NFT・メタバース・Web3はどう違う?注目を集める「新しいエコシステム」5選
新規事業やオープンイノベーションのプレイヤーやそれらを実践・検討する企業の経営者はTOMORUBAの主な読者層ですが、こうした人々は常に最新トレンドをキャッチしておかなければなりません。そんなビジネスパーソンが知っておきたいトレンドキーワードをサクッと理解できる連載が「5分で知るビジネストレンド」です。キーワードを「雑学」としてではなく、今日から使える「知識」としてお届けしていきます。
今回は過去に本連載で取り上げたキーワードの中から、特に注目を集めている「新しいエコシステム」を5つ、まとめて紹介します。
【NFT】ブロックチェーンで唯一無二だと証明できる技術
本連載で約1年前に紹介したNFTですが、現在もなお高い注目を集めているエコシステムです。NFTとは、Non-Fungible Tokenの略で、日本語では「非代替性トークン」や「代替不可能なトークン」と表現されます。
例えばビットコインは自分の1BTCと他人の1BTCを交換しても同じ価値で、「代替可能」です。一方、例えばシリアルナンバーが刻印された記念の100円通硬貨を、他人の持つ普通の100円硬貨と交換すると価値が変わってしまいます。このようなことを「非代替性」と呼びます。
近年NFTの市場を賑わせているのは自動生成されたデジタルアートNFTの「ジェネラティブ(ジェネレーティブ)NFT」という領域です。アートの芸術性や希少性というよりも、売買益を狙った取引が続き価格が高騰しているのが現状です。技術としては優れているNFTが今後どのような展開を見せるのか注目されます。
関連記事:なぜ価格が高騰し話題となったのか?5分でわかる「NFT」 - TOMORUBA (トモルバ) - 事業を活性化するメディア
【メタバース】仮想空間で経済活動ができる市場規模1兆ドルを見据えた近未来の巨大産業
メタバースとは、大勢のプレイヤー(アバター)と共有でき、コミュニケーションや経済活動が行える「仮想空間」です。Facebookが社名をMetaに変更したことでもメタバースは注目を浴びました。
Meta社のデモでは必ずといっていいほどVR/ARのヘッドセットが登場しますが、「メタバース=VR/AR」ではありませんので注意が必要です。『マインクラフト』や『どうぶつの森』といったゲームも、メタバースに含まれます。
米国の調査会社Emergen Researchのレポートによると、世界のメタバース市場は2020年の476.9億米ドルから、2028年に8,289億ドルに成長する見込みとのことです。この驚異的な年平均成長率はコロナ禍での在宅需要の高まりも追い風になっています。
関連記事:市場規模1兆ドルも射程の『メタバース』で何が起こる?すでに始まっている仮想空間での経済活動とは - TOMORUBA (トモルバ) - 事業を活性化するメディア
【Web3(3.0)】GAFAなどに依存しない分散型のWebのあり方
Web3とは、次世代のウェブのアイデアの総称です。その特徴はさまざまに語られていますが、共通して言えるのは以下のようなことでしょう。
・GAFAに代表されるビッグテック企業のコントロール外にあること
・分散型のネットワーク(ブロックチェーン)を基盤にしていること
・検証可能性、所有権、経済インセンティブがある
簡単に歴史を振り返ると、閲覧だけできる静的ページが主流だったのが【Web1.0】で、GAFAなどのプラットフォーマーが台頭し、誰でも相互的な発信ができるようになったのが【Web2.0】でした。
ただ近年、インターネットユーザーの活動のほとんどはGAFAをはじめとしたビックテック企業がなければ成り立たなくなっていることから、Web3のアイデアが多く生まれている状況です。
関連記事:Web3(Web3.0)とは何なのか?Web1.0とWeb2.0の振り返り&話題が爆発したきっかけを解説 - TOMORUBA (トモルバ) - 事業を活性化するメディア
【地域通貨】大規模開発の反省から、地域通貨が地域再生の新しい手段に
地域通貨とは「地域づくり」のアプローチの手段のひとつです。地域づくりでは、経済的な活性化という単一目的ではなく、文化、福祉、景観等も含めた総合的な発展を内発的に促すことを目的としています。
1960年代〜1990年代までは地域づくりの手段は大規模な開発がメインでした。しかし重化学工業を軸に全国的な大規模開発を推進しましたものの、想定通りに企業誘致ができず、公害も発生するなど、反省点が多く見つかりました。
大規模開発の反省を活かし、1990年代から少しずつノウハウを積み重ねてきたのが地域通貨です。2017年から稼働している飛騨・高山地域の地域通貨『さるぼぼコイン』は2020年12月末時点で、ユーザー1万8616人、加盟店1511店舗、コインの販売額が3年で28億9000万円に達し、地域通貨の成功事例のひとつとなっています。
