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”ものづくり”をテーマに、浜松で開催された『Pitch&Meetup! SHIZUOKA STARTUP BAY #1』をレポート!登壇したスタートアップ5社の革新的なサービスとは?

”ものづくり”をテーマに、浜松で開催された『Pitch&Meetup! SHIZUOKA STARTUP BAY #1』をレポート!登壇したスタートアップ5社の革新的なサービスとは?

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静岡県は将来の雇用、所得、財政を支える新たな担い手となりうるスタートアップへの支援に取り組む姿勢を明確化し、スタートアップ支援の機運醸成、関係機関との協働等を促進するために、2023年9月に「静岡県スタートアップ支援戦略」を策定した。

同戦略に基づき、県内産業と関連するスタートアップを広く認知させ、企業や自治体などとの交流を深めることを目的に『Pitch&Meetup! SHIZUOKA STARTUP BAY』を開催。ピッチイベントは2024年3月までに全3回を予定しており、2023年12月22日に実施された1回目は浜松市内の「Co-startup Space&Community FUSE」で”ものづくり”をテーマに、以下の5社がピッチに挑んだ。

<登壇企業及びスピーカー(登壇順)>

・Sotas株式会社 代表取締役 吉元 裕樹氏

・株式会社knewit 代表取締役 小川 直哉氏

・codeless technology株式会社 代表取締役・CEO 猿谷 吉行氏

・bestat株式会社 代表取締役社長 松田 尚子氏

・エイトス株式会社 代表取締役 嶋田 亘氏

今回TOMORUBAでは、『Pitch&Meetup! SHIZUOKA STARTUP BAY #1』の様子を取材。以下にレポートしていく。

ピッチだけではなく、高額賞金を用意したビジコンも。静岡県が取り組むスタートアップ支援の本気度

冒頭、静岡県 経済産業部 部長代理の田中伸弘氏が挨拶。「静岡県西部地区は古くからものづくりが盛んに行われ、今でいうスタートアップが活発に事業を展開した。その結果、世界的な企業が複数、輩出されている。言ってみれば、スタートアップの聖地。この地で1回目のピッチイベントが開かれるのはとても感慨深い。これからどんな新しいことが生み出されるか。ワクワク感を持って発表に耳を傾けたい」と述べた。

▲静岡県経済産業部 部長代理 田中 伸弘氏

また、静岡県のスタートアップ支援施策として、ピッチイベントのほか、ビジネスプランコンテスト「WAVES」が進められていることにも言及。同コンテストの最大の特徴は賞金が高額なことだ。1位は1,000万円。2位500万円、3位300万円と続く。エントリーは既に受け付けられており、プログラム説明会には250件以上の申込があったという。事務局からのフィードバックが受けられる1次締切は1月12日。最終締切は1月29日となっている。奮って応募してほしいと呼びかけた。

――次からは、スタートアップ5社のピッチの模様を登壇順に紹介していく。

【1stピッチ/Sotas】 化学業界のサプライチェーンを変える

▲Sotas株式会社 代表取締役 吉元 裕樹氏

同社は化学業界に特化したSaaSを提供している。目指しているのは、素材のプラットフォームの構築だ。中でも、サプライチェーンに着目する。吉元氏によれば、化学業界は他の業界と比較して変革が遅れている。こうした中、サプライチェーンを変えることが業界全体の変革の一歩となり、ひいては「資源循環社会に資することになる」と強調した。

特に同社が力を入れて取り組んでいるのが、「化学物資調査」に関するサービスだ。化学系の素材を流通させる場合、一般の商品と異なり、法令などによってその素材がどんな性質を持っているのか、その都度、確認する必要があるという。しかも、こうした煩雑な作業を人の手で行っているため、膨大な時間がかかる。サプライチェーンの効率を大きく低下させていることは間違いないと言える。

この状況を打破すべく、注力しているのがまさに素材プラットフォームの構築だ。「Sotasのデータプラットフォームを利用すれば、素材に紐づく物性や成分、法規制情報、セーフティデータシート、テクニカルデータシートなどの専門書類が瞬時に手に入る状況を作りたい」と吉元氏は理想を描いた。一方、一つのサービスで理想の状況を作り出すのは難しい。同社では複数のサービスを展開させながら、さまざまなデータを複数の観点から収集し、それらを組み合わせ、新たな価値を提供しているとのことだ。

同社がなぜ静岡県で事業展開を視野に入れるのか。その理由を「プラスチックなどの化学品を扱う製造業が盛んであり、大手企業も多い。Sotasのデータプラットフォームはいち企業の個別最適に留まらず、大手企業とアライアンスを組み、プラスチックを循環させるような全体最適の経済モデルを静岡県から発信したい」と語り、今後の展開に意気込みを見せた。

