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物流の2024年問題とは?人手不足とECの急成長で物流企業とトラックドライバーが受けるリスクとその対策

物流の2024年問題とは?人手不足とECの急成長で物流企業とトラックドライバーが受けるリスクとその対策

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新規事業やオープンイノベーションのプレイヤーやそれらを実践・検討する企業の経営者はTOMORUBAの主な読者層ですが、こうした人々は常に最新トレンドをキャッチしておかなければなりません。そんなビジネスパーソンが知っておきたいトレンドキーワードをサクッと理解できる連載が「5分で知るビジネストレンド」です。キーワードを「雑学」としてではなく、今日から使える「知識」としてお届けしていきます。

今回取り上げるのは「物流の2024年問題」です。このトピックは、働き方改革にともなう規制のアップデートや、昨今の人手不足が背景にあります。物流業界の人手不足は社会課題となっていますが、それでも働き方改革を断行したため発生してしまう問題と言えます。具体的にどんな背景があり、どんな課題があるのか解説していきます。

2024年4月からトラックドライバーの時間外労働時間が960時間に上限規制

物流の2024年問題とは、2024年4月からトラックドライバーの時間外労働時間の上限規制にともなって発生するとされている問題を指します。この規制によってドライバーの時間外労働は、これまでの年間1176時間から、年間960時間(1ヶ月平均80時間)に制限されます。さらに、これまでは時間外労働の給与の割増率が25%でしたが、改正後は月60時間を超える分の割増率は50%以上に引き上げられます。

出典:労働関係法令が 改正されました(全日本トラック協会)

時間外労働の上限規制は政府の掲げる働き方改革関連法の一環として施行されます。すでに、自動車運転業務をのぞく一般的な企業では、時間外労働を年間720時間に上限規制する法令改正が行われており、大企業では2019年4月、中小企業では2020年4月よりそれぞれ上限規制が適応されています。この上限規制を破った場合、罰則として6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が課されます。

年間で時間外労働時間が960時間を下回ればよいため、例えば1ヶ月で100時間の時間外労働があったとしても、年間で960時間以内ならば良いとされていますが、将来的には一般企業と同様の規制を適用する計画です。

自動車運転業務だけ上限規制が後回しにされていたわけですが、それにはいくつかの背景と理由があります。

人手不足とEC市場の急成長でドライバーの長時間労働が慢性化

自動車運転業務だけ上限規制が後回しになっていた背景は主にふたつあるとされていて、ひとつは慢性的なドライバーの人手不足。そしてもうひとつはEC市場の急激な成長です。こうした業務の特性上、長時間労働を是正するには時間がかかるとして、適用の猶予があったのです。

ひとつめの人手不足については、国土交通省が公開しているデータを参照すると、トラックドライバーの運転手の有効求人倍率は2.68倍となっていることがわかります。これは求職者1人に対して、2.68件の求人募集があることになります。全業種(パート含む)の有効求人倍率は1.35倍ですので、物流業界がいかに人手不足かがわかります。

加えて、トラックドライバーは低賃金であることも人手不足に拍車をかけています。トラックドライバーの年間所得は大型で447万円、中小型で399万円となっており、全産業平均の490万円と比較すると低くなっているのです。

出典:トラック運送業の現状等について

ふたつめのEC市場の急成長は知っての通りで、Amazonや楽天などのECサイトの台頭が著しい状況が続いています。経済産業省が2022年8月に公開している市場調査の資料では、「物販系分野BtoC-EC市場規模」は2013年と比較すると2021年は約2倍の13兆円に達しており、伸長率は8.61%と非常に高くなっています。

また、すべての商取引におけるECの割合を表すEC化率はコロナ禍以前の2019年は6.76%でしたが、2020年は8.08%、2021年は8.78%となっており、コロナ禍に入ってからECの普及が加速していることがわかります。

出典:電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました (METI/経済産業省)

これらの背景から、物流市場は拡大しているにも関わらず、慢性的な人手不足によって労働の長時間化が課題となっているのです。

2024年問題が物流に与える影響とその対策

2024年に上限規制されることで、物流業界にいくつかの影響がでることは間違いなさそうです。まず、稼働できる時間が少なくなることで①物流企業の売上が減少し、②トラックドライバーの収入も減少します。物流企業は売上の減少を値上げでカバーする可能性があるので、それにともなって③物流企業は荷主への値上げ交渉を余儀なくされますし、もちろん値上げすれば④荷主企業のコストが上がることになります。

こうした物流の2024年問題への対策はいくつか考えられます。

・柔軟な働き方に対応した人材の確保

人手不足の中でも人材を確保しなければ売上の減少は免れません。しかしフルタイムで働ける人材が少ないために人手不足になっているわけですから、幅広く柔軟な働き方に対応した働き手を探すことが有効になってきます。具体的には時短勤務などの仕組みづくり、若者を受け入れる福利厚生、また女性や高齢者を受け入れる環境を整備することなどが考えられます。

・ITの活用

トラックドライバーの人手不足が社会課題となってから久しいため、ITを活用したソリューションがいくつも生まれています。例えば、トラックの積載率を上げるための配車管理システムや、車体と荷台が分裂する「スワップボディコンテナ」を採用し、配送途中でコンテナを別のトラックに引き継ぐシステムを導入しドライバーの労働時間を削減するなど、方法はさまざまあります。

参照記事:日本GLP×モノフル×ランコム|クロスドック構想の実現とトラック配車支援サービスの強化に向けて業務提携

・M&A(合併・売却・買収)の実施

M&Aを実施して物流企業同士を合併・売却・買収することも20204年問題への対策となる場合があります。条件によって向き不向きがあるため一概には言えませんが、複数の物流企業が同じ傘下にはいることで、採用強化、事業規模拡大、営業範囲拡大、システム統合などのメリットを得て生産性がアップする可能性はあります。

【編集後記】労務にも影響する物流の2024年問題

物流業界にとって2024年問題は喫緊の経営課題となっています。本文で紹介した課題や対策はもちろんのこと、労務管理などの管理業務にも影響が出るはずです。新しいルールを遵守することはもちろんですが、残業可能な時間が少なくなることで売上への影響もあるため会社全体の方針も確認しつつ、給与体系や評価基準を再構築する必要があるかもしれません。このピンチをチャンスと捉えて新しい働き方に順応できるかが重要になってきます。

(TOMORUBA編集部 久野太一)

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