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小売業に革命を起こす「ダークストア」、激化する大手とスタートアップの覇権争い

小売業に革命を起こす「ダークストア」、激化する大手とスタートアップの覇権争い

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新規事業やオープンイノベーションのプレイヤーやそれらを実践・検討する企業の経営者はTOMORUBAの主な読者層ですが、こうした人々は常に最新トレンドをキャッチしておかなければなりません。そんなビジネスパーソンが知っておきたいトレンドキーワードをサクッと理解できる連載が「5分で知るビジネストレンド」です。キーワードを「雑学」としてではなく、今日から使える「知識」としてお届けしていきます。

今回取り上げるのは、「ダークストア」です。聞き馴染みのない人も多いでしょうが、近年注目されているこのダークストアとは、オンラインのみで営業する新しい形態の小売店です。ダークストアがどのようにして台頭したのか、特徴やメリット、リスクも踏まえながら解説します。

ダークストアはオンライン販売専業の店舗

ダークストアとは、オンラインで小売に特化した店舗のことを指します。通常の小売店のように消費者が訪問して商品を購入するのではなく、ECサイトで受けた注文をピッキングして梱包、発送する配送拠点として設置されている店舗です。

近い言葉としてネットスーパー、ネットコンビニなどがありますが、これらとダークストアの違いは「店舗で商品を購入できるかどうか」です。ネットスーパー、ネットコンビニはそれぞれ消費者が訪問できるスーパー、コンビニを持ち、そのうえでネット販売にも対応している点でダークストアとは異なります。

ダークストアがトレンドになった背景には、実店舗閉鎖の流れが拡大している点があります。小売業はリアル店舗からネットショッピングへのシフトが急激に進んでおり、企業は閉鎖した実店舗の有効活用の手段としてダークストアを配送拠点にするケースが増えているのです。

さらにコロナ禍が追い風となり、感染拡大防止の観点から消費者は実店舗での買い物をより控えるようになりました。その結果オンラインで購入が完結するダークストアが著しく台頭することになったのです。

小売業のラストワンマイル問題を解決するダークストア

ダークストアのメリットはいくつかあります。店舗維持のコストが低いこと、ネット経由での買い物であるためユーザーのデータが蓄積されること、物流オペレーションを整備すれば短時間で配達完了できることなどです。

これらのメリットを踏まえると、ダークストアは小売業のラストワンマイルを解決するポテンシャルを秘めていることがわかります。コロナ禍でUberEatsや出前館といったフードデリバリーが急速にユーザーの生活に馴染みましたが、これと同じことを小売で実現できるのがダークストアです。

ユーザーはオンラインで注文をするだけで、店舗に出向かずとも即時に生鮮品なども含めた商品を受け取ることができるため、ダークストアが浸透すればインパクトは大きくなることが期待されます。

競争が激化する国内ダークストアの動向

国内でもダークストアは着実に浸透しつつあります。イトーヨーカ堂は2015年よりダークストアとして東京都荒川区に『ネットスーパー西日暮里店』を展開しています。そのほかにも、ヤフーとアスクルが提携し、アスクルの持つダークストアに対する注文をヤフー参加の出前館の配送ネットワークを駆使して即時配達する『ヤフーマート』の拡大を狙っています。ヤフーマートは将来的にヤフーのECモールの商品もこの配送ネットワークに組み込むことを構想しているとのことです。

スタートアップの参入も増えており、都内の一部を中心に展開するOniGoは「10分で食料品や日用品を届ける宅配スーパー」を掲げて拡大を続けており、2022年4月には累計調達学が​​約11.8億円に達しています。

一方でフィンランドで550億円以上調達しているスタートアップWoltは2021年12月に日本のダークストア市場に参入しましたが、2022年7月には国内の8つの拠点を全て閉鎖してダークストアから撤退しています。このように、国内では大手とスタートアップによる激しい競争が展開されており、どのプレイヤーが覇権を握るのか注目が集まっています。

【編集後記】今はダークストアが浸透するまでの過渡期

コロナ禍を経て、UberEatsや出前館といったフードデリバリーは完全にキャズムを超えて消費者に浸透しました。ダークストアのクイックデリバリーはフードデリバリーに次ぐトレンドになるべく、国内で覇権争いが続いている過渡期と言えるでしょう。

圧倒的な既存事業の優位性とリソースでヤフーのような大手がシェアをとるのか、ローカルにきめ細かい配送ネットワークを展開するOniGoのようなスタートアップが下克上を果たすのか、ダークストアをめぐる今後の展開から目が離せません。

(TOMORUBA編集部 久野太一)

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