withコロナに「リベンジ消費」は訪れるか?消費者の“意向”と実際の“動向”からわかること
新規事業やオープンイノベーションのプレイヤーやそれらを実践・検討する企業の経営者はTOMORUBAの主な読者層ですが、こうした人々は常に最新トレンドをキャッチしておかなければなりません。そんなビジネスパーソンが知っておきたいトレンドキーワードをサクッと理解できる連載が「5分で知るビジネストレンド」です。キーワードを「雑学」としてではなく、今日から使える「知識」としてお届けしていきます。
今回ピックアップするのは「リベンジ消費」です。コロナ禍に突入してから2年以上が経過し、徐々にwithコロナ / afterコロナ の兆しが見えてきています。パンデミックのリスクがある程度見通せるようになったら、消費が戻ってくるのかは多くの人が気にしているところでしょう。
専門家の分析や、コロナ禍の消費動向のファクトから、今後リベンジ消費がどのように起きてくのかを考察していきます。
リベンジ消費とはコロナ禍以前を上回る経済活動の急回復
リベンジ消費(報復性消費)とは、非常時において抑制された消費(強制貯蓄)が、正常化と共に一気に取り崩されて消費が爆発的に回復することを意味します。コロナ禍が収束し、withコロナ / afterコロナへ向かいつつある昨今でも、リベンジ消費に対する期待が高まっています。
専門機関の調査で、今のところリベンジ消費の意向は限定的
国内では、2021〜2022年の年末年始に第6波が始まる前までは感染状況が落ち着いていました。その間にどれだけ消費が回復したかを分析することで、リベンジ消費にどのような傾向があるか予測することができます。
年末年始のリベンジ消費について、野村総合研究所と第一生命経済研究所は調査を発表しています。両者は国内のリベンジ消費についてどのように見ているのでしょうか。それぞれの所感を以下に引用します。
引用:リベンジ消費は起きているのか? ~家計調査の品目別・日別データからみる緊急事態宣言明けの消費動向~ | 星野 卓也 | 第一生命経済研究所
このように現時点では、消費全体で見るとリベンジ消費への期待は薄いことがわかります。
コロナ禍完全収束後も、各活動のリベンジ消費意向は低い調査結果
野村総合研究所の「コロナ禍完全収束後における各活動への支出意向」の調査結果では、「コロナ禍以前よりもさらに多くする」と回答されたのが多かった活動は旅行、劇場でのコンサート・演劇の鑑賞、アウトドアレジャーなどでした。ただいずれもその割合は10%程度で、コロナ禍が完全収束したとしてもリベンジ消費が発生する期待は薄いことがわかります。
出典:続・コロナ禍収束にともなう「リベンジ消費」は限定的| 生活者動向 | レポート | 野村総合研究所(NRI)
感染状況が落ち着いていた2021年末の消費動向から見られる傾向
前章で紹介した野村総合研究所の調査は消費者の“意向”でしたが、感染状況が落ち着いていた2021年末の実際の“消費傾向”はどうだったのでしょうか。
第一生命経済研究所は2019年、2020年、2021年それぞれの年末の日毎消費支出額を品目ごとに比較して、リベンジ消費が発生している分野を分析しています。
出典:年末消費の動向にみる今後のリベンジ消費の形 ~家計調査・日次・品目別支出の動向(2021年12月)~ | 星野 卓也 | 第一生命経済研究所
上図からは、財消費は2019〜2022年にかけてそれほど大きな傾向の差は見られません。一方、12月最終週にサービス消費がコロナ前の2019年、そして2020年の水準を上回っていることがわかります。
もう少しブレイクダウンして見ていきます。財消費を細分化したのが下図です。
出典:年末消費の動向にみる今後のリベンジ消費の形 ~家計調査・日次・品目別支出の動向(2021年12月)~ | 星野 卓也 | 第一生命経済研究所
コロナ以前を上回る消費の傾向が見られるのはカップ麺や調味料ですが、これはコロナ禍による内職需要の高まりを反映しているはずなのでリベンジ消費とは見て取れません。
その反面、興味深い推移を見せているのは飲酒代で、2021年はコロナ以前よりも低い水準であるものの、2020年より大幅に改善しています。感染の落ち着きを受けて宴会需要が回復しているのが原因だと思われる動きですので、コロナ禍が収束すればこの傾向がさらに大きな波となってリベンジ消費につながる可能性があります。
次にサービス消費を見てみます。
出典:年末消費の動向にみる今後のリベンジ消費の形 ~家計調査・日次・品目別支出の動向(2021年12月)~ | 星野 卓也 | 第一生命経済研究所
最も顕著にリベンジ消費の傾向が出ているのは宿泊料です。コロナ以前の2019年に比べて2021年は約1.5倍の消費があることがわかります。旅行を控えていた層が強制貯蓄の取り崩しを国内旅行に集中させたと思われます。
【編集後記】意向と実際の消費には乖離がありそう
2021年末は第5波と第6波の間で、国内の感染状況が改善されていた時期でした。ただ、ブースター接種や治療薬の承認などの進捗は2022年3月現在と比較すると不透明であったため、消費者がリベンジ消費に向かうための環境が完全に整っていたわけではありません。
リベンジ消費に対する“意向”の調査では、リベンジ消費の期待はかなり限定的であるとの結論でしたが、2021年末の実際の消費の“動向”を見れば飲酒や国内旅行といった一部の品目ではリベンジ消費が今後発生しそうな気配があります。
(TOMORUBA編集部 久野太一)
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