【2ndピッチ/knewit】 ものづくり現場への荷物の納入に変革を

▲株式会社knewit 代表取締役 小川 直哉氏

knewitは物流テック領域のスタートアップだ。一口に物流と言っても幅広いが、同社では工場に荷物を搬入することに特化した物流管理テクノロジーを提供している。工場はあくまで物を作る場であるため、納入には適していない。表には出てこない制約やルールがあるケースも多いという。例えば、搬入の場所や時間、荷物の取り扱い方が細かく決められていることなどが挙げられる。それに対して、ドライバーや物流会社は言ってみれば「職人芸」で物を運ぶ。このため、熟練のドライバーでないと業務に対応できないケースもあるそうだ。そうした課題の解決を同社は目指している。

同社は本社を東京に置き、浜松市内にも拠点を構える。その理由を小川氏は「ものづくりが盛んで、かつトラックの保有台数が多く、事業の価値を最も発揮できる場所だと考えたから」と伝えた。さらに「物流の問題は物流会社だけのものではない。サプライヤーとして物を作りだす企業などが一体となり、問題を解決していかねばならない」と強調し、同社の手がけるソリューションもその考えに基づいていると解説した。

同社の手がけるソリューションは「納入カルテ」と呼ばれるもので、納入に必要な情報をデジタルの地図上に埋め込むことができる。現場のドライバーというよりは管理者側が使うことを想定しており、暗黙知だったものを形式知化して現場に伝える。さらに、現在ではメーカーや商社など、物流会社に業務を依頼する側にも導入を広め、物流の一層の最適化を試みている。小川氏はメーカーや商社、物流企業に同サービスの導入を呼びかけると共に「物流の課題は、地域・社会のものづくりを維持するための課題でもある。行政・金融機関とも連携を深めたい」と熱弁を振るった。

【3rdピッチ/codeless technology】 既存の書類のデジタル化を通じ、データ収集からDXの実現を

▲codeless technology株式会社 代表取締役・CEO 猿谷 吉行氏

同社は「Photolize(フォトライズ)」というサービスを提供している。同サービスは、業務報告書などの書類を写真撮影すると、AIによって入力フォームが自動生成されるというものだ。つまり、現場のスタッフはこれまで慣れ親しんだ形式のまま、タッチペンなどでデジタル入力が可能になる。しかも、デジタル入力することで計算などが自動で行えるようになるため、大幅な業務効率化が図れる。同社によれば、これまで60分かかっていた安全点検の書類作成を5分に短縮した事例もあるという。加えて、多言語にも対応しており、Photolizeで生成された書類は他の言語に変換できる。外国人労働者の受け入れもサポートされる仕組みだ。

同社はPhotolizeを通じてDXを推進したいと強調する。同社はDXを「データ・トランスフォーメーション」と捉えており、「データを活用して新しい価値を生み出すこと」が真のDXだと強調する。Photolizeは単に書類をデジタル化するだけにとどまらず、管理者側からするとデータ収集の側面を持っている。つまり、現場のスタッフにこれまで通りの入力業務を行ってもらいながら、データベースを構築していることになるのである。

同社は静岡県内の起業家などのコミュニティ「FUSE」の会員となるなど、静岡県内での活動も活発だ。猿谷氏は「静岡県内の製造現場でエコシステムを作り、海外展開も果たしたい」と話す。その上で、「現場のIT格差をなくして活躍できる環境」「IT担当者に頼らなくても取り組めるDX」「現場の言語、文化等のさまざまな壁をとりのぞく」「未経験者・未熟練者が挑戦できる環境を創る」「カーボンニュートラルの実現」の5つを実現させたいと語り、新しい未来の創造に向け意気込んだ。

【4thピッチ/bestat】 3Dモデルを一気通貫・シンプル・高品質に作り上げ、3Dデータの普及を促す

▲bestat株式会社 代表取締役社長 松田 尚子氏

bestatは人工知能研究で著名な東京大学の松尾豊教授を技術顧問に迎えるなど、AIについて高い見識を持ったメンバーが集まったスタートアップである。中でも、「3D×AI」という珍しい分野で高度な知見を有し、複数のファンドから出資を受けている。そうした同社が提供しているのがクラウドサービス「3D.ai」だ。物体の位置や動きをXYZの3D空間で把握する技術が使われており、3D空間で動くロボットの目に使用されることが多いという。また、同技術を活かして3Dモデルを制作することなどができる。それも、一つのソリューションで短時間・高品質に3Dモデルを創り上げることが大きな特徴となっている。

