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実装フィールドは中部国際空港島周辺から愛知県全域へ!進化した『TECH MEETS』が今年度も動き出す――主催者・愛知県と過去参加企業が語る参加メリットとは?

実装フィールドは中部国際空港島周辺から愛知県全域へ!進化した『TECH MEETS』が今年度も動き出す――主催者・愛知県と過去参加企業が語る参加メリットとは?

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愛知県は、海外との玄関口である中部国際空港島とその周辺地域を「革新的事業・サービスのオープンイノベーションフィールド」として位置づけ、周辺エリアの企業や施設が抱える課題の解決や新たな価値の創出に向けて、先端デジタル技術の導入を支援。その成果は県内の他企業にも広く展開し、空港島を起点とした技術の早期普及を目指している。この取り組みは「あいちデジタルアイランドプロジェクト推進事業 先端デジタルサービスパイロット事業」として進められている。

本事業の一環として、昨年度よりスタートしたのが『TECH MEETS』だ。空港島周辺の企業や施設等(ニーズ企業)と、先進的なデジタル技術を持つテック企業(シーズ企業)が連携し、新たな事業やサービスの早期実現を目指す共創プログラムである。今年度は、「大規模イベントの課題解決コース」「ライトハウスコース」が新設され、社会実装に向けた取り組みがさらに強化された(※応募締切 8/29(金)23:59)。

本記事では、事業の主催者である愛知県 経済産業局と、昨年度のプログラムに参加したシーズ企業2社(センサーズ・アンド・ワークス/AItoAir)の声をもとに、このプログラムの概要や成果、参加メリットを紹介する。

【愛知県 経済産業局】 今年度は新たに2つのコースを新設「社会実装につながるプロジェクトを一つでも多く支援していきたい」

――昨年度から『TECH MEETS』がスタートしました。同プログラムを通して、参加企業や対象エリアにどのような変化や反応が見られましたか。

大橋氏: まず、昨年度の『TECH MEETS』では、中部国際空港島とその周辺地域において地域の課題解決に取り組みました。課題を提示する「ニーズ企業」と、その課題に最先端の技術やサービスで挑む「シーズ企業」をマッチングし、実証実験を行うという形で進めた結果、想像以上に多くの企業から応募があり、10件の共創プロジェクトが実現しました。普段は他業種と接点のない企業にもオープンイノベーションに取り組む機会が生まれ、有意義な取り組みになったと感じています。

実際に参加した企業からは、「自社だけでは気づけなかった視点が得られた」「短期間でも成果が見えた」といった声が寄せられました。県外から参加したシーズ企業も多く、「産業が集積する愛知県で実証できたことで、今後の展開につながる出会いがあった」との声もありました。全体として、非常に良い反響をいただいたと思います。

▲愛知県 経済産業局 産業部 産業振興課 デジタル産業グループ 主事 大橋諒 氏

――特に印象に残っている共創プロジェクトは?

大橋氏: 印象的だったのは、味噌かつ店チェーンの矢場とんさんと地元カンパニーさんによる「あと配土産」の取り組みです。これは、お土産をその場で渡すのではなく、QRコード付きの小箱を渡して後日自宅に届ける新しい仕組みで、『TECH MEETS』では実証実験として実施され、メディアにも多く取り上げられました。

名古屋駅のお土産ランキングでは他県の商品が上位を占めるなか、県内企業の愛知らしい商品が注目されるきっかけとなり、地域産品の認知拡大に寄与する事例となりました。

▲2025年3月、中日ホール&カンファレンス(名古屋市)で開催された『TECH MEETS』の成果発表会。ニーズ企業・シーズ企業の担当者や関係者、オープンイノベーションに関心を持つ多くの来場者で賑わった。

――今年度の『TECH MEETS』では、愛知県全域を対象とした「大規模イベントの課題解決コース」と、昨年度の参加企業が実証を続ける「ライトハウスコース」が新設されました。この2つのコースを設けた狙いを教えてください。

大橋氏: 当初よりこのプログラムは、中部国際空港島やその周辺地域での実証を経て、県内全域へ展開していくコンセプトで進められています。昨年度で成果が得られたことを踏まえ、今年度は対象エリアを拡大するべきだと考え、「大規模イベントの課題解決コース」を新設しました。2026年9月〜10月には、愛知県ではアジア競技大会・アジアパラ競技大会が開催される予定で、国内外から多くの来訪者が見込まれます。通常とは異なる課題が生じることが想定されるため、それらに対応するコースとして設けたものです。

