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実は歴史の深い「地域通貨」が、挑戦と反省を経て花ひらこうとしているワケ

実は歴史の深い「地域通貨」が、挑戦と反省を経て花ひらこうとしているワケ

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新規事業やオープンイノベーションのプレイヤーやそれらを実践・検討する企業の経営者はTOMORUBAの主な読者層ですが、こうした人々は常に最新トレンドをキャッチしておかなければなりません。そんなビジネスパーソンが知っておきたいトレンドキーワードをサクッと理解できる連載が「5分で知るビジネストレンド」です。キーワードを「雑学」としてではなく、今日から使える「知識」としてお届けしていきます。

今回取り上げるのは地域通貨です。地域通貨は対象地域に住んでいないとどうしても実感しにくいものですが、実は長い間さまざまな形で社会実装されてきた歴史ある施策でもあります。

試行錯誤されながら進化してきた地域通貨がなぜ今注目されているのか、歴史を知ることで現在のムーブメントがより見えてきます。最新技術を使った有力な事例などもあわせて紹介していきます。

大規模開発の反省から地域づくりを再定義。地域の再生を目指し地域通貨の歴史がはじまる

そもそも、地域通貨が導入され始めた背景はなんなのでしょうか。専修大学教授の泉留維氏の寄稿した記事『日本における地域通貨の現状と課題 -近年の新潮流を踏まえて』では、全国大規模開発の反省が要因だとしています。

地方振興や農村振興を目的に、1962年に閣議決定された「全国総合開発計画」では重化学工業を軸に全国的な大規模開発を推進しましたが、想定通りに企業誘致ができず、公害も発生するなど、反省点が多く見つかりました。

大規模開発で雇用を増やし、それを起爆剤に地域の再生を狙うアプローチは失敗した経験から、1990年代後半から「地域づくり」のアプローチが活発化します。地域づくりでは、経済的な活性化という単一目的ではなく、文化、福祉、景観等も含めた総合的な発展を内発的に促します。

この地域づくりの手法として地域通貨は勃興しました。

【1990年代後半〜2005年】コミュニティと経済を活性化させる地域通貨がブームに

地域づくりを成功させるためには「コミュニティの活性化」と「地域経済の活性化」が定性的な目標となります。アメリカでの導入事例を参考に、日本国内でも市民団体やNPOが主体となって商品券媒体の地域通貨があちこちで稼働し始めます。主に集落や小学校区程度の規模で助け合いの促進、ボランティア活動の評価などを主目的にしたものがほとんどでした。


出典:日本における地域通貨の現状と課題 -近年の新潮流を踏まえて

1990年代後半から2005年にかけては初期の地域通貨ブームが起こり、年間に数十件のペースで地域通貨稼働数が増えていきました。

【2010年代】成功事例となった「木の駅」誕生と、最新技術との融合

2005年以降、上図では稼働数は減っているものの、新しい地域通貨はコンスタントに登場しています。2011年に誕生した「木の駅」は地域通貨の稼働数の30%を占めており、成功事例の筆頭となっています。

木の駅は土佐の森・救援隊が行う森林整備事業に参加すると、協賛金を原資とした「モリ券」がもらえる仕組みです。モリ券は地場産品と交換できます。このように地元の自然資源を担保や原資として地域通貨を発行するタイプが2010年代のひとつの特徴です。

2010年代のもうひとつの特徴は、ICカードやスマートフォンアプリに地域通貨を載せる電子タイプの台頭です。現在も使われているWAONに入金できるタイプの地域通貨が生まれるなど、有力な事例が出てきています。

積み上げたノウハウを成功事例に昇華させるプロジェクト

ここまで紹介してきたように、地域通貨は地域づくりの手段として着実にノウハウと実績を積み重ねてきました。地域で親しんでもらうための仕組み作りと、日常的に使ってもらうためのUX、この2点が重要であることが過去の反省から明らかになりつつあります。

