【イベントレポート】「飢餓ゼロ/持続可能な農業」を目指すAgriTechスタートアップ5社が登壇〜「eiicon」のマンスリーミートアップイベント第6回開催!〜
オープンイノベーションのプラットフォーム「eiicon」の月一ピッチイベント「eiicon meet up!! vol.6」は7月27日、東京・日本橋のコワーキングスペース「Clipニホンバシビル」で開催されました。「飢餓ゼロ/持続可能な農業」を目指すAgriTechに取り組むスタートアップ5社が登壇。イベントには大手企業の新規事業担当者も多数参加しており、各ピッチを熱心に聞き入っていました。
なお、eiiconは、国連が進める「持続可能な開発目標(SDGs)の達成」をビジネスで目指すオープンイノベーション・プラットフォーム「SHIP」の公式パートナーとなっており、本イベントはSDGs No.2『飢餓をゼロに。飢餓に終止符を打ち、食糧の安定確保と栄養状態の改善を達成するとともに、持続可能な農業を推進する。』 をテーマにしています。
スタートアップ各社のピッチに先立ち、eiicon co-founder田中みどりが登壇し、挨拶。「eiicon meet up!!」は毎月末の火曜日に行われ、次回は“HealthCare Tech”をテーマにすることを伝えました。また、10月にはeiiconがオープンイノベーションの祭典となる「JAPAN OPEN INNOVATION FES 2017」を開催することも告知。来場を呼び掛けました。
登壇企業とピッチ内容は以下の通りです。
株式会社SenSprout(センスプラウト)
▲代表取締役 菊池里紗氏
同社は農業生産者向けにセンサー「SENSPROUT PRO」(https://sensprout.net/)などを開発しています。同センサーは土壌の水分量を測ることが可能で、これにより経験や勘に頼ることなく適切に潅水が行えるようになります。同社ではこれに加え、センサーのデータを蓄積して機器と連動させ、灌水や肥料を制御できる装置を手がけています。
これらを統合的に利用し、高付加価値の作物栽培パッケージとしてビジネス展開することを視野に入れています。国内はもちろん、例えば水資源の限られている乾燥地帯など海外での展開を目指しています。一方、海外では、盗難、流通、管理・マネジメントラインの課題もあり、よりそれぞれの地域の事情にフィットしたサービスを開発・提供していきたいとのことでした。
株式会社 笑農和
▲代表取締役 下村豪徳氏
笑農和は「農業にITを!」をテーマに掲げる、富山県のベンチャー企業です。この日も、代表の下村氏が富山からピッチに駆け付けました。下村氏は実家が農家ということもあり、農業の人手不足の課題をIT、IoTを用いて解決することを目指します。手がけているのは、水田の水管理の自動化などです。潅水のため水門を開くのは単純作業ですが、実は経験と勘が必要で、保有する水田の面積と場所によっては見回りなどで1日6時間以上も費やすことになります。これを同社の水位調整サービス「Paditch」(http://www.paditch.com/)を用いることで、水位の変化や異常を離れてる場所でも経験や勘に頼らず適切に知ることができるようになります。
同社ではPaditchをさらに改良するため、共同開発を行ってくれるセンサーのメーカーや、フィールドワークまで対応できる販売代理店との提携を図っています。
ECOLOGGIE
▲葦苅晟矢氏
ECOLOGGIEは、早稲田大学の学生たちで構成されており、起業前の段階です。同団体では、魚の新しい餌を研究・開発しています。具体的には、昆虫のコウロギを原料にしています。現在、魚の餌は魚であることが一般的で、魚粉の価格が高騰していることもあり、漁業の経営を圧迫しています。魚粉の飼料にコウロギを用いることで、餌代が抑えられ、収益構造が改善されます。
一方、コウロギは、場合によってはウィルス病が蔓延すること、闘争性が高いなど、飼育における問題があります。このため、同団体では神戸大学と共同研究を行いながら、問題の解消を目指しています。将来的に食品会社などと連携し、魚の養殖以外の分野でも利用の促進を考えています。
銀座農園株式会社
▲代表取締役 飯村一樹氏
銀座農園は生産者と消費者が直販できるCtoCプラットフォームを提供するなど、主に農業流通の分野で活動を広げていましたが、近年は農業開発を主事業としており、企業が新規参入できる支援プラットフォームを構築。農地の調整から農場整備、流通、技術開発までを一貫して提供できる体制を築いていています。
よりリーズナブルに農業を始められる支援を行い、例えば、農業資材の流通経路を開拓し、ハウスの建設が通常よりも安価にできるようにしています。数ある農産物の中でも、同社は収益性の高い高糖度トマトに着目。規格化された栽培方法を世界に展開することを目指しています。また、高糖度トマトのほか、イチゴ、ワイナリーの生産も視野に入れているとのことでした。
株式会社セプトアグリ
▲代表取締役 社長 大社一樹氏
セプトアグリは低コストかつ簡単に水耕栽培を可能にする「EZ水耕」(http://www.sept-agri.co.jp/service/ez-suikou/)を手がけています。EZ水耕は、特殊な肥料の入った専用鉢に苗を植え、パネルに並べるだけで済むという非常にシンプルな構造。
パネルを休耕田など水のある場所に浮かべ、苗が育つのを待ちます。栽培に当たり、農耕機械や専門知識は必要としません。導入に際するイニシャルコストは大幅に抑えられ、それでいて、例えばリーフレタスを育てた場合、試算では一反150万円もの利益を上げることが可能です。
現在はまだ十分な実証データが取れていないところもありますが、既に秋田県や千葉県などで、導入例があり、苗拠点は全国に8カ所、水耕面積は110反にもなります。また、埼玉県に同社の実験農場が開かれました。今後、同水耕で栽培できる作物を増やすと共に、肥料・種苗メーカーや自治体との提携を目指しています。
5社によるピッチ終了後には、登壇者や参加者を交えたネットワーキングが行われました。次回の「eiicon meet up!! vol.7」は8/29(火)に開催。詳細は以下になります。ぜひ、お越しください。
【次回イベント情報】
eiicon meet up!! vol.7 ~社会課題解決 「すべての人に健康と福祉を」HealthCare Tech特集~
■日時:2017/08/29(火) 08:00〜09:00
■会場:Clipニホンバシ(東京都中央区日本橋本町3丁目3-3 Clipニホンバシビル1階)
※イベント詳細・申込は、右記URLをご確認ください。 https://techplay.jp/event/627765
※参加は無料です。(定員数40名/先着順となります)
取材後記
農業は多くの課題を抱えている産業の一つである。これまで課題解決のさまざまな試みが行われてきたが、今もなお解決すべきことは多く残っている。とりわけ、収益性や人手不足が大きな問題としてのしかかっているのだが、ピッチを聞いていて、農業と技術の相性の良さを実感した。もともとIoTやAIは人の代用をするという側面を強く持っているから、当然と言えば当然のことなのかもしれない。最新の技術と豊かな発想、何より農業を変えたいという熱意が、現状に大きな変革をもたらしてくれるのではないだろうか。AgriTechスタートアップのさらなる発展と成長、活躍に期待したい。
(構成:眞田幸剛、取材・文:中谷藤士、撮影:加藤武俊)