なコンテンツを有する静岡を舞台に、「新たな観光の形」を提案してほしい

冒頭、静岡県 産業イノベーション推進課長 山家 裕史氏が挨拶。「静岡県は本気でスタートアップ支援に取り組んでいる。重点施策は2つで、1つは『結び付ける』、もう1つは『成功事例の創出』。ピッチイベントは前者の施策に付随するもので、西部・中部・東部を舞台にそれぞれ行ってきた。東部は観光にスポットライトを当てており、沼津港や熱海・伊豆の温泉など、魅力的なコンテンツが多くある。ぜひ新しい形の観光を提案してほしい。観光を含め、新しいビジネスは効果が見え始めるまでに時間のかかるケースが多いが、自治体はもちろん、地域の事業者、研究機関、金融機関、投資家たちと力を合わせて、支援を行っていく。」とスタートアップ支援への誓いを新たにした。

【1stピッチ/ホーン】 「ひとり旅」を観光、地域とのつながり創出の起爆剤に

▲株式会社ホーン ソロトリクエストディレクター 三浦 賢氏

同社は「ソロ特化型カンパニー」で「ソロトリ」というひとり旅のプラットフォームの提供などを行っている。近年、「一人」の価値が見直され、一人の時間を大切にしたいと考える人が増加傾向にある。旅行でも一人だと自由に気楽に動き回れる良さなどがある。一方で、一人旅をするきっかけがない、一人用の宿が見つかりづらい、旅先での交流がなかなか深まらないなどの課題もある。

そうした課題を解決するのが、同社の「ソロトリ」である。現在メディアを通じ認知を拡大中で、InstagramやWEBマガジン、アンケート調査などで情報を発信すると共に、データの収集に努めている。中でも、Instagramは急成長を遂げており、開始から1年程でフォロワーが3.7万人に達しているとのことだ。

三浦氏によれば、一人旅の市場は8,310億円に上り、今後もさらなる上昇が期待できるという。静岡県にフォーカスを当てると、一人旅で訪れる人の割合は全体の14%。ただ、複数人や団体で訪れた方が、別の機会に一人で足を運ぶ可能性もある。一人旅のニーズの高まりをあわせて考慮すると、「一人旅は自治体観光の起爆剤になる」と三浦氏は強調する。他方、観光施策には謎解きやグルメイベント、スタンプラリー、ガイドツアーなどあるが、アイデアが枯渇しているのではないかと疑問を呈した。さらに、誘致する対象が定まっておらず、効果的な呼びかけができていない現状も指摘。その上で、「一人旅であれば、ターゲットも明確で、効果的なアプローチもできる」と説く。

一人旅の新しいアプローチとして、ミッションやストーリーを加えた旅を提案する。具体例として「もう恋なんて、しないなんて、言わない!伊豆山神社で猪目(ハート)を見つけてきて!」「沼津バーガーで秘密の合言葉を伝えて裏メニューを食べてきて!」などが挙げられた。こうしたミッションやストーリーは一人旅を志向するユーザーの誘致につながると共に、地域とのつながりも生みやすく、PRになる。

また、コンテンツに関しては、地域の事業者やユーザーからのアイデアを募る仕組みだ。このため、自治体が頭を悩ませる必要はない。ソロトリは愛知県や広島県、東京都内で一部実施されている。ソロトリをきっかけに将来的には、様々なコンテンツのソロ化に着手したいと話す。三浦氏は静岡県内での展開を目指すと共に、「ソロNo.1カンパニーになる」と意気込みを見せた。

【2ndピッチ/kobachi】 お茶と睡眠の掛け合わせで、最高の睡眠体験を提供

▲株式会社kobachi 代表取締役 矢田 裕香氏

同社はフードロス解決型の商品開発コンサルティング事業を中心に手がけている。今回提案したのは、茶葉(tea)と睡眠(sleep)を掛け合わせた「téleep」(テリープ)と銘打った事業だ。矢田氏は静岡県の出身で都内に勤務していたが、帰省した時に耕作放棄地となっている茶畑を目の当たりにして心を痛め、茶を主軸にした事業を興す決意をしたという。