3Dモデルは製造業で欠かせないデータの一つで、近年ではゲームの作成などでも多く活用されている。一方で、抱える課題も少なからずある。もっとも大きな課題はモデル数が少ないことだ。通常、3Dモデルは人の手で作成される。専用のソフトウェアを使い、一から作り上げる。センサを活用する方法もあるが、センサでの撮影、撮影データを専門スタッフが3Dモデルを軽量化するなどの工程が必要になり、時間と労力がかかるのが現状だ。

こうしたプロセスをシンプルにできるのが3D.aiだ。3Dモデル制作の具体的な手順は、スマートフォンで物体を撮影、クラウドにデータを上げる――これだけで済む。同社によれば3Dモデルの制作時間が60%もカットされたという。撮影データがクラウド上で処理されて、3Dモデルが出力される仕組みで、そのままの使用も可能であり、販促などに用いる場合は美しく見せるための補正処理もできる。自社商品に限らず、さまざまな物体を3Dモデルにできるため、コンテンツリッチなデジタルツインが実現されるのも特徴の一つだ。

同社では3D.aiを有償で公開し、オープンリリースとする予定。既に企業から利用の申し込みを受けているという。松田氏は「白黒映像がカラーになり、3Dで動き出している。2Dが3Dになるのは歴史の流れ。当社はあらゆる人が3Dデータを使えるようにしたい。そのために、静岡県内の企業とぜひ協働させてほしい」と熱く語った。

【5thピッチ/エイトス】 改善活動を脱炭素につなげ、現場の創造性にスポットライトを当てる

▲エイトス株式会社 代表取締役 嶋田 亘氏

エイトスは改善提案のクラウドサービス「Cayzen(カイゼン)」を提供している。同社が特に着目しているのが、改善提案やQC活動だ。改善提案は工場などの製造現場で働くスタッフから改善提案を集め、管理者が評価やフィードバックを行う。必要に応じて実際に改善を実施して、その効果を経営に活かす仕組みだ。改善そのものはもちろんのこと、教育やモチベーションアップの意味合いも大きいという。現状、大手製造業でも紙を用いるなどアナログな手法で行っていることがほとんど。同社のCayzenは、現場のアイデア集めから、管理者の評価、フィードバック、効果の可視化までワンストップでサポートするソリューションだ。

同社がCayzenを通じて狙うのが、省エネとCO2削減。同社によれば、省エネとCO2削減について、これまで多くの製造業ではCO2の排出や消費電力量の可視化を終えているが、CO2削減の実施は手探りの段階とのこと。こうした状況の中、改善提案やQC活動が、省エネとCO2削減に大きく貢献するという。同社によれば、電気代やCO2削減について、最も効果的なのが改善活動。年間3%削減の実績もあると言い、再エネ投資に換算すると数億円にも上る試算もあるとのことだ。

一方で、電力量やCO2削減量の計算は複雑なため運用が難しく、レポーティングなども必要になる。このため現場が主導で行うのは困難だが、そのソリューションとなるのがCayzenである。現場のスタッフはこれまで通り改善提案を行い、Cayzenが電力量やCO2の削減を計算する。さらにより良いアイデアが提案されるようAIからフィードバックが行われる仕組みとなっている。従来の見える化ソリューションは過去や現在の実績を対象としているが、Cayzenは将来的にどのくらい電力量やCO2を削減できるかを予測する。見える化ソリューションと組み合わせて使うことで、効果の予実管理も可能になると強調した。

この取り組みは大手製造業に広まりつつあるという。その上で、嶋田氏は「今後、Cayzenの取り組みを通じて得たノウハウを中小・中堅企業などに広め、カーボンニュートラルに貢献すると共に、改善カルチャーを世界に広げたい。改善活動という現場の方の創造性にスポットライトが浴びるようになれば嬉しく思う。カーボンニュートラルの実現に改善活動を応用するというアプローチでディスカッションしたい」と述べ、ピッチを締めくくった。

――ピッチの後はネットワーキングが実施され、「静岡県を舞台に新たな事業に挑みたい」という熱い思いを持つ者同士が、活発に意見交換を行った。非常な盛り上がりを見せ、新たな未来を期待させるものとなった。

取材後記

静岡県西部地区には、スズキ、ヤマハ発動機、ホンダをはじめ、河合楽器、ヤマハなど世界的にも著名なメーカーがずらりと並ぶ。いずれの企業も元はスタートアップで、独自のものづくりを行いながら日本国内はもちろん、世界へと羽ばたいていった。スタートアップの聖地というにふさわしいだろう。かつては世界から称賛された日本のものづくりだが、今はグローバルでイニシアティブを取っているとは必ずしも言えない。変革が求められている。ピッチで紹介されたソリューションはものづくりを変える力を秘めているものだったと感じる。静岡県からどのようなイノベーションが起こるか。注目である。

(編集:眞田幸剛、文:中谷藤士)

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