市場規模1兆ドルも射程の『メタバース』で何が起こる?すでに始まっている仮想空間での経済活動とは
新規事業やオープンイノベーションのプレイヤーやそれらを実践・検討する企業の経営者はTOMORUBAの主な読者層ですが、こうした人々は常に最新トレンドをキャッチしておかなければなりません。そんなビジネスパーソンが知っておきたいトレンドキーワードをサクッと理解できる連載が「5分で知るビジネストレンド」です。キーワードを「雑学」としてではなく、今日から使える「知識」としてお届けしていきます。
今回とりあげるのは『メタバース』です。Facebookが社名を『Meta』に変更したことで一気に注目を浴びたメタバースですが、Meta社がそこまで注力しているメタバースとはいったいどんなものなのでしょうか。
メタバースでは仮想空間でのコミュニケーションや経済活動ができる
メタバースは「メタ(超)」と「ユニバース(宇宙)」をくっつけた造語で、1992年に出版されたニール・スティーヴンスン著作のSF小説『スノウ・クラッシュ』に登場した言葉です。
メタバースが意味するところは、大勢のプレイヤー(アバター)と共有できる「仮想空間」です。この仮想空間ではコミュニケーションや経済活動が行えます。『マインクラフト』や『あつまれ どうぶつの森』もこの定義に当てはまりますが、メタバースは既存の2Dゲームだけではありません。むしろメタバースの本丸はVRゴーグルを介した3Dの世界や、ARのような拡張現実と言えるでしょう。
メタバース市場規模は2028年に8,289億ドルに達する見込み
米国の調査会社Emergen Researchのレポートによると、世界のメタバース市場は2020年の476.9億米ドルから、2028年に8,289億ドルに成長する見込みとのことです。この驚異的な年平均成長率はコロナ禍での在宅需要の高まりも追い風になっています。
また、2021年10月に社名変更を発表したMeta社は、年間100億ドルをメタバース構築に投資する方針を明らかにしており、メタバース市場の先陣を切ることになりそうです。
参照ページ:2028年に8,289億5,000万米ドルに達する世界のメタバース市場規模
メタバースの世界で体験できること
メタバースは未来の話ではなく、現時点で提供されているコンテンツにも有力なものはいくつもあります。
メタバースの世界で仕事やイベントを行う
メタバースの世界では、リアルの世界と同じように日常生活やイベントが行われています。例えば、自由に動いて自由に話しかけられるバーチャル空間を提供する「oVice(オヴィス)」をバーチャルオフィスとして活用する企業の事例が増えています。バーチャルオフィスの中を自由に動き、話しかけたい社員に近づくことでボイスチャットできるようになるためリアルのオフィスに近い体験が可能です。
参照記事:自由に動いて話しかけられるバーチャル空間「oVice」を提供するoVice株式会社が1億円を調達
また、渋谷や池袋など実在する街をメタバース内に再現し、イベント会場とする催しもあります。特に、2021年10月に行われたKDDIが主催する「バーチャル渋谷 au 5G ハロウィーンフェス2021」では新しい取り組みとして、メタバース内の雇用マッチングサービス「メタジョブ!」が会場スタッフの派遣事業の実証実験を実施しました。
今後出勤場所がメタバース内になったり、メタバース内で仕事をする動きが加速する可能性があります。
すでにメタバースが浸透しつつあるゲーム領域
エピックゲームズのバトルロイヤルゲーム『フォートナイト』です。バトルロイヤルはここ数年人気のジャンルですが、フォートナイトはバトルロイヤルだけでなくゲーム内をライブ会場として利用するケースがあります。ラッパーのTravis Scott氏や米津玄師氏などがゲーム内でライブを行い、観客は思い思いのアバターとエモート(ジェスチャーやダンス)で会場を自由に動き回ります。
もうひとつ、『VRChat』の事例を紹介します。VRChatはVRゴーグルを装着して仮想空間にアクセスし、多人数でチャットするソーシャルVRと呼ばれるジャンルのアプリです。VRCはtワールドと呼ばれる様々な空間に集まってボイスチャットをしたりゲームを遊んだりできます。このワールドはユーザーが自分で作成できるため、ボードゲームや脱出ゲームなど、オリジナルのゲームを発表することもできる自由度が魅力です。
メタバースとNFTの相性の良さ
今後期待されるのは、メタバースとNFTの連携です。前述したように、メタバースは仮想空間で経済活動を行えます。NFTはブロックチェーン技術を利用してデジタルコンテンツの所有権や著作権を証明できるため、メタバースとの相性が良いと考えられています。
すでに『The Sandbox』や『Decentraland』など、イーサリアム上のブロックチェーンで構築されたVRプラットフォームでは高額な土地の売買が行われており、2021年11月22日から28日の1週間に主要な4つのプラットフォーム上で1億ドル以上が取引されています。
参照記事:なぜ価格が高騰し話題となったのか?5分でわかる「NFT」
【編集後記】スタンドアロンのOculus Quest 2からさらなる進化に期待
現時点でVRヘッドセットはMeta社の開発するOculus Quest 2が人気になっています。有線でつながれることなく利用できるスタンドアロン型になったことで利用者も増えているようです。
とはいえヘッドセットはまだまだゴツく、仕事で丸一日利用できるかと言われると難しそうに見えます。今後、ヘッドセットが軽量化されてメガネ程度の負荷で遊べるようになればキャズムを超えるかもしれません。さらなる未来では、アニメ『ソードアート・オンライン』のように、現実の意識をシャットダウンさせて仮想空間に潜り込む「フルダイブ型」が誕生するのでしょうか。SFの世界がすぐそこまで迫っているようです。
(TOMORUBA編集部 久野太一)
■連載一覧
第1回:なぜ価格が高騰し話題となったのか?5分でわかる「NFT」
第2回:話題の「ノーコード」はなぜ、スタートアップや新規事業担当者にとって有力な手段となるのか?
第3回:世界的なトレンドとなっている「ESG投資」が、スタートアップにとってチャンスである理由
第4回:課題山積のマイクロプラスチック。成功事例から読みとくスタートアップの勝ち筋は
第5回:電力自由化でいまだに新規参入が増えるのはなぜ?スタートアップにとってのチャンスとは
第6回:「46%削減」修正で話題の脱炭素。46%という目標が生まれた経緯と、潜むビジネスチャンスとは
第7回:小売大手がこぞって舵を切る店舗決済の省人化。「無人レジ」の社会実装はいつ来るか?
第8回:実は歴史の深い「地域通貨」が、挑戦と反省を経て花ひらこうとしているワケ
第9回:音声配信ビジネスが日本でもブレイクする予兆。世界の動向から見える耳の争奪戦
第10回:FIREブームはなぜ始まった?「利回り4%」「生活費の25倍の元本」など、出回るノウハウと実現可能性は
第11回:若年層は先進層と無関心層が二極化!エシカル消費・サステナブル消費のリアルとは
第12回:「ワーケーション」は全ての在宅勤務社員がターゲットに!5年で5倍に成長する急成長市場の実態