ビジネスにおける『レジリエンス』の重要性。VUCAの時代を生き抜く、組織と個人のレジリエンスのあるべき姿とは
新規事業やオープンイノベーションのプレイヤーやそれらを実践・検討する企業の経営者はTOMORUBAの主な読者層ですが、こうした人々は常に最新トレンドをキャッチしておかなければなりません。そんなビジネスパーソンが知っておきたいトレンドキーワードをサクッと理解できる連載が「5分で知るビジネストレンド」です。キーワードを「雑学」としてではなく、今日から使える「知識」としてお届けしていきます。
今回取り上げるテーマはビジネスにおける『レジリエンス(精神的回復力)』です。近年、急激な変化を繰り返す社会情勢やコロナ禍など、予測が難しい事態が次々に起こっています。企業としても、こうした状況に対応するには柔軟な対応が求められますし、もちろん企業で働く従業員にとってもストレスがかかります。
VUCAの時代に求められる健康経営と、メンタルヘルスとはどのようなものか、ビジネスパーソンに求められるレジリエンスの知識を解説していきます。
レジリエンスとはストレスやトラブルを経験した後の回復力
レジリエンス(resilience)とは、直訳すると「回復力」「しなやかさ」といった意味の英単語です。ビジネスシーンにおいてレジリエンスはさまざまなケースで利用されることがあります。例えば、セキュリティ業界で言うレジリエンスはサイバー攻撃を受けた際の耐性や回復を指しますし、災害時におけるレジリエンスは災害を乗り越える力を指します。また、心理学におけるレジリエンスはトラウマを抱えたり、仕事や家庭の環境などから受けるストレスを跳ねのけて心理的に回復すること、さらにその過程を経てより精神的に成長することを含みます。
本記事で解説するレジリエンスは、ビジネスにおけるストレスやトラブルに対処し、回復する力のことを指します。ビジネスにおけるレジリエンスは2種類に分類され、「組織」としてのレジリエンスと、「従業員」を対象とするレジリエンスがあります。
組織におけるレジリエンスは、災害やトラブルなど不足の事態に陥った際に「事業や計画を継続できる力」と、「多様性やDXへの対応などの変化に柔軟に対応する力」の2つの側面があります。
一方、従業員におけるレジリエンスは、仕事内容や職場の人間関係におけるストレス耐性や精神回復力、課題解決能力などのことを指します。
ビジネスにおけるレジリエンスが注目を集めている理由
近年、ビジネスにおけるレジリエンスが注目されるようになった背景はいくつかあります。ひとつは、ウクライナ情勢やイスラエル情勢、そしてコロナ禍、自然災害など、まったく予測が不可能な事態が次々と起きている「VUCAの時代」に突入していることが挙げられます。仮に現在、事業が安定していたり、職場の環境が安定していたとしても、一瞬にして安定が覆ってしまうケースは珍しくなくなっています。そのため、予測不可能な事態が起こったとしてもそこから回復できる力を蓄えておくことが重要視されています。
また、VUCAの時代ともリンクする話ですが、国内では労働力不足が深刻化していることや、健康寿命が伸びて「人生100年時代」と呼ばれていることを受けて、定年まで勤め上げるという従来型の雇用形態では働き手のニーズにマッチしないことが増える可能性が高いです。そのため、企業では働き方に多様性をもたせてフレキシブルに対処できる仕組みづくりが必要とされます。
さらに、従業員の健康に配慮することでさらなる成果を生み出す「健康経営」の視点からも、レジリエンスに注目が集まっています。従業員のメンタルヘルスを予防・援助することが重要であるという認識が広がっていることも理由のひとつでしょう。
レジリエンスはなぜ重要?レジリエンスが高い人の特徴とは
ビジネスにおける個人のレジリエンスの重要性は、厚生労働省が公開している資料『令和元年版 労働経済の分析 -人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について-』でも取り上げられています。
この資料の第Ⅱ部第2節『「働きがい」と様々なアウトカムとの関係性について』では、“「働きがい」を向上させていくためには、仕事の資源を活用できる環境を整備していくことが、重要な「鍵」となる”と説明しており、「個人の資源」としてレジリエンスを挙げています。つまり、組織が生産性を高めるためには、レジリエンスなど個人のワークエンゲージメントを高めることが成果につながるということです。
出典:第Ⅱ章 「働きがい」をもって働くこと のできる環境の実現に向けて
さらに、同資料の第Ⅱ部第4節『リカバリー経験(休み方)と「働きがい」との好循環の実現に向けて』では、レジリエンスを得るための休み方にも言及されています。
働く方は、就業を続けることによって、次第に疲労やストレスが蓄積していき、仕事から活力を得ていきいきとすることが難しくなり、レジリエンス(屈せず、立直り、乗り越えること)や楽観性などの「個人の資源(心理的距離)」も枯渇していくため、リカバリー経験によって、「活力」や「個人の資源(心理的資本)」を回復・向上させる機会を得ることで、後日再び就業する際に良質なパフォーマンスを発揮することができる。
引用:令和元年版 労働経済の分析 -人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について-|厚生労働省
こうしたレジリエンスの特性を鑑みると、レジリエンスの高い人の特徴は以下のようなものになります。
●コミュニケーション能力に長けている
●リスクをとって行動できる
●自身の状況を客観的に把握できる
●新しいこと・未体験のことに挑戦できる
●柔軟な思考・行動ができる
編集後記
ビジネスにおけるレジリエンスは組織、個人どちらか一方だけが努力しても得ることができません。リスクをとって行動できる人はレジリエンスがある個人ですが、リスクを許容できない組織であれば個人の資源は埋没してしまいます。組織の心理的安全性にも通ずる話ですが、失敗を財産だと考え、組織と個人で足並みをそろえることでパフォーマンス高くなおかつメンタルヘルスが良好に保たれている状態が実現できるはずです。
関連記事:Googleの研究で注目される「心理的安全性」とは?リーダー、マネジメント、人事担当者ができることを解説
(TOMORUBA編集部 久野太一)
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