愛知県全域へ広がる「スタートアップ・エコシステム」。地域とスタートアップの共創は点から面へ――広域連携の可能性を探る『共創カイギ』イベントレポート
愛知県は「Aichi-Startup戦略」のもと、日本最大のスタートアップ支援拠点「STATION Ai」を中核に、県内全域に広がるスタートアップ・エコシステムの形成を進めている。STATION Aiの開業から1年あまりが経過し、各地域での取り組みは、拠点単位の活動から地域横断的な連携へと広がりつつある。
こうした動きを加速させるため、2026年1月16日に『あいちスタートアップ・エコシステム 共創カイギ』がSTATION Aiで開催された。会場には、県内外の自治体や商工会議所・商工会、金融機関、その他支援機関などの担当者が集結。地域の垣根を越えた「広域連携」での課題解決の可能性や、地域とスタートアップの共創がもたらす未来について、熱心な議論が交わされた。
イベントの冒頭、産業構造の変革期での「地域×スタートアップ」の重要性が共有された。自動車産業が100年に一度の変革期を迎える中、愛知県では、スタートアップが地域課題を解決し、地域のプレイヤーと共に新事業を創出する「パートナー」であると位置付けている。4年目を迎えた本事業では、対話の促進と共創事例の可視化を通じ、「挑戦を評価する空気」の醸成に力を注いできた。その結果、本事業への参画団体は当初の12団体から62団体へと拡大している。
TOMORUBAでは、熱気あふれるイベントの様子を取材。スタートアップとの共創を通じて地域課題を解決するためのノウハウや、広域連携の新たな可能性について語られた4つのセッション・ピッチの内容をダイジェストでお届けする。
【1】地域戦略スペシャルセッション『スタートアップ・エコシステム形成に向けた地域連携のあり方』
最初のセッションでは、先進的なスタートアップ・エコシステムを持つ福岡と、STATION Aiを核にエコシステム形成を加速させる愛知、それぞれのキーパーソンが登壇した。地域発スタートアップ・エコシステムの構築方法や、地域連携の考え方について、具体的な事例を交えながら意見が交わされた。
<登壇者>
・石丸修平氏(福岡地域戦略推進協議会 事務局長)
・藤井智也氏(愛知県 経済産業局 スタートアップ推進課 課長補佐)
・伊藤達彰氏(株式会社eiicon 執行役員 東海支社長)※モデレーター
■トークテーマ① 『それぞれの地域におけるエコシステムの概要』
福岡地域戦略推進協議会(FDC)の石丸氏は、FDCを産学官民で構成される「Think & Do Tank」と位置付け、福岡のスタートアップ支援は都市全体の成長戦略の一部だと説明した。かつて「支店経済の街」と呼ばれた福岡市は、支店の減少で都市の持続可能性が問われる状況に直面していたという。
そこで、福岡市の高島宗一郎市長は、シアトルなど福岡と同規模の海外都市に着想を得て、2012年に「スタートアップ都市宣言」を行った。支店経済からの脱却を目指し、「Fukuoka Growth Next」などの拠点整備を通じて、段階的にエコシステムを形成してきたと語った。
▲福岡地域戦略推進協議会・石丸氏
愛知県の藤井氏は、製造品出荷額等が47年連続日本一というモノづくり県の強みを踏まえながら、自動車産業が「100年に一度の大変革期」にあることへの危機感が出発点だったと説明。2018年に「Aichi-Startup戦略」を策定し、中核拠点として「STATION Ai」を開業した。現在はスタートアップと企業・自治体等合わせて約1,000社がSTATION Ai会員となり、新たなイノベーション創出に向けてのオープンイノベーションが進んでいるとした。
▲愛知県・藤井氏
■トークテーマ② 『スタートアップ・エコシステム形成により生まれた成果』