矢田氏によれば、静岡県内には茶産出額が30年で64%減少している地域があり、荒茶の平均買取価格は10年前と比較して25%低下した。お茶産業は厳しい状況が続いている。従来通りの手法では巻き返しが難しいと、矢田氏が着目したのがお茶のうまみ成分「テアニン」である。

テアニンは脳をリラックスさせる効果があり、起床時の疲労回復や熟睡を促すなど、睡眠の質を向上させる効果がある。機能性表示食品として扱うことができ、ドラッグストアにはテアニンの効能を示す商品が並んでいるものの、お茶とは関連付けられていない。

現在、睡眠の注目度は高まっており、市場は拡大している。同社ではお茶と睡眠の関係を啓蒙しながら、お茶を嗜好品の一つから、高付加価値の商品へと転換することを考えた。その思いの表れが「téleep」という事業名でありブランド名だ。食品事業と絡めるなどしながら、茶葉を高価格で多く売ると共に、茶畑を観光資源にすることを目指した。

同社は世界的なトレンドになっている「スリープツーリズム」を展開することを試みる。独自のスリープツーリズムとして打ち立てたのが「茶畑の中で、最高の睡眠体験」をすることだ。そして、茶畑ではない場所であっても茶畑で眠っているような香りや視覚を作る「téleep room」を展開したいと話した。同案は既に実証実験が進行中で、参加者からは好評を博していることなどが伝えられた。

矢田氏は「お茶と睡眠を掛け合わせた最高の睡眠体験をできる宿泊施設を増やし、個人向けのインバウンド、社員向け団体ツアー、食品などを通して集客を図りたい。目指すのは世界で最もよく眠れる町。」と熱く語った。

【3rdピッチ/キッチハイク】 独自の「保育園留学」でその土地の良さをそのままに体験

▲株式会社キッチハイク こどもと地域の未来総研事業部 統括 坂井 亜優氏

同社は「地域を未来の先駆者へ。」を掲げ、地域が抱えている課題と向き合っている。地域創生のパートナーとして伴走しながら、独自の「保育園・小学校留学」の調査・計画、実装までを行っているという。現在までに約40の自治体で保育園留学を実施したほか、3年間で120以上の地域と連携しさまざまな事業を展開している。

同社の手がける保育園留学・小学校留学は「こどもは地域の保育園・小学校に通い、親はリトリートやテレワークをしながら、家族で1~2週間暮らせる地域体験プログラム」だ。都心部に住む30~40代を主なターゲットとし、都会から離れた、主に過疎地域での自然に囲まれた生活体験などを提供する。

坂井氏によれば、「地域の複数課題を一度に解決することができる『一撃必殺の事業』。地域と共に持続可能な事業を築くことで、子どもたちが明日を生きる未来を創造する。」という。

保育園留学は北海道厚沢部町で始まった。同町は人口約3,500人で、特別な観光資源や宿泊施設はない。一方で、都心部の家族から見れば魅力が多いはずと考え、同町にとっては当たり前のものをパッケージ化して提供。イベントなどの実施もない。これにより、地域としては負担なく「留学」する家族を受け入れることができると共に、関係人口が増え、経済効果をもたらすことができる。

厚沢部町では現在、年間150組の家族を受け入れており、リピート率は95%にも上るという。1回の留学で1家族がもたらす経済効果は20~40万円。これまでに4組の家族が移住をしていることも伝えられた。

保育園留学は静岡県内を含む全国40拠点実施されており、海外から参加する留学家族も増えている。さらに、教育現場における保育士不足が深刻な課題である地域に向けて、保育士体験をしながら地域暮らし体験ができる、ミドルシニア層向けの地域貢献型滞在プログラムもスタートした。地域の課題解決に当事者目線で向き合うことで、幅広いターゲット層からの潜在ニーズを呼び起こしている。坂井氏は「保育園留学はツーリズムの新しい価値を呼び起こすことで多方面から評価され、教育面での評価も獲得している。保育園留学を軸にして、地域の課題解決を図りながら、新しい未来を創造したい」と意気込んだ。

