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健康に無関心な人が、いつの間にか健康になる世界――OKIならではの行動変容技術で、超高齢社会の課題解決に挑戦する。

健康に無関心な人が、いつの間にか健康になる世界――OKIならではの行動変容技術で、超高齢社会の課題解決に挑戦する。

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昨今、様々な大企業やメーカーが取り組んでいるヘルスケア分野。なかでも人々の生活習慣にフォーカスし、日常の行動や意識を改善することで未病予防へとつなげるサービスが生まれている。日常生活データや健康データを収集・可視化し、健康行動についてのアドバイスを行うサービスである。そんな中で、沖電気工業が、このヘルスケア分野で、人々の意識や行動までを変える「行動変容サービス」に挑んでいる。

OKIが開発している「行動変容サービス」の中身・強みとは?どのようなパートナーを求めているのか?今後どのような分野に展開していくのか?

――本プロジェクトをリードする櫻田孔司氏と武市梓佐氏に話を聞いた。

■沖電気工業株式会社 経営基盤本部 研究開発センター コミュニケーション技術研究開発部 マネージャー 櫻田孔司氏

1986年、沖電気工業株式会社に新卒入社。以後、研究開発部門にて経験を積む。映像関連の技術開発のほか、ヘルスケアや行動変容、コミュニケーションなどをテーマとした研究開発に従事。


■沖電気工業株式会社 経営基盤本部 イノベーション推進部 課長代理  武市梓佐氏

ITの専門商社で製品販売のプロダクトマネージャーの経験を経て、2018年に沖電気工業株式会社へ中途入社。イノベーション推進部の主要メンバーとして、同社の新規事業開発をリードする。

「行動変容」研究をもとに、「睡眠の課題」を解決する

――長年、行動変容の研究をしているとのことですが、まず、御社が「行動変容」にフォーカスするに至った背景についてお聞かせください。

櫻田氏: 「行動変容」に関わるようになったきっかけは、2011年の東日本大震災です。当時、私は仮設住宅で孤立する高齢者を調査する経済産業省の東北復興プロジェクトに参加していました。仮設住宅を訪問し、話を聞き、「被災住民をいかに元気づけるか」を検討するプロジェクトです。ヒアリングを重ねる中で、皆さん、人と関わらずに生活をしておられるので、疲弊されていました。

しかし一方で、これらはコミュニケーションで解決できるとも感じました。解決する方法を模索する中で、人の意識や行動を変えていくことが大事だという考えに至り、そこから「行動変容」というキーワードが出てきました。従来から、行動変容をテーマにした学術研究はありました。それらを、水面下で徐々に調べ始めたのが、震災以降のことです。

それから何年か経ち、2015年頃でしょうか。社内で、超高齢社会に対応したICTについて考えるプロジェクトがスタートし、私もそれに参加することになりました。超高齢社会について調べてみると、ヘルスケア領域、中でも生活習慣病に関する社会的コストが大きいことに気づきました。生活習慣病は、文字通り生活習慣を変えることによってのみ解決できます。そこで思い出したのが、2011年の経験でした。ヘルスケアと行動変容を組み合わせてテーマ化し、日本の超高齢社会問題を解決すべく、研究開発を進めることにしました。

――なるほど。2011年から10年近く「行動変容」について研究されているのですね。櫻田さんと武市さんは、いつ頃、どのようなきっかけで連携するようになったのですか。

武市氏: 私のミッションは、ヘルスケア分野で解決すべき課題を探すことです。イノベーション推進部では、SDGs3.4に掲げられている課題、つまり、非感染症による若年死亡率を1/3減少させるという目的を掘り下げ、具体的な課題を発掘することでした。様々な試行錯誤をしている中で昨年ヘルスケアの分野で見つけた課題の一つが「働く人の睡眠の課題」でした。

イノベーション創出活動 OKIのヘルスケア事業の目指すところ

「ハイパフォーマーでも、就寝後1時間は眠れない人」「30代でも、なぜか5時に目が覚めてしまう人」など、日本人の5人に1人が睡眠に課題を抱えています。私自身も、時差ボケが原因で、日中眠くなることが2~3週間も続いて苦しんだ経験がありました。そこで、睡眠の課題を解決するソリューションを創ろうと考えたのです。社内で唯一似た方向性で、行動変容について研究をしている櫻田を見つけて、私からお声がけしました。

