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長引くコロナ禍で顕著になる“K字経済”とは?格差が拡大する「ヒト」と「企業」

長引くコロナ禍で顕著になる“K字経済”とは?格差が拡大する「ヒト」と「企業」

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新規事業やオープンイノベーションのプレイヤーやそれらを実践・検討する企業の経営者はTOMORUBAの主な読者層ですが、こうした人々は常に最新トレンドをキャッチしておかなければなりません。そんなビジネスパーソンが知っておきたいトレンドキーワードをサクッと理解できる連載が「5分で知るビジネストレンド」です。キーワードを「雑学」としてではなく、今日から使える「知識」としてお届けしていきます。

今回は「K字経済」とは何かに迫ります。端的に言えば格差が広がることを指す言葉ですが、コロナ禍が長引く中で世界でK字経済が助長されている地域があります。なぜコロナ禍でK字経済が拡大したのか、日本国内の状況はどうなのか、「ヒト」と「企業」の側面から解説していきます。

経済の二極化が進む「K字経済」はコロナ禍で拡大

K字経済とは富裕層と貧困層などの経済格差が拡大していくことを指す言葉です。右肩上がりのグラフと右肩下がりのグラフがアルファベットのKの字に似ていることから名付けられています。

コロナ禍の影響で経済的に潤う「勝ち組」と、マイナスの影響を受けてしまう「負け組」の差がじわじわと開いてしまう状況が続き、K字経済に拍車をかけています。K字経済はヒト単位でも企業単位でも発生しているのが現状です。

富裕層と貧困層の格差がコロナ禍によって広がる

K字経済の影響の「ヒト」の側面から見ていきます。今に始まったことではありませんが、日本や米国では貧富の差が拡大していることが社会課題となっています。


引用:K字経済とは 富裕層と貧困層が二極化

図のように、米国では上位10%の富裕層が国民所得に占める比率が40%を超えています。対して、下位50%を合計しても国民所得の10%余りにしかなりません。

コロナ禍では、低賃金労働者が雇用環境の悪化など皺寄せをうけやすくなっています。その一方で、コロナ禍で発生した株高の恩恵を上位10%は享受できたのです。2022年7月現在では、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を受けて株価は低調な動きとなっていますが、それでもコロナ以前と比較すれば株価は上昇しているため、K字経済の傾向は継続していると言えるでしょう。

日本も米国ほどではありませんが、格差の二極化があります。所得格差を示すジニ係数を国別に見てみると、日本は先進国のなかでも中程度の格差があることがわかります。


出典:第79回「情報通信分野の投資による経済格差の発生・拡大」

コロナ禍で明暗が別れる企業の業績

K字経済の影響は企業の業績にも現れています。2021年の3月を決算月とする上場企業のうち業績を修正した企業の75%が上方修正し、25%は下方修正だったというデータがあります。

このことから、コロナ禍から回復しつつある企業と出遅れている企業があることがわかります。業種をみるとその傾向は顕著です。当連載のリベンジ消費の回でも引用した「2019、2020、2021年の業種別日毎サービス消費支出額」を参照すると、回復の兆しがあるのは宿泊などで、それ以外の業種はリベンジ消費の傾向が見えません。


出典:年末消費の動向にみる今後のリベンジ消費の形 ~家計調査・日次・品目別支出の動向(2021年12月)~ | 星野 卓也 | 第一生命経済研究所

K字経済からの脱却を測る指標「COVIDレジリエンス(耐久)」

K字経済から脱却できるかどうかを測るひとつの指標として「COVIDレジリエンス(耐久)」があります。これはブルームバーグが毎月まとめている、コロナ時代の世界で最も安全な国・地域の番付「COVIDレジリエンス(耐久)ランキング」で用いられている指標です。社会的・経済的混乱を最小限に抑え、かつウイルス封じ込めに成功した度合いを数値化しています。

参照ページ:ブルームバーグCOVID耐性ランキングの補足説明 - Bloomberg

この指標が高いほど、コロナ禍の影響を食い止め、なおかつ経済的なダメージも最小限に抑えられている状態です。2022年のランキングでは53か国中、1位がノルウェーとなっており、米国は死亡率の高さから30位となっています。日本はワクチン接種は進んでいるものの、「ワクチン接種後の越境可能ルート」が53か国中52位となっており、ランキングを下げる要因になっています。

【編集後記】不安要素が多く見通しが不透明

K字経済というワードが語られるようになったのは、コロナ禍が長期化の様相を呈してきた2021年からですが、2022年7月現在ではロシアの軍事侵攻もありK字経済がどう展開するのか読みにくい状況です。アメリカではバイデン大統領が富裕層や法人への増税を進め所得の再配分によってK字経済の進行を食い止めようとしています。岸田内閣も同様に経済の柱として再配分を掲げていますが、世界情勢が不安定なため見通しは不透明なままです。

(TOMORUBA編集部 久野太一)


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