「ライトハウスコース」に関しては、自治体の事業は単年度での実施が基本で、年度末までに完了させる必要があります。一方で、実証実験の進捗によっては、年度内に成果をまとめることが難しい場合もあり、実証で終わってしまい実装に至らないという課題がありました。そこで今年度は、前年度から継続して支援するこのコースを新設しました。

鷹見氏: また、「ライトハウス(灯台)」という名前の通り、実装まで至るような模範的なプロジェクトを作っていきたいという思いもあります。そうした取り組みが、これから参加する企業にとって良いモデルになるはずです。ですから、このコースには、昨年度からの継続支援という意味合いに加えて、成果が出たプロジェクトを広く発信するという2つの役割があります。

▲愛知県 経済産業局 産業部 産業振興課 デジタル産業グループ 課長補佐 鷹見広志 氏

――今後の『TECH MEETS』について、どのような展開を描いていらっしゃいますか。

大橋氏: 今年度から対象エリアを愛知県全域へと拡大することで、より多様な地域産業の課題に対応したプロジェクトが増えると考えています。その中で、単発の実証で終わらせるのではなく、その成果を事業化や社会実装にどうつなげるかが問われるフェーズになると感じます。将来的には、『TECH MEETS』が新たなビジネスやサービスが生まれる場として広く認知され、企業が継続的に成長できる仕組みにしていくことを目指しています。

――今年度、注目しているプロジェクトはありますか。

大橋氏: 個人的に注目しているのは、プロサッカークラブ・名古屋グランパスさんの取り組みで、会場内の案内や駐車場の混雑といった課題に取り組まれると聞いています。私も豊田市出身で試合観戦経験もあるのですが、これらの課題が解決されれば、地域や観客、選手、運営側のそれぞれにとってプラスになると思うので、今回の取り組みに注目しています。

――鈴木さんはいかがですか。

鈴木氏: 今年度も昨年以上にさまざまなジャンルのニーズ企業が参加しており、例えば、地元のケーブルテレビを運営するメディア関連の企業にも手を挙げていただいています。こうした多様な企業との共創から、どんな新しい事例が生まれるのか楽しみにしています。

▲愛知県 経済産業局 産業部 産業振興課 デジタル産業グループ 主事 鈴木正洋 氏

――最後に、『TECH MEETS』への参加を検討中の企業や本プログラムに注目している方々に向けて、メッセージをお願いします。

鷹見氏: まず、ニーズ企業には多くの課題があると思います。世の中の変化が速く、既存のビジネスだけでは通用しにくい時代です。課題解決や新規事業には、自社だけでなく外部の力も活用することが重要でしょう。このプロジェクトを通じて、社内技術を見直しながら外部企業と連携し、課題解決や事業創出を進めてほしいと思います。県としても、そうした取り組みの広がりに期待しています。

一方、シーズ企業には実証の場が限られているという課題があります。優れた技術があっても、社会に広がりにくいのが現状です。この機会に現場で技術を試し、課題を見つけて改良しながら、ビジネス化につなげてほしいです。

鈴木氏: 『TECH MEETS』は、非常に学びの多い取り組みだと感じています。私が日ごろ接している中小の製造業にとっても、共創による新たな価値やサービスの創出は、これからの大きな課題です。だからこそ、多くの県内企業の皆さんにもこの事例を参考にしていただき、新規事業やイノベーションに前向きに取り組んでいただけたら嬉しいです。

大橋氏: このプログラムは、単なる技術導入ではなく、課題解決を起点とした共創の場です。ニーズ企業には、自社の課題を率直に共有していただきたいと思います。そこから、新たな技術や出会いが生まれる可能性があります。一方、シーズ企業には、この場をチャレンジの機会として活用し、現場での実証を通じて技術の価値を県内に示しながら、連携や事業の可能性を広げてほしいです。『TECH MEETS』をきっかけに、実りあるプロジェクトが一つでも多く生まれることに期待しています。

