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地域版SOIPキーマンインタビュー【関東編】―女子サッカー、マラソン、バスケの3競技・4チーム(団体)が参戦!各チームが掲げる募集テーマを深堀りする

地域版SOIPキーマンインタビュー【関東編】―女子サッカー、マラソン、バスケの3競技・4チーム(団体)が参戦!各チームが掲げる募集テーマを深堀りする

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「スポーツ × 他産業」の共創により、イノベーション創出を目指すプログラム「SPORTS OPEN INNOVATION BUSINESS BUILD」が、いよいよ3rdステージを開幕する。本プログラムはスポーツ庁主催のもと、国内各地域におけるSOIP(地域版SOIP※)の構築に向けて実施されるものだ。

今年度は「東北エリア」「関東エリア」「九州エリア」の3つの地域において、地域に根ざしたスポーツチーム・団体がテーマを提示し、共創パートナーを募ることとなった。応募企業のなかからパートナーを選び、秋に開催される2日間の凝縮型アクセラレーションプログラム(BUSINESS BUILD)によって、共創ビジネスの骨格を仕上げる。その後、資金面での支援も受けながら、事業化を前提にスポーツの場での実証に進む。年度末には成果報告会も予定されている。

3rdステージ開幕にともないTOMORUBAでは、各エリアの地域パートナーとスポーツチーム・団体にインタビューを実施。それぞれの地域や各スポーツチームの特徴、募集テーマの詳細について詳しく聞いた。

本記事では、関東エリアで開催される「SPORTS OPEN INNOVATION BUSINESS BUILD KANTO」の運営を担う地域パートナー「さいたまスポーツコミッション」、および募集テーマを提示する「三菱重工浦和レッズレディース」<女子サッカー>、「大宮アルディージャVENTUS」<女子サッカー>、「さいたまマラソン」<マラソン>、「さいたまブロンコス」<バスケットボール>について紹介する。

※SOIP(Sports Open Innovation Platform):スポーツ界と他産業界が連携することで新たなサービスが創出される社会の実現を目指すスポーツ政策。

半官半民の「さいたまスポーツコミッション」が、共創アイデアの実現を徹底サポート

――まず、地域パートナーである「さいたまスポーツコミッション(SSC)」の概要や活動内容からお聞かせください。

植竹氏: さいたまスポーツコミッション(SSC)は、2018年12月にさいたま市が設立した法人で、市の外郭団体として運営されています。主な目的は、さいたま市と周辺地域にあるスポーツ資源・観光資源を活用し、地域のスポーツ振興と地域経済の活性化を図ること。大型スポーツイベントの主催から各種調査業務、部活動の地域移行支援など、スポーツに関する取り組みを幅広くカバーしています。

組織体制についてですが、「経営管理課」「事業企画課」「サイクル事業課」の3つに分かれています。「経営管理課」は総務や経理、経営企画などを担当。私が所属する「事業企画課」は、イベントの誘致や支援や市の事業であるさいたまスポーツシューレの中核的な役割を担うほか、Sフィールドという野球場とテニスコートを持つ施設の管理運営、さいたマーチというウォーキングイベントの企画も担当しています。一方、「サイクル事業課」は自転車のロードレースやマラソンイベントの開催を担当する部署です。

▲一般社団法人さいたまスポーツコミッション 事業企画課 主査 植竹慶仁 氏

鈴木氏: SSCは「スポーツ先進都市づくり」をビジョンに掲げています。このビジョンのなかで「“日本一”のスポーツ先進都市の実現」と言っているように、新しいことに積極的に取り組もうとする姿勢を持った法人です。市の外郭団体ではありますが、正会員11社とパートナー会員25社に賛同いただき、運営を支えてもらい活動する組織だという側面もあります。

▲一般社団法人さいたまスポーツコミッション 経営管理課 リーダー 鈴木昇 氏

――さいたま市周辺におけるスポーツビジネスの特徴は?