関連記事:実は歴史の深い「地域通貨」が、挑戦と反省を経て花ひらこうとしているワケ - TOMORUBA (トモルバ) - 事業を活性化するメディア
【TikTok売れ】15億ユーザーを射程に捉えたTikTokの潜在層に刺さるマーケティング手法
エコシステムというよりマーケティング手法に近いですが、『TikTok売れ』というワードは日経トレンディの2021年ヒット商品ベスト30で1位となり、モノを売る・買うプラットフォームとしてTikTokに注目が集まっています。
きっかけは小説『残像に口紅を(著:筒井康隆)』のリバイバルヒットです。同作は1989年に出版された30年以上も前の作品ですが、TikTokクリエイターのけんご氏が書評を投稿した2021年7月以降、11万部を増刷する大ヒットとなりました。
TikTokの特徴は「おすすめフィード」の閲覧数が多いことです。ユーザーの興味・関心に合わせてコンテンツを提供するため、商品を知らない「潜在層」へ効率的にアプローチすることができます。
TikTokは2022年にユーザー数15億に達する予測で、当面は『TikTok売れ』が続くと考えられます。
関連記事:『TikTok売れ』はなぜ起こった?ビジネスパーソンが知っておきたい国内のTikTok事情 - TOMORUBA (トモルバ) - 事業を活性化するメディア
【編集後記】ごっちゃになりやすいが定義は異なるNFT・メタバース・Web3
今回紹介したキーワードの中でも、NFT・メタバース・Web3は正しく説明できる人は少ないかもしれません。たしかにそれぞれのキーワードは密接に絡んでいて、メタバース内で取引されるものがNFTである可能性もありますが、メタバースで必ずしもNFTが利用されているわけではありません。
また、NFTもWeb3もブロックチェーンを活用することが定義に含まれていますが、Web3ではブロックチェーンを活用するものの、必ずしもエコシステム内でトークンを発行するかどうかは決まっていません。
今後メジャーになっていく可能性を秘めたこれらの概念を今のうちにしっかり理解しておきたいところです。
(TOMORUBA編集部 久野太一)
■連載一覧
第1回:なぜ価格が高騰し話題となったのか?5分でわかる「NFT」
第2回:話題の「ノーコード」はなぜ、スタートアップや新規事業担当者にとって有力な手段となるのか?
第3回:世界的なトレンドとなっている「ESG投資」が、スタートアップにとってチャンスである理由
第4回:課題山積のマイクロプラスチック。成功事例から読みとくスタートアップの勝ち筋は
第5回:電力自由化でいまだに新規参入が増えるのはなぜ?スタートアップにとってのチャンスとは
第6回:「46%削減」修正で話題の脱炭素。46%という目標が生まれた経緯と、潜むビジネスチャンスとは
第7回:小売大手がこぞって舵を切る店舗決済の省人化。「無人レジ」の社会実装はいつ来るか?
第8回:実は歴史の深い「地域通貨」が、挑戦と反省を経て花ひらこうとしているワケ
第9回:音声配信ビジネスが日本でもブレイクする予兆。世界の動向から見える耳の争奪戦
第10回:FIREブームはなぜ始まった?「利回り4%」「生活費の25倍の元本」など、出回るノウハウと実現可能性は
第11回:若年層は先進層と無関心層が二極化!エシカル消費・サステナブル消費のリアルとは
第12回:「ワーケーション」は全ての在宅勤務社員がターゲットに!5年で5倍に成長する急成長市場の実態
第13回:なぜいま「Z世代」が流行語に?Z世代の基礎知識とブレイクしたきっかけを分析
第14回:量子コンピュータの用途は?「スパコン超え報道」の読み解き方はなど基礎知識を解説
第15回:市場規模1兆ドルも射程の『メタバース』で何が起こる?すでに始まっている仮想空間での経済活動とは
第16回:『TikTok売れ』はなぜ起こった?ビジネスパーソンが知っておきたい国内のTikTok事情
第17回:パンデミックが追い風に。マルチハビテーションが新しいライフスタイルと地方の課題解決を実現できる理由
第18回:Web3(Web3.0)とは何なのか?Web1.0とWeb2.0の振り返り&話題が爆発したきっかけを解説
第19回:フェムテックで先行する欧米と追従する日本。市場が活気づいている背景とは?
第20回:withコロナに「リベンジ消費」は訪れるか?消費者の“意向”と実際の“動向”からわかること
第21回:子供が家族の介護をサポートする「ヤングケアラー」の実態と、その問題とは?
第22回:半導体不足はなぜ起きた?米中貿易摩擦、巣ごもり需要、台湾への依存などを解説
第23回:【ビジネストレンドまとめ】注目を集めた5つの事業ドメインとは?