「ロボアドバイザー」はミレニアル・Z世代になぜ人気?コロナ禍で加速する新しい資産運用の形
新規事業やオープンイノベーションのプレイヤーやそれらを実践・検討する企業の経営者はTOMORUBAの主な読者層ですが、こうした人々は常に最新トレンドをキャッチしておかなければなりません。そんなビジネスパーソンが知っておきたいトレンドキーワードをサクッと理解できる連載が「5分で知るビジネストレンド」です。キーワードを「雑学」としてではなく、今日から使える「知識」としてお届けしていきます。
今回は、コンピューターが自動で資産を運用する「ロボアドバイザー」がテーマです。ロボアドバイザーによる資産運用は数年前から存在していましたが、この1〜2年でロボアドバイザーをとりまく状況はがらりと変わりました。 今や、資産運用の手段として有力な選択肢となっているロボアドバイザーについて解説します。
ロボアドバイザーはアルゴリズムで資産運用を提案・自動化する
ロボアドバイザーとは、証券会社などが運用しているAIやアルゴリズムによって資産運用に関する助言・提案をしてくれる、もしくは投資そのものを自動化してくれるサービスです。
最大の特徴は、これまで人間が行ってきた資産運用に関するタスクの一部をロボアドバイザーに任せることができる点です。
ユーザーが投資に関する質問にいくつか答えると、ロボアドバイザーは投資方針を定めて提案したり、投資を行ったりしてくれます。
一般的に、ロボアドバイザーには「アドバイス型」と「投資一任型」があり、前者は投資に関するアドバイスだけ提案するのに対し、後者はロボアドバイザーの投資提案をユーザーが了承すれば、あらかじめ定められた予算内で投資を実行してくれます。
グローバルで年平均約30%成長するロボアドバイザー市場。国内でも急成長中
ロボアドバイザー市場はグローバル、そして日本国内でも急成長を遂げています。調査会社のグローバルインフォメーションの公開している市場調査では、ロボアドバイザー市場は2022年から2030年まで29.7%のCAGR(年平均成長率)で成長し、2030年までに418億3000万米ドルに達すると予測しています。
また、国内でも日本投資顧問業協会の統計資料を参照すると、ウェルスナビ、楽天証券、お金のデザイン、マネックス、フォリオのロボアドバイザー主要5社の預かり資産残高は2022年3月末で前年同月比60.5%増の9703億円に拡大しており、1兆円に迫っていることが分かっています。
特に国内市場の成長は著しく、2021年度の預かり資産残高は前年比で2倍近く増加しています。どのような背景があるのでしょうか。
ロボアドバイザーはミレニアル世代、Z世代にも投資の裾野を広げた
ロボアドバイザーの技術は古くは1980年代から、トレーダーや投資マネージャーの補助として使われてきましたが、個人向けサービスとして台頭したのはここ数年です。伝統的な金融企業は富裕層向けのサービスとしてロボアドバイザーを提供してきましたが、ロボアドバイザー市場の成長を後押ししたのはミレニアム世代やZ世代といった若年層と言えます。
その理由はいくつかありますが、ロボアドバイザーは人間による運用と比較すると手数料が安く、少額から投資できるメリットが若年層の投資家に受けています。また、若年層の投資家は40代〜70代の投資家と比べてロボアドバイザーに対する抵抗感が少ないことも市場規模の底上げにつながっていると考えられます。
また、コロナ禍の影響で投資を始める人が増加しており、フェデリティ投信の調査では2021年の投資家比率が54%となっており、前年比で13ポイントも上昇しています。
出典:フィデリティ・ビジネスパーソン1万人アンケート 2022年
また、「コロナ禍の期間を通じて金融知識は変化したか?」という質問に対しては、若年層ほど「この期間に詳しくなった」と答える割合が多くなっています。若年層にとってコロナ禍が金融リテラシーを高める機会となり、ロボアドバイザー市場の底上げにも影響を与えている可能性は高そうです。
【編集後記】オプションが増えれば金融リテラシーも上がる
日本は米国や英国に比べて資産構成における現金の比率が高いことでも知られています。日本は長年低金利が続いていますから、現金を保有していても資産は一向に増えません。「貯蓄から投資へ」が金融政策のスローガンにもなっているように、資産を増やしていくためにも、ロボアドバイザーのような新しいオプションが台頭することは金融リテラシーの向上にも貢献してくれるはずです。
(TOMORUBA編集部 久野太一)
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