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大手SNSが問題を抱えるなか台頭する「次世代SNS」の有望株とは

大手SNSが問題を抱えるなか台頭する「次世代SNS」の有望株とは

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新規事業やオープンイノベーションのプレイヤーやそれらを実践・検討する企業の経営者はTOMORUBAの主な読者層ですが、こうした人々は常に最新トレンドをキャッチしておかなければなりません。そんなビジネスパーソンが知っておきたいトレンドキーワードをサクッと理解できる連載が「5分で知るビジネストレンド」です。キーワードを「雑学」としてではなく、今日から使える「知識」としてお届けしていきます。

ここ数年、国内で主要なSNSはFacebook、Instagram、Twitter、LINE、TikTokのいわゆる「5大SNS」と呼ばれる大きな勢力がシェアを占めています(ここにYouTubeを含める場合もあります)。一方で、新しいSNSは常にリリースされているものの、この5大勢力に風穴を空けるにはいたっていません。

しかし近年、5大SNSの勢力の均衡が変化しそうな兆候がいくつかあり、さらには次なる5大SNSの座を狙う期待の新興勢力も現れています。今回は「次世代SNS」をテーマに、5大SNSが直面する現状と、期待の次世代SNSをいくつか紹介します。

国内の主要SNSの月間アクティブユーザー数は長らく上位が固定

日本国内で主要なSNSは長年、変動がほとんどない状態です。LINE、YouTube、Twitter、Instagram、Facebook、TikTok、が上位を占めている状態は2019年頃から続いています。TikTokを除くと、実に2015年頃からこの上位陣に変動はありません。

出典:2023年4月更新!性別・年齢別 SNSユーザー数(Twitter、Instagram、TikTokなど13媒体) | 株式会社ガイアックス|ソーシャルメディアマーケティング支援サービス

上位陣のラインナップが変化しない理由はいくつかありますが、特筆すべきはSNSはマーケティングツールであることが挙げられるでしょう。ユーザーが多ければ多いほどプラットフォームが保有するユーザーデータも多くなります。そしてユーザーデータが多ければ精度の高い広告が配信できますし、広告在庫も多いので売上もあがります。そのため、SNSは「強ければ強いほどさらに強くなりやすい」構造があります。

揺らぐ大手SNSの地盤

盤石に見えた大手SNSですが、ここ数年でその地盤を揺るがすような出来事がおきています。

FacebookとInstagramを運営するMetaはここ数年、プライバシーへの懸念が絶えません。Metaのプライバシー管理についてはいくつも指摘されていますが、最もインパクトが大きかったのはケンブリッジアナリティカの個人情報悪用の問題です。2016年の米国大統領選挙で、コンサル会社のケンブリッジアナリティカがFacebookの持つユーザーデータ5000万人分を保持し悪用していたのです。この問題が2018年に明るみに出てから、 Facebookは個人情報管理のずさんさによってユーザーの乖離が進んでいます。

また、TwitterはCEOがイーロン・マスク氏に変わってから大規模なレイオフを実施したり、Twitterの開発・運営体制が不安定になったりしており、サービスの存続が危ぶまれています。

さらに、TikTokは利用者のデータが中国政府に渡るのではないかという懸念から、2022年12月には連邦政府の職員が公務で使うデバイスでのTikTokの使用を禁じる法案が成立しています。加えて今年5月には、米国モンタナ州でTikTok事業を全面禁止する法案が成立しており、中国政府を警戒する欧米諸国のTikTok包囲網が広がっています。

上位の座を狙う新世代SNS

上位のSNSが盤石とは言えない状況の中、新世代のSNSの台頭が著しくなっています。最近話題となっているSNSをいくつか紹介します。

【Bluesky】Twitter創業者が作る分散型のネットワーク

Twitterの創業者のジャック・ドーシー氏が新たに手がけたSNSが『Bluesky』です。2023年6月現在では招待制となっており、まだユーザーの拡大は目的としていないようです。機能的にはTwitterとほぼ同じですが、Blueskyの特徴は「分散型ネットワーク」であることです。

BlueskyではATプロトコルという、Blueskyと同じようなSNSを開発できるプロトコルを公開しています。ATプロトコルを用いて開発されたSNSは、ユーザーデータや友達情報などを共有することができることが特徴です。つまり、ATプロトコルで開発した「SNS-A」と「SNS-B」とで、アカウントの移動が可能になります。Bluesky自体もATプロトコルを用いて開発されたSNSのひとつにすぎないのです。なので、むしろコア技術はATプロトコルであるため、SNSと表現するよりも「分散型ネットワーク」と表現するほうが正しいかもしれません。

【NauNau】惜しまれながらサービス終了した人気の位置情報共有アプリ『Zenly』の代替SNS

友達と位置情報を共有するアプリ『Zenly(ゼンリー)』は、グローバルのMAUが3000万にも達したと報じられていたにも関わらず、「親会社の事業の再構築と集中」を理由に今年の2月にサービスを終了しています。

