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“フード・イノベーション”をテーマに開催された『Pitch&Meetup! SHIZUOKA STARTUP BAY #2』をレポート!食品業界の課題解決を目指すスタートアップ4社のサービスとは?

“フード・イノベーション”をテーマに開催された『Pitch&Meetup! SHIZUOKA STARTUP BAY #2』をレポート!食品業界の課題解決を目指すスタートアップ4社のサービスとは?

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2023年9月に「静岡県スタートアップ支援戦略」を策定した静岡県は、スタートアップ支援の機運醸成や関係機関との協働の促進に取り組んでいる。同戦略に基づき、県内産業と関連するスタートアップを広く認知させ、企業や自治体などとの交流を深めることを目的に『Pitch&Meetup!SHIZUOKA STARTUP BAY』を開催している。

このピッチイベントは2023年12月から2024年3月までに全3回を予定。1回目は「ものづくり」をテーマに浜松市内で開催された(※)。そして、2回目のテーマは「フード・イノベーション」。2月1日に静岡市葵区のイノベーション拠点「SHIP」で実施された。

以下の4社が登壇し、食品業界の抱える、人手・後継者不足、静岡県産食品の認知拡大、原材料の高騰、廃棄物などの課題を地域と共に解決すべくピッチに挑んだ。

<登壇企業及びスピーカー(登壇順)>

・株式会社picks design 代表取締役 松浦 克彦氏

・株式会社JOYCLE 代表取締役社長 CEO 小柳 裕太郎氏

・株式会社フューチャースタンダード 代表取締役 鳥海 哲史氏

・S-Bridges株式会社 CTO 佐野 吉彦氏(静岡大学准教授)

今回TOMORUBAでは、『Pitch&Meetup! SHIZUOKA STARTUP BAY #2』の様子を取材。以下にレポートしていく。

※関連記事:”ものづくり”をテーマに、浜松で開催された『Pitch&Meetup! SHIZUOKA STARTUP BAY #1』をレポート!登壇したスタートアップ5社の革新的なサービスとは?

静岡は、新しい試みを行うのにふさわしい場所

冒頭、静岡県 副知事の森貴志氏が挨拶。「新しい産業を生み出すには、実験・実証・実装が必要になる。静岡県は自然、農業、漁業、工業、交通、立地などの面に優位性があり、新しい試みを行うにはふさわしい場所。静岡県からこれまでにない産業を生み出すと共に、この地で新たな産業をスタートさせ、時代の中心にしたい」と意気込んだ。また、静岡県 くらし・環境部 環境局 廃棄物リサイクル課 後藤星菜氏から、県が積極的に食品ロスの削減に取り組んでいることが伝えられた。

▲静岡県 副知事 森 貴志氏

このほか、ピッチに先立ち、SHIPスタートアップ相談員の北川朝輝氏から、会場となったSHIPについて説明があった。同拠点はトップレベルICT人材の育成や交流、イノベーション創出などを目的に2023年3月に開設され、2023年12月にスタートアップ支援機能が新たに加わった。コミュニティマネージャーと相談員が常駐しており、事業創出、資金調達、マッチングなどの相談ができる。スタートアップはもちろん、起業を目指す方なども相談可能。施設は会員登録後、無料で利用することができる。会員数は開設1年未満ながら既に1,500人を突破しているとのことだ。北川氏は「ぜひ気軽に立ち寄ってほしい」と会場に呼び掛けた。

なお、静岡県のスタートアップ支援施策として、ピッチイベントのほか、ビジネスプランコンテスト「WAVES」が進められている。3月26日に最終審査が開催される予定だ。

また今回の『Pitch&Meetup! SHIZUOKA STARTUP BAY #2』では、登壇企業のサービスやプロダクトが共創につながるのではないかと判断した時は、ピッチ後に意思表示の札を掲げるという新しい試みが実施された。参加者は司会者の掛け声を合図に「共創したい」「後で話したい」と記された札を掲げた。

【1stピッチ/picks design】 生産者、地域の魅力を食べ物と共にお届け

▲株式会社picks design 代表取締役 松浦 克彦氏

同社は「デザイン体験で地域を主役に」をミッションに掲げ、現地でしか手に入らない食べ物と地域の観光ブックが届く、サプライズ定期便「そのとちぎふと」を展開している。「2023年度グッドデザイン賞」を受賞した実績を持つ。

