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現実と同等の仮想空間を構築する『デジタルツイン』はなぜ製造業に効果的?東京都のデジタルツイン計画とは?

現実と同等の仮想空間を構築する『デジタルツイン』はなぜ製造業に効果的?東京都のデジタルツイン計画とは?

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新規事業やオープンイノベーションのプレイヤーやそれらを実践・検討する企業の経営者はTOMORUBAの主な読者層ですが、こうした人々は常に最新トレンドをキャッチしておかなければなりません。そんなビジネスパーソンが知っておきたいトレンドキーワードをサクッと理解できる連載が「5分で知るビジネストレンド」です。キーワードを「雑学」としてではなく、今日から使える「知識」としてお届けしていきます。

今回特集するキーワードは「デジタルツイン」です。デジタルツインはさまざまなユースケースが考えられ、いずれもうまく機能すればインパクトの大きいものです。さらにデジタルツインは活用できる分野も多岐にわたっているため、キャッチアップしておいて損はない新技術と言えるでしょう。

デジタルツインは現実世界をデジタルに再現する技術

デジタルツイン(DigitalTwin)とは、現実世界のモノ・ヒトなどあらゆるものから得たデータを基にして、それらを仮想世界に再現することを指します。デジタルツインの対象はあらゆるものではありますが、ビジネスの側面から見ると製造業やヘルスケア産業でのデジタルツイン活用が加速しています。

人間の行動、思考、感情、価値観、性格などの個人データを収集してデジタル上に再現する「ヒューマン・デジタルツイン」も注目を集めている分野ではありますが、本記事では主に製造業やヘルスケアといった産業に関するデジタルツインについて解説していきます。

例えば、現実世界の自社製品から収集した膨大なデータを活用して、現実に限りなく近い状態の自社製品をデジタル上にデジタルツインとして再現します。そしてデジタルツインを利用して現実に近い物理的なシミュレーションを行い、製品のテストのコストカットをしたり、開発期間を短縮することなどが可能になるのです。

デジタルツインの市場規模は2027年に735億米ドルまで成長

調査会社のグローバルインフォメーションが公開しているレポートによると、デジタルツインの市場規模は、2022年の69億米ドルから2027年には735億米ドルへと急成長する見込みとなっています。この期間の年平均成長率は実に60%超という高い数字です。


出典:市場調査レポート: デジタルツイン市場 

レポートではデジタルツイン市場の成長を牽引しているのは製造業であり、特にコスト削減やサプライチェーン業務の改善にデジタルツインが活用されていると説明されています。また、ヘルスケア産業は今後のデジタルツイン市場の中でも最も成長率が高くなると予測されており、様々な病状、薬物や治療への反応といった個人からの継続的なデータを取得することで、患者のデジタルツインが医療現場で活用されることが期待されています。

参照ページ:市場調査レポート: デジタルツイン市場 

東京都のデジタルシフト推進にデジタルツインを採用

東京都では2020年からデジタルトランスフォーメーションに着手しており、『スマート東京・TOKYO DataHighway戦略』と題してDXを推進しています。その具体的な施策をまとめた資料『スマート東京実施戦略』が同年2月に公開されており、この施策の中にデジタルツインが明記されています。


参照:スマート東京実施戦略 東京版Society 5.0の実現に向けて

東京都は都政にデジタルツインを用いることで「都政のアップデート」「都民・都内滞在者のQOL向上」「都内企業の稼ぐ力向上」の効果を期待しています。取り組みの先駆けとして、まずは西新宿、南大沢、都心部、ベイエリア、島しょ地域をデジタルツイン化し街のDXを推進する計画です。


参照:スマート東京実施戦略 東京版Society 5.0の実現に向けて

資料には、目指す姿として「都市の図面を2Dから3Dに精緻化。リアルタイムデータも付加した新たな地図を作る」と明記されており、これを実現するために「都市の3Dデジタルマップ化に向けた検討」「3Dビジュアライゼーション実証事業」「官民連携データプラットフォームの構築」といった施策を実施します。

こうした施策が実現すれば、サイバー空間で災害対策や渋滞対策といった社会課題の検証ができるほか、公共データや民間データなど、様々なデータをオープンAPIで呼び出し連携する官民連携プラットフォームを構築することが可能になります。

【編集後記】デジタルツインによって官民の横のつながりが拡張するか

デジタルツインはデータが多いほどサイバー空間で得られる情報の精度があがります。そのため、ひとつの事業者や自治体で独自の仕様でデジタルツインを構築するよりも、互換性を持って横のつながりを広げられるかどうかが鍵となりそうです。都政では官民の連携を前提としている計画なので、成功事例として全国展開できる見本となれば日本のDXは加速するでしょう。

(TOMORUBA編集部 久野太一)


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