【イベントレポート】「つくる責任つかう責任」をテーマに 「消費と生産に革命を起こす」スタートアップ5社が登壇〜「eiicon」のマンスリーミートアップイベント第8回開催!〜
『価値ある出会いが未来を創る』オープンイノベーションのプラットフォーム「eiicon」の月一ピッチイベント「eiicon meet up!! vol.8」は9月26日、東京・日本橋のコワーキングスペース「Clipニホンバシビル」で開催され、「つくる責任つかう責任」をテーマに「消費と生産に革命を起こす」ことを目指すスタートアップ5社が登壇しました。
なお、eiiconは国連が進める「持続可能な開発目標(SDGs)の達成」をビジネスで目指すオープンイノベーション・プラットフォーム「SHIP」の公式パートナーとなっており、本イベントはNo.12「つくる責任つかう責任」をテーマにしています。
ピッチに先立ち、eiicon co-founder田中みどり(上写真)が挨拶。次回の「eiicon meet up!!」は10月17日に実施することが決定。「イスラエル企業特集」をテーマに初の夜間(19時〜)での開催されることが告知されました。(※詳細は右記URL参照 https://techplay.jp/event/634904)
登壇企業とピッチ内容は以下の通りです。なお、本イベントの司会は、会場である「Clipニホンバシ」を運営する三井不動産ベンチャー共創事業部の光村圭一郎氏(上写真)が担当。さらに「Sli.do」を利用し、ピッチ中も随時、質問を受け付けました。
プラネット・テーブル株式会社
▲Founder / CEO Shin Kikuchi氏
同社は「必要な食べ物が持続的に作られ、無駄なく届き、全ての人が食べる喜びにあふれる社会」の実現を目指しています。現在、食料需要は増えているのに、低収入などの問題で生産者が減っていることを説明。その原因の一つとして流通のあり方にあると指摘しました。その上で、同社では流通のムダを省くため、生産者とレストランなどの店舗を結びつける活動を行っていることを紹介。
具体的には、生産者から直接、農産物を買い付け、店舗に届けています。発注の量と種類が適切に判断されないと廃棄が出るなど従来の流通と同様の問題が生じますが、同社では天候やイベント、店舗で働くシェフの声などをデータとして収集。分析することで、廃棄率をなんと1%未満に抑えているとのことでした。会場からは「大企業に期待することは何か」との問いが出され、「Webサービスを機能的に使い、流通のプラットフォームに乗ってほしい」と回答しました。
株式会社つくるーむ
▲代表取締役 河野 正幸氏
同社は、自らの手で家具作りやリフォームを可能にする社会の実現を目指し、動画メディアを運営するなどしています。動画では、さまざまな家具の作り方をはじめ、玄関やキッチン、リビングの改修方法などを紹介しています。リフォームは自ら行うことで大幅にコストダウンできますが、反面、やり方がわからない、道具がない、騒音になるなどの問題があります。同社ではそれらの課題の解決を目指し、動画のほか、工具のレンタルなどを行っています。
また、具体的にどのような部屋がいいかわからないという人のために、メディアにレコメンド機能を搭載するなどしています。マネタイズは基本的に広告収入となっており、同社では、広告主を募集すると共に、さらにメディアの質を上げるため、クリエーターとの連携を図りたいと呼びかけました。
株式会社Insight Tech
▲代表取締役社長 伊藤 友博氏
同社は、一般生活者の政策や街、人間関係などに関する「不満」の声を買い取るアプリ「不満買取センター」を運営しています。不満は、60~70字の文章として届けられ、中でも、「なぜホットのミネラルウォーターがないのか」など生活へのちょっとした要求などが多いそうです。これまでに670万件の不満が集まっており、それらをAIで価値を分類・分析しています。なお、文章の解析技術にいては、京都大学と共同で行っているとのことでした。
同社では不満の裏側には期待があると考え、データをマーケティングに活用することで、商品開発や各種政策の課題解決につなげたいと強調。これまでに複数の企業などに提案し、実際に商品開発が進められているとのことでした。会場からは「不満そのものを売ることはしないか」との問いが寄せられました。同社は「不満を利用できる形にし、商品開発などのコンサルティングもセットで提案している」と回答しました。
FAAVO(ファーボ)
▲マネージャー 八木 輝義氏
FAAVOは株式会社サーチフィールドが運営する、地域に特化したクラウドファンディングです。FAAVOは、地域に住む人たちのチャレンジを支援するとともに、持続可能なまちづくりへとつなげていくことを大きな狙いとしています。寄付には地元を盛り上げる、誰かのアイデアを皆で実現する、自分が理想とする未来を創り上げるために、などの意味が込められています。
これまでの実例として、宮崎県内で行われた間伐材の利用プロジェクトでは、寄付者のうち36%が地元在住者か現在は別の地域に住む出身者だったことが紹介されたほか、岐阜県内の刀鍛冶に対して5時間で550万円の寄付が寄せられたことなどが取り上げられました。会場から「ふるさと納税との違いは何か」との問いが寄せられました。それに対し「地域を盛り上げる点では似ているが、ふるさと納税は自治体を、FAAVOは民間の人を支援している」と違いを明らかにしました。
TDNインターナショナル株式会社
▲代表取締役 渡辺 吉明氏
同社は、新しい発想のQRコード「scodt(すこどっと)」を開発・運営しています。scodtはスマートフォン向けアプリで、商品に付けられたコードを読み取ることで、いつでもどこでも取り扱い説明書を確認することができます。多言語対応となっており、観光客をはじめとする外国人の利用者にも便利な仕組みとなっています。同社では「ここまではよくあるアプリかもしれないが、リコールを自動通知している点が異なる」と強調しました。
今後、各メーカーが海外マーケットへの進出を目指し、商品の輸出が増えることを考慮すると、リコールの問題が多く出ると示唆。海外は日本とは異なりリコールになるケースが多いことを指摘し、企業はその対応をしなければならないと話しました。その上で、同コードの有用性が出てくると解説。同社では、メーカーに同QRコードを導入することを呼びかけました。
▲会場となったコワーキングスペース「Clipニホンバシビル」。大手企業からスタートアップまで多くの参加者が集まり、ピッチに耳を傾けていた。
取材後記
つくる側とつかう側、双方に大きな変化や小さな改革がもたらされる製品やサービスが発表された。登壇した5社の製品・サービスはいずれもさらなる発展が望まれるものばかりだったと思う。少子高齢化、グローバル、価値観の多様化など、現代を表すキーワードが多くある中で、これまでと同様のものづくり、サービス提供では、もはや時代に対応できない。その一方で、生活者の側も待ちの姿勢一辺倒では「持続可能」とはいかないだろう。自らの声や考えを伝え、時にはチャレンジする姿勢もこれまで以上に求められるのではないか。その意味でも、上記5社の製品・サービスは、これまでのあり方を変え、一歩先に進める力を秘めていると感じた。
(構成:眞田幸剛、取材・文:中谷藤士、撮影:加藤武俊)