TOMORUBA

事業を活性化させる情報を共有する
コミュニティに参加しませんか?

AUBA
  1. Tomorubaトップ
  2. ニュース
  3. 小売大手がこぞって舵を切る店舗決済の省人化。「無人レジ」の社会実装はいつ来るか?
小売大手がこぞって舵を切る店舗決済の省人化。「無人レジ」の社会実装はいつ来るか?

小売大手がこぞって舵を切る店舗決済の省人化。「無人レジ」の社会実装はいつ来るか?

  • 4561
  • 4557
2人がチェック!

新規事業やオープンイノベーションのプレイヤーやそれらを実践・検討する企業の経営者はTOMORUBAの主な読者層ですが、こうした人々は常に最新トレンドをキャッチしておかなければなりません。そんなビジネスパーソンが知っておきたいトレンドキーワードをサクッと理解できる連載が「5分で知るビジネストレンド」です。キーワードを「雑学」としてではなく、今日から使える「知識」としてお届けしていきます。

今回はちまたでよく見かけるようになった『無人レジ』を特集します。コンビニに導入されているセルフレジや、ユニクロで無人レジを体験した人も多いのではないでしょうか。そもそもセルフレジや無人レジは、どのような定義があって呼び分けられているのでしょう。

また、「無人レジといえば中国」というざっくりとした印象がありますが、中国の何がすごいのでしょうか。レジにまつわるさまざまなファクトを紹介しつつ、どこにビジネスチャンスがあるのか探っていきます。

高い欠員率の小売業。省人化の期待を背負う無人レジ

そもそも、なぜ無人レジがこれほど話題を集めているのでしょうか。言わずもがな、少子高齢化の影響からくる慢性的な人材不足が原因です。


出典:労働経済動向調査(2019 年5月)の概況 

人材不足を可視化する指標として欠員率(常用労働者に対する未充足求人の割合)がありますが、全産業の平均で欠員率は3.1%となっています。卸売業・小売業は平均よりも高い3.3%の欠員率となっており、業務の省人化が目下の課題となっていることがわかります。

「セミセルフレジ」「セルフレジ」「無人レジ」どう違う?

小売業りの課題は人材不足だとお伝えしました。ですから、今回の連載のテーマは「無人レジ」であるものの、「店舗決済の省人化」と表現した方が正しいかもしれません。

では、店舗決済の省人化ソリューションにはどのようなものがあるのでしょうか。大きく分けると「セミセルフレジ」「セルフレジ」「無人レジ」があります。

店舗決済の工程には①商品のスキャンと②決済があります。これらのどの作業を顧客にやらせるのか、もしくは自動で行うのかで名称が変わります。


私たちの身近な例で言えば、大手スーパーなどでは数年前から支払いを顧客が行うセミセルフレジを見かけるようになりました。同じく、ファミリーマートなど大手コンビニでは、商品スキャンも顧客が行うセルフレジが普及し始めています。また、ユニクロでは商品タグに埋め込まれたICチップを読み取ることで自動で商品スキャンが完了する無人レジを導入している店舗が増えています。

いずれも店舗決済の省人化に大きな貢献をしていると言えるでしょう。

中国では「無人コンビニ」ブームが去り、実用的な無人レジが普及

2018年ごろ、「中国で無人コンビニが開業した」というニュースをよく目にしたのは記憶に新しいと思います。スマホで入店、画像認識による商品の自動スキャン、スマホによる自動決済を実装し、ハイテクを詰め込んだ店舗として世界中のメディアに取り上げられブームとなっていました。

実は当時の無人コンビニは実証実験としての側面が強かったようで、中国でも完全無人のコンビニはまだ成功事例がありません。

ですが、この実証実験の成果を反映して、コンビニ以外のさまざまな小売業・サービス業で無人化が進んでいます。例えば、コンビニの『便利蜂』では有人レジを廃止して無人レジのみでレジ業務を効率化しています。また、スマホアプリの『アリペイ』を活用して外食店舗の注文、支払いをアプリで簡潔できる仕組みがあります。

“無人”分野でトップを走る中国でも、完全無人コンビニは技術的にまだハードルは高いようですが、無人レジの導入や、コンビニほどオペレーションが複雑ではない分野での無人店舗化は実現しつつあります。

