【日本は中国よりもアジアのスタートアップに投資している?】日本のVC・CVCが、アジアに168億ドル(1.8兆円)投資。中国の投資額は167億ドルを上回る。
現在、グローバルでスタートアップシーンが盛り上がりを見せており、その傾向はアジアにも及んでいる。――Tech in Asiaが7月23日発表したレポートによれば、2017年のアジア向け投資額(自国を除く)は168億ドル(約1兆8600億円)となっており、前年比で65%増加。特に、シンガポールやインドのスタートアップに関心が集まっている。
『アジアのスタートアップエコシステムにおける日本の投資家の大きなインパクト』をテーマにした同レポートはTech in Asiaが独自のデータベースをもとに2015~2017年の日本と中国のベンチャーキャピタル(VC)やコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)、機関投資家などの投資動向をまとめたものだ。これによれば、日本の投資額は2015年から3年連続で中国を上回っている。(※2017年の中国の投資額は167億ドル)
上記のように、日本の投資家(独立系VC、CVC、機関投資家等)は、アジアのスタートアップエコシステムへの関与を投資等を通じて着実に高めており、さらに、ソフトバンクをはじめとする日本の投資家は、アジア各国のユニコーン企業への投資も行なっていることが分かった。
アジアスタートアップへの投資動向
同レポートによれば、アジアのスタートアップへの投資が近年注目されている理由として挙げられるのは、アジア諸国全般で急速に購買力が拡大しているだけでなく、インターネットが急速に普及しているため。経済成長とテクノロジーの普及が重なり、スタートアップのオンラインビジネスの創出や有料顧客の獲得をこれまで以上に容易に行えるようになったという。その結果、アジアのスタートアップは現在何百万人もの顧客を獲得し、数億〜数十億ドルの時価総額に到達する可能性を十分に持つようになった。こうした背景により、アジアのポテンシャルを世界が認識し始め、 アジアのスタートアップへの投資が過去3年で急増したという。
▼アジアのスタートアップ投資額の推移
▼アジアのスタートアップに投資をする企業数の推移
日本のアジアにおけるスタートアップ投資動向
近年、中国の巨大テック企業の台頭が著しい一方で、かつてアジア市場への進出を狙っていた楽天、DeNA、GREEなどの日本のメガベンチャーはのちにアジア市場から撤退している。こうした事実から、日本の投資家がアジアのスタートアップに対してほとんど影響力を持っていないと考えている方も多いかもしれない。しかし、本レポートでは興味深い結果が明らかとなった。
日本の投資家が日本国外に拠点を置くアジアのスタートアップに投資をした実績について調査すると、2017年には99件の投資案件に日本の投資家が参加。その投資総額は168億米ドルにもおよんだ。投資額は2015年と比較してほぼ3倍まで増加したという。
▼日本の投資家によるアジアのスタートアップへの投資額推移
▼アジアのスタートアップへ投資をする日本企業数の内訳
本レポートでは、AlibabaによるLazada買収やTencentによるSeaやGo-Jekなどのユニコーン企業への投資が近年目立ち初めている中で、日本のアジアにおける投資活動状況を中国と比較している。2015〜2017年においては、日本企業と中国企業の対外投資案件の総額を比較すると、日本は投資総額および投資案件数の両方の側面で中国より積極的にアジアへの投資を行なってきたことが分かる。一方で、2017年以降中国の対アジア投資が加速していることは注目すべき事実です。
▼日本の投資家/中国の投資家によるアジアのスタートアップへの投資額の比較
日本企業が投資しているアジアのユニコーン企業
上記データのように、日本は意外にもアジアのスタートアップに対して、積極的に投資を行なっていることが明らかになった。さらに、本レポートでは、アジアにおける中国・日本を除くユニコーン30社の内、日本の投資家は15社に投資を行なっていることも明らかにしている。投資先のスタートアップを国別で見るとインドがもっと多く、業界別で見るとEコマース企業が最も多くなっている。
▼2017年の日本の投資家によるアジアのスタートアップへの投資案件5つ
▼日本企業が投資しているアジアのユニコーン企業(中国/日本企業は除く)
日本の投資家のアジアにおける活動を深く観察すると、ソフトバンク以外のVCやCVCも積極的に有望なスタートアップへアプローチをしていることが分かる。本レポートのデータが示しているように、日本の投資家はアジアのスタートアップエコシステムの中で、様々なステージの投資案件に積極的に参加している。すでにアジアのユニコーンにも投資を行なっているが、現在進行形で日本はアジアのスタートアップシーンが成長し続ける中、彼らにとって有力で魅力的なプレイヤーになろうと活動していることが見えてきた。