相性抜群の【AI×Eコマース】、年平均成長率42%のポテンシャルを秘めた共創事例
多くのビジネスパーソンが注目するAIビジネスですが、AIには多用に細分化された用途があります。ですから「どの領域のAI活用がアツいか?」に注目するのが正しいビジネス洞察眼と言えるでしょう。TOMORUBAの連載「Break Down AI」では、期待される【AI×○○】の実態を深堀りし、どのような共創が行われているかに迫ります。
今回はEコマースにおけるAI活用の事例を紹介していきます。コロナ禍で外出を控える動きが世界中に広まっている中、Eコマースの重要性に再注目が集まっています。Eコマース市場が急激に拡大していることは言わずもがなですが、多くの情報をデータとして蓄積できるEコマースはAIとの相性はピカイチと言えます。
私たちが日常的に利用しているEコマースサービスにもすでにAIが活用されており、買い物体験が変化しているものもあります。AI×Eコマースのプレイヤーがどのようなチャレンジをしているのか見ていきましょう。
Eコマース市場におけるAIは年平均42.8%で成長する見込み
2021年2月に調査会社のKenneth Researchから発刊された「世界の小売およびeコマース市場におけるAI:世界的な需要の分析及び機会展望2025年」では、驚くべき予測が提供されました。
同レポートによると、世界の小売およびeコマース市場におけるAIは、2019-2025年の予測期間中に42.8%のCAGR(年平均成長率)で成長し、2025年までに193.7億米ドルの収益に達すると予想しています。
国内に目を向けて見ても、Eコマース市場の拡大は顕著です。経済産業省のレポートでは過去10年のBtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場規模は、2019年度時点で19.4兆円となっています。
出典:電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました (METI)
これは2010年と比較すると、10年間で250%近い成長を遂げていることになります。また、商取引における電子商取引の比率を表すEC化率は年々成長を続け、2019年度には6.76%に達しました。
世界全体でEコマースにおけるAI活用がトレンド化しており、日本国内でもEC化が急激に広がっています。もはやEコマースとAIは切っても切れない関係になりつつあるとも見て取れるでしょう。
AI×Eコマースの共創事例
ここからは国内のEコマースにおけるAIを活用した共創事例を見ていきます。
【awoo Japan×しまむら】人工知能型MAツールnununiをしまむらオンラインストアに導入開始
人工知能による完全自動マーケティングオートメーションプラットフォーム「nununi」を提供するawoo Japanは2021年4月、しまむらが運営するファッション通販サイト「しまむらオンラインストア」にて、nununiの導入を開始しました。
nununiは高度なAI技術による「タグ接客」を実現しており、ユーザの購買動機を推定しながら、「偶発的な商品との出会い」をオンライン上でも体感することが可能になるソリューションです。タグ接客とは顧客の購買動機を推定しながら随時リアルタイムに学習・最適化され、購買意図に寄り添ったバラエティに富んだキーワードを顧客に提案するもので、タグを活用して、顧客獲得・顧客転換・顧客維持をワンストップでカバーすることができます。
参照記事:awoo Japan×しまむら|人工知能型MAツールnununiをしまむらオンラインストアに導入開始
【西川×パナソニック】睡眠データにあわせて家電を自動制御「快眠環境サポートサービス」をECサイトで提供
西川とパナソニックは2021年3月より、西川のマットレスとパナソニックの家電を連携させ、睡眠の結果を可視化、一人ひとりにあったアドバイスで、よりよい睡眠環境を提供する「快眠環境サポートサービス」を共同開発し、同サービスをパナソニックのECサイト「暮らしサービスストア」で提供しています。
同サービスは専用のアプリ「Your Sleep」「nishikawa LINK」をダウンロードすることで利用可能で、西川のセンサー搭載マットレス「SIマットレス」と、同サービスに対応したパナソニックの家電で構成されるサービスです。
具体的には、「SIマットレス」により、睡眠データを計測し、睡眠状態にあわせて、パナソニックのエアコンによる寝室の空調、照明器具(LEDシーリングライト)によるあかりの調整を行います。また、就寝時や起床時にはゆったりくつろげる音楽や目覚めに適した音楽を再生できる機能も搭載しています。
マットレスから取得したデータは専用アプリと連携させることで、個人の眠りにあわせた睡眠環境制御や、パーソナライズドアドバイスが可能になるとのことです。
参照記事:西川×パナソニック | 「快眠環境サポートサービス」を共同開発、睡眠データにあわせて家電を自動制御
【大丸松坂屋×SELF】ギフトのマナーをAIが解決する「ギフトコンシェルジュ」
大丸松坂屋百貨店は2021年4月より、ECサイトの「大丸松坂屋オンラインショッピング」において、SELFをパートナーに、AIを活用し、ギフトの一般的なマナーの疑問に答えながら、おすすめの商品をご紹介する「ギフトコンシェルジュ」の実証実験を開始しています。
今回、大丸松坂屋オンラインショッピングに、AIを活用した接客システム「ギフトコンシェルジュ」を導入し、サイトを訪れたユーザーに、テキストでの簡単なやりとりで一般的な贈り物のマナーに関する質問をやり取りして、疑問を解決しながら自然な流れで最適な商品を紹介するのが実証実験の趣旨となっています。
店頭で培ってきた販売員=人の知識を、オンライン接客でも活用できるようにすることを目的として、オンラインショッピングでも、店頭と同様に、相談しながら最適なギフトを選べる環境づくりを目指すとのこと。
参照記事:AI を活用した「ギフトコンシェルジュ」の実証実験を「大丸松坂屋オンラインショッピング」で4月から開始
【Perpetua×シンクリンク】Amazon出店事業者向けの広告運用AIツール「Perpetua」
Eコマース事業を専門にしたマーケティングエージェンシーのシンクリンクは、 Amazon向け広告AIツール「Perpetua」の販売代理店として、これまで200件を超えるPerpetuaの導入を支援しています。
PerpetuaはAmazon広告を管理する上で重要なキーワードとASINハーベスティング、アルゴリズム入札、スマートターゲット、高度な分析、モバイルアプリなど機能を豊富に備えています。
導入からの継続率は80%程度と高い水準となっており、今後もPerpetuaを通じてAmazon事業者の売上向上、業務効率化を強化していくとのことです。
参照記事:Amazon広告向けAIツール「Perpetua」日本での導入企業数200社突破のお知らせ
【編集後記】Eコマース領域は業務効率化の変数が数多く存在
今回紹介した事例はどれもEコマース事業者が抱えているクリティカルな課題を解決するソリューションでしたが、AIの活用方法はどの事例も異なっており十人十色です。これは、Eコマース領域にはボトルネックとなっている要素が数多く存在していることの裏返しとも考えられます。
AI×Eコマースの分野が急成長していることは本文で述べた通りですが、個別の事例を見てもAIを導入する余地はまだまだありそうです。近い将来、日本国内でも爆発的な成果を発揮するイノベーションが起こる可能性に期待したいですね。