――イノベーション推進部と研究開発部門との連携が始まったのですね。

武市氏: はい。私は正直、OKIのようなBtoBの事業会社が、ヘルスケアのようなコンシューマの課題を解決するのは難しいと思っていました。でも、実際に研究開発の様子を見ていると、組織化された手法に驚きました。これまで長年情報通信分野で培ってきた研究開発の手法を、コミュニケーションやヘルスケアの分野でも応用できるのではないかと思いました。研究者は、医学論文にも目を通していますし、研究の進め方に「誠実さ」を感じました。これは私にはできないことです。

「行動変容サービス」の実現に向けた「個別化」と医学的エビデンスの創出

――次に、具体的なサービスイメージについてお伺いします。「行動変容」に関する研究と「睡眠の課題」、さらに御社の「技術」を掛け合わせて、どのようなサービスを生み出す構想ですか。

櫻田氏: 個人の行動・属性・疾病や健康行動に関する考え方などのデータを取得し、24時間の生活リズムを検出して、適切なタイミングで、効果的な内容のアドバイスができるサービスを考えています。アドバイスの内容は、「そろそろ入浴しましょう」や「明日は何時までにお布団に入りましょう」といった行動変容を促すものです。これにより、生活習慣改善していくことを目指します。

すでに同様のアプリはありますが、「生活リズムを可視化してアドバイス」するサービスが主流で、行動変容までの成果を出せているサービスは未だ無いと言われています。私たちは可視化・アドバイスにとどまらず、「行動変容」と「個別化」にもフォーカスし、改善することをゴールにしたいと考えています。さらに、改善の効果を医学的に検証する、医学的エビデンスの創出に向けた研究も実施しています。

▲行動変容サービスのイメージ図 https://www.oki.com/jp/yume_pro/about/healthcare.htmlより抜粋

「行動変容」については、実際に実証実験を通して、利用者の行動・意識変化に対する有効性を確認してきました。私たちの実証実験システムは、利用者の位置や活動量、天候、時間帯などのデータに基づいて、健康行動を起こすのに適したタイミングを見つけ、利用者のスマートフォンに行動推奨のメッセージを送るものです。2018年に実施した実験では、総勢93名の利用者のうち自覚調査で、4割以上の利用者が変化を自覚するという結果が得られ、手ごたえを感じています。

――「個別化」について、詳しくお伺いしたいです。

櫻田氏: 「個別化」(パーソナライズ)とは、個人にとって適切なタイミングで、効果的な内容のアドバイスを行うことです。たとえば、食事が大好きな人なら、食事を減らすよりも運動を促すアドバイスの方が有効です。人によって受容しやすい内容、受容しやすいタイミングが異なりますから、行動変容を促すためには、「個別化」が必須です。

この個別化を実現するために、AI技術、人の行動や感情、生活習慣に関するデータをセンシングし分析するIoTの技術などOKIの強みを活用しています。

――AIやIoTは御社が強い領域ですね。「医学的エビデンスの創出」についても教えてください。 

櫻田氏: OKIではサービスの信頼性を担保するために、大学との共同研究を行い、エビデンスを創出する予定です。エビデンスというのは、取得した健康や生活データをもとに、何をどう判断してアドバイスをするのか、その医学的根拠を示すもの。既存サービスはエビデンスが不明瞭なので、「信頼できない」と判断されがちです。しかし、「私たちは、医学的なエビデンスをきちんと出します」とお客様に伝えています。

関連リンク:京都大学健康科学センターと睡眠改善ソリューションの共同開発を開始(プレスリリース)

