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バリュパ消費とは?「感動の共有」「レビュー文化」が生んだコスパ・タイパの次に来る新潮流

バリュパ消費とは?「感動の共有」「レビュー文化」が生んだコスパ・タイパの次に来る新潮流

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新規事業やオープンイノベーションのプレイヤーや、それらを実践・検討する企業の経営者はTOMORUBAの主な読者層ですが、こうした人々は常に最新トレンドをキャッチしておかなければなりません。そんなビジネスパーソンが知っておきたいトレンドキーワードをサクッと理解できる連載が「5分で知るビジネストレンド」です。キーワードを「雑学」としてではなく、今日から使える「知識」としてお届けしていきます。

今回取り上げるのは「バリュパ消費(バリュー・パフォーマンス消費)」です。これまでコストパフォーマンス(コスパ)やタイムパフォーマンス(タイパ)が重視されてきましたが、近年は「価格に見合う価値」ではなく「価格以上の価値」にこそ満足を見出す消費スタイルが注目を集めています。

物価上昇や不安定な経済情勢のなかでも、消費者は「本当に自分にとって価値あるもの」を選ぶようになってきています。本記事では、バリュパ消費の定義と注目される背景、企業事例や今後のマーケティング視点について掘り下げていきます。

バリュパ消費とは得られる体験・質・共感・ストーリーなどの価値を重視する消費スタイル

バリュパ消費とは、「価格以上の価値」や「感動」「納得感」といった主観的な満足を重視する消費行動を指します。Value Performance(バリュー・パフォーマンス)という言葉が語源であり、価格の安さよりも、得られる体験・質・共感・ストーリーといった総合的な価値に重きを置く消費スタイルです。

従来、消費者が重視してきたのは「コストパフォーマンス(コスパ)」=価格に対する機能や量、あるいは「タイムパフォーマンス(タイパ)」=時間対効果でした。しかし、これらを満たすだけでは満足できない層が増えてきています。「安いけど心が動かない」「便利だけど印象に残らない」といったジレンマを感じた消費者が、「心が豊かになる」ような体験や商品を選ぶようになっているのです。

バリュパ消費の背景には、Z世代やミレニアル世代に見られる価値観の多様化、自己表現や自己肯定感を大切にするライフスタイルの広がりがあります。また、SNSでのレビュー共有や「共感消費」の影響力も大きく、他者と同じ商品ではなく、「自分にとって意味がある」と感じられる選択が支持されています。

バリュパ消費が注目される背景には「感動の共有」や「レビュー文化」が

バリュパ消費が注目を集めるようになった背景には、いくつかの社会的・経済的要因があります。

まず、物価高騰や不安定な経済情勢の中で、消費者は「なんでもかんでも買う」スタイルから、「選択して買う」スタイルにシフトしました。限られた予算の中で、何にお金をかけるべきか。その基準が「安いもの」ではなく、「納得できる価値があるもの」へと変化しています。

さらに、SNSの浸透により「感動の共有」や「レビュー文化」が定着し、他者の体験や評価が購買行動に影響を与える時代になりました。インスタグラムやTikTokでは「買って良かった」「これはリピートしたい」といった投稿が共感を集めることが多く、体験価値の重要性が高まっています。

Z世代を中心とした若年層は、「価格は高いけれど、そこにしかない体験」や「自己投資としての支出」に積極的です。たとえば、美容や推し活、アート、クラフトビールなど、趣味・娯楽・自己表現に直結する領域では、明確にバリュパ消費が浸透しています。

このように、バリュパ消費は「節約しつつも、本当に自分にとって価値のあるものにはしっかり支出する」という、新たな消費スタイルとして定着しつつあります。

バリュパ消費の事例紹介

バリュパ消費の波を受け、多くの企業が「価格以上の体験」や「ブランドストーリー」に重きを置いた商品・サービスを展開しています。

推し活:自己肯定感を高める消費の象徴

推し活は、好きなアイドルやアニメキャラクター、VTuberなどを応援する活動を指し、バリュパ消費の象徴的存在として注目されています。グッズ購入やイベント参加、SNSでのシェアなど、価格以上に「推しを応援すること自体に価値を見出す」点が特徴です。

出典:イマドキの若者が“推し活”にはまる背景とは?

推しの存在が日常に彩りを与え、自分の生きがいや仲間とのつながりにつながるため、支出の満足度が高く、単なるモノ消費にとどまらない情緒的な価値が生まれています。

コスメ:自己投資と体験価値の融合

コスメ分野でもバリュパ消費の傾向が顕著です。価格帯の高いデパコスだけでなく、手頃な価格でありながら品質やデザイン、ブランドコンセプトにこだわったコスメブランドが人気を集めています。

出典:アイスタイル

また、店頭での接客体験やSNSでのレビュー文化が購買行動に影響を与えており、「使って満足」「持って嬉しい」という感情的な価値が重視されています。自分自身を高めるための自己投資として、コスメはバリュパ消費と親和性の高いカテゴリーといえます。

バリュパ消費を捉えるために企業が意識すべき視点

バリュパ消費を捉えるには、「価格」や「時間」だけでは測れない価値を、いかにして提供・可視化するかが重要です。以下のような視点が企業には求められます。

共感を呼ぶストーリーの設計

素材や開発背景、創業ストーリーなど、商品やサービスの裏にある物語が共感を呼び、付加価値を高めます。特にZ世代は、企業理念や社会的意義にも敏感です。

UX(ユーザー体験)の磨き込み

購入前・購入時・購入後のすべてのタッチポイントにおいて、体験の質を高めることがバリュパ消費につながります。特にECでは、UIの使いやすさや配送体験、カスタマー対応の丁寧さが重要視されます。

パーソナライズの強化

「自分だけの体験」を重視するバリュパ消費者に対しては、レコメンド精度やカスタマイズ可能なサービス設計が有効です。データ活用による提案力も、顧客満足を押し上げるポイントです。

短期的な売上ではなく、長期的なファン作り

バリュパ消費者はリピート志向が強く、体験に満足すれば周囲に共有・拡散してくれます。短期的な販促ではなく、顧客との長期的な関係構築が重要です。

編集後記

バリュパ消費の広がりは、価格競争に疲弊した企業にとって新たな光となるかもしれません。消費者が「本当に価値あるもの」に対して意識的にお金を使う時代において、企業は安さや速さではなく、「納得感」「共感」「物語性」といった情緒的価値を設計・提供する力が問われています。

今後ますます、「どれだけ売れたか」ではなく、「どれだけ深く刺さったか」が企業の評価軸になるでしょう。バリュパ消費という視点は、プロダクト開発やブランド構築、そしてユーザーとの信頼関係においても重要な指針となるはずです。

(TOMORUBA編集部 久野太一)

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