そのとちぎふとは「食べる前に15分読むだけで2倍美味しい」がテーマだ。生産者の思いや情報、食べ物にまつわる物語、地域の観光、美味しい食べ方などが1冊の本にまとめられている。本を通じ、送られてきた食べ物に興味を持つのはもちろんのこと、同時にその地域に魅力を感じてもらうのも大きな狙いだ。定期便は評判となり、複数のメディアに取り上げられている。また、解約率は1桁代と極めて低く、利用者の高い満足度も窺うことができる。

そのとちぎふとの実例として、愛知県設楽町が紹介された。同町では、2023年2月に行政を通じて生産者の紹介を受け、同年4月にはスピーディにサービスが開始された。生産者からは「普段PRに力を入れることがなかなかできないが、『そのとちぎふと』を利用することで、接点のなかった新しい顧客が獲得できた。また、これまでにない表現で商品の魅力を伝えてもらえた」などの声が挙がったという。

ビジネスモデルは、ユーザーがサブスクリプションとして利用し、その収益の一部を生産者に還元。別途、食べ物は生産者から直接送られる。松浦氏は「今後、静岡県産の食べ物の認知の拡大と、売上向上に向け、地域と連携を取っていきたい。さらに将来的には生産者がもっと情報を気軽に発信できるプラットフォームを作りたい」と意気込みを見せた。最後に、震災のあった能登半島のフグを扱っていることにも触れ、漁などの再開に伴い、随時商品を発送予定であると、参加者に利用を呼び掛けた。

【2ndピッチ/JOYCLE】 ゴミを資源に変え、環境への貢献度を可視化

株式会社JOYCLE 代表取締役社長 CEO 小柳 裕太郎氏(※オンラインでピッチを実施)

同社は「資源と喜び(JOY)が循環(CYCLE)する社会を創造する」をミッションに、小型アップサイクルデータプラットフォームサービスを展開している。資源化に加え、データ収集・活用によるゴミ処理の最適化・環境貢献度の可視化を行う。目指しているのはゴミを資源に変え、アップサイクルが日常になる社会である。

小柳氏は資源不足が大きな問題となる一方で、資源になるゴミが遠くに運ばれて燃やされているケースが多いと指摘する。特に地方・離島で顕著で、働き手不足から産廃処理コストも上がっているという。さらに自治体の税収減で、焼却処分施設などの新規投資やメンテナンスが困難になっている背景もある。既存の小型ごみ資源化装置メーカーも存在するが、コストカットや脱炭素などの環境効果、再生エネルギーに関するデータなどを可視化・客観評価できるプレイヤーがいないのが現状だ。

そうした課題を解決するために生み出されたのが、同社のデータプラットフォームサービスJOYCLE BOARDである。特徴として大規模な施設へのゴミ収集が不要となり運ばず、燃やさず、資源化することによるコストカット効果・脱炭素効果・それらに紐づくESG貢献効果を可視化。さらに装置のオペレーション最適化も行う機能を備え、現場オペレーション人件費の削減にも役立つ。分散型インフラによる環境貢献度をPRすると共に、CO2排出権を販売して新たな収益源を作ることも大きな狙いだ。

同社では特許出願を済ませ、環境データの信頼性を担保するため、某国立大学と連携している。さらに、業界で実績のある産廃事業者、自治体、装置メーカーとも連携し、拡大に向けての準備が着々と進められている。

小柳氏は「各企業様の産廃処理のデータを見ながら、どんなことができるか検討したい」と述べた。さらに「食品業界は水分を多く含んだ難燃性の高い廃棄物が多く、その処理は自治体焼却炉の負担にもなっていると考えられる。分散型インフラの使用で、自治体の焼却施設の負担を減らせるはず。大学とも連携してそのデータを取得・可視化し、公共インフラの政策提言につなげられればと思う」と伝えた。

【3rdピッチ/フューチャースタンダード】 画像解析とAIで、農地を自動監視

▲株式会社フューチャースタンダード 代表取締役 鳥海 哲史氏

同社は最先端の映像解析AIを誰でも使えるようにとの思いから、映像解析プラットフォーム「SCORER(スコアラー)」を開発した。最先端テクノロジーを活用した最速・最適の実装力と環境構築からサービス実装までをトータルサポート。世界への「ミライノフツウ」の提供を目指している。

同社が得意としているのは、画像解析と生成AIだ。映像解析では、例えば、自動車の交通量や買い物客が店内でどのような動きをしたかを計測することができる。人の動きを立体の3Dで捉えることも可能だ。生成AIでは、画像やイラスト、写真を生成することはもちろんのこと、漫画を描くことも可能という。また、音声を文字にすることも生成AIができることの一つで、同社ではセキュリティにも十分に配慮された会議支援のソリューションも生み出した。

