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ユーフォリア・eatas・グレースイメージング・グローバルキャストが採択!地域版SOIP<関東エリア>のビジネスビルドで披露された共創事業とは?

ユーフォリア・eatas・グレースイメージング・グローバルキャストが採択!地域版SOIP<関東エリア>のビジネスビルドで披露された共創事業とは?

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「地域×スポーツ産業」の共創でビジネス創出を目指すプログラム「SPORTS OPEN INNOVATION BUSINESS BUILD」。スポーツ庁が仕掛ける「地域版SOIP」形成に向けた事業の一環として、2021年度より開催されているプログラムだ。地域に根ざした活動を行うスポーツチームと応募企業が、2日間の対面式イベント(ビジネスビルド)で共創事業の骨子をつくり、その後の数カ月で実証を行う。そして、年度末に成果と事業化に向けたマイルストーンの発表を行うという流れだ。

3期目となる今年度は、全国3エリア(東北/関東/九州)が本プログラムの舞台となっている。去る10月17日(火)と18日(水)、第一弾として関東エリアのビジネスビルド(SPORTS OPEN INNOVATION BUSINESS BUILD KANTO)が、埼玉スタジアム2○○2で開催された。関東エリアでは、三菱重工浦和レッズレディース(女子サッカー)、大宮アルディージャVENTUS(女子サッカー)、さいたまマラソン(マラソン)、さいたまブロンコス(バスケットボール)がホストスポーツチームとなり、共創パートナーを募集。

当日は、全64件の応募のなかから選ばれた8社が集まり、スポーツチームとのディスカッションや、メンターからのアドバイスをもとに、共創ビジネスのアイデアをブラッシュアップ。最終的に事業案を発表し、審査の結果、計4社がアイデアの具体化に進む機会を獲得した。本記事では、2日間のビジネスビルドのハイライトをレポートする。

※関連記事:地域版SOIPキーマンインタビュー【関東編】―女子サッカー、マラソン、バスケの3競技・4チーム(団体)が参戦!各チームが掲げる募集テーマを深堀りする

埼玉スタジアムに関係者が集結、対面での議論を通じて、共創プランをブラッシュアップ

ビジネスビルドの初日、会場となる埼玉スタジアム2○○2に関係者が集結。ホストスポーツチームと提案企業が、メンターによるアドバイスを受けながら共創事業の骨子を練り上げた。中間プレゼンテーションでは、メンターから鋭い指摘も投げかけられ、当初の提案内容を再構築する様子も見られた。

▲ビジネスビルドには、スポーツビジネスや新規事業創出に精通するメンター陣が参加。

ビジネスビルド2日目は、さらなるメンタリングを経て最終プレゼンへ。最終プレゼンでは、各チーム6分で共創事業を発表。メンターやスポーツチーム(審査員)からの質疑応答も含めた合計12分で、共創で取り組みたい内容の全貌を伝えた。審査基準は、①顧客・課題の解像度、②提案・ソリューションの妥当性、③市場性、④事業拡張性、⑤地域版SOIPとの親和性の5点である。――次からはプレゼンの内容を、採択された企業をメインに紹介していく。

【三菱重工浦和レッズレディース】すべての女性アスリートが幸せになるためのデータ基盤構築

女子サッカーリーグ(WEリーグ)に所属し、2022-23シーズンの平均観客動員数ではリーグ1位を誇る、三菱重工浦和レッズレディース。サッカー文化の根づく“サッカーのまち浦和 ”を本拠地とする強豪クラブだ。

今回は、女性応援や環境、地域課題解決を意識したテーマで、ホームタウンやファン・サポーター、パートナー企業を巻き込みながら、収益化も見据えて一緒に取り組めるパートナーを募集。ビジネスビルドを経て、スポーツ選手のコンディション管理ソフト『ONE TAP SPORTS』を展開する株式会社ユーフォリアと、共創に取り組むことが決定した。

●株式会社ユーフォリア

提案タイトル「部活動をする女性のためのコンディショニングメソッドの開発 ~苦痛を伴わずに純粋にスポーツを楽しみ続けられる環境づくりのために~」

ユーフォリアの着目した課題は、女性アスリートの健康問題。同社はすべての女性アスリートがスポーツを断念することがないようデータプラットフォームを構築していきたいと話す。三菱重工浦和レッズレディースでは、今回のプログラムを機に、トップチームから中高生アスリートら(U15・U18)を含めた全年代に導入し、データの蓄積と活用を図りたいという。これにより、各年代で留意すべき点を明らかにしたい考えだ。

