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介護人材は間も無く32万人不足へ。台頭は必須の『介護ロボット』の現状と先行事例を紹介

介護人材は間も無く32万人不足へ。台頭は必須の『介護ロボット』の現状と先行事例を紹介

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新規事業やオープンイノベーションのプレイヤーやそれらを実践・検討する企業の経営者はTOMORUBAの主な読者層ですが、こうした人々は常に最新トレンドをキャッチしておかなければなりません。そんなビジネスパーソンが知っておきたいトレンドキーワードをサクッと理解できる連載が「5分で知るビジネストレンド」です。キーワードを「雑学」としてではなく、今日から使える「知識」としてお届けしていきます。

今回取り上げるテーマは『介護ロボット』です。日本ではあらゆる業界で人手不足が課題となっていますが、特に介護業界の人手不足は深刻です。世界に先んじて超高齢化社会を迎えることがほぼ決定的になっている日本において、介護ロボットはゲームチェンジャーとなるのでしょうか。介護ロボットを取り巻くファクトを紹介しつつ、活用事例を交えながら解説していきます。

2025年には介護人材が32万人不足。介護ロボットの台頭は必須の課題

介護ロボットがビジネストレンドとなっている背景には、深刻な介護者の人手不足があります。厚生労働省が2021年7月に発表している介護職員数の必要数の資料によると、2019年度時点では211万人となっています。2025年度には介護職員数の必要数は243万人で2019年度比で32万人増加する見込みです。仮に2019年度から2025年度まで介護職員数が横ばいに推移した場合、そのまま32万人の職員が不足する計算になります。

出典:介護人材確保に向けた取り組みについて | 厚生労働省

こうした背景を理由に、人手不足を補う手段として介護ロボットに期待が集まっています。厚生労働省によると、「ロボット技術が応用され利用者の自立支援や介護者の負担の軽減に役立つ介護機器を介護ロボットと呼んでいる」と説明されています。また、介護ロボットの定義は「情報を感知(センサー系)」「判断し(知能・制御系)」「動作する(駆動系)」これら3つの要素技術を有する、知能化した機械システムであるとされています。

参照ページ:介護ロボットの開発・普及の促進| 厚生労働省

ひっ迫する人手不足を受けて、もはや介護の現場を支えるために介護ロボットの台頭は必須の課題となっています。そのため、具体的に開発の支援が必要な分野を経済産業省と厚生労働省が定め、介護ロボットにおける「開発重点分野」が特定されています。

開発重点分野には具体的に、装着型パワーアシストなどの「移乗支援」、歩行アシストカートなどの「移動支援」、自動排泄処理装置などの「排泄支援」、見守りセンサーなどの「認知症の方の見守り」などがあります。

出典:介護ロボットの開発支援について

介護ロボット市場規模は前年度比12.1%増のハイペースで成長中

矢野経済研究所が2022年10月に公開したレポートによると、日本国内の介護ロボットの市場規模は、2021年度に21億7,500万円に達すると推計されており、これは前年比で12.1%増と急成長していることがわかります。今後も成長速度はそのままに、2025年度には36億2500万円まで市場規模を拡大させる見込みとなっています。

出典:介護ロボット市場に関する調査を実施(2022年)

急成長の要因として、コロナ禍で在宅期間が長くなったことから在宅向けのラップ式簡易トイレ、施設向け排泄予測ロボットなどが好調に推移しているとのことです。

国内で広がる介護ロボットの好事例

介護ロボットの事例は国内で数多くあります。

介護負担を軽減するプロダクト開発を行うabaは、排泄センシングおよびパターン解析によって、要介護者の排泄状態を検知・記録できるデバイスを開発しています。世界に先駆けて「においセンサ」で便と尿を検知し、要介護者に負担を与えない形状のプロダクト『Helppad』を、大手ベッドメーカー・パラマウントベッドと共同開発し、販売を開始しています。

参照記事:排泄ケアシステムを開発するaba、福祉用具レンタル事業のリーディングカンパニーであるヤマシタ社と資本提携

また、睡眠の質をアップデートするプロダクト・サービスの開発に取り組むアックスロボティクスは2022年4月、要介護者の褥瘡(じょくそう、床ずれのこと)を予防するロボットベッド『Haxx:ハックス』を開発し、介護療養施設を運営する一燈会とともに実証実験を開始しています。同社はプレシリーズAとして約1億円の資金調達を実施しており、累計調達額は約2億円に達しています。

参照記事:ロボット枕を開発する「アックスロボティクス」 | プレシリーズAで約1億円の資金調達を実施、睡眠の質のアップデートへ

さらに、DXロボットの開発を手掛けるugoは、開発するアバターロボット『ugo Pro』を、ツクイグループが運営する介護付有料老人ホームで試験導入しています。アバターロボットは要介護者への声かけや目的地への誘導することが可能で、アバターロボットに搭載されたカメラを通じて、遠隔操作しているスタッフが要介護者の様子を確認することができます。

参照記事:介護のツクイホールディングス×アバターロボットの「ugo」 | 遠隔操作に障がい者スタッフを登用した実証実験を開始

【編集後記】グローバルではソーシャルロボット市場が急拡大

日本は2055年には4人に1人は後期高齢者となると推計されています。世界に先んじて高齢化が進んでいるだけに、介護ロボットの分野では先行できるポテンシャルを秘めていると言えるでしょう。

グローバルに目を向けると、介護ロボットも含めた「ソーシャルロボット」の市場が急拡大していて、2021年〜2027年の年平均成長率(CAGR)は31%という高さで、国内の介護ロボットの市場規模の成長速度よりも早いペースとなっています。つまり、グローバルで品質の高い介護ロボットの需要が高まることはほぼ決定しているわけですから、日本は介護ロボットの分野で世界に向けて一日の長を見せつけられるかが焦点となりそうです。

参照ページ:市場調査レポート: ソーシャルロボット市場 : 世界の産業動向、シェア、規模、成長、機会、2022-2027年予測

(TOMORUBA編集部 久野太一)

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