存在感を強める「グローバルサウス」なぜ今注目を集めているのか?定義や背景、直面する課題などを解説
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今回のテーマは「グローバルサウス」です。ニュースや新聞などのメディアで見聞きする機会が増えたこの言葉ですが、なぜここまで大きな話題になっているのでしょうか。本記事では、グローバルサウスの定義と背景、現在直面している課題、そして将来の展望などについて解説します。
グローバルサウスの定義と背景
世界経済の格差を「南北問題」と呼びますが、グローバルサウスは南北問題における南側にあたります。つまりグローバルサウスとは、アジアやアフリカに多い新興国や途上国の総称で、先進国の多い北半球との対比として使われるケースが多いです。
グローバルサウスがどのように定義されるかは諸説あります。岸田首相はグローバルサウスの定義について問われた際に「グローバルサウスに固まった定義はない」と答えており、また、中国は世界第2位の経済大国であることから「中国を含めて考えていない」とも述べています。
参照記事:グローバルサウスに「中国含めない」 岸田文雄首相 - 日本経済新聞
グローバルサウスには代替される表現がいくつかあります。世界銀行における「低中所得国」もそうですし、国連の発展途上国の交渉グループ「G77」も近しい意味となっています。さらに、東西冷戦における東西どちらにも属さない国である「第三世界」もグローバルサウスと重複する部分が多いです。
ではなぜ今、グローバルサウスが注目されているのでしょうか。
グローバルサウスの現状と直面する課題
前章で説明した通り、グローバルサウスとは世界を経済的、社会的に北と南で二元的に分けたときの南側という意味でしたが、近年状況が変わりつつあります。というのも、南側の国々が経済的に急速に成長してこれまでの二元的な世界観を覆そうとしているのです。
実際、新興・途上国のGDPは2022年に主要国(G7)を逆転しており、中国を含めインド、インドネシア、タイ、ベトナムといったグローバルサウスの成長を牽引する国々が国際社会で存在感を強めています。
その一方、中央アジア、サハラ以南のアフリカ、中南米といった国々では成長軌道に乗れずに国家の運営自体がうまくいっていない国も少なくありません。決してグローバルサウス全体が急成長しているわけではなく、成長できていない国もありますし、成長している国にも大きな貧富の差が生じていることを知っておく必要があります。
また、グローバルサウスの国々のほとんどは深刻な環境問題を抱えています。これまで先進国が温室効果ガスを大量に排出してきた影響で、気候変動による自然災害などが発展途上国に押し付けられている問題は「環境汚染の移転」と言われ、喫緊の課題となっています。
さらに、産業の国際化が進んだ影響で人件費の安いグローバルサウスの国民が劣悪な環境で低賃金労働をしているケースが増えています。これは先進国による途上国の労働者の搾取という構造になって国際的な問題となっています。加えてグローバルサウスにはジェンダーギャップ指数が下位の国が多く、男女の格差が深刻化しているなど、人権問題も見逃せない課題です。
グローバルサウスは東西どちらの陣営にもくみしないスタンス
主要国の存在感が低下しグローバルサウスが台頭する中で、グローバルサウスは西側諸国とそれに対立する中国・ロシア、どちらにもくみしないスタンスを示しています。西側諸国と中露はいずれも台頭著しいグローバルサウスを陣営に引き込みたいため働きかけを強めているため、必然的にグローバルサウスは発信力を強めているのが現状です。
実際、今年1月にインドのモディ首相は「グローバルサウスの声サミット」と題したオンライン会議を開催し「途上国の発言権を高める」と述べています。
東西陣営とグローバルサウスの力関係はさまざまな局面で影響を与えています。もっとも顕著なのはロシアによるウクライナ侵攻に対するスタンスです。例えば今年3月に岸田首相がインドのモディ首相と会談し「途上国が直面する課題への対応で連携を強化する」という方針を固めています。しかし、一方では伝統的にロシアと友好的な立場をとっており、兵器の調達の約6割をロシアに依存しているとも言われています。
そうした背景から、G7が主導する対ロシア制裁には同調していません。このように、その他のグローバルサウスの国々も自国の実利を追求しがちで、ロシアによるウクライナ侵攻に対して立場を明確にしていないケースが多くなっています。
編集後記
インドが中国の人口を抜いて世界一位になるなど、グローバルサウスの勢いは止まることを知りません。さらに、もう数年すればグローバルサウスの代表国にアフリカの国々が続々と名を連ねることになるでしょう。
グローバル化した現代では私たちは孤立して生きることは難しくなっています。「東」や「西」、「北」や「南」といった境界線も今後曖昧になっていくでしょうから、対立ではなく対話によって、より多くの人々が利益を得られるようになることを期待したいところです。
(TOMORUBA編集部 久野太一)
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