初動のマネタイズは、本活動に賛同する企業からのスポンサー料などを考えている。女性アスリートの健康問題の解決策構築に向けた本事業への協賛や女性アスリート一人一人が“健康な状態”でスポーツを続けながら幸せな人生を歩むための環境構築に協賛する企業から利用料等をもらうようなビジネスモデルも視野に入れている。将来的にデータが蓄積され、データ基盤が整ってきたら、保険会社やフェムテック関連企業などと連携し、新たなビジネスをうみだしていくことも視野に入れている。今年度は、三菱重工浦和レッズレディースに所属する全世代の女性アスリートのデータを取得し、蓄積したデータをもとに女性アスリートの健康課題に起因する指標を探す。また同時に、スポンサー企業の開拓も進める。将来的にはすべての女性アスリート、ひいてはすべての女性の健康問題や活躍推進に貢献していきたいと展望を述べた。

<ホスト企業・受賞者コメント>

三菱重工浦和レッズレディースの藤倉氏は、「選手のコンディション管理という目の前にある課題解決を図れるとともに、さいたま市内で女子サッカーを盛りあげるための裾野を広げられる内容だった」と採択のポイントを述べた。また、ユーフォリアは、「女性アスリートを取り巻く課題はトップレベルに限らず学生の部活動にも多い」とし、「悔やむ人を1人でもスポーツ界から減らしていきたい」と話した。本プロジェクトに伴走するメンター・平地氏(プラスクラス・スポーツ・インキュベーション株式会社 代表取締役インキュベーター)は、「この新しい取り組みをよりよく伝えるという点で支援していきたい」とコメントした。

【大宮アルディージャVENTUS】子どもたちが “無意識” に楽しく食べて進化する『進化めし』の開発

大宮アルディージャVENTUSも、女子サッカーリーグ(WEリーグ)の強豪クラブのひとつで、元なでしこジャパンの鮫島選手や仲田選手といった有名選手が在籍している。大宮駅の近隣にスタジアムを保有し、観客動員数も上位だ。今回は、ホームスタジアムへの来場をフックに、サッカーを通じて笑顔を生み出す仕掛けづくりに取り組めるパートナーを募集。ビジネスビルドの結果、パーソナル食事指導アプリ『eat+』を展開するeatas株式会社と共創に取り組むこととなった。

●eatas株式会社

提案タイトル「子どもたちが “無意識” に楽しく食べて進化する『進化めし』」

eatas株式会社は、女性アスリートの傷害によるスポーツ離脱率の高さに着目。男性よりも女性のほうが21%も高いことを問題視する。eatas代表で管理栄養士の資格を持つ手嶋氏は、離脱率の高い理由が摂取エネルギーの不足による月経機能障害にあると指摘。今回のプログラムでは、同社の栄養管理アプリと管理栄養士によるパーソナル食事指導のノウハウを活かし、この課題解決に挑みたいと話す。それに向けて構想したスキームが、”大宮モデル”だ。

このスキームでは、まずVENTUSの選手に対して適切な栄養管理を実施し、選手に正しい栄養管理を習得してもらう。次に地域パートナーであるさいたまスポーツコミッションが運営する『スマイルプロジェクト』(女子中学生を対象としたサッカー合同練習会)のなかで、選手が女子中学生に対して食育を行う。さらに選手の考案したメニューを、さいたま市の学校給食(159校・10万人)で提供し、ファンの拡大へとつなげる。

将来的には、それらをリテール大手とともに商品化することで、誰でも手に取れる仕組みを構築し、健康に対して意識の低い人たちに届けていきたいと話す。今年度中に、給食提供まで進める予定だという。商品化によるマネタイズを考えているが、クラブにも売上の一部を還元する。商品化するメニュー(進化めし)の一例として手嶋氏は、『パスが上手くなるパスタ』を挙げ、無意識層にも手に取ってもらえるような商品を、選手とともに開発していきたいと語った。

<ホスト企業・受賞者コメント>

大宮アルディージャVENTUSの渡辺氏は、「クラブの強みである選手の価値を最大限に活かしながら、地域を巻き込んで一緒に盛りあげていける点がよかった」と採択の理由を伝えた。eatasの手嶋氏は、自身が管理栄養士を目指したきっかけに触れながら、「スポーツから食のイノベーションを起こしていきたい」と語った。また、本プロジェクトに伴走するメンター・中馬氏(KDDI株式会社 事業創造本部 副本部長)は、「ターゲットとなる学生のメンタリティに向き合い、若い世代の心を動かすような商品開発ができることが理想だとし、それに向けてノウハウを惜しみなく提供していきたい」と伝えた。