こうした同社の技術は既に多くの実績を重ねており、静岡県内の大手メーカーやスーパー、病院、公共施設などとの協業も進んでいる。具体的には、レシートプリンター×AIカメラ、LED監視自動化、欠品の発注、非接触の体温測定、混雑具合の可視化などだ。静岡県の企業ではないが、フード分野で工場のDXを試みた実績もある。米菓の製造において、今まで人の手で行っていた温度や水分の計測を自動化。さらに欠品の判定についても導入を進めているという。いずれも安価なカメラを用いて実現可能なところも大きな特徴の一つだ。

同社では今後行ってみたいこととして、農地の監視を取り上げた。農業は個別性が高く、基本的には人の手がかかる。鳥海氏は「ソーラー電源と組み合わせれば、電源なしでもカメラの使用を継続できる。さらに生成AIで、育成や荒天、獣害などの状況を把握。人が問い合わせると、AIが理由を含め適切に回答する。こうしたことは漁業でも応用は可能なはずで、ぜひ挑戦したい」と意気込んだ。

【4thピッチ/S-Bridges】 大学の持つコア技術で、循環型社会の創出を目指す

▲S-Bridges株式会社 CTO 佐野 吉彦氏(静岡大学准教授)

同社は学術会と産業界の融合でイノベーションやサプライズの創造をパーパスに掲げる静岡大学発のスタートアップである。静岡大学が保有するシーズから社会課題を解決する事業を生み出すことが創設の目的。サーキュラーエコノミーの実現に向けて、独自の「Cell Breaker」とAIを活用しながら循環経済構築のプラットフォームを創出し、タンパク質危機、Co2削減、フードロス軽減といった課題の解決を目指している。

現在、注力しているのが環境事業の「バイオマテリアルトランスフォーメーション事業」だ。Cell Breakerは農作物から植物性の成分を全抽出できる。例えば、茶から、繊維、たんぱく質、カテキン、カフェインなどを抽出することが可能。近年、植物性の原料が見直されている傾向にあり、同社では興味を持つ企業と共同で開発を進めている。その他、さまざまな相談を受けることがあり、その都度、大学の持つシーズやCell Breakerの活用をチームで話し合っているが、今後はAIが回答を導き出す仕組みを整える。

さらに、商品化を視野に入れた協業先とのマッチングもAIで行う予定だ。環境事業というとマネタイズが困難という側面もあるが、着実な収益化を視野に入れて活動しているのが同社の特徴と言える。

具体的な事例として、静岡県の名産で静岡大学でも熱心に研究している茶に関する取り組みが紹介された。企業では、茶殻の処理に問題を抱えるケースが少なくない。そこで、Cell Breakerを活用したんぱく質を抽出して、新商品を開発。静岡県をたんぱく質の供給基地にして、たんぱく質危機を回避することを発想した。そうすることで値が付かない茶葉も活用され、農家の収益アップにもつなげることができる。新たな市場が作り出せれば、最終的にはゼロエミッションを叶え、循環型社会も実現されると見通す。

同社では既に複数のメーカーと協業が進められている。佐野氏は「2029年にIPO、売上100億円を目指している。静岡県、静岡大学に新しいビジネスの創造を手がける団体がいることをぜひご記憶願いたい」と熱く語り、ピッチを締めくくった。

――なお、前述したように、今回の『Pitch&Meetup! SHIZUOKA STARTUP BAY #2』では、各社のピッチ後に「共創したい」「後で話したい」の札が上がり、会場は盛り上がりを見せた。

また、ピッチ後はネットワーキングの時間が設けられ、「静岡県で食品業界の抱える課題を解決し、取り組みを全国に広げたい」との思いから、熱心にディスカッションなどが繰り広げられた。静岡県 副知事の森氏も参加し、スタートアップや県内企業など様々なプレイヤーと意見交換を行い、これまでにないイノベーションの創出を予感させるイベントとなった。

取材後記

食品業界は、歴史の古い産業であるため変革が進んでいない現状もある。人手・後継者不足、原料高、フードロス、流通、廃棄物処理など、抱える課題は少なくない。今回の共創の舞台となる静岡県は食が豊富にあることでも知られる。お茶やわさび、しらす、桜えび、マグロをはじめ、うなぎ、みかん、いちごなどが有名だ。フード・イノベーションを起こすにふさわしい地と言える静岡で、どんな共創が行われ、どのようなサービスや商品が生まれるだろうか。ピッチに集った4社はいずれも新規性や創造性に優れるスタートアップぞろいだ。これからの展開に期待したい。

(編集:眞田幸剛、文:中谷藤士、撮影:加藤武俊)

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