植竹氏: さいたま市の現状からご説明すると、本市は人口約134万人の市で、毎年約1万人ずつ人口が増加しているという全国的に見ても珍しい自治体です。人口増の理由としては、交通利便性の高さ、東京のベッドタウンとしての住みやすさなどが挙げられます。

そのほか、商業の集積やオフィス需要の高さなども本市の特徴でしょう。文化的な側面では、大宮の盆栽や岩槻の人形、それに鉄道博物館があることから、鉄道のまちとしても知られています。加えて、サッカーが文化として根づいている点も本市の特徴です。

――サッカーに限らずスポーツ全般に関していうと、現状はどうなのでしょうか。

植竹氏: 下の図に示したようにさいたま市には、サッカーやバスケットボール、卓球、自転車など多様なプロスポーツチームがあります。また、「埼玉スタジアム2002」や「さいたまスーパーアリーナ」といった世界に誇れる大型施設も揃っています。地域住民のスポーツに対する熱量があり、その土壌のうえに各チームが成り立っていることが、さいたま市のスポーツ全般の特徴です。

さらに、市内に限らず埼玉県全体に視点を広げてみても多様なチームが存在します。熊谷市のラグビー、上尾市のバレーボール、越谷市のバスケットボール、戸田のソフトボール、三芳町のハンドボール、所沢市の野球、狭山市のサッカーなどです。プロリーグ所属のスポーツチームの数は全国で5番目ですし、スポーツの施設数も北海道に次いで全国で2番目。スポーツが非常に盛んな県だと言えるでしょう。

――どのような理由から、本プログラム(地域版SOIP)に参加しようとお考えになったのですか。

植竹氏: 私たちは「さいたまスポーツシューレ」という概念のもと、スポーツを活用したまちづくりを推進しています。具体的には、既存施設(ハード)とサービス(ソフト)を有機的に結びつけ、実証フィールドを提供することで、スポーツ産業の創出・活性化を図ろうとしているのです。この枠組みのなかで「さいたま市版SOIP」を構築し、スポーツビジネスを活性化させていこうと考え、本プログラムに参加することにしました。

――「さいたま市版SOIP」の構築にあたり、SSCやサポーター企業が提供できるアセットやリソースには、どのようなものがありますか。

植竹氏: 私たちSSCは半官半民の組織なので、行政と民間の両面からアドバイスやサポートができます。たとえば、教育委員会などの行政機関と連携したい場合に、私たちが間に入ってつなげることができますし、「どう連携すればいいのか」といった疑問に対する助言も可能です。実際に、私たちが市内の高校と民間企業をつなぎ、スポーツの教育的効果を測る実証を行った事例もあります。また同様に、地域の民間企業と連携したい場合にも、SSCが仲介役になれます。

さらに、サポーター企業であるNTT東日本さんの持つ国内最大級のITネットワーク・プラットフォームの活用や、関東経済産業局の持つ「SISC(シスク)Kanto」と呼ばれるネットワーク、埼玉県の持つスポーツチームや関連団体・行政からなる「スポーツビジネスネットワーク埼玉」というコンソーシアムに協力を依頼することもできます。さいたま市として広報支援も可能ですし、SSC会員企業や一般社団法人日本スポーツツーリズム推進機構(JSTA)への情報提供もできます。このように多方面から支援していく考えです。

――今年度の目標や次年度以降も含め、目指している姿についてお聞かせください。

鈴木氏: さいたま市はスポーツのポテンシャルが非常に高いため、企業の新たなビジネスチャレンジには絶好の場所。とはいえ、多様なステークホルダーのニーズを把握し、うまくまとめあげていく必要がありますから、私たちSSCが中核を担う立場として間に入り、連携を促進していきたいと思います。そのうえで来年度以降は、自立した形で地域版SOIPを企画できればと考えています。

植竹氏: オープンイノベーションの手法を埼玉に浸透させていくことを、今年度の目標にしています。そして本事業の実績を、各チームを通じて関東地方の他チームに波及させていきたいです。SOIPの手法を研究して自分のものにし、ネットワークを構築して広げていく。そんなイメージですね。次年度以降に関しても、地域版SOIPを継続的に実施して対象チームを拡大し、関係人口の創出とコミュニティの拡大に向けた仕組み化に注力していきたいです。

とくに関東は国内で最も人口が多いエリアなので、スポーツ産業の発展に必要なマーケットは揃っています。いかに多くのステークホルダーを巻き込み、創造的なソリューションを生み出していくのかが重要だと思うので、色々な人たちの意見を聞きながら、スポーツ産業の活性化を実現していきたいですね。