石丸氏は、都市戦略にスタートアップを組み込むことで、街全体の機能がアップデートされていると指摘した。「天神や博多の再開発と連携し、街の中にインキュベーション機能や交流拠点を実装してきた」と語り、近隣の飯塚市でも九州工業大学発のブロックチェーン技術を持つスタートアップが育っている事例を紹介。「FDCが事務局となって『フクオカ・ブロックチェーン・アライアンス』を組成し、地場の銀行がステーブルコインのプラットフォーム構築に乗り出すなど、地域発の技術が新たな産業を生み出しつつある」と成果を披露した。
藤井氏は、愛知では県内全域への広がりが成果として表れていることを示した。各地域が主体となったパートナー拠点の活動が活発化している点に触れ、「東三河、ウェルネスバレー(大府市・東浦町)、刈谷、尾張の4つのパートナー拠点は、『農業』『ヘルスケア』『モノづくり』『繊維や窯業などの地場産業』など独自のテーマや強みを活かして、スタートアップとの共創を進めている」と紹介。自治体、商工会議所、金融機関が連携することで、地域内に安定した関係性が築かれた点を成果として挙げた。
■トークテーマ③ 『地域を巻き込むためのポイント』
石丸氏は「潜在的なニーズを顕在化させ、成功体験を積み重ねることが重要だ」と強調した。「起業は敷居が高いものと思われていたが、誰でも気軽に相談できる『スタートアップカフェ』を開設したところ、3カ月で行政の年間相談件数を超える相談が寄せられた」と紹介。「潜在的なニーズが可視化されたことで、『起業も選択肢になる』という空気が醸成された。一番の成果は福岡が『チャレンジを許容する街』になったことだ」と語り、シニア層の起業相談も増え、人生の新しい選択肢として定着している現状を伝えた。
この話に頷きつつ、藤井氏は関わる人々が「前向きに、楽しく」取り組める環境づくりの大切さを説いた。「新しいことに取り組む際、未来や希望を感じられる場にすることが重要だ」と主張。「自治体職員もここ(STATION Ai)に来ると開放的になり、課題を共有できる仲間と会える。明るく前向きな雰囲気こそが、人を巻き込む求心力になる」と述べた
■トークテーマ④ 『スタートアップ・エコシステムの可能性・今後の展望』
石丸氏は「スタートアップ支援そのものが目的ではなく、あくまで街づくりが本質だ」と前置きし、「エコシステムを通じて、新しいチャレンジをする人や、これまでにない取り組みが生まれ、人材や情報の流動性が高まっていくことが重要。福岡が『アジアのビジネスハブ』として機能し、ここに来ればパートナーが見つかる、何かのきっかけが得られる、という場であり続けたい」と、都市圏全体の流動性を高める意欲を見せた。
藤井氏もこれに同意し、「エコシステムの中で、誰もがチャレンジできる取り組みを増やしていきたい」と力を込めた。「4つのパートナー拠点をはじめ、県内各地域での活動を深めつつ、地域間の連携も強化していく。愛知だけでなく、福岡をはじめとする全国、さらには世界へと発信できるような展開を目指していきたい」と、地域間連携のさらなる拡大と世界を見据えたビジョンを語り、発展への誓いを新たにした。
【2】STATION Aiパートナー拠点ピッチ『各パートナー拠点が目指す“エコシステム”とは』
続くセッションでは、県内各地で活動する「STATION Aiパートナー拠点」が登壇。各地域ならではの資源や課題を活かしたエコシステム形成の現在地と、今後の展望についてピッチを行った。
<登壇団体>
・東三河スタートアップ推進協議会
・ウェルネスバレー推進協議会
・刈谷イノベーション推進プラットフォーム
・尾張共創コンソーシアム
■東三河スタートアップ推進協議会
東三河スタートアップ推進協議会は2021年10月に発足した。目指しているのは、スタートアップ支援を通じて地域課題解決とイノベーションを促し、雇用や税収を生む「新産業」として根付かせることだ。支援対象は、急成長企業に加え、社内起業家やアトツギなど幅広い。起業家コミュニティの運営やSTATION Aiでのピッチ参加、地域企業への視察などを通じ、「モノづくり」や「農業」の現場とスタートアップをつないでいる。
また、地域とスタートアップの接点の可視化や「起業家ジャーニーマップ」の作成で、支援機関同士の自然な連携を促進。「活動を通じて共通認識を持ち、地域全体でスタートアップを温かく迎え入れる土壌を作ることが重要だ」と、エコシステム形成にあたる姿勢を語った
