サウナビジネスはグローバルで健全な成長も、国内ではサウナユーザーは激減。サウナビジネスの最新事情
新規事業やオープンイノベーションのプレイヤーやそれらを実践・検討する企業の経営者はTOMORUBAの主な読者層ですが、こうした人々は常に最新トレンドをキャッチしておかなければなりません。そんなビジネスパーソンが知っておきたいトレンドキーワードをサクッと理解できる連載が「5分で知るビジネストレンド」です。キーワードを「雑学」としてではなく、今日から使える「知識」としてお届けしていきます。
今回は「サウナビジネス」を特集します。サウナは長年にわたって日本で親しまれていますが、近年のサウナブームでいっそうの盛り上がりを見せています。さらにサウナは、ビジネスとしてグローバルに注目を集めている分野でもあります。
グローバルでサウナ市場は健全な成長を続ける一方、日本のサウナ人口は激減
調査会社のREPORTOCEANが2021年11月に発行したサウナ・スパ市場のレポートによると、2027年には50.4億米ドルに達し、予測期間2021-2027年には5.28%以上の健全な成長が見込まれています。
レポートではサウナ・スパ市場の成長を牽引している要因は「観光客の増加や消費者の支出能力の向上」としており、あわせて高齢者へのサウナ・スパの普及も需要を押し上げているとのことです。地理的には市場は主にホテルやレジャー向けのサービスが北米に集中しています。
一方、サウナがブームとなっている日本はどうでしょうか。日本サウナ総研が2022年3月に公開したレポートによると、2021年のサウナ人口は2020年比で1000万人減少しているとのことです。
出典:【日本のサウナ実態調査2022】サウナ愛好者人口1000万減/Japan Sauna Survey 2022
影響が大きかったのは「年に1回以上サウナに入る」というライトユーザーで、昨年比で800万人減少しています。国内でサウナブームは継続しているように見えますが、ライトユーザーは急激にサウナ離れしていることがわかります。
フィンランドを中心に拡大するサウナビジネス
グローバルで成長を続けるサウナビジネスは盛り上がりを見せています。その勢いを象徴するのがフィンランドで行われた「ワールドサウナフォーラム2022」です。2017年から毎年開催されている同フォーラムは、世界各国からサウナ関連ビジネスの事業者が集います。
2022年のフォーラムにはフィンランドに16カ国からサウナ事業者が参加し、300のゲストが集まりました。事業者はサウナ関連のプロダクトを展示しており、現地レポートによると薪ストーブの煙をサウナ室内に溜める薪ストーブや、氷が貼った湖を再現した水風呂などが注目を集めていたとのことです。
参照ページ:World Sauna Forum
国内でも活発化する「観光×サウナ」の共創事例
世界のサウナ・スパ市場の成長を牽引するのはホテルやレジャーといった観光産業に関連した事業が多いことは前述した通りです。一方で、国内ではライトユーザーのサウナ離れが進み、ブームを牽引しているのは日常的に利用することを想定した大衆サウナのようです。
国内のサウナビジネスをより一層活性化すべく、観光とサウナの掛け合わせで集客を狙う共創事例が増えています。
ホテルのDXを推進するSQUEEZEは、ファイターズ スポーツ&エンターテイメント(ファイターズ)と業務提携の上、HOKKAIDO BALLPALK F VILLAGE内(Fビレッジ)の新球場と隣接したホテル・温浴施設から試合を観戦できる構想を立てています。
写真左:4階屋内休憩テラスイメージ、写真右:フィールドに面した4階サウナ施設イメージ ©H.N.F.
また、バス会社の神姫バスは新規事業として建築事務所のOSTRとサウナコミュニティサイト「サウナイキタイ」と共同で、引退したバスをリユースした移動式サウナ「サバス」の事業を2022年3月からスタートしています。
出典:移動型サウナバス
【編集後記】サウナの歴史も文化も根強い日本
グローバルでは観光業と結びつけたサウナ・スパ事業が好調だと紹介しましたが、日本にも本場フィンランドに負けないサウナの歴史と文化があるはずです。日本独自のサウナビジネスとして、サウナを日常的に楽しむ仕組みをパッケージ化して海外に売り込むことも可能ではないでしょうか。
(TOMORUBA編集部 久野太一)
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