【三菱重工浦和レッズレディース<女子サッカー>】 女性のエンパワーや脱炭素などを実現し、ホームタウンから愛されるチームへ

――三菱重工浦和レッズレディースの特徴からお聞かせください。

安部氏: 三菱重工浦和レッズレディースは、女子サッカーのプロリーグ「WEリーグ」に設立初年度のシーズンから参入しています。2シーズン目の昨年は、カップ戦とリーグ戦の両タイトルを獲得し常に上位を目指すチームです。ホームタウンはさいたま市で、ホームスタジアムは浦和駒場スタジアムですが、もともと浦和のまち全体が「サッカーのまち」として栄えており、サッカー文化が根づいていたことから、非常に熱烈なファン・サポーターに支えられています。

2022-23シーズンの平均観客動員数は、1試合2000人超。男子チームとは比較にならないものの、2022-23シーズンはWEリーグのなかでトップでした。来場者は、40代後半から50代の男性が非常に多いです。これはJリーグ全体も同様で、観客の高齢化が課題のひとつになっています。

▲浦和レッドダイヤモンズ株式会社 レッズレディース本部 広報・プロモーション担当 安部未知子 氏

――募集テーマは「ホームタウンの一人一人に寄り添い助け合える関係を創ることでホームタウンから愛されるサッカーチームへ」に設定されました。そのなかで3つの共創アイデア例を提示されましたが、それぞれの背景をお聞かせください。

安部氏: 共創アイデア例の1つ目、『レッズレディースが考える「女性のエンパワーメント」の実現』に関してですが、WEリーグのWEは「Women Empowerment」の略です。WEリーグに加盟しているレッズレディースだからこそ、日本が世界的に遅れているダイバーシティ&インクルージョン(D&I)を実現したいと思い、1つ目の課題としました。

しかしまだ、私たちが目指すD&Iや女性のエンパワーメントがどういうものなのか、世の中に対してどのようなメッセージを発していくべきなのか、言語化・可視化ができていません。そのため、「レッズレディースの女性のエンパワーメントはこうだよ」という形づくりを一緒に手がけてもらえる共創パートナーを求めています。

世の中では今、男女の賃金差や女性の役員登用率といった非財務情報の開示が必須になりつつあります。こうした背景からD&I観点での人材教育ソリューションは、どの企業も求めるようになると考えています。WEリーグ所属の私たちだからこそ提供できるソリューションもあるのではないか、そうしたサービスの開発にも一緒に取り組みたいと思っています。また女性のライフステージにおけるスポーツ復帰についても一緒に取り組んでいけたらと考えています。

2つ目が『熱狂的なファンの熱量をエネルギーに変換する取り組み』です。今、さいたま市と脱炭素に向けた議論を重ねており、浦和はサッカーに対する熱量が非常に高いまちなので、それを電力に変換できないか検討しています。たとえば、観客の声援が電力に変換されたり、すでに他チームでは実施していますが、観客のジャンプが電力に変換されたりと、そんな技術をお持ちの企業があれば、ぜひお声がけいただきたいです。

3つ目が『地域課題解決と健康促進を実現させるサポーター参加型企画』。私たちのチームは、浦和駒場スタジアムをホームスタジアムとしていますが、最寄駅からは徒歩20分ほどかかるため、バスのご利用が非常に多い状況です。駅から少し距離があることを逆手にとり、サポーターの皆さんの健康促進を実現させながら、周辺商店街への送客や活性化にもつなげられるような仕組みを、共創パートナーの皆さんと考えていきたいです。

――共創アイデアの実現に向け、チームとして提供できるリソースには、どのようなものがありますか。

安部氏: ハード面だと、試合会場である浦和駒場スタジアムなどが活用できます。ソフト面だと、選手やコーチングスタッフ、私たちのようなクラブの運営メンバーが協力可能です。運営メンバーは地域の方々とのハブとなることが多いため、行政やパートナー企業、ファン・サポーターの皆さんに働きかけをすることもできます。