【昨年度参加企業①/センサーズ・アンド・ワークス】 人流データで人気イベントの要因を分析!eスポーツ会場で「3方よし」の価値創出

――はじめに、御社の事業概要と強みとされている技術についてお聞かせください。

堀江氏: 当社では、人流を中心としたセンサーの開発からデータを取得するためのネットワーク環境の構築までを手がけています。さらに、取得した人流データの活用方法についても、コンサルティングを含めて支援しており、実際に人流データを”使える形”にするところまでサポートしています。センサーの開発からデータの活用まで、一気通貫で提供しているのが特徴です。

▲【写真右】株式会社センサーズ・アンド・ワークス 代表取締役 堀江聡 氏

――昨年度の『TECH MEETS』に応募されたきっかけや、その理由を教えてください。

堀江氏: 元々、我々が人流データをビジネスにしようと考えた理由は、スマートシティが注目されていたからでした。スマートシティとなると自治体が中心になるため、当社の主要なクライアントは自治体が大半を占めていますが、BtoG事業はビジネスチャンスが少なく、年に一度の予算申請で仕事を得られるかどうかという世界でもあります。それに頼りきってしまうと事業規模拡大が困難だったことから、BtoBに展開できる可能性を模索し始めました。

とはいえ、人流データを活用したいという企業は、まだそれほど多くありません。ですから今回の『TECH MEETS』のような愛知県の補助事業の中で、民間企業であるAichi Sky Expoさん(愛知国際会議展示場株式会社)と一緒に取り組めるプログラムは魅力的であり、この機会を通じてBtoBのチャンスを広げたいと考えたのが、応募のきっかけです。

――御社は兵庫県の企業ですが、愛知県の自治体の取り組みに対して、どのような期待や可能性を感じておられたのでしょうか。

堀江氏: 愛知県は、BtoGで何かを結びつけて自治体の課題を解決していこうとする姿勢が強い県だと思っています。新たな取り組みの芽が育ちやすい土壌ではないかと考えています。そういう意味では、自治体が当社のような企業を育ててくれることには大いに期待しています。

――昨年度のプログラムでは、大規模展示会場を運営されているAichi Sky Expoさんと「人流デジタル化によって“3方よし”を実現するDXソリューション」というテーマに挑戦されました。まずは、『TECH MEETS』に参加してみての率直な感想をお聞かせください。

堀江氏: 着地点としていたのが、当社とAichi Sky Expoさんの間に閉じたデータの利活用ではなく、来場者やイベント主催者も巻き込んで、3方よしの取り組みを具現化することでした。当社からは人流データの活用方法について提案をさせていただき、Aichi Sky Expoで開催された複数のイベントで人流データを計測し、データと共にイベントの分析レポートも提供したのです。

それを、Aichi Sky Expoさん経由でイベント主催者に提供していただいたところ、特にeスポーツイベントの主催者から高評価を受けることができました。イベント主催者に人流データの価値を実感してもらえたことは、Aichi Sky Expoさんにとっても、この事業を継続する大きな理由になったと思いますし、当社にとっても大きな成果でした。単にデータを計測して提出するだけでは生まれなかった成果を、今回のプログラムを通じて形にできたことが良かったと感じています。

▲愛知県国際展示場「Aichi Sky Expo」。愛知県常滑市の中部国際空港島内に立地している。国際空港直結型の国際会議・展示場であり、大規模コンサートやフェス、スポーツ、eスポーツ大会、式典、学会、国際会議など幅広いイベントに対応。

――そのeスポーツイベントでは、具体的にどんなデータを取得されたのですか。

堀江氏: 1つのホールを貸し切って2日間にわたって開催されたイベントで、延べ約6,000人が来場しました。当社は、ホールの出入り人数、ホール内の滞留人数、一人あたりの平均滞留時間、人流の時間的な推移などをデータ化。そのうえで、どのイベントが人気を集め、どのように人流として表れていたのかを分析し、人気の要因についても人流の観点からコメントを添えて、レポートにまとめて提出しました。

――人流データからどんな事象が読み取れ、どういった要因分析をされたのですか。

堀江氏: イベントコンテンツとホール内滞留人数との相関や来場者分析を行う中で人気のあったコンテンツがどれであったかを定量的に評価しました。また、その主たる客層分析からなぜ人気があったのか?という要因分析を実施しました。併せて来場者滞留時間とイベントシンクロ率などから来場者の満足度についても指標化しました。これらのデータ、指標、要因分析結果は今後類似のイベントにおいてどの程度の集客が見込めるか、どの程度のキャパシティが必要かといった企画設計だけでなく、イベンターに選ばれるホールとなりうる営業的側面をサポートします。