■ウェルネスバレー推進協議会
大府市と東浦町にまたがる「あいち健康の森公園」周辺地区(ウェルネスバレー)を拠点とする同協議会は、国立長寿医療研究センターなどの健康・長寿関連機関が集積する地の利を活かし、「幸齢社会」(幸せに老いを重ねる社会)の実現を掲げている。
活動の中核となるのは、医療・介護現場のリアルな課題と企業をつなぐ「医福工連携マッチング」だ。現場のニーズを洗い出して公開し、解決策を持つスタートアップ等とマッチングさせ、実際の施設を実証フィールドとして提供している。取り組みとして、STATION Ai会員企業の株式会社シスタと連携し、介護施設で「勤務シフト表の自動生成」に取り組む実証事例などが紹介された。
今後もSTATION Aiでの出張相談会を継続して接点を広げつつ、「医療・介護現場という貴重なリソースを最大限に提供し、業務改善や新商品開発を加速させるハブとして機能していきたい」と、ヘルスケア分野にとどまらない連携拡大への意欲を示した。
■刈谷イノベーション推進プラットフォーム(KIP)
KIPは刈谷市、刈谷商工会議所、碧海信用金庫の3機関が連携し、地域産業が構造転換を迎えても持続的に発展する産業都市を目指して設立された。行政機関だけではアプローチしきれない中小企業に対し、商工会議所や信用金庫のネットワークを活かして支援を展開。人材育成やコワーキングスペースでのコミュニティづくりに加え、STATION Aiと連携した「個別視察会」を開催し、地域企業とスタートアップとの接点創出を加速させている。
2025年4月からは刈谷市職員がSTATION Aiに常駐し、すでに約40社のスタートアップと連携、70件以上のマッチングを生み出した。今後も、西三河オープンイノベーションコミュニティの運営や、大規模イベント「KIP MEET」の開催を通じ、「STATION Aiと地域を行き来しながら、両軸で関係性を構築する持続可能なエコシステム」を推進していく構えだ。
■尾張共創コンソーシアム
同コンソーシアムは2025年4月に尾張地域の7商工会議所(一宮商工会議所・瀬戸商工会議所・津島商工会議所・稲沢商工会議所・江南商工会議所・小牧商工会議所・犬山商工会議所)が連携して設立された。
事務局を務める一宮商工会議所は、かつて単独で行っていたスタートアップ支援で、人的リソースの不足や市場規模の限界、地域産業ゆえの課題の偏りといった壁に直面していた。こうした状況を打破するため、隣接する商工会議所を巻き込み、エリア内の会員事業所数約1万6,000社のスケールメリットを活かした広域連携体制を構築。各地域の産業特性に合わせたテーマを設定し、スタートアップのソリューションをピンポイントで提案する仕組みを整えた。
また、地域で生まれた成功パターンを広域で横展開することで、地域企業に対する支援の精度を高めている現状を報告した。活動は職員にとっても新たな支援スキル習得の機会となっており、「地域企業、スタートアップ、商工会議所の『三方良し』を実現し、地域経済活性化の第一歩を踏み出した」と手応えを語った。
【3】広域エリア連携トークセッション
後半のトークセッションでは、「広域エリア連携」をテーマに、地域や団体の枠を超えたエコシステム形成の現在地と未来について語られた。
<登壇者>
・小野健太郎氏(豊橋市 産業部 地域イノベーション推進室)
・西脇豊氏(一宮商工会議所 中小企業相談所 産業振興グループ)
・矢土知典氏(岡崎商工会議所 産業振興課)
・増田圭亮氏(碧海信用金庫 ビジネスイノベーション室)
・藤井越百氏(株式会社eiicon/エコシステム形成統括マネージャー)※モデレーター
■トークテーマ① 『スタートアップ連携に取り組み始めたきっかけ』
豊橋市では、「STATION Ai」設立の動きに呼応し、地元の産業界においてスタートアップ連携の機運が高まった。この動きにあわせ市長のトップダウンで「東三河のパートナー拠点」の設立準備組織へ市として参画したことが取組のきっかけとなった。
▲豊橋市・小野氏