森氏: 女子チームだけではなく男子チームも含めたクラブ全体に、「一緒に取り組もう」というムーブメントを拡大させていくこともできると思います。女子チームで実証を行い、うまくいけば男子チームにも波及させられる可能性もありますし、男女で連携した活動にすることもできるでしょう。クラブ全体でそういったムーブメントをつくれたら、大きな力になるのではないでしょうか。

▲浦和レッドダイヤモンズ株式会社 ホームタウン本部 課長 森俊之 氏

――応募を検討する人たちに向けてメッセージをお願いします。

安部氏: 世の中にまだ存在しないものを一緒につくりだせるパートナーと、長く連携していきたいと考えています。課題解決にご協力いただける団体・企業の皆様とお会いできることを楽しみにしています。

森氏: 提示した3つの共創アイデアは、私たちのクラブのためだけのものではありません。クラブ以外ともつながりを広げていけるものです。これらの共創アイデアの実現を通じて、WEリーグ・Jリーグ全体へ、ひいては日本のスポーツ界全体に波及するような取り組みを実現できればと思います。

【大宮アルディージャVENTUS<女子サッカー>】 全てはスタジアムから、サッカーで笑顔を生む仕掛けづくり

――大宮アルディージャVENTUS(ベントス)は、どのような特徴を持ったクラブなのでしょうか。

小沼氏: 大宮アルディージャVENTUS(以下VENTUS)はWEリーグ開始に向けてゼロから立ち上げたクラブです。WEリーグ初年度(2021-2022シーズン)は「ゼロからイチへ」をスローガンに掲げ、選手も含めてみんなで意見を出しあって、様々な企画やイベントを開催してきました。そんな私たちが最も売りにしたいのは「身近さ」。地域の清掃活動や花壇の植え替えなどに、VENTUSの選手たちが自発的に参加してくれることが多く、そうしたクラブや選手の身近な活動を特徴としています。

一方でVENTUSには、鮫島彩選手や仲田歩夢選手、乗松瑠華選手など、人気と実力を兼ね備えた選手たちも在籍しており、試合の成績も順調に伸びてきています。今、好調なチームのひとつだと思いますね。

▲大宮アルディージャ/大宮アルディージャ VENTUS 事業本部 社会連携・営業担当 担当課長 小沼航士氏

――どのような属性のファンが多いのでしょうか。

小沼氏: ファン層は大きく2つに分かれます。1つが、男子チームのファンが「女子チームも応援しよう」という考えで支持している層です。男女が同じホームスタジアムを使用しているため、男子チームのファンに応援に来てもらいやすいのだと思います。もう1つが、女子サッカーに興味のある層や、個別の選手が好きで見に来てくれる層です。こうしたファン・サポーターに支えられ、WEリーグ初年度の観客動員数は、1位のINAC神戸レオネッサさんと接戦して2位、2年目は4位となっています。

――本プログラムでは「全てはスタジアムから、サッカーで笑顔を生む仕掛けづくり」をテーマに掲げ、共創パートナーを募集されます。テーマ設定の背景にある課題感や考えをお聞かせください。

小沼氏: 選手たちは「サッカーで人を喜ばせたい、サッカーで笑顔を生みたい」という気持ちを強く持っています。そのサッカーを最もよく見せられるショーケースがスタジアムです。ファン・サポーターの皆さんも「スタジアムに来てよかったな」と思いたくて来場してくださっているはずなので、スタジアムへの集客をベースとしたテーマにしました。そのうえで、3つの共創アイデア例を提示しています。

アイデア例の1つ目が『SNS/デジタルで、ファン層を広げ集客につながる取組み』です。すでに、近隣でのチラシ配布やポスター掲示などは実施しています。それらに加えて、SNSなどのデジタルツールを活用した集客にも力を入れていきたい。選手の魅力を引き出しながら拡散させていくような、私たちでは考えつかないアイデアに期待しています。

2つ目が『ツーリズムを活用、地域の経済効果と集客につながる取組み』です。大宮という立地やスタジアムの環境を活かし、スタジアム周辺地域も巻き込んだスポーツツーリズムを企画したいと思っています。たとえば、大宮周辺には鉄道博物館や盆栽美術館といった観光スポットもあるので、そうした名所と掛け算をして何か仕掛けていったり、ファミリー層向けに教育コンテンツを絡めた企画をしたりと、そんなイメージを持っています。