パートナー企業とともに、サービスを形づくる

――現在、具体的に、どんな企業との協業をお考えですか。

武市氏: 一般消費者を顧客に持ち、ヘルスケア領域への参入を検討しているパートナー企業を探しています。

最終的にサービスを届ける先は、B(企業)向けとC(一般消費者)向けの両軸で考えています。B向けに関しては、健康経営に積極的な企業などが主なターゲットです。OKIの顧客基盤も生かせると思っています。C向けに関しては、健康に無関心な人も含めて、広く一般消費者です。ただし、当社は一般消費者の顧客基盤を持っていないため、Cの顧客基盤を持つパートナー企業と共創し、サービス展開していきたいです。

櫻田氏: 加えて、メッセージの内容とタイミングの精度を上げるために、より多くの個人の生活データを集めたいと思っています。

運動や睡眠、日常行動をより高精度にセンシングできるデバイスメーカーさん。あるいは、食事のセンシング技術を開発している企業なども想定しています。特に睡眠データに関しては、これまでよりさらに高精度にデータをとれるパートナーをベンチャーも含めて探していきたいです。

――サービスローンチまでの道筋は?

武市氏: 2020年度のゴールは、大規模実験を成功させること。現在はサービス化を検討している企業とサービス設計をしています。サービスのリリースは、2021年度以降を目指しています。OKIは”GO”がでれば一気に進む会社です。昨年は、社内アイデアコンテストで大賞を受賞したAIエッジロボットをわずか4ヶ月半で開発し、CEATEC 2020出展に漕ぎ着け、多くのマスメディアやお客様の注目を集めました。

熱量のあるリーダーのもとに、約50名のチームメンバーが集まり、ゼロから一気に形にしました。傍目で見ていて、このものづくりに対するチームの一体感は、「すごいな」と感じましたね。ですから、本件も実験でエビデンスを創出し、クライアントがつけば、一気に事業を加速させられると考えています。

「健康に無関心な人」を、いかに健康にするか

――最後に、「行動変容サービス」を社会実装することで、実現したい世界観について教えてください。

武市氏: 私たちが実現したいのは、健康に無関心な人も、知らず知らずのうちに健康になっている世界です。「無関心な人を、いかに健康にしていくか」というテーマは、非常に難易度の高いものだと思います。

しかし、このサービスを導入することで、無関心な人も段階的に変えていきたい。健康行動を変えるつもりがない「無関心期」から、健康行動を変えて半年以上を経過している「維持期」に至るまでの行動変容ステージは、5段階ほどあると言われています。私たちのサービスを、巧みに社会に組み込むことで、無関心期がいつのまにか維持期へと移行し、知らないうちに健康になっていたという世界を構築したいと考えています。

櫻田氏: ナッジ(nudge)という学術用語がありますが、そのイメージに近いですね。ナッジは「そっと後押しする」という意味で、男性用トイレに的を描くと、人は自然とそこに狙いを定めてしまうという事例で知られています。「ついついやってしまう」ことでそのよさに気づき、行動変容ステージが進んでいく。私たちも、そういう世界を実現できるように進めていきたいです。

健康に関しては、現在、無関心な人が大多数を占めています。そこを変えることができれば、社会的にインパクトは大きいでしょう。また、行動変容は健康以外の領域にも応用できます。たとえば、組織のモチベーションアップなどです。将来的には、ウェルビーイング領域などにも適用していきたいですね。

取材後記

「OKIのAI技術やセンシング等のIoT技術などの強みを活かしてとヘルスケア領域の課題解決する」という話が印象的だった。実際に、OKIが1881年の創業以来取り組んでいる通信/ネットワーク技術や、ATMやプリンター、券売機、KIOSK端末などの各種端末で培った技術など、IoTに必要な要素を蓄積している。さらに、AIエッジロボットに代表されるようなAI技術にも定評があるOKI。――ヘルスケア領域はOKIの技術やこれまでの実績に鑑みると、強みを活かせる領域といえるだろう。パートナー企業とともに、本プロジェクトがどんなサービスを生み出すのか。今後もその動向を追っていきたい。

(編集:眞田幸剛、取材・文:林和歌子、撮影:古林洋平)

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  • 岡田芳弘

    岡田芳弘

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    健康に無関心な人が健康になる時代。なんて素晴らしい時代だ。健康こそ宝です。それが皆が享受できる世界に早くなってほしいですね。