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【OIプロジェクト始動!】執行幹部・成迫氏に聞く。数多のイノベーションを生み出し続けてきたデンソーが見据える先とは?

【OIプロジェクト始動!】執行幹部・成迫氏に聞く。数多のイノベーションを生み出し続けてきたデンソーが見据える先とは?

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35の国と地域に拠点を有し、自動車部品メーカーとして世界最大級の規模を誇る株式会社デンソー(以下、デンソー)。日本のものづくりの先端を切り開いてきた同社が、その卓越した技術力を生かし、地域創生・社会課題解決に向けて動き出している。

その取り組みの一つが『DENSO OPEN INNOVATION PROJECT』だ。これは、デンソーがパートナー企業などとの共創により、少子高齢化や労働力不足をはじめとした社会課題解決を目指すオープンイノベーションプロジェクト。以下のように「地域創生」などをテーマに掲げ、パートナー企業を募集。採択されたパートナー企業は、デンソーの新規事業を担当する部署と共同で、ソリューションの開発や社会実装に挑む。

<募集テーマ>

1.地域創生にかかるもの

・近年多発する自然災害への対策をしたい

・交通事故をなくしたい

・安全で快適な生活環境を守りたい

・地域内での消費を活性化したい

・地域の様々な資源を活用した循環経済を目指したい


2.その他デンソーの技術・アセットを活用した新たな社会ソリューションや事業アイデアの実現


――そこで今回、TOMORUBAでは、プロジェクト実施に至る背景や狙い、実現したい世界観などを明らかにするため、執行幹部 兼 研究開発センタークラウドサービス開発部長の成迫剛志氏にインタビュー取材を実施。1949年の設立以来、数多のイノベーションを生み出し続けてきたデンソーが見据える「地域創生」とは?そのビジョンに迫った。


▲株式会社デンソー 執行幹部 兼 研究開発センター クラウドサービス開発部長 成迫剛志氏 

明治大学経営学部卒業後、日本IBM、伊藤忠商事、SAPジャパン、北京大学方正集団、ビットアイル・エクイクスなどを経て、2016年にデンソー入社。コネクティッドカーにおけるIoT推進を担当し、2017年にデジタルイノベーション室室長、2018年にMaaS 開発部長を経て、2021年1月には執行幹部に就任。現在は、研究開発センタークラウドサービス開発部長を務める。

リアルとサイバー空間をつなげる高い技術力を生かした共創を通じて、「非モビリティ分野」でのイノベーションを目指す

――プロジェクトの詳細についてお伺いする前に、市場環境についてお聞きします。成迫さんは、現在のマーケットの状況や社会からのニーズをどのように捉えていますか。

成迫氏 : デンソーは自動車部品の製造を主力事業にしていますが、現在、自動車業界では「100年に一度の大変革期」といった話題が盛り上がっていて、自動車メーカーさんも「CASE」への取り組みを加速させています。また、トヨタ自動車による「モビリティカンパニー」への転換に象徴されるように、移動に関するサービスの開発・提供など、モビリティ分野への注力もトレンドです。

そうした動きに対応する形で、デンソーもEV車のバッテリーマネジメント、自動運転、人流や物流に関するビジネスなど、様々な分野に着手しているのですが、自動車業界に連動するという意味では従来のビジネスとそれほど変わりはありません。

一方で、昨今はDXやデジタルツインなどの分野にも注目が集まっていて、技術の発展に期待が寄せられています。端的に言えば、DXやデジタルツインは、リアル空間とサイバー空間を繋ぎ合わせることで価値を生み出す仕組みのことですが、デンソーにおいては、自動車部品というリアル空間にあるプロダクトとソフトウェアというサイバー空間を繋げる高い技術を有しています。既存事業で培った技術は、自動車やモビリティの分野だけでなく、DXやデジタルツインにも活かせると感じています。

――デンソーの技術力は、自動車やモビリティの分野以外でも、新たな価値を生み出すポテンシャルを秘めているということですね。

成迫氏 : はい。実際に、デンソーは、1950年代に洗濯機、1990年代に携帯電話を開発して、シェアトップを獲得しています。また、QRコードの開発も広く知られています。QRコードは、今や世界中の人々の生活に無くてはならないものになりました。そうした実績を踏まえれば、デンソーの既存のアセットを利用して、新たな価値を提供することは十分に可能です。