【さいたまマラソン】目標タイムでの完走をサポートし、日本一笑顔になれる大会へ

さいたま市、さいたまスポーツコミッション、埼玉陸上競技協会の3者が主催するさいたまマラソン。コロナ禍で中止が続いていたが、2024年2月、4年ぶりに市民マラソンへと形を変え、再開することが決定した。今回は、マラソン初級者も上級者も、子どもも大人も、誰もが楽しく参加できる大会、そして、ランナーだけではなく大会に関わるすべての人の満足度が向上する大会に向けて、共創パートナーを募集。ビジネスビルドの結果、汗中乳酸濃度を測定・可視化する技術を持つ株式会社グレースイメージングと共創に取り組むこととなった。

●株式会社グレースイメージング

提案タイトル「日本一笑顔になれるさいたまマラソン」

グレースイメージングは、マラソンランナーの満足度を高める最大の要素を「目標タイムで完走する」ことだとし、それを実現するサービスを提案。具体的には、同社の保有する有酸素運動から無酸素運動に切り替わるポイント(LTポイント)を可視化する技術を活用する。

大会前にランナーの汗乳酸測定を実施してLTポイントを取得。適切なランニングスピードをカウンセリングでランナーに伝える。それを踏まえて、トレーニングメニューやレース戦略を立ててもらうという。LTポイントからマラソンの最適速度が分かることは、ランナーにとって大きな参考値になると説明する。

こうしたサービスを提供することで、目標タイム内での完走をサポートし、ランナーの満足度を高める。満足度向上を通じて、ランナー参加者数の増加にもつなげるという。今年度に実施する実証では、ランナーの汗乳酸測定を行うとともに、目標達成できるランナーが増えるかどうかを検証する。将来的にはトレーナーの育成を通じて、本取り組みをさいたま市民へと広げ、スポーツを楽しむ市民人口の拡大、およびスポーツの産業化を進めていきたいと展望を述べた。

<ホスト企業・受賞者コメント>

さいたま市の関口氏は、「参加者の満足度に直結する提案だった」と採択の理由を伝えた。また、グレースイメージングは、アドバイスをもとに提案内容をより深めることができたとし、「ぜひこの機会を活かし、さいたま市やさいたまマラソンの願いを叶えるお手伝いをしていきたい」と語った。本プロジェクトに伴走するメンターの長田氏(一般社団法人渋谷未来デザイン 理事・事務局長)は、自身もワールドランを企画したことがあることに触れながら、「ゴールする際に笑顔になれるような体験をつくれるようサポートしていきたい」と伝えた。

【さいたまブロンコス】ブロンコスひらめきラボ~地元チームとさいたまで育む子どもの未来と家族の絆~

B3リーグに所属し、創設から40年以上の歴史を誇るさいたまブロンコスは、2020年にクラブ運営体制を一新して再始動。その結果、昨シーズンは同43勝でプレーオフに初進出するところまで成績を伸ばすことができた。今回、本プロジェクトではB2昇格を目指し、集客強化策と地域活動のパフォーマンス最大化、チームブランドの確立に挑戦するためのパートナーを募集。ビジネスビルドの結果、子ども向けプログラミング教室などを展開する株式会社グローバルキャストと共創に取り組むことが決定した。

●株式会社グローバルキャスト

提案タイトル「ブロンコスひらめきラボ ~地元チームとさいたまで育む子どもの未来と家族の絆~」

グローバルキャストは、さいたま在住の共働き子育て世代、とくに「子どもたちの体験機会を増やしたい」と考える層をターゲットとしたビジネスプランを発表。共働きの子育て世代は、土日の家族イベントを大切にする傾向があることから、休日に親子で一緒に学べるSTEAMS(※)教育・探究学習の機会を提供したいと話す。同社の持つ教室運営ノウハウやデジタルノウハウと、ブロンコスの持つチームの認知度や地域とのつながりなどをかけ合わせ実現を目指す。

※STEAMS=さいたま市では、科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、 芸術(Arts)、数学(Mathematics)に、スポーツ(Sports)も加えた『さいたまSTEAMS教育』を推進している。

具体的には、何らかの課題に対して、家族が同じ目線に立って解決策を考えるような新しい学びの場をつくる。そして、学んだことをブロンコスのホーム試合会場でプレゼンしてもらうという。マネタイズは、本活動に賛同する企業からのスポンサー料を想定。企業の抱える課題を探究学習で取り上げるなど、企業と参加者の接点を設けていきたいとした。こうした活動を通じて、さいたまから将来の日本を背負うリーダーを育てていきたいと語った。

