Web3(Web3.0)とは何なのか?Web1.0とWeb2.0の振り返り&話題が爆発したきっかけを解説
新規事業やオープンイノベーションのプレイヤーやそれらを実践・検討する企業の経営者はTOMORUBAの主な読者層ですが、こうした人々は常に最新トレンドをキャッチしておかなければなりません。そんなビジネスパーソンが知っておきたいトレンドキーワードをサクッと理解できる連載が「5分で知るビジネストレンド」です。キーワードを「雑学」としてではなく、今日から使える「知識」としてお届けしていきます。
今回は2021年末ごろから一気にバズワードとなった『Web3(Web3.0)』について解説します。Web3が何かを知るにはこれまでのウェブのコンテキストを振り返りつつ、その上で現在どんなプレイヤーがWeb3を主戦場にしようとしているのかを理解するのが近道になります。
今話題になっているWeb3(Web3.0)の概要
Web3とは、次世代のウェブのアイデアの総称です。その特徴はさまざまに語られていますが、共通して言えるのは以下のようなことでしょう。
・GAFAに代表されるビッグテック企業のコントロール外にあること
・分散型のネットワーク(ブロックチェーン)を基盤にしていること
・検証可能性、所有権、経済インセンティブがある
このような特徴があるWeb3ですが、Web3を理解するにはまず、Webの歴史を振り返る必要があります。
これまでのWebをざっくりおさらい
なぜWeb3が次世代のウェブであると言われているのでしょうか。これまでのWeb1.0とWeb2.0について簡単におさらいしていきます。
【Web1.0】閲覧のみの静的ページ
Web1.0が主流だった時期は1990年代半ばから2000年代前半までです。この頃のウェブは静的HTMLによって作成されたウェブページがほとんどで、要するに閲覧することしかできませんでした。
情報がオンラインで取得できる意味では画期的ですが、情報を発信するにはウェブ開発の技術が必要で、情報を閲覧するには今のような常時接続のインターネットではなく、速度が遅くて従量課金製のダイアルアップ回線アクセスするしかありませんでした。
【Web2.0】プラットフォーマーが台頭し誰でも発信できるように
Web2.0では、誰でもブログやSNSで記事を書けるようになり、多くの人にとってインターネットが身近なものになりました。さらに、閲覧しかできなかったWeb1.0とは違い、例えばSNSに「いいね」やコメントをすることでユーザー同士が双方向にコミュニケーションできるようになったこともWeb2.0の特徴です。
Web2.0を語る上で欠かせないのがプラットフォーマーの台頭でしょう。インターネットユーザーの活動のほとんどはGAFAやビッグテックと呼ばれる巨大企業がなければ成り立たないものになりました。
Web3はなぜ今話題になっているのか
私たちの多くがWeb2.0に慣れ親しんでいますが、なぜ今Web3が話題になっているのでしょうか。Web3が持つ可能性と、Web2.0の弊害から解説します。
「理想のウェブ」に技術が追いついてきた
Web3の概念が提唱されたのは2018年で、イーサリアムの共同創設者ギャビン・ウッド氏がWeb3の名付け親と言われています。ウッド氏はビッグテックらに支配されたWeb2.0的なウェブは設計が破綻していると問題提起しました。イーサリアムはブロックチェーン上にアプリケーションを実装できるネットワーク基盤なので、ウッド氏のポジショントークともとれますが、批判は的を得ている部分があります。
そして2021年末、起業家やVCの間でWeb3は爆発的に話題となります。著名なVCのAndreessen Horowitz(a16z)のアンドリュー・チェン氏は「Web3は一時的なバブルや流行ではない」と発言すれば、Twitterの創設者ジャック・ドーシー氏は「Web3はみんなのものではなく、VCとVCに出資された企業のものだ」と言及しました。対してテスラ創業者のイーロン・マスク氏は「Web3はBullShit(でたらめ)だ」と冷ややかな反応を示すなど、活発に議論されています。
話題に火がついた背景として、技術が発展しWeb3は理想ではなく実現できるものになっていることが挙げられます。Twitterは『Bluesky』という分散型ソーシャルメディア構築を進めており、掲示板大手の『Reddit』はプロダクトにWeb3の機能を追加しようとしています。
NFT、メタバースだけでなくあらゆる分野でWeb3が動きだす可能性
冒頭で、Web3には検証可能性や所有権、経済インセンティブといった特徴があると挙げました。これらの特徴だけ聞くと同じくバズワードとなっているNFTやメタバースを想起するのではないでしょうか。
確かにWeb3が実現すればNFTやメタバースの世界はウェブの常識となるかもしれませんが、あくまでもこれらはWeb3の一部であると認識しておくべきです。ビッグテックが支配していたものが全て分散化したネットワークに置き替わると考えると、Web3の可能性は途方もなく大きいものになりそうです。
【編集後記】歴史は繰り返す?
もともとWeb1.0の時代では(技術さえあれば)誰でもサーバーをたてて情報発信ができるという意味でインターネットは「自由で開かれた」「自律分散的な」ものだった気がします。
そして散らばった情報をより便利にまとめようとしたのがいまのビッグテックですから、Web3が普及してもそれをまとめてしまうプラットフォーマーが現れて結局中央集権的になってしまうのでは…という可能性を考えてしまう古参ネット民も多いのではないでしょうか。
(TOMORUBA編集部 久野太一)
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