【ビジネストレンドまとめ】注目を集めた5つの事業ドメインとは?
新規事業やオープンイノベーションのプレイヤーやそれらを実践・検討する企業の経営者はTOMORUBAの主な読者層ですが、こうした人々は常に最新トレンドをキャッチしておかなければなりません。そんなビジネスパーソンが知っておきたいトレンドキーワードをサクッと理解できる連載が「5分で知るビジネストレンド」です。キーワードを「雑学」としてではなく、今日から使える「知識」としてお届けしていきます。
本連載が始まってから1年が経ち、これまで20以上のビジネストレンドを紹介してきました。今回はこれまで紹介した中から2021年度にトレンドとなった「注目のビジネスドメイン」を5つ、まとめてご紹介します。
2021年度はコロナ禍にありながら、着実に新しい分野のビジネスが存在感を示した1年でした。特にDX関連の分野が社会実装される事例が増えたり、テクノロジーの恩恵をエンドユーザーが受けるケースも多くなっている印象です。
【ノーコード】スタートアップのMVP開発やDXツールとして躍進
ノーコードは、文字通りソースコードを書かずにソフトウェアやウェブサイトを作れるツールのことです。エンジニアでなくても開発ができるため、スタートアップのMVP(最低限の機能を実装したプロダクト)制作のハードルが下がりました。また、社内ツールをノーコード開発することで、社内業務のDX化にも一役買っています。
ノーコードプラットフォームがサービスを終了してしまうリスクはあるものの、多くの事業者にとってWEBやアプリ開発の有力な選択肢になることは間違いありません。
参照記事:話題の「ノーコード」はなぜ、スタートアップや新規事業担当者にとって有力な手段となるのか?
【音声配信ビジネス】世界で巻き起こる“耳の争奪戦”が日本にも上陸
アメリカでは2020年時点でポッドキャスト利用者が1億人を超える人気があり、これまでメインのプレイヤーだったAppleだけでなくGAFAやSpotifyがこぞって参入する事態になっています。ビッグテックは音声データを集めることでAIの精度を向上させたい狙いがあります。
日本では音声配信ビジネスは2019年に7億円と立ち上がったばかりの市場ですが、2025年には市場規模は420億円となる予測で、爆発的な成長が期待される分野であることがわかります。
出典:デジタル音声広告の市場規模は2020年に16億円、2025年には420億円に
【フェムテック】世界で市場規模は500億ドルに。日本でもスタートアップが急増中
フェムテックとは「Female(女性)」と「Technology(技術)」を掛け合わせた言葉で、女性の健康を改善させるテクノロジーを用いたソフトウェア、製品、診断、サービスのことを指します。
グローバルの市場規模は2025年には500億ドルに達すると予測されています。日本のフェムテックの市場規模は2021年に600億円を超える見込みとなっていて、着実に成長を続けている分野です。
国内でもフェムテックプレイヤーは急増しており、fermataが作成したマーケットマップによると2020年4月時点で国内のフェムテックスタートアップは51社あります。
出典:2020年4月版 日本国内Femtech(フェムテック) マーケットマップ発表!
参照記事:フェムテックで先行する欧米と追従する日本。市場が活気づいている背景とは?
【無人レジ】小売大手が大規模投資を完了。省人化に大きな期待がかかる
中国で2018年ごろに「無人コンビニ」が話題になり、その後下火となりました。代わりに小売の“無人化”ではなく“省人化”を担う存在として無人レジが中国だけでなく日本国内でも注目を浴びています。
日本では2017年度から2019年度にかけてPOSターミナル(レジ端末)の出荷台数が大幅に増加しています。つまり小売大手が従来のレジ端末から無人レジ・セルフレジへのリプレースに大規模な投資をしていることがわかります。今後、無人レジ・セルフレジの社会実装を経て再度「無人店舗」の社会実装が進むのかが期待されます。
参照記事:小売大手がこぞって舵を切る店舗決済の省人化。「無人レジ」の社会実装はいつ来るか?
【量子コンピュータ】スパコンと強みは別だが、可能性は未知数の最先端技術
量子コンピュータはスーパーコンピュータとは全く別のアプローチで計算を行う新技術です。ですので量子コンピュータとスパコンはスペックを比較されがちですが、両者は得意分野が異なるため比較にあまり意味はないと考えられています。
世界の量子コンピューティングの市場規模は、2021年は4億7200万米ドルで2026年までの予測期間中30.2%のCAGR(年平均成長率)という急成長が見込まれる分野です。
現状では用途が未知数ですが今後、量子コンピュータの応用によって情報通信をはじめ、金融、運輸、創薬、化学など幅広い分野で期待されています。
参照記事:量子コンピュータの用途は?「スパコン超え報道」の読み解き方はなど基礎知識を解説
【編集後記】「スタートアップ元年」で飛躍の年にできるか
さまざまなドメインの事業を紹介しましたが、やはり米国や中国の後を追いかけている印象は拭えません。スタートアップエコシステム協会発足のレポート記事で初代デジタル大臣の平井氏が日本のスタートアップについて「最後のチャンスなのでは」と語っていましたが、スタートアップ元年とされている2022年に、日本がリードする新たな事業ドメインが創出されることを期待したいです。
(TOMORUBA編集部 久野太一)
■連載一覧
第1回:なぜ価格が高騰し話題となったのか?5分でわかる「NFT」
第2回:話題の「ノーコード」はなぜ、スタートアップや新規事業担当者にとって有力な手段となるのか?
第3回:世界的なトレンドとなっている「ESG投資」が、スタートアップにとってチャンスである理由
第4回:課題山積のマイクロプラスチック。成功事例から読みとくスタートアップの勝ち筋は
第5回:電力自由化でいまだに新規参入が増えるのはなぜ?スタートアップにとってのチャンスとは
第6回:「46%削減」修正で話題の脱炭素。46%という目標が生まれた経緯と、潜むビジネスチャンスとは
第7回:小売大手がこぞって舵を切る店舗決済の省人化。「無人レジ」の社会実装はいつ来るか?
第8回:実は歴史の深い「地域通貨」が、挑戦と反省を経て花ひらこうとしているワケ
第9回:音声配信ビジネスが日本でもブレイクする予兆。世界の動向から見える耳の争奪戦
第10回:FIREブームはなぜ始まった?「利回り4%」「生活費の25倍の元本」など、出回るノウハウと実現可能性は
第11回:若年層は先進層と無関心層が二極化!エシカル消費・サステナブル消費のリアルとは
第12回:「ワーケーション」は全ての在宅勤務社員がターゲットに!5年で5倍に成長する急成長市場の実態
第13回:なぜいま「Z世代」が流行語に?Z世代の基礎知識とブレイクしたきっかけを分析
第14回:量子コンピュータの用途は?「スパコン超え報道」の読み解き方はなど基礎知識を解説
第15回:市場規模1兆ドルも射程の『メタバース』で何が起こる?すでに始まっている仮想空間での経済活動とは
第16回:『TikTok売れ』はなぜ起こった?ビジネスパーソンが知っておきたい国内のTikTok事情
第17回:パンデミックが追い風に。マルチハビテーションが新しいライフスタイルと地方の課題解決を実現できる理由
第18回:Web3(Web3.0)とは何なのか?Web1.0とWeb2.0の振り返り&話題が爆発したきっかけを解説
第19回:フェムテックで先行する欧米と追従する日本。市場が活気づいている背景とは?
第20回:withコロナに「リベンジ消費」は訪れるか?消費者の“意向”と実際の“動向”からわかること