<ホスト企業・受賞者コメント>

さいたまブロンコスの小竹氏は、「子どもの教育という観点で深堀りされ、横の広がりも感じられる提案だった」と採択のポイントを伝えた。また、グローバルキャストは「これからがスタートだと思うので、頑張っていきたい」と意気込みを伝えた。本プロジェクトに伴走するメンター・高岡氏(岡山大学学術研究院・合同会社SPORTS DRIVE 教育学域 准教授代表社員)は、「本取り組みがスポンサー企業の獲得やファンのブースター拡大、地域の子どもたちや保護者への貢献など、三方よしの形になるようサポートしていきたい」と語った。

声援の可視化やタッチコミュニケーションなど、多彩な切り口の提案も

上記4社のほか、SHIN4NY株式会社、株式会社Wizest、株式会社テックシンカーが、各社の強みを活かした共創プランを発表した。以下に紹介する。

●SHIN4NY株式会社(三菱重工 浦和レッズレディースへの提案)

提案タイトル「スタジアムの盛り上がりを可視化し、応援する楽しみを爆上げする リアルタイム音声解析テクノロジー“ボルテージ指数”」

熱狂度を可視化するプロダクトの開発を進めるSHIN4NYは、音声解析テクノロジーを活用し、観戦体験をアップデートするビジネスプランを提案。スタジアムに設置した指向性マイクと観戦者の持つスマートフォンから声を収集し、“ボルテージ指数”として計測し、見える化。現地ではなくリモートで応援している人たちも巻き込みながら、ファン・サポーターの熱い想いをスタジアムに届ける提案を行った。

●株式会社Wizest(大宮アルディージャ VENTUSへの提案)

提案タイトル「選手とファンの関係が深まるタッチコミュニケーション ORANGE TOUCH」

Wizestは、競技の魅力だけではなく、選手の魅力も一緒に伝えることで、スタジアムへの集客を強化するビジネスプランを提案。女子サッカー選手を身近に感じてもらうことで、クラブへの興味喚起につなげ、さらにスタジアムでの試合観戦につなげたいと話す。試合日や公開練習日だけに限らず、非公開の練習日などにおいてもファンとのコミュニケーション量を増やし、ファンのクラブに対するエンゲージメントを高めていきたいとした。

●株式会社テックシンカー(さいたまマラソンへの提案)

提案タイトル「街や人のため、わたしたちは走る 走れば走るほどCO2削減が進む「さいたまマラソン」」

CO2排出量可視化やカーボンオフセット事業を展開するテックシンカーは、さいたまマラソンの新たなブランディングの方向性として“カーボンニュートラル”を提案。走れば走るほど、CO2の削減が進むマラソン大会の企画案を披露。社会的な注目度の高い気候変動問題にフォーカスすることで、大会のスポンサー獲得や他のマラソン大会との差別化を図っていきたいとした。

「オープンイノベーションの芽を、これから育んでいきたい」―閉会の挨拶

採択企業発表後、次の3名より総評と閉会の挨拶が行われた。まず、メンターを代表してPwCコンサルティング合同会社 ディレクター菅原氏が、同じ夢を見られるかが共創を成功させるために重要なポイントだとし、「その未来像に向かって一緒に努力できれば、新しいものを生み出せる」と、あらためて参加者らにエールを送った。

続いて、地域パートナーを務めるさいたまスポーツコミッションより植竹氏が登壇。「さいたま市にも、オープンイノベーションの芽が育ったと思っているので、これを機に浸透させていきたい」と笑顔で語った。

最後に、主催者であるスポーツ庁の安達氏が、採択企業に向けて「ここからが始まり。この可能性を最大限に活かしてほしい」と伝えると同時に、スポーツチームに対しても「ぜひ高め合う意識を持って取り組んでほしい」とし、今年度、第一弾となるビジネスビルドを締めくくった。

取材後記

「SPORTS OPEN INNOVATION BUSINESS BUILD」は、着眼点や提案内容、市場性、事業拡張性だけではなく、地域への波及効果も問われるプログラムであるだけに、他の共創プログラムよりも難易度が高いと感じる。しかし今回のプレゼンテーションを聞くと、いずれも提案のなかに地域への波及性が練りこまれており、スポーツチームとの共創を通じて、地域に住まう人たちの生活がよりよくなる未来が想像できた。年度末に開催予定の成果発表会で、どのような結果が示されるのか、引き続き注目していきたい。

成果発表会であるDEMODAYは現在、先行申し込みを受け付けている。

https://forms.gle/5nfQPpXLXQMpWBAA6

(編集:眞田幸剛、取材・文:林和歌子、撮影:加藤武俊)

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見る者もする者も支える者も、携わるだけで一丸となることができる、究極のエンターテインメント。地域発の「スポーツ×〇〇」のビジネスで、スポーツを成長産業へ。スポーツ庁が推進する『地域版SOIP』と全国各地域でのオープンイノベーションの軌跡に迫ります。