AI主要分野でも最大級の市場規模【AI×テキスト解析】の共創事例
多くのビジネスパーソンが注目するAIビジネスですが、AIには多用に細分化された用途があります。ですから「どの領域のAI活用がアツいか?」に注目するのが正しいビジネス洞察眼と言えるでしょう。TOMORUBAの連載「Break Down AI」では、期待される【AI×○○】の実態を深堀りし、どのような共創が行われているかに迫ります。
今回はAIによる「テキスト解析」の共創を紹介します。文字を読むことは本来人間にだけできるスキルでしたが、技術の進歩によってAIに任せられる範囲が急速に広がりつつあります。AIは単純作業を素早く正確にこなすことができる性質があり、人間が請け負う作業の負担を軽減できますが、「テキスト」に関する作業はかなり幅が広く可能性の大きい分野です。AIによるテキスト解析を使ってどのようなアイデアが生まれ実用化を目指して進んでいるのでしょうか。
AI主要8市場の中でもテキスト分野の規模は最大
2020年11月に公開された調査会社ITRのレポートでは、「AI主要8市場」の市場規模の推移が掲載されています。「AI主要8市場」とは以下の8分野です。
1.画像認識
2.音声認識
3.音声合成
4.テキスト・マイニング/ナレッジ活用
5.翻訳
6.検索・探索
7.時系列データ分析
8.機械学習自動化プラットフォーム
出典:ITR
2019年度のAI主要8市場全体の売上金額は約384億で、前年度比37.8%増と急成長を遂げていることがわかります。2024年には市場規模は980億円に達する予測となっており、6年で3倍近くまで拡大する見込みです。
主要8分野の中で「テキスト・マイニング/ナレッジ活用」は最もシェアが高く、8分野全体の成長率と同等程度に成長を続けていく予測です。このことから、AI市場においてテキスト分野は最も大きい市場のひとつであることがわかります。
AI×テキスト解析の共創事例
ここからはAI×テキスト解析の分野でどのような共創が行われているか、実例を紹介していきます。
【Legal Force】AI契約書レビュー支援ソフトウェア『LegalForce』が総額30億円調達
AI契約書レビュー支援ソフトウェア『LegalForce』 を提供するLegalForceは2021年2月、シリーズCラウンドにおいて、WiL、ジャフコ グループ、三菱UFJキャピタル、みずほキャピタル、SMBCベンチャーキャピタル、DIMENSIONなどのそれぞれが運営するファンドを引受先とした第三者割当増資により、シリーズCラウンドで約27億円の資金調達を実施しました。また、日本政策金融公庫より三菱UFJ銀行との協調融資体制のもとで約3億円を資金調達し、総額約30億円の資金調達を実施しています。
Legal Forceは高品質な契約書レビューを実現するクラウド型契約書レビュー支援ソフトウェアで、契約書に潜むリスクをAIが即座に洗い出すことが可能です。修正の参考となる条文例を検索でき、搭載されているひな形集はいつでも最新保つことができるため、人手と時間をかけるしかなかった契約書業務の品質向上を効率的に実現できるSaaSです。
同社は「全ての契約リスクを制御可能にする」をミッションとして、今後も弁護士の法務知見と最新のテクノロジーを組合せ、企業法務における業務の品質向上と効率化を実現するソフトウェアの開発・提供を行っていくとのことです。
参照記事:AI契約書レビュー支援ソフトウェアなどを提供するLegalForce、シリーズCラウンドにおいて総額30億円調達
【GVA TECH×東京大学】自然言語処理による契約書データの処理効率化を目指し共同研究を開始
GVA TECHは2019年10月より、東京大学 大学院 総合文化研究科 加藤恒昭研究室と、自然言語処理技術を用いた契約書データの処理と活用に関する共同研究を開始しています。 GVA TECHは、AIによる契約書チェックサービス『AI-CON』や法人登記支援サービス『AI-CON登記』などのリーガルテックサービスを開発・運営するリーガルテックカンパニーです。
今回の共同研究では、GVA TECHの保有する「契約書実データ」と、加藤研究室の強みである「自然言語処理分野における確かな研究業績・豊富な知見」を組合せることで、サービスの進化を目指しています。これにより、ユーザーがより一層、安心して使用できる信頼性の高いAIサービスの開発につなげていくとのことです。
参照記事:法務格差解消を目指すGVA TECH|東京大学と共同研究を開始、自然言語処理による契約書データの処理効率化へ
【Liberaware×KCCS】船橋市の図書館の「AI蔵書点検システム」試験導入でドローンによる書架自動撮影の検証を実施
Liberawareは2020年3月、千葉県船橋市・西図書館における京セラコミュニケーションシステム(KCCS)の「AI 蔵書点検システム」試験導入に伴い、蔵書点検の無人化を目指し、特殊小型ドローン「IBIS」の自動飛行・撮影と「AI 蔵書点検システム」との連携について検証を実施することを発表しました。
現状の図書館における蔵書点検は、全資料を専用の機器で1点ずつ読み取り、図書館システム上の蔵書データと照合するため業務負荷が高い業務となっています。こうした業務の負荷軽減・効率化を目指し、KCCSと共に船橋市西図書館に「AI蔵書点検システム」の環境を構築しています。
書架一面の撮影には、タブレット端末を用いた手動撮影に加え、今後はLiberawareの特殊小型ドローン「IBIS」による自動撮影を試験的に行い、無人化も目指すとのことです。
参照記事:Liberaware×KCCS | 船橋市の図書館の「AI蔵書点検システム」試験導入でドローンによる書架自動撮影の検証を実施
【ミラセンシズ×アイリスオーヤマ】AI校正・校閲ソリューション『AI editor』で取説などの校正・校閲業務の生産性向上にむけ導入検証
ミラセンシズとアイリスオーヤマは2021年2月、社内文書の校正・校閲業務の支援ツールとして、AIを活用した自動文章校正・校閲ソリューション『AI editor』の導入検証を開始しています。
この取り組みはアイリスオーヤマ製品の取扱説明書・パッケージ・販促物の校正・校閲業務の生産性向上を目的に、『AI editor』の導入検証するもので、校正・校閲の作業負担と校正スキルの属人化といった課題の解決が期待されています。
ミラセンシズの『AI editor』は一般的な言語表現における誤字検出だけでなく、社内独自のルールや言い回しを「オリジナルルール」として学習させることで、それぞれの業務文書に即した校閲・校正を行うことが可能であり、アイリスオーヤマでの制作業務の負荷軽減が期待できます。
今後は現場検証を進め、現場からのフィードバックやニーズをもとに導入に向けた検討を進めるとのこと。
参照ページ:AI校正・校閲ソリューション『AI editor』 アイリスオーヤマ様との現場検証をスタート
【編集後記】専門職の仕事もAIでこなせるように
テキスト解析の共創事例をみていると「AIが仕事を奪うか否か」という議論について考えずにはいられません。法務的な書類のレビューはもちろん、校正・校閲なども人間の専門家がこなしてきた仕事です。
さらに記事内でも触れたようにテキスト分野のAI活用は、AI市場の中でも特にボリュームの大きい領域となっています。どの分野にどんな波が巻き起こるかは予想しにくいものの、変化に対応する準備が必要なのは間違いなさそうです。