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近年の半導体業界の動向は?台湾ファウンドリが一極集中、米中貿易摩擦によるリスク、日本企業の巻き返しなどを解説

近年の半導体業界の動向は?台湾ファウンドリが一極集中、米中貿易摩擦によるリスク、日本企業の巻き返しなどを解説

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新規事業やオープンイノベーションのプレイヤーやそれらを実践・検討する企業の経営者はTOMORUBAの主な読者層ですが、こうした人々は常に最新トレンドをキャッチしておかなければなりません。そんなビジネスパーソンが知っておきたいトレンドキーワードをサクッと理解できる連載が「5分で知るビジネストレンド」です。キーワードを「雑学」としてではなく、今日から使える「知識」としてお届けしていきます。

今回のテーマは「近年の半導体業界」です。技術の革新と経済のグローバル化が進む中で、半導体市場はその中心にあります。本記事では、半導体産業の最新動向とそれがビジネスや日常生活にどのように影響を及ぼしているのかを深掘りしていきます。

近年の半導体市場の概要・起源・定義

半導体は現代の技術社会の基盤をなす重要な素材であり、その用途はスマートフォン、パソコン、自動車産業、さらには医療技術に至るまで多岐にわたります。

半導体とは、導体(電気を良く通す素材)と絶縁体(電気を通さない素材)の中間的な特性を持つ物質で、電気的な性質を外部からの刺激(温度変化、光の当たり方、電圧の加え方など)によって制御できるという特徴があります。この特性が、電子デバイスにおいて重要な役割を果たしています。

半導体の歴史は、1947年にアメリカのベル研究所でトランジスタが発明されたことに始まります。この発明が、後の情報化社会の発展を加速させることとなり、結果的に半導体市場の急速な拡大へと繋がりました。今日では、シリコンが主流の半導体素材として広く用いられており、世界各地でその生産が行われています。

近年の半導体市場は、データセンターの増加やAI技術の進化、自動運転車の開発など、新しい技術需要によって大きな変動が見られます。これに伴い、市場はさらに拡大し続けており、特に高性能コンピューティングや5G、IoTデバイス向けの半導体の需要が高まっています。

このように半導体市場は、技術的な進歩と共にその定義と範囲が拡張されつつあり、その動向を追うことは、テクノロジーを利用するすべての産業にとって重要な意味を持っています。

世界の半導体市場は2030年まで年平均成長率が約10%となる見込み

近年、世界の半導体市場は顕著な成長を遂げています。この市場拡大は、スマートフォン、コンピュータ、データセンターの需要増加に加え、自動車や医療機器、家庭用電化製品など、あらゆるデジタルデバイスの進化が推進力となっています。

総務省が公開しているレポートでは、世界の半導体市場(出荷額)は、2015年以降増加傾向にあり、2022年には12兆5,493億円(前年比32.1%増)となっています。また、日本の半導体市場は、2018年から減少していたものの2021年から増加に転じ、2022年には1兆145億円(前年比36.9%増)と増加に転じています。

出典:世界の半導体市場(出荷額)の推移

出典:日本の半導体市場(出荷額)の推移

今後も世界の半導体市場は成長を続ける見込みで、調査会社のSEMIジャパンのレポートによると、2023年から2030年までの年平均成長率は約10%で、特に2024、2025年には高い成長率となる予測になっています。

出典:SEMIジャパン

また、地域別に見ると、アジア太平洋地域が市場の大部分を占めており、特に中国、韓国、台湾の半導体製造業が世界市場において重要な役割を果たしています。これらの国々では、国家レベルでの支援策も手伝って、製造能力の拡大が進められています。

近年の半導体シェアはアジアが優勢。ファウンドリでは台湾一強が続く

半導体のシェアを国別に見ていくと、2023年の予測では日本を除くアジア・太平洋地域が54.5%を占めており、次いで米国が25.5%、欧州その他が11%、日本が9.1%と予測されています。

出典:WSTS

ここで重要なのは、多くの半導体メーカーは製造工場を持たない「ファブレス」という形態をとっていることです。ですので半導体の生産を専門で行っている製造委託企業である「ファウンドリ」が重要になってきます。

ファウンドリのシェアを見てみると、国別では台湾が68%となっており、企業別だと台湾企業のTSMCが61%と圧倒的なシェアを獲得しています。

出典:2023年第4四半期半導体ファウンドリグローバル市場における売上を発表 - Counterpoint Research HK Limitedのプレスリリース

近年の半導体に起こりうるリスク

急成長を遂げる半導体市場ですが、ファウンドリがTSMCに一極集中しているいびつな形もあり、様々なリスクが懸念されています。

ひとつは米中貿易摩擦です。米商務省は2022年10月に先端半導体やその製造に必要な装置、技術について、中国への輸出を事実上禁じています。日本でも2023年7月に同様の措置をとっています。この規制が継続するかぎりは中国は台湾のファウンドリへのアクセスが困難になるため、供給不足に陥る可能性があります。もちろん、規制はさらに強化されるケースもあるため、そうした場合に中国の中小の半導体メーカーが立ち行かなくなるリスクもあります。

もうひとつのリスクは中国による台湾軍事侵攻です。武力によって台湾のファウンドリが中国に差し押さえられた場合、米国をはじめとする半導体メーカーのグローバルサプライチェーンが破綻する恐れがあります。

こうしたリスクに加えて、世界的に原材料が高騰している影響もあり、世界の大手テック企業は半導体を内製化する動きが増えています。また、日本国内でも半導体産業の遅れを取り戻すべく、政府が700億円の開発費を拠出して新会社「Rapidus(ラピダス)」を設立しています。ラピダスはソニー、トヨタ自動車、デンソー、キオクシア、NTT、NEC、ソフトバンク、三菱UFJ銀行など、日本国内大手企業8社が出資している肝入りのプロジェクトであり、国内の先端半導体の持続可能な開発に貢献することが期待されています。

参照ページ:Rapidus株式会社

編集後記

半導体は私たちの日常生活に欠かせないだけでなく、AI、IoT、自動運転車など今後の最先端技術の行く末を担う重要な産業です。近年の半導体業界は市場の成長だけ見れば急成長を遂げているように見えますが、米中の貿易摩擦などのリスクも顕在化しています。また、国内の半導体産業は出遅れを取り戻すために、政府が巨額を投じたプロジェクトにも注目が集まります。

(TOMORUBA編集部 久野太一)

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