若年層は先進層と無関心層が二極化!エシカル消費・サステナブル消費のリアルとは
新規事業やオープンイノベーションのプレイヤーやそれらを実践・検討する企業の経営者はTOMORUBAの主な読者層ですが、こうした人々は常に最新トレンドをキャッチしておかなければなりません。そんなビジネスパーソンが知っておきたいトレンドキーワードをサクッと理解できる連載が「5分で知るビジネストレンド」です。キーワードを「雑学」としてではなく、今日から使える「知識」としてお届けしていきます。
今回は「エシカル消費(サステナブル消費)」について深掘りしていきます。SDGsという言葉がメディアで取り上げられる機会が多くなったこともあり、エシカル消費、サステナブル消費といったワードを耳にすることも増えたかもしれません。
雰囲気では理解しているこれらの言葉には、どのような意味が込められており、どんな問題解決につながるポテンシャルを秘めているのでしょうか。エシカル消費、サステナブル消費にまつわるファクトを紹介しながら実態に迫っていきます。
広がるエシカル消費・サステナブル消費とは?
エシカル(Ethical)には「倫理的な」という意味が、サステナブル(Sustainable)には「持続可能な」という意味がそれぞれあります。そして「エシカル消費」は一般的に地球や社会にとって倫理的な消費として語られることが多く、同様にサステナブル消費は「地球にとって持続可能な消費」という文脈で語られることがほとんどです。本記事ではエシカル消費もサステナブル消費も同様の意味がある言葉として考えます。
エシカル消費に注目が集まり始めた背景にはなにがあるのでしょうか。SDGsやESG投資が活発化していることから、企業がエシカルやサステナブルをキーワードに事業を展開する動きが加速しています。
企業がエシカルやサステナブルなサービスや商品を展開することで、その影響は消費者に波及します。その結果、消費者にとってサービスや商品を選ぶ際に「エシカル・サステナブルであるか」が新たな基準となりつつあるのです。
エコバッグや非プラスチック素材のストローなどを想起しがちですが、こうした背景から、エシカル消費の意味はSDGsの17の目標のほとんどに関連するほど意味が広くなっています。
エシカル・サステナブルの認知拡大で消費者の行動がどう変容しているか
では、実際に消費者の行動はどのように変化しているのでしょうか。2021年6月にボストンコンサルティンググループが公開した調査「サステナブルな社会の実現に関する消費者意識調査結果」によると、大きく以下の5点のポイントが浮かび上がりました。
①地球温暖化/気候変動に関して関心がある人は7割程度
地球温暖化/気候変動に関して関心がある人は7割程度となっていますが、2月の調査と4月の調査で10ポイント以上も差があります。詳しい原因には言及していませんが直近で起こった社会的事象との兼ね合いで行動に変化が起こりやすい可能性があります。
②地球温暖化/気候変動に関しては、年代が上がるほど認知、興味、行動変容の割合は高まる傾向
地球温暖化/気候変動に関しては、年代が上がるほど認知、興味、行動変容の割合は高まる傾向があります。しかし、20代は地球温暖化/気候変動問題について「聞いたことがあるが、興味はない」層と、「聞いたことがあり、興味もある」層が二極化している特徴があります。
③環境に配慮した商品の購入や環境保護のための寄付付き商品を購入したいと感じている人は7割近く
環境に配慮した商品の購入や環境保護のための寄付付き商品を購入したいと感じている人は7割近くいるものの、実際に購入していると回答した人は4割に止まっています。環境に配慮した商品の選択肢が増えれば購入者も増えていきそうです。
④環境価格プレミアムを受容すると回答した人は2~3割程度
環境に配慮されている分、商品価格が上乗せされていることを環境価格プレミアムと言いますが、これを受容すると回答した人は2〜3割程度でした。また、「具体的にどの程度の価格差なら環境負荷の低い商品を選びますか」の問いに5%までが2~3割、10%までが2~3割程度と答えています。
⑤カーボンニュートラル/脱炭素の認知は7割程度で拡大傾向
パリ協定で先進国は「2050年までにCO2排出をゼロにする(カーボンニュートラル)」ことを目標に定めました。カーボンニュートラルの認知は7割程度となっています。注目すべきは、2月の調査と4月の調査で全国の認知度が7ポイントもプラスとなっていることです。①でも述べたように、社会的事象に伴って調査結果にも大きな影響が出ているようです。
参考記事:地球の持続可能性を占うカーボンニュートラル達成への道。各国の目標や関連分野などの基礎知識
【編集後記】認知拡大と選択肢の増加が急務
解説してきたように、エシカル消費・サステナブル消費が包括する範囲はかなり広いことがお分かりいただけたと思います。SDGsの達成も2050年カーボンニュートラルの達成もかなりハードルの高い目標なので、1人でも多くの人が参加しなくてはいけません。そのためには各プレイヤーが地道に認知拡大をして、消費者がエシカル・サステナブルな行動をとるための選択肢を増やすことが急務となるでしょう。
(TOMORUBA編集部 久野太一)
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