K2 Picturesの映画製作ファンドに三越伊勢丹イノベーションズが出資 産業の資金構造を刷新
映画制作・投資を手がける株式会社K2 Picturesは、同社が運用する映画製作ファンド「K2P Film Fund Ⅰ」に対し、三越伊勢丹イノベーションズから出資を受けると発表した。百貨店グループのCVCが日本映画の新たな資金循環モデルに参加することで、コンテンツと小売の接点拡張、さらにはグローバル市場を視野に入れた展開の加速が期待される。
カンヌで掲げた「新しい生態系」
K2 Picturesは2023年8月に始動。2024年のカンヌ国際映画祭の開催期間中にフランス・カンヌでファンド構想を公表し、「日本映画の新しい生態系をつくる」と宣言した。製作委員会方式に依存してきた従来の構造に対し、ファンド形式での資金調達を導入することで、国内外の投資家が参入しやすい環境を整備。さらに手数料率の見直しにより、投資回収までの期間短縮も図る。
クリエイターへ回る仕組みを再設計
もう一つの柱が、才能への還元だ。日本映画界では、ヒット作が生まれてもクリエイターに十分な利益が行き渡りにくい構造が長年課題とされてきた。同ファンドでは成功報酬などを含めた制度設計を行い、創作者が持続的に挑戦できる環境づくりを進める。資金の流れそのものを変えることで、夢を持ち続けられる産業基盤を築く狙いだ。
ファンド初の製作作品として公開されたのが、芸人のゆりやんレトリィバァが初監督を務めた映画『禍禍女』。異色のキャリア転身として注目を集めた。さらに2026年内には、是枝裕和監督が、藤本タツキによる漫画を原作とした『ルックバック』を実写化する予定で、国内外から大きな関心が寄せられている。
百貨店が見据える“体験”への拡張
三越伊勢丹ホールディングスは、これまでも映画やアニメと連動した商品企画などに取り組んできた。だが近年、消費はモノから体験・共感へと広がっている。同社グループにとって文化性や創造性は、顧客との新しい関係性を築く重要な要素だ。CVCである三越伊勢丹イノベーションズは、投資と協業を通じてグループの編集力を高め、独自の体験価値を提供していく方針を掲げる。
世界市場へ向けた共創モデル
今回の出資により、K2 Picturesは作品開発をさらに加速させると同時に、百貨店が持つ顧客接点やブランド力との連携を模索する。映画を起点に、売り場、イベント、IP展開など多面的な広がりが生まれれば、日本のものづくりやクリエイター支援の新たなモデルとなり得る。コンテンツ産業の構造転換に、小売大手の資本が本格的に関わり始めた。K2P Film Fund Ⅰの挑戦は、映画づくりの未来像を映す試金石となりそうだ。
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(TOMORUBA編集部)