――他の同様のプログラムと比較して、『TECH MEETS』はどのような点が良かったとお感じですか。

堀江氏: 実質3ヶ月ほどの期間で、採択から実証、現地での活動のフォローアップ、そして最終報告会まで一連の流れを、プログラムを運営しているeiiconさんがしっかり伴走してくれたことは大きかったと思います。そうした手厚い支援があったからこそ、快適にプロジェクトを進められたのだと感じています。

――最後に、今年度の『TECH MEETS』に応募を検討している企業に向けてメッセージをお願いします。

堀江氏: どのテーマにおいても、最終的に重要なのは「3方よし」だと思います。テーマを提示する事業者と、応募する企業がWin-Winの関係になるのはもちろんですが、このプログラムは市民や県民、行政も巻き込んだ取り組みです。だからこそ、参加する市民や県民、あるいはその場で事業を展開したいプレイヤーも含め、関わるすべての人がハッピーになれる視点が欠かせません。そうした「3方よし」の目線を大切にし、それをきちんと形にできれば、多くの人に喜んでもらえる取り組みになるのではないでしょうか。

【昨年度参加企業②/AItoAir】 エッジAIで手荷物業務をアップデート!空港現場で技術を実装し、活用の現実解に挑む!

――まず、御社の事業概要と強みとされている技術についてお聞かせください。

ジョン氏: 当社は私が2021年に立ち上げた、エッジAI技術の社会普及を推進する企業です。エッジAIとは、インターネット接続を必要としないAI技術で、企業機密を扱う現場や、通信環境が不安定な場所でも安定運用できる点が特長です。昨今、「自社でもAIを導入したいが、どうすれば最も効果的か」と悩まれる企業が増えています。そこで、当社では、AI導入のコンサルティングを含め、総合的なサポートを提供しています。

技術的な強みとしては、独自のAIモデル最適化技術を保有している点が挙げられます。一般的に、安価なパソコンでは演算能力が不足しがちですが、当社の技術は、そうしたデバイスでもAI精度を犠牲にすることなく、AI運用を可能にしています。

▲【写真右】AItoAir株式会社 CEO Jeong Doowon(ジョン ドゥウォン)氏

――昨年度『TECH MEETS』に応募を決めた理由は何でしょうか。このプログラムのどのような側面に惹かれましたか。

ジョン氏: さまざまなオープンイノベーションプログラムに目を通す中で、当社が重視しているのは、主に次の3つのポイントです。1つ目は、当社の技術で相手側の課題が解決できるかどうか。2つ目は、実証実験のために必要な予算が確保されているか。そして3つ目が、プロジェクト実行までのスピードです。今回の『TECH MEETS』は、これら3点をすべて満たしていたので、これが応募の決め手になりました。

――昨年度の『TECH MEETS』では、ANA中部空港さんとAIカメラでの「手荷物タグの読み取り」と「手荷物容積の推定」に取り組まれました。エッジAI技術の展開先は幅広いですが、今回のような“空港”という場所への実装に挑戦しようと考えた理由は?

ジョン氏: 応募前、当社のお客様の大半が製造業だったこともあり、「全く異なる業界で、当社の技術が通用するのか」と不安を感じました。当初、募集内容だけでは、現場の状況が十分に把握できず「本当に当社の技術が先方にとって有効だろうか」と確信を持てずにいたのです。そんな中、踏み出したきっかけとなったのは、エントリー前に事前ヒアリングの機会をいただけたことです。先方から直接、手荷物処理のラインの流れや、人的な運用の仕方などを詳しく聞くことができ、「これなら、当社の技術で貢献できる」と確信を持つことができました。

――実際に『TECH MEETS』に参加してみての率直な感想についてもお伺いしたいです。

ジョン氏: 何より印象的なのは、プログラム全体のスピード感です。通常、AI導入プロジェクトは、立ち上げからデータ取得、評価環境の整備までにおおよそ3〜6か月を要します。

しかし、『TECH MEETS』では採択直後にすぐ現場に行かせていただき、即座にデータを取得してテストモデルを作成。現場で運用することができました。本当にわずか1か月半という短期間で、構想から実際に現場で動くプロトタイプまで形にできたことが、他プロジェクトでは経験ができない、非常に貴重な体験になりました。

