「これが最後のチャンス」スタートアップエコシステム協会が実現を目指す次世代型の組織とは?
日本のスタートアップの支援、情報発信、ネットワーキングを目的とした組織「一般社団法人スタートアップエコシステム協会」が3月30日に発足した。
29日に行われた設立発表会見では、協会の賛同者となっているPlug and Play Japanや CIC Tokyo、eiicon companyといったスタートアップエコシステムのプレイヤーが参加し、設立の報告や抱負を語った。
【賛同者一覧】
・シニフィアン株式会社 共同代表 朝倉 祐介
・経済産業省新規事業創造推進室長 石井 芳明
・早稲田大学教授 入山 章栄
・A.T. KEARNEY 日本法人会長 梅澤 高明
・東京大学教授 各務 茂夫
・デジタル庁 人事・組織開発 唐澤 俊輔
・株式会社ゼロワンブースター 共同代表/取締役 合田 ジョージ
・一般社団法人ベンチャー・カフェ東京ディレクター 小村 隆祐
・フォースタートアップス株式会社 代表取締役社長 志水 雄一郎
・一般社団法人Startup Lady共同設立者&取締役 鈴木 萌子
・一般社団法人スタートアップ協会 代表理事 砂川 大
・一般社団法人ライフサイエンス・イノベーション・ネットワーク・ジャパン常務理事 曽山 明彦
・衆議院議員 平 将明
・衆議院議員 平井 卓也
・eiicon company 代表/founder 中村 亜由子
・Global Entrepreneurship Network(GEN) 日本代表 西口 尚宏
・Creww株式会社 取締役COO 水野 智之
・世界銀行上級都市専門官 兼 TDLCチームリーダー Victor Mulas
・村上 臣
・Women in VC Tokyo創設者 Sophie Meralli
・東京都
・一般社団法人日本経済団体連合会
・一般社団法人新経済連盟
・Plug and Play Japan株式会社 執行役員CMO 藤本 あゆみ
・CIC Japan合同会社ゼネラル・マネージャー 名倉 勝
平井卓也氏「五カ年計画で一気に追い抜く。これが最後のチャンス」
▲科学技術政策担当大臣の小林鷹之氏
冒頭の来賓挨拶で登壇した科学技術政策担当大臣の小林鷹之氏は「協会が日本のスタートアップ支援に重要な情報を集約して、国内外に発信していただけることは国としても心強い」と話し、政府として歓迎の意を表した。
加えて、岸田総理大臣が会見の会場となっているCICを訪問した際の話題に触れ、総理が今年を「スタートアップ創出元年にする」と捉えていることを説明し、日本でスタートアップが躍進するための土壌づくりが一層重要になるとの認識を示した。
▲衆議院議員の平井卓也氏
続いて、初代デジタル大臣を務めた衆院議員の平井卓也氏が登壇し、日本のスタートアップについて「五カ年計画で一気にキャッチアップし追い抜いていく。ある意味でこれが日本の最後のチャンスなのでは」と危機感を口にした。
▲衆議院議員の平将明氏
最後の来賓挨拶として登壇した平将明氏は「エコシステムはトライアンドエラーの繰り返し。どこに根詰まりがあるのか一個ずつ解決して初めてエコシステムが生まれる」と語り、エコシステムの醸成は一筋縄ではないことに言及した。
スタートアップエコシステムの定義と、次世代型エコシステムの在り方
▲Plug and Play Japanの藤本あゆみ氏
続いて、協会設立の主旨をPlug and Play Japanの藤本あゆみ氏が説明。協会が定めている「スタートアップエコシステム」の定義は以下の通り。
さらに、定義の中にも登場するプレイヤーの「人々」「スタートアップ」「組織」は以下の通り。
■人々
・アイディア、発明を持つ人々
・起業家マインドを持った人々
・スタートアップで働く人々
・スタートアップの活動を共にする外部の組織の人々
・投資家
・メンター
・アドバイザー
■スタートアップ
・さまざまなステージのスタートアップ
・起業家
・スタートアップチームメンバー
■組織
・政府・自治体
・大学
・アドバイザリ&メンタリング組織
・インキュベーター
・アクセラレーター
・コワーキングスペース
・サービス・プロバイダ(コンサルティング、会計、法務など)
・イベント主催者
・スタートアップコンテスト
・クラウドファンディング
・金融機関
・メディア
このようにスタートアップエコシステムに関わるプレイヤーはさまざまだが、上記に挙げられるだけに収まらないプレイヤーを巻き込むことが協会の役割になるとのこと。
また、日本が目指すべきスタートアップエコシステムの形としては、シリコンバレー型を踏襲するだけでなく、近代的なスタートアップエコシステムを構築しているパリ、ロンドン、シンガポールを参考にする。
具体的には、シリコンバレー型に含まれるプレイヤーに加えて政府・行政が手厚く支援することでより活発なエコシステムを生み出す次世代型を目指す。
情報集約・発信はNotionで。スタートアップエコシステム協会の3つの役割
藤本氏はスタートアップエコシステム協会の取り組みについて解説した。役割は大きく「情報集約」「ワーキンググループ」「グローバルコラボレーション」の3つに分けられるという。
はじめに情報集約。前述のようにエコシステムには関連するプレイヤーが多いことから情報を集約するプラットフォーム機能が求められる。協会では誰でもアクセス可能で、共同編集型のポータルサイトをNotionで開設し、データベースを構築する。
参照ページ:スタートアップエコシステム協会 | Startup Ecosystem Association Japan
次にワーキンググループの構築。構想としては、協会に理事会を組成し、問題ごとに小さなグループを作ることでスピーディに解決策を練り上げる体制を作る。
最後に、活動をグローバルにするためにバイリンガルでの情報発信・収集を徹底する。世界のスタートアップを日本に、日本のスタートアップを世界に進出させるために尽力するとのことだ。
【編集後記】新しい世界では「速い魚が遅い魚を食べる」
藤本氏が協会の主旨説明の最後に、World Economic Forumの議長を務めるクラウス・シュワブ氏の言葉から「新しい世界では大きな魚が小さな魚を食べるのではなく、速い魚が遅い魚を食べるということ」という一文を引用したのが印象的だった。
スタートアップの強みであるスピード(速い魚)や、WEB3の文脈で語られるWEB2におけるGAFAの弊害(GAFAイコール大きい魚とも受け取れる)などを示唆している名言であり、小さくスピーディに動ける体制を目指す協会のスタンスがよく現れていた。
(取材・文:久野太一)