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「46%削減」修正で話題の脱炭素。46%という目標が生まれた経緯と、潜むビジネスチャンスとは

「46%削減」修正で話題の脱炭素。46%という目標が生まれた経緯と、潜むビジネスチャンスとは

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新規事業やオープンイノベーションのプレイヤーやそれらを実践・検討する企業の経営者はTOMORUBAの主な読者層ですが、こうした人々は常に最新トレンドをキャッチしておかなければなりません。そんなビジネスパーソンが知っておきたいトレンドキーワードをサクッと理解できる連載が「5分で知るビジネストレンド」です。キーワードを「雑学」としてではなく、今日から使える「知識」としてお届けしていきます。

前回、この連載では「電力自由化」について特集しましたが、今回はそれに深く関連している「脱炭素」がテーマです。脱炭素が、スタートアップや新規事業のプレイヤーにとってどうチャンスに繋がるのかを探っていきます。


話題の目標「脱炭素46%削減」が生まれた経緯

今年の4月に開催された気候変動サミットで、日本はこれまで掲げていた脱炭素の目標を26%削減から大幅に修正して46%削減としたことが話題となりました。まずはなぜこの目標が生まれたのか、経緯を考えてみます。

そもそも、先進国では大きな目標として「2050年までにCO2排出量を実質ゼロに」を掲げています。この目標は、パリ協定で目指している「世界の気温上昇を産業革命前に比べ1.5度までに抑える」を達成するために必要な指標だという背景があります。

では、他の先進国はどのような目標を掲げているのでしょうか。気候変動サミットで示された各国の目標は以下の通りです。

●アメリカ:2030年までに2005年比で50~52%削減

●カナダ:2030年までに2005年比で40~45%の削減

●EU:1990年比で55%削減

●イギリス:2035年までに1990年比で78%削減

これを見ると、ざっくり「2030年までに半減」が相場であることがわかります。

また、政治的な判断も含まれていると考えられます。2050年に実質ゼロを目指す場合、これまでの「2030年に26%削減」だとペースが遅すぎる問題がありました。目標を「2030年に46%削減」にすれば、2050年に実質ゼロを目指すペースと一致します。

つまり、2030年までに46%削減という目標は、「他の先進国の相場」と「2050年に実質ゼロを達成するための目標の整合性」を加味した上で、これ以外ないという微妙な調整の末に打ち出したものだと言えます。

46%削減時の電源構成案では再エネの比率が10ポイント上昇

26%削減から46%削減に目標が修正されたため、修正後の電源構成比も変わってきます。

今まで(26%削減)の計画では再エネが20~22%、原子力が22~24%、火力が56%という電源構成比でしたが、46%削減に目標が修正された場合の最終調整案では再エネが36~38%、原子力が22~24%、火力41%、水素・アンモニアが1%という電源構成比となっています。


この最終調整案を見る限り、再エネの構成比が大幅に上昇していることがわかります。


46%削減によって再エネ事業者に追い風

46%削減に目標が修正されたことで、「実現可能性のある目標なのか」という疑問もあるとは思いますが、本記事ではその議論はいったん置いておきます。では、日本の脱炭素をめぐる動きの中で、スタートアップや新規事業のプレイヤーにとって何がチャンスになるのでしょうか。

やはり最もインパクトが大きいのは再エネ領域でしょう。これまでも成長を続けている領域ではありますが、最終調整案で目標数字がグンと高まったことから、さらに成長が加速することが予想されます。

再エネの電源として最もメジャーなものは太陽光発電です。政府は、住宅用の太陽光パネルと電気自動車などをセットで導入するのを促進する補助金の制度を今年から設けるなど、大胆な投資を打ち出しています。

カーボンプライシングと国境炭素税の行方にも注目

脱炭素を語る上で外せないのはカーボンプライシングと国境炭素税の話です。日本では排出するCO2の量に価格をつけて温暖化対策をする「カーボンプライシング」の検討が進んでいます。ただ、カーボンプライシングには国際競争力が阻害されるという反対意見もあります。

一方で、欧米では「国境炭素税」を検討しています。国境炭素税は、例えば、国内で化石燃料に頼って安いコストで作った製品を欧米に輸出する際に、公平な競争力を担保するために関税のように税金を課すというものです。

産業界としては、日本も欧米にならって国境炭素税の枠組みに参加することになるのかに注目が集まります。NHKの時論公論では「あらかじめ日本の税制に反映させ税収を脱炭素化やイノベーションの後押しに使うべきでは?」と指摘しており、日本が率先して国際ルールづくりに参加することで国内のイノベーションが加速できる可能性を示唆しています。

【編集後記】VUCAに強い組織が成長できる

ビジネス界隈では、今後はVUCA(先行きが不透明で、将来の予測が困難な状態)に強い企業が生き残ると言われていますが、脱炭素についてもまさにそのとおりだと言えます。脱炭素の目標が26%削減から46%削減に修正されることで、影響を受ける企業は難しい経営判断を迫られています。

政治判断や災害、国際情勢などの影響で、一瞬でガラリと状況が変わってしまうのが当たり前になっています。世の中の状況に合わせて企業も柔軟に変化することが求められているのは間違いなさそうです。

(TOMORUBA編集部 久野太一)


■連載一覧

第1回:なぜ価格が高騰し話題となったのか?5分でわかる「NFT」

第2回:話題の「ノーコード」はなぜ、スタートアップや新規事業担当者にとって有力な手段となるのか?

第3回:世界的なトレンドとなっている「ESG投資」が、スタートアップにとってチャンスである理由

第4回:課題山積のマイクロプラスチック。成功事例から読みとくスタートアップの勝ち筋は

第5回:電力自由化でいまだに新規参入が増えるのはなぜ?スタートアップにとってのチャンスとは

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コメント4件

  • 木下和弥

    木下和弥

    • 株式会社 投資の“KAWARA”版.com
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  • 岩井恵梨

    岩井恵梨

    • 日本特殊陶業株式会社 
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    ドーナツ経済学などでも提唱されるように、環境の上限を超えていると想定される中で、
    脱炭素の動きがビジネスイノベーションも含めることで持続可能な形になるとよいですよね。
  • 眞田 幸剛

    眞田 幸剛

    • eiicon company
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