その代替アプリの中でも若者から支持を集めているのが『NauNau(ナウナウ)』です。キーボードアプリ『Simeji』が発表しているZ世代が選ぶ!!「トレンド寸前!次世代SNS TOP10」では1位となっています。

Zenly同様、NauNauでも友達と位置情報を共有でき、友達とチャットする機能があります。友達や家族、恋人と散歩や旅行を楽しむことができるアプリです。

【Lemon8】TikTokのバイトダンスが開発したインスタ風SNS

『Lemon8(レモンエイト)』は、TikTokの親会社のバイトダンスが開発したInstagramを思わせる写真投稿SNSです。Instagramは幅広い年齢性別のユーザーがオールジャンルで写真を投稿しているのに対して、Lemon8はグルメ、美容、ウェルネス、旅行などに関心を持つユーザーにフォーカスしているのが特徴です。

2020年に『Sharee』というアプリ名でリリースし、その後Lemon8に名称変更していますが、今年に入ってからAppStoreランキングのトップ10に頻繁に入るなどユーザー獲得を加速させています。

躍進を続けているLemon8ですが、前述しているように、欧米では中国政府へユーザーデータが渡るリスクから、TikTokの利用を制限する動きが出てきています。今後、Lemon8も同様の規制にあい欧米諸国や日本でも事業を拡大することが難しくなる可能性も無視できないでしょう。

【Mastodon】ふたたび注目を集める元祖分散型SNS

『Mastodon(マストドン)』はBlueskyと同様に、機能はほぼTwitterと同じで「非中央集権型」のSNSです。Mastodonはソースコードが公開されており(オープンソース)、誰でもサーバーをたてることができるほか、サーバーをまたいでいてもユーザーが移動できます。

TwitterのCEOがイーロン・マスク氏に変わってから、プラットフォームの透明性や言論の自由を掲げているのもの、誤情報やヘイトスピーチが氾濫する危険性が高まったと感じる一部のユーザーがMastodonに移行したとも伝えられています。

どのくらいユーザーが移行したのか、定量的なデータはありませんが、Twitterが上場を廃止してマスク氏のプライベートカンパニーになったため中央集権的な運用に危機感を持ったユーザーが非中央集権的なプラットフォームに移行してしまうのは当然の流れと言えます。

【編集後記】非中央集権型の大手SNSが誕生するのか

現状のSNSが抱える問題は、ざっくりまとめると「中国政府への警戒感」「個人情報のマーケティング利用への警戒感」の2点です。ビジネスの観点から見れば、これまでのSNSはあくまでもマーケティングツールの側面が強いです。今後もマーケティングツールとしてのSNSがトップを走り続けるのか、それともBlueskyやMastodonのように全くビジネスモデルの異なるSNSが新たにトップに君臨するのか、分岐点は近いかもしれません。

(TOMORUBA編集部 久野太一)

■連載一覧

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第2回:話題の「ノーコード」はなぜ、スタートアップや新規事業担当者にとって有力な手段となるのか?

第3回:世界的なトレンドとなっている「ESG投資」が、スタートアップにとってチャンスである理由

第4回:課題山積のマイクロプラスチック。成功事例から読みとくスタートアップの勝ち筋は

第5回:電力自由化でいまだに新規参入が増えるのはなぜ?スタートアップにとってのチャンスとは

第6回:「46%削減」修正で話題の脱炭素。46%という目標が生まれた経緯と、潜むビジネスチャンスとは

第7回:小売大手がこぞって舵を切る店舗決済の省人化。「無人レジ」の社会実装はいつ来るか?

第8回:実は歴史の深い「地域通貨」が、挑戦と反省を経て花ひらこうとしているワケ

第9回:音声配信ビジネスが日本でもブレイクする予兆。世界の動向から見える耳の争奪戦

第10回:FIREブームはなぜ始まった?「利回り4%」「生活費の25倍の元本」など、出回るノウハウと実現可能性は

第11回:若年層は先進層と無関心層が二極化!エシカル消費・サステナブル消費のリアルとは

第12回:「ワーケーション」は全ての在宅勤務社員がターゲットに!5年で5倍に成長する急成長市場の実態

第13回:なぜいま「Z世代」が流行語に?Z世代の基礎知識とブレイクしたきっかけを分析

第14回:量子コンピュータの用途は?「スパコン超え報道」の読み解き方はなど基礎知識を解説

第15回:市場規模1兆ドルも射程の『メタバース』で何が起こる?すでに始まっている仮想空間での経済活動とは

第16回:『TikTok売れ』はなぜ起こった?ビジネスパーソンが知っておきたい国内のTikTok事情

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第19回:フェムテックで先行する欧米と追従する日本。市場が活気づいている背景とは?

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