一宮商工会議所は、従来のイノベーション事業のさらなるスケールアップの必要性を背景に、地域経済の活性化を目的として、尾張7会議所(一宮、瀬戸、津島、稲沢、江南、小牧、犬山)と連携し、尾張共創コンソーシアムを設立した。
▲一宮商工会議所・西脇氏
岡崎商工会議所は、従来、岡崎市と活動していた「岡崎ものづくり推進協議会」における産学官連携が土台にあり、2017年より、さらに具体的なイノベーション活動を推進してきた。昨年度、県のプログラムに参加したことを機に、地域企業の新たな挑戦やイノベーションを支援する手段として、本格的にスタートアップとの連携を深めることになった。
▲岡崎商工会議所・矢土氏
碧海信用金庫は、西三河地域でスタートアップのエコシステムを構築したいという組織内の機運が高まっていたことが背景にある。刈谷市も同様の構想を持っていたため、これを好機として、自治体・商工会議所と連携した支援体制(刈谷イノベーション推進プラットフォーム=KIP)の設立へとつながった。
▲碧海信用金庫・増田氏
■トークテーマ② 『地域の複数団体による連携の取組やメリット』
西脇氏は「一宮だけでは実証フィールドや業種に偏りが出るが、広域で連携することでその課題を解消できる。スタートアップが持つ発想力やスピード感を地域企業に取り入れることで、従来の支援手法では見えにくかった課題や新たな可能性が見えてくる。今後は、こうした視点を活かした連携を推進していきたい」と意欲を語った。
岡崎エリアでは、岡崎商工会議所、岡崎市、日本政策金融公庫の3者による連携が進む。矢土氏は「商工会議所は企業の生の声、市は行政の広い視点、公庫は全国のネットワークと、それぞれの強みを持ち寄ることで、会員企業に届くメリットが最大化される」と、役割分担の明確さを強調した。
増田氏は「金融機関の強みである広範な企業ネットワーク、自治体の予算規模、商工会議所の地域密着性を掛け合わせられるのが最大のメリット」と語る。さらに「KIPは3団体というミニマムな組織だからこそ、フットワーク軽くすぐに動ける」と、意思決定のスピード感を強みとして挙げた。
東三河エリアの連携について小野氏は、立ち上げ当初に行った「カスタマージャーニーマップ」の作成ワークショップを紹介。「起業家がどのような感情で行動するかを、民間、行政、支援機関が一緒になって数カ月かけて考え抜いた。その過程で『腹を割って話せる関係』ができ、それが今の連携の基盤になっている」と、組織を超えた信頼関係の重要性を説いた。
■トークテーマ③ 『地域の垣根を超えた連携体制の構築事例やその可能性』
地域内の連携から一歩進んだ、エリアを超えた「広域連携」の事例も生まれ始めている。増田氏は、2025年12月に開催したピッチイベントの事例を紹介。当初はKIP単独で検討していたが、県のプログラムを通じて岡崎エリアとも連携。「壁を超えて、お互いの地域の企業とスタートアップを交えた座談会形式のイベントを実現できた」と語る。
矢土氏も、2025年8月の展示会にKIPやウェルネスバレー推進協議会(大府市・東浦町)を招き、各エリアの取り組みを発信する場を設けた事例を共有。「顔の見える関係ができているからこそ、地域をまたいだ連携がスムーズに進む」と述べた。
西脇氏は、一宮市の課題であった観光分野の弱さを補うため、観光に強い犬山市との連携を模索した事例を挙げ、「地域ごとの強みや特性を理解し、スタートアップに最適なフィールドを紹介し合えるのが広域連携の可能性」と指摘した。
■トークテーマ④ 『今後、取り組んでみたい「広域エリア連携」』
小野氏は「地域の『癖』について自慢大会をやりたい」とユニークな構想を披露。「その地域にしかない独自の強みや文化を浮き彫りにし、それに惹かれるスタートアップとマッチングさせるような仕掛けを作りたい」と意欲を見せた。
西脇氏は「パートナー拠点同士で連携し、大きなイベントを打ちたい」と、スケールメリットを活かした展開を提案。矢土氏は「技術のマッチングだけでなく、人と人との出会いの場を増やしたい。例えば、岡崎と近隣地域の工場視察ツアーなどを行い、雑談から『一緒に試作品を作ろう』となるような関係性を築ければ」と語った。