【4thピッチ/ウミゴー】 釣り人が漁港を支える仕組みを構築

▲株式会社ウミゴー 代表取締役社長 國村 大喜氏

同社は代表の國村氏と、静岡県西伊豆町役場に勤める松浦城太郎氏が協力しながら事業を展開している。同社がスタートしたのは、2022年7月に田子漁港で釣りが禁止されたことを発端とする。國村氏は同年6月に西伊豆町に移住していた。もともと釣りを趣味にしており、同漁港で釣りを楽しもうとした矢先の出来事だったという。國村氏によれば、国内の多くの漁港で釣りが禁止されており、こうした事態を解決すべく、漁港釣り場の予約アプリ「海釣りGO」をローンチした。

國村氏は釣り禁止の背景には社会的な問題があると指摘する。もっとも大きな問題は、釣り場に収入を得る仕組みがないことだと話す。漁港に使用料の設定はなく、釣り場を汚しても指導されることはほとんどない。

他方、川釣りを行うには「遊漁券」の購入が求められており、これはアユ、渓流魚、コイ、ワカサギなど漁業権魚種を釣るには許可が必要だからだ。この結果、遊漁券から得た収入を管理費などに充てることができ、持続可能な状態が成立している。

海の場合はイセエビやアワビなど、釣りの対象とはならない魚種に漁業権が付いている。また、海釣りを楽しむための海釣り公園もあるが、初期投資が莫大にかかるため、小規模な漁港は真似ができない。このほか、清掃協力金・駐車場代を設けている箇所もあるが、運営主体が明確でないことも多く、不透明さが残る。

こうした事態を鑑み、生み出されたのが小規模な漁港でも負担なく導入できる「海釣りGO」だ。アプリのため、管理費用がほとんどかからない。釣り人はアプリ上で漁港の使用や駐車場を予約する。その際に、協力金の支払いを求めると共に、漁港利用のガイドラインを示して順守を促す仕組みだ。

國村氏は「漁港を使用するのに組合員は組合費を支払っている。釣り人が使用料を支払うのは当然であり、ここに着目したのがイノベーティブなところだ。」と強調する。アプリが使用されているかどうかは、巡視員が釣り人に声をかけながら確認する。巡視員は地元の雇用創出につなげる狙いもある。

「海釣りGO」は田子漁協の協力を得ながら実証実験を進め、3,396,561円の売上を計上することができた(2022年7月31日〜2023年2月29日)。売上の7割は地元に還元され、釣り人が漁港を支える流れを確立させたいと意気込む。今後、海釣りGOの全国展開を目指すと共に「釣りはもちろん、漁業の体験、海遊びなど、海のアクティビティを持続可能にするのが当社のミッション」と熱弁を振るい、ピッチを締めくくった。

――なお、静岡県のスタートアップ支援施策として、ピッチイベントと共に進められている、「静岡県主催スタートアップビジネスプランコンテスト WAVES」の最終審査会が3月26日にグランシップ(静岡市駿河区)で開催される。優勝賞金1,000万円の「目撃者」になってほしいと来場者に呼びかけられた。

また、イベント後はネットワーキングの時間が設けられた。参加者同士で活発な議論が行われ、交流が深められた。

取材後記

海や山、港、温泉、丘陵地、歴史など静岡県は観光資源が豊富な県である。そうした観光資源をさまざまな形で活かせると、ピッチを通じて良く知ることができた。一方で、ポテンシャルを十分に発揮できていない面もあるだろう。その意味で、これからの発展への期待も大きい。静岡県のスタートアップ支援は始まったばかりだが、秘めた可能性は先行する他の自治体に比べても勝るとも劣らないものがある。これからどのようなスタートアップが誕生し、どんなイノベーションが起こるか。期待は高まるばかりだ。

(編集:眞田幸剛、文:中谷藤士、撮影:加藤武俊)

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