反対に考えると、新規参入のプレイヤーは仕組み作りとUXが得意であれば、地域再生に貢献できる可能性があるとも言えます。実際、すでにいくつかのプレイヤーは地域通貨で実績を作りつつあります。

7地域で導入されているカヤックの『まちのコイン』

アプリやウェブの制作を手がける面白法人カヤックは、地域通貨ソリューション『まちのコイン』の導入事例を着実に増やしています。2021年6月時点で神奈川県小田原市・鎌倉市・厚木市、東京都の大塚駅周辺、福岡県八女市、長野県上田市、岡山県新庄村の7地域で導入中です。

まちのコインは導入する地域ごとにコミュニティ活性、経済活性するためのデザインをカスタマイズしていますが、一番の特徴はスマートフォンのアプリによるゲーミフィケーションの活用です。

コインを送ったりもらったりすることでレベルアップする仕組みや、まちの中で3つだけ存在するラッキーコインを実装したりと、ただの電子通貨ではなく、使っていて楽しいデザインにすることで地域に親しまれています。

参考記事:鳥取県智頭町×カヤック | 次世代の担い手継承にコミュニティ通貨「まちのコイン」を使った実証実験

インバウンド消費を地域で循環させる飛騨・高山地域の地域通貨『さるぼぼコイン』

2017年から稼働開始している飛騨・高山地域の地域通貨『さるぼぼコイン』。スマートフォンアプリにさるぼぼコインをチャージして、対応店舗ではQRコードで支払う仕組みという点ではLINE PayやPayPayと同じです。

にもかかわらず、さるぼぼコインは2020年12月末時点で、ユーザー1万8616人、加盟店1511店舗、コインの販売額が3年で28億9000万円となっており、大成功とも言える規模になっています。

飛騨・高山地域は観光の街ですが、インバウンドで得たお金を地域内で消費してもらわなければ地域が潤わない、という課題がありました。さるぼぼコインを導入することで、インバウンド客がさるぼぼコインで購買活動をして地域にお金を落とします。そして、さるぼぼコインは地域内でしか使えないので、インバウンド消費のお金が地域内で使われるという好循環を生み出しました。

このモデルは観光産業が盛んな地域では横展開が可能なソリューションです。

【編集後記】地道に積み上げたノウハウが花ひらく

昨今、地域通貨が盛り上がっているのはウォッチしていましたが、調べてみると歴史が深く驚かされました。地域通貨と聞くと1999年の地域振興券を思い出しますが、地域振興券は一度使ってしまえばおしまいで、景気にあまり良い影響をもたらしませんでした。

当時は「バラマキ施策だ」と批判を受けていましたが、こうしたチャレンジと反省を経て、現在ではしっかりと地域に好循環をもたらす地域通貨が花ひらこうとしているのかもしれません。

(TOMORUBA編集部 久野太一)


■連載一覧

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第2回:話題の「ノーコード」はなぜ、スタートアップや新規事業担当者にとって有力な手段となるのか?

第3回:世界的なトレンドとなっている「ESG投資」が、スタートアップにとってチャンスである理由

第4回:課題山積のマイクロプラスチック。成功事例から読みとくスタートアップの勝ち筋は

第5回:電力自由化でいまだに新規参入が増えるのはなぜ?スタートアップにとってのチャンスとは

第6回:「46%削減」修正で話題の脱炭素。46%という目標が生まれた経緯と、潜むビジネスチャンスとは

第7回:小売大手がこぞって舵を切る店舗決済の省人化。「無人レジ」の社会実装はいつ来るか?

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コメント2件

  • 岩井恵梨

    岩井恵梨

    • 日本特殊陶業株式会社 
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    カヤックさんの事例や、ぽつぽつと出ているのは以前知った際に興味を持っていたのですが、
    いままたさらに加速していんですね。
    各自の地域通貨もよいですが、地域同士も共創で新たな好循環が生まれたりするといいですよね。
  • 眞田 幸剛

    眞田 幸剛

    • eiicon company
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    チェックしました