ただ、デンソーと取引するのは、自動車やモビリティの業界が中心のため、私たちの技術を目にする機会は少ない。センサーやロボット、アクチュエーターなど、DXやデジタルツインを実現する技術には強みを持っているのですが、あまり多くの方に知られていないのが現状です。

そこで、そうした技術をある程度、オープンにして、様々な業界のパートナーと協調しながら、新たな価値の創出に挑みたいというのが、DENSO OPEN INNOVATION PROJECTの狙いです。

デンソーの社是の一つに「研究と創造に努め常に時流に先んず」があります。ここでの「創造」とは、培った技術を社会に適用することを指します。今回のプロジェクトでは、その「創造」に取り組みたいと考えています。


メインテーマは「地域創生」。デンソーの膨大な先端技術シーズをベースにした共創も!アジャイル、クラウドに長けたデンソーのクラウドサービス開発部との共創で社会課題解決を目指す

――DENSO OPEN INNOVATION PROJECTの概要についてお聞かせください。

成迫氏 : 先ほどもお話ししたとおり、デンソーは長年、自動車部品メーカーとして事業を展開してきたので、非モビリティ分野に取り組むにしても、市場とのタッチポイントに限りがあります。そこで、本プロジェクトでは、何らかの課題を抱えている企業や自治体、エンドユーザー、又は課題を抱えるお客様をお持ちの企業と共同で課題の深掘りをして、ともに課題解決を図ります。

――プロジェクトの募集テーマをお聞かせください。

成迫氏 : 募集テーマは二つ設定しています。一つめは「地域創生」です。近年、日本の地域が抱えている、災害、事故、生活、消費、地域資源の利活用などに関する課題を募集し、オープンイノベーションで課題解決を図ります。

二つめのテーマは、デンソーの技術・アセットを活用したシーズベースのオープンイノベーションです。こちらも社会課題解決を目指す共創を想定しており、コネクテッド、ブロックチェーン、QRコード、RFIDなど、多種多様なデンソーの技術を活用した、社会への新たな価値提供を目指します。

――パートナー企業に提供できるリソースやアセットについて教えてください。

成迫氏 : まず、リソースとして挙げられるのは、デンソーが培ってきた技術やノウハウ、社会実装力です。技術に関しては、数えきれないほど存在していますし、場合によっては、第三者の技術とのコラボレーションも可能です。

また、全国の自治体とのネットワークも活用可能です。デンソーグループは全国に拠点を有していますし、多数の自治体との連携実績があります。地域における実証などの際に大いに貢献できるのではなでしょうか。

一方で、共創を推進する「クラウドサービス開発部」からのサポートもリソースと言えるかもしれません。同部はデジタルイノベーション室として2017年4月に設立された、クラウド活用によるDXやアジャイル開発に取り組む組織です。ソフトウェアのアジャイル開発やクラウドの活用に長けたメンバーのほか、ビジネス企画を専門とするメンバーなども在籍しており、開発・営業・サービス提供をアジャイルに組織内で一体化しています。デンソーグループの一部署ですが、機能としてはスタートアップに近い組織です。

クラウドサービス開発部ではスマホで運転をスコアリングし、ドライバーの安全意識を高めるアプリ「yuriCargo(ゆりかご)」を開発・提供し、愛知県刈谷市では、市や多様な企業と一緒に、「刈谷市yuriCargoプロジェクト」で安心・安全なまちづくりに取り組んでいます。こうした実績を生かし、パートナー企業と混成のチームとなって、共創を推進します。

yuriCargoプロジェクト:https://yuricargo.com/


▲「yuriCargo」は、スマートフォンに内蔵されている加速度センサーやGPSなどの情報で、自動で運転を検知し、運転中の急ブレーキ、急ハンドル、急加速、速度超過、スマートフォンの操作などを検出する。運転終了後には運転スコアを算出し、安全運転意識を高めることも可能だ。(※画像はプレスリリースより抜粋)

本プロジェクトでは課題の掘り下げ段階から注力。一つのチームとして、足元のローカルな課題にも向き合えるパートナー企業を求めたい。

――今回のプロジェクトを通じて、成迫さんが特に解決したいと考えている課題は何でしょうか。

成迫氏 : 課題というよりも、マクロな世界観の話になってしまうのですが、今回のプロジェクトが「環境にやさしい社会」を実現する、一つのきっかけになってくれれば嬉しいですね。