3つ目が『女性選手のパフォーマンス向上を集客につなげる取組み』。スタジアムで面白い試合を見せることが何よりも重要です。そう考えたときに女子選手の怪我を事前に防ぐような取り組みも必要で、たとえば食事の改善やトレーニングを通じて怪我を予防し、女子選手のパフォーマンス向上につなげるような取り組みを、共創パートナーと手がけていきたいです。

――共創アイデアの実現に向け、提供できるリソースにはどのようなものがありますか。

小沼氏: SNS施策を考える上で、選手たち自身が普段からSNSに親しみ活用している点です。5月にクラブハウスでお祭りイベントを開催したのですが、その写真を選手がSNSに投稿したところ、非常にバズりました。当クラブには魅力的な選手がたくさんいますし、社会貢献活動などにも積極的に参加してくれます。また、近隣の地域や企業の皆さんも協力的で、何らかの企画提案を行えば、サポートしてもらえる環境・雰囲気があります。

さらに、一定の観客動員数もあるクラブなので、スタジアムに来場されたお客さまに対して特別な企画を実施することも可能ですし、当クラブはNTTグループに属しているため、NTTグループとのコラボレーションも検討できます。そのほか、SSCさんをはじめ行政の皆さんとも連携できるので、多彩な企画を実現できると考えています。

――応募を検討する人たちに向けてメッセージをお願いします。

小沼氏: 私自身、クラブの営業にも社会連携活動にも携わっており、選手たちとともに様々な場所を飛び回っています。自分が頑張れる理由は何かというと、選手たちが本当に魅力的で、私自身が大宮アルディージャVENTUSというチームと選手のファンだからです。。私は心からVENTUSが好きですし、一緒に取り組むであろうパートナーの皆さんにも好きになってほしい。さらに言うと、大宮や埼玉を一緒に好きになってもらえる人と活動したいので、そういった方にぜひご応募していただきたいです。

【さいたまマラソン<マラソン>】 4年ぶりに開催する大会を、満足度で選ばれる市民マラソンへ

――さいたまマラソンは、どのような特徴を持つ大会ですか。

関口氏: 過去5回は「さいたま国際マラソン」という名称で、女子の代表選手選考を目的に開催してきました。その選考レースの役割が終了した同じタイミングで新型コロナの感染が拡大し、大会の開催を見送ってきましたが、その間に大会のあり方を再考した結果、「さいたまマラソン」に名称を改め、市民マラソンとして大会を再開することになったのです。来年2024年2月、4年ぶりに開催します。

大会の特徴としては、フルマラソンの発着地点が「さいたまスーパーアリーナ」であること。さいたま新都心駅から徒歩3分というアクセスのよさに加え、屋内での着替え・荷物預かりができます。また、大会のコンセプトとして、誰もが参加できる大会にしていくことを目指しており、フルマラソンだけではなく、8キロ、3キロのエンジョイランなど様々な種目を設定。マラソン大会に初めてチャレンジする人もサポートできる大会にしていく方針です。

▲さいたま市役所 スポーツ文化局 スポーツ部 スポーツイベント課 係長 関口裕介 氏

――どのぐらいの集客を目指しておられるのでしょうか。狙っているターゲット層などがあれば教えてください。

関口氏: すべての種目を合計して、2万人程度の定員を設定しています。マラソン大会の開催意義が、スポーツ振興を図ることなので、日常的に運動を続けておられる方は活躍の場として使っていただければよいのですが、日常的に運動をしておられない方にも、スポーツをはじめるきっかけの場にしてもらいたいと思っています。

――募集テーマとして「大会に関わる全ての人の満足度向上で選ばれる大会へ」を設定され、3つの共創アイデア例を提示されました。その背景にある考えをお聞きしたいです。

関口氏: 全国各地には長く続いている市民マラソン大会が多数存在します。そのなかで、新たに参入する立場として、他の大会とどのように差別化を図っていくかが重要だと捉えています。やはり、ランナーの皆さんのリピートにつながるような大会にしていきたいので、参加者の満足度を高めるための工夫・仕掛けを取り入れていきたいと思っています。