国内の無人レジの行く末を占うPOSターミナル市場


次に、日本国内の店舗決済の省人化の未来を考えてみましょう。レジ業界の動向を見てみると、大まかな動きが見えてきます。矢野経済研究所が2020年11月に公開したPOSターミナル(レジ端末)市場に関する調査では、2017年度をピークに2020年度まで急激に落ち込み、それ以降は縮小傾向の見込みだと伝えられています。

この結果は決して「レジ端末が斜陽産業になっている」というわけではありません。2017年度から2019年度にかけて、コンビニ大手とスーパー大手がレジ端末のリプレースを行ったため市場規模が大きく拡大しているように見えているのです。

この大規模なリプレースの中に、セミセルフレジやセルフレジが含まれています。つまり、小売大手の各社が店舗決済の省人化にアクセルを踏んでいることが見て取れるのです。小売大手が数年後、次の段階に進むとしたら無人レジを社会実装する可能性は高そうです。

参照ページ:POSターミナル市場に関する調査を実施(2020年) | 市場調査とマーケティングの矢野経済研究所

実証実験を経て無人レジ、無人店舗が普及するか

前述したように、小売大手はセルフレジのリプレースによって省人化しようとしています。ただ、セミセルフレジやセルフレジ導入は、レジ業務の人的リソースを完全にゼロにするためのワンステップに過ぎません。

JR東日本スタートアップは無人レジ技術を持つベンチャーのサインポストと共同で、無人決済店舗の社会実装をミッションとする子会社TOUCH TO GOを設立しています。実証実験を経て2020年3月にJR高輪ゲートウェイ駅にモデル店舗を開業、その後ファミリーマートと提携し、2021年3月には無人決済店舗「ファミマ!! サピアタワー/S店」東京駅直結オフィスビル内にオープンしました。中国の成功例として紹介した『便利蜂』に近い業態です。


無人決済店舗は小さい規模で、なおかつ省人で運用できるため、オフィスビルや病院など、これまで出店が難しかった場所も開拓できる可能性を秘めています。

関連記事:JR東日本グループの「ビジネス実装力」―共創で生まれた無人AI決済店舗「TOUCH TO GO」 高輪GW駅に開業 

関連記事:【業務提携の舞台裏】JR東日本の共創プログラムから生まれた「TOUCH TO GO」は、なぜファミリーマートと組んだのか

【編集後記】省人化の向こうにあるデータ活用

店舗決済の省人化はすぐにでも解決しなければならない課題なので、今後数年で実装が進みそうです。さらにその先に目を向けると、買い物客からデータが取れるような無人店舗設計にニーズがありそうです。

本文中で紹介した中国の無人店舗の実証実験や、アメリカで実証実験が進んでいる無人店舗の『Amazon Go』などは、店内に無数のカメラを設置して画像認証で購入物を特定し、AIで決済します。まだ技術的なハードルが高いですが、これが社会実装されれば「顧客がどんな行動を経て購入に至るか」が画像データとして取得できることになります。そのデータを活用して更なる革新的な購買体験が開発される日も遠くないかもしれません。

(TOMORUBA編集部 久野太一)


■連載一覧

第1回:なぜ価格が高騰し話題となったのか?5分でわかる「NFT」

第2回:話題の「ノーコード」はなぜ、スタートアップや新規事業担当者にとって有力な手段となるのか?

第3回:世界的なトレンドとなっている「ESG投資」が、スタートアップにとってチャンスである理由

第4回:課題山積のマイクロプラスチック。成功事例から読みとくスタートアップの勝ち筋は

第5回:電力自由化でいまだに新規参入が増えるのはなぜ?スタートアップにとってのチャンスとは

第6回:「46%削減」修正で話題の脱炭素。46%という目標が生まれた経緯と、潜むビジネスチャンスとは

新規事業創出・オープンイノベーションを実践するならAUBA(アウバ)

AUBA

eiicon companyの保有する日本最大級のオープンイノベーションプラットフォーム「AUBA(アウバ)」では、オープンイノベーション支援のプロフェッショナルが最適なプランをご提案します。

チェックする場合はログインしてください

コメント2件