――このプログラムが、御社のビジネスにもたらした影響などはありますか。考えの変化などもあればお聞きしたいです。

ジョン氏: 空港というフィールドは、これまで当社が経験してきた製造現場とは大きく異なり、例えば、ベルトコンベアに流れてくる対象物や環境条件は大きく変動しますし、関与するステークホルダーも非常に多岐にわたります。そのため、データ取得環境のばらつきに対応する必要がありましたし、さまざまな関係企業のスタッフや旅客が動く中で、彼らのワークフローを考慮したシステム仕様も求められました。

こうした技術的・運用的な課題が次々と出てきましたが、一つひとつ解決策を先方とともに模索しながら、実行に移してきました。まだ最終形には至りませんが、都度ゴールを共有し、課題を解決しながら、達成感を分かち合える経験は、通常の受発注関係ではなかなか得られない貴重なものです。当社としても経験値が高まったと感じています。

また、自社の技術が「誰の、どんな課題解決に使えるのか」を改めて見直すきっかけにもなりました。製造現場で培った技術を、空港という新たな分野に展開できたことは、結果的に大きな会社成長につながっています。荷物ハンドリング業務の次世代化に貢献できていることがやりがいとなり、「自分たちの技術が本当に社会の役に立っている」と実感できる良い経験になりました。

――今年度も「ライトハウスコース」で、ANA中部空港さんと引き続き共創を継続されます。昨年度を踏まえ今年度は、どのような活動にしたいとお考えですか。

ジョン氏: 昨年度の最も大きな学びは、AIの精度よりも「現場で無理なく使ってもらえるかどうか」が導入の成否を左右するということでした。当時、約1か月で開発したアプリは、現場側の作業動線とうまく合わず、結果的に現場のスタッフに余計な負荷をかけてしまいました。この反省を踏まえ、今年度の取り組みでは、まずは現場に寄り添うシステムの設計を出発点としています。

その上で、今年度の「ライトハウスコース」では、手荷物の誤搭載ゼロを目標に掲げています。空港のバックヤードでは、旅客から預かっている手荷物を正しい行き先へ分類するためのエリアが設けられています。そこにAIカメラを設置し、手荷物を積載するコンテナのID番号や、手荷物と紐づいている行き先の情報、さらにはスタッフの動きを総合的に捉えることで、誤ったコンテナに手荷物を入れる瞬間を検知し、アラートを発信する仕組みを構想しています。現在は、誤搭載を起こさないために、複数回の目視確認が必要で、現場側の作業負担負荷が大きくなっています。その作業負荷と、スタッフの心理的負荷の軽減に貢献したいと考えています。

――最後に、応募を検討している企業に向けてメッセージをお願いします。

ジョン氏: 『TECH MEETS』は、単なるコンテストではなく、事務局の皆さんを含め、技術の実装まで伴走してくれる実践の場です。私どもも当初は「自社の技術が本当にパートナー企業の役に立つのか」と迷いましたが、事前ヒアリングや現場見学を通じて、応募前にフィット感が確かめられたことで、一歩踏み出すことができました。

採択後は、パートナー企業の現場に入り込み、「このシステムは、誰にとって嬉しいのか」「どうすれば喜んで使ってもらえるか」を毎回すり合わせながら、課題を一つひとつ解決してきました。PoCでは「完璧な精度」よりも「この仕組みが現場で使えるか」を優先しました。このように小さなマイルストーンを一つずつ達成していくことが、次のフェーズにつながると感じています。自社の技術を社会実装する最高の舞台が『TECH MEETS』ここにあります。ぜひ応募してみてください。

取材後記

先端技術の社会実装を目指すテック企業にとって、実証の機会や事業化の足がかりは決して多くない。愛知県が昨年度から実施している『TECH MEETS』は、そうした企業に対し、中部国際空港島とその周辺地域を実装フィールドとした共創の場を提供してきた。地域課題に先端技術で挑む本プログラムは、参加企業にとって新たな展開のきっかけにもなっている。今年度は2つの新コースが加わり、対象も県全域へと拡大。現場に根ざした実装に挑みたい企業にとって、有意義なチャレンジの場となりそうだ。

※『TECH MEETS』の応募締切は8/29(金)23:59となります。

(編集:眞田幸剛、文:林和歌子)

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