
AIとGIS(地理情報システム)で下水道管理を革新へ──上下水道等のインフラに関するコンサルティングを行うNJS、京都市、Ristが共同研究を開始
上下水道等のインフラに関するコンサルティングを行う株式会社NJSは2025年6月12日、京都市上下水道局および人工知能を使った画像解析システムを開発する株式会社Ristとともに、AIを活用した下水道管路劣化判定の効率化を目的としたシステム開発に向け、共同研究を開始したと発表した。老朽インフラへの対応が急務となる中、AIとGIS(地理情報システム)を活用した効率的な維持管理手法の確立が目指される。
耐用年数を迎える下水道管、効率的管理の必要性
京都市上下水道局では、老朽化が進む下水道管の改築更新を優先度に基づいて進めているが、整備から数十年が経過し、事業拡張期に敷設された管路が今後一斉に耐用年数を迎えることが予想されている。限られた財源の中で下水道管の安全性と機能を維持するためには、効果的かつ効率的な調査と診断が不可欠だ。
これまでもNJSは、京都市発注の業務委託においてGISを活用し、下水道管内の調査データを効率的に蓄積する方法を研究してきた。一方、京都市上下水道局、パシフィックコンサルタンツ株式会社(PCKK)、Ristの3者は、AIによって高画質の管口カメラ画像から下水道管の劣化を判定するモデルの共同研究を進めていた。
今回の取り組みでは、これまで別々に進められていたAIによる画像判定とGISによるデータ管理を統合し、より実用的な維持管理支援システムの開発を目指す。
共同研究の内容:データベース構築と操作性の向上
共同研究の第一の柱は、「調査記録とAIによる判定結果のデータベース構築」である。具体的には、GISに蓄積された下水道管内の画像データをAIが解析し、その結果と既存の調査記録を整理・統合した新たなデータベースを構築する。これにより、劣化状況の定量的評価や長期的な維持管理計画への活用が可能になる。
第二の柱は、「操作性の向上」だ。現場作業の負担軽減を図るため、タブレットでの操作に対応したシステムを構築。撮影からデータ管理、劣化判定、結果の保存までを一元的に管理できるようにすることで、調査業務の省力化と精度向上を狙う。
目指すのは2027年の実用化、インフラDXの推進へ
研究期間は2027年3月までの2年間。維持管理や点検業務の支援、人材育成を視野に入れつつ、実用化に向けた実証実験も並行して行う予定だ。
NJSは今回の共同研究を通じて、「インフラDX(デジタルトランスフォーメーション)」の推進と、水と環境のサステナビリティ・レジリエンスの向上を図る。企業のパーパスである「健全な水と環境を次世代に引き継ぐ」の実現に向け、技術開発と事業領域の拡大を続けていくとしている。
持続可能なインフラ管理への新たな選択肢
老朽化が進む社会インフラを前に、デジタル技術を用いた新たなアプローチは喫緊の課題であり、また重要な挑戦でもある。NJS、京都市、Ristによるこの取り組みが、全国の自治体や関連業界にとってもモデルケースとなることが期待される。持続可能なインフラ維持に向け、今後の研究成果に注目が集まる。
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(TOMORUBA編集部)