コロナ禍以降のデジタル化の急速な進展により、様々な領域でリモートワークが可能になり、都市一極集中が解消されつつあります。都市一極集中は、これまで社会にいろいろな歪みを生んでいたと思いますし、それが分散化されるのは良いことだと言えるでしょう。多くの人々が渋滞や移動のストレスなどから解放されて、豊かな暮らしを営める条件が整いつつあるわけです。

私は、そうした社会の先に求められるのは、真の意味で環境にやさしい、地球と共生する社会なのではないかと思っています。「カーボンニュートラル」や「サーキュラーエコノミー」などのバズワードとしてではなく、誰もが環境と調和しながら、なおかつ無理のない暮らしがおくれるような世界観です。もちろん、そうした世界を一気に実現できるわけではないのですが、今回のプロジェクトがその第一歩になってくれることを期待しています。

――「デンソー=自動車」というイメージを持つ方は多いと思いますが、今回のプロジェクトでは「まち」や「暮らし」や「社会」に焦点が当たっているわけですね。

成迫氏 : そうですね。もともと、モビリティ業界は、人々を移動させることを目的にしてしまいがちです。そのため「より快適で、より安全に、よりスムーズに」という方向に課題を掘り下げてしまいます。

しかし、今、重要だと思うのは「これって移動する必要あるの?」といった逆方向の問いです。例えば、買い物という消費行動には、人が店舗に移動して買い物をするパータンと、商品が移動して自宅に届くパターンの二つがあります。人が常に移動して買い物をするわけではなく、二つパターンは目的によって使い分けられています。

つまり、自動車のような「移動の手段」ではなく、人々の「移動の目的」に焦点を絞って課題を掘り下げることで、新たな解を見つけることができるのではないでしょうか。私個人としては、そうした問いの先に、環境にやさしい、誰もが無理なく暮らせる社会があるような気がしています。


――パートナー企業と、どのような共創を実現したいとお考えですか。

成迫氏 : オープンイノベーションは、取り組むだけでは意味がありません。「深い議論ができた」や「実証実験を実施した」だけでは足りない。課題を抽出し、解決策を練り上げて、さらに、ビジネスとしても成立していなければいけません。経済合理性の伴った課題解決がなされていることが非常に重要で、さらにそのアイデアが社会に貢献できている状態を目指します。

そのため、場合によっては、ビジネスが小規模に留まることもあり得ます。ただし、デンソーグループは国内外に広大なネットワークを有しているので、小規模のビジネスを横展開し、多数の地域に適用することは可能です。足元のローカルな課題を掘り下げた先に、グローバル規模のビジネスが生まれる可能性は十分にあると思います。

――最後に、応募を検討している企業にメッセージをお願いいたします。

成迫氏 : 「社会を良くしたい」「人々の暮らしをより良くしたい」といった想いは持ちつつも、足元の課題にもしっかり向き合ってくれるようなパートナーを求めたいです。ともに課題を深掘りし、それと同時に解決策も考えられるようなアジャイルなチームを作りたいですね。

オープンイノベーションの現場では「売りたいもの」と「やりたいこと」が決まった状況で取り組みがスタートすることがしばしばあります。しかし、DENSO OPEN INNOVATION PROJECTは、そうした取り組みとは一線を画します。課題の掘り下げに注力し、デザイン思考や人間中心設計のアプローチも用いながら、課題解決に近づいていきます。ともに考え、課題解決を実現できるパートナーをお待ちしております。


取材後記

約200社のグループ会社を展開し、自動車部品メーカーとして世界2位の売上規模を誇るデンソーグループ。日本のものづくりを牽引してきた業界のリーディングカンパニーだ。

今回のプロジェクトでは、その卓越した技術力を活用した共創が可能となる。デンソーが保有する膨大な先端技術と山積する地域の課題の組み合わせにより生み出されるイノベーションのバリエーションは数限りない。それほど、このプロジェクトには可能性が詰まっているということだろう。

コンタクトを検討する企業は、こちらのページから是非メッセージを送ってみてはどうだろうか。

(編集:眞田幸剛、取材・文:島袋龍太、撮影:齊木恵太)

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  • 田上 知美

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  • 増山邦夫

    増山邦夫

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