増田氏は「成功事例だけでなく、失敗事例も含めたノウハウの共有」を挙げた。「各地域で蓄積された知見を共有し合うことで、エコシステム全体の質を高めていきたい」という言葉に、会場からは共感の頷きが見られた。
【4】“地域パートナー×スタートアップ”共創ピッチ
最後のコンテンツでは、地域にサービスを実装するスタートアップと自治体が登壇し、地域課題解決に向けた共創事例を紹介した。
<登壇団体>
・瀬戸市×株式会社Gab
・知多市×株式会社Plaru
・犬山商工会議所×株式会社みやげる
■瀬戸市×株式会社Gab
『陶磁器企業と連携し、炭化物を配合した製品を開発』
瀬戸市は、ごみ処理場施設更新が控えているなどの背景から、できる限り将来負担を減らすため、ごみの減量を切実な地域課題と捉えている。ゼロカーボンシティの実現とごみ処理コストの適正化を目指し、廃棄物の「炭化技術」を持つ株式会社Gabとタッグを組んだ。Gabは、あらゆる廃棄物を燃やさずに炭化させ、消臭・抗菌などの機能性を持つ高付加価値素材「.Garbon」に再生する技術を持つ。
本プロジェクトでは、瀬戸市がハブとなり、市内の廃棄物排出企業や、新たな製品開発を目指す地場の陶磁器メーカーをGabに紹介。現在、炭化物を配合した陶器(アロマポット等)の試作など、地場産業の強みを活かした製品開発が進んでいる。ごみを価値ある素材に変え、その利益を地域へ還元するサーキュラーエコノミーの構築を目指す。
■知多市×株式会社Plaru
『AI旅行計画アプリによる周遊促進×データ活用』
知多市は「いわゆる観光地ではないからこそ、能動的な仕掛けが必要」と語る。県内最大となる約6,000本の梅が咲く「佐布里(そうり)池梅まつり」などの資源はあるが、点在するスポット間の周遊や、来訪者の詳細なデータ収集が課題だった。そこで連携したのが、株式会社Plaruだ。
同社のAI旅行計画アプリ「ぷらる」は、個人の好みに合わせた最適な旅行ルートを提案するだけでなく、通常のGPSデータでは掴めない「計画段階の思考」や「属性」などの詳細なデータを収集できる点が強みだ。知多市では、観光ガイド「ここちた」の情報をアプリに搭載し、隠れた名所への周遊を促進。今後は知多半島全域への広域展開も見据え、データに基づく観光施策の高度化を目指す。
■犬山商工会議所×株式会社みやげる
『よみとるだけのお土産発注サービス「みやげる」』
国宝・犬山城などで多くの観光客を集める犬山市だが、日帰り客の消費額は他地域の約半額(4,000円強)に留まるという課題を抱えていた。名古屋と高山の中間に位置する「経由地」として利用されることが多く、荷物になるお土産の購入が敬遠されているためだ。
そこで、店舗でQRコードを読み込むだけで土産物を自宅や空港へ配送できる「手ぶら購入」サービスを展開する学生スタートアップ、株式会社みやげると連携。商工会議所とスタートアップが共に18軒の事業者を訪問して現場のリアルな課題をヒアリングし、認識のズレを修正しながら信頼関係を構築した。その結果、城下町から離れたプリン店での実証実験が決定。今後はこの成功事例を呼び水に、市内全域への導入拡大を目指す。
※ ※ ※ ※
共創ピッチ後、ネットワーキングが行われ、参加者同士で意見交換などを行った。大いに盛り上がりを見せ、『共創カイギ』は幕を閉じた。
取材後記
会場となったSTATION Aiに一歩足を踏み入れると、県内の自治体や商工会議所、金融機関のキーパーソンらが発する熱気に圧倒された。愛知県・藤井氏の「自治体職員もここに来ると開放的になり、前向きになれる」という言葉の通り、セッションの合間には、組織や立場の壁を取り払い、笑顔で「共創」の未来を語り合う姿が会場のあちこちで見られた。スタートアップを共に地域を変える「パートナー」として歓迎する空気感が、着実に愛知全域へ広がっている。成功体験だけでなく、課題や失敗も共有知として高め合うこのコミュニティが、地域共創の新たなモデルを生み出していく可能性を感じさせる。
(編集:眞田幸剛、文:中谷藤士、撮影:加藤武俊)