そのうえで3つの共創アイデア例を挙げました。1つ目が『市民ランナー14,000人の基盤を活用した次年度に向けた仕掛け』です。ランナーの皆さんは、色んなところでコミュニティを形成していると聞きます。本大会もコミュニケーションの場として機能させ、次の大会への参加につなげるような仕掛けを考えたいと思っています。

2つ目が『女性ランナーの満足度を高め、参加者が増える仕掛け』です。過去の「さいたま国際マラソン」の参加者属性を見ると、女性ランナーの割合が15%程度となっています。「横浜マラソン」や「湘南国際マラソン」だと25%程度ですから、他の都市型マラソンと比較すると、女性の参加率の低さが課題。なので、女性の参加を促していくような施策を一緒に考えてもらえるパートナーとも出会いたいです。

3つ目の『スポンサーにとっての新たな価値づくり』に関してですが、14,000人のランナーが参加するこの大会自体を実証のフィールドとして提供し、様々な企業のサービスを試す場に活用できないかと考えています。市民ランナーたちも新たなサービスや技術を試すことができて、大会自体の魅力や満足度が向上していく。そんな関係者全員がWIN-WINな関係になる取り組みにも挑戦していきたいです。

――どのような企業からの応募を期待していますか。

鎌野氏: 私たちの想いに共感し、一緒に大会をつくり上げてもらえる企業の皆さんからの応募に期待しています。本大会を健康増進のきっかけにしたいと考えているので、健康をテーマにした企業さんとも相性がよいかもしれません。

▲一般社団法人さいたまスポーツコミッション サイクル事業課 主査 鎌野祐嗣 氏

――共創アイデアの実現に向け、提供できるリソースにはどのようなものがありますか。

関口氏: 大会当日の会場をご活用いただけます。メイン会場は「さいたまスーパーアリーナ」ですが、コミュニティアリーナなどを使って様々なスポーツの体験エリアを設置する計画です。昨今、ボッチャなど新しいスポーツも続々と生まれていますから、そういったものの体験ゾーンにしていく予定です。

鎌野氏: また、メイン会場周辺には飲食ブースも設けます。ですから、会場周辺でスポーツ以外のコンテンツを試してみることも可能だと思います。

――最後に応募を検討する企業に向けてメッセージをお願いします。

関口氏: 4年ぶりに市民マラソンとして新たなスタートを切る大会です。そのため、他の大会とは異なり、まだ色がついていない大会だという見方もできます。色々な提案を反映できる余地があるので、ランナーの皆さんや新たに運動をはじめようと考えている方たちに向けた素敵な提案を期待しています。

鎌野氏: 様々な企業のご協力により多彩なアイデアが生まれると思うので、ぜひ私たちにはない新しい視点でご提案いただければと思います。

【さいたまブロンコス<バスケットボール>】 B2リーグ昇格に向け、ファミリー層も視野に集客を強化

――まず、さいたまブロンコスの特徴からお聞かせください。

小竹氏: さいたまブロンコスは、40年以上の歴史を有するクラブです。2020年に所沢市からさいたま市へ移転して以来、さいたま市にも深く根ざした活動に注力してきました。

とくに子ども向け教育に熱心に取り組み、スクールの充実化に尽力しています。現在、幼少期の子どもたちからトップチームに至るまでのアカデミー機関として、約300人以上の子どもたちがスクールに通っています。大人向けのスクールも展開しており、ブロンコスを中心に多様なコミュニティが形成されつつあります。まだ種まきの段階ですが、地域に根ざした存在として成長する可能性を秘めたチームです。

成績に関しては、初年度は経営の健全化を図る事に注力したため、B3リーグで最下位という結果でしたが、その2年後の昨シーズンはプレーオフに初進出を果たしました。しかしプレーオフでの敗北により、惜しくもB2リーグ昇格を逃すことに。今シーズンは気持ちを改め、B2リーグ昇格に向けて頑張っているところです。

▲株式会社ブロンコス20 代表取締役 小竹克幸 氏

――「B2リーグ昇格に向け、集客強化と地域活動のパフォーマンス最大化を目指す」を募集テーマに設定されました。

小竹氏: 私たちのクラブは、少数精鋭のスタッフで運営しています。精鋭ではあるのですが、集客においては少数で取り組むよりも、多くの人数で協力してクラブの魅力を伝えていったほうが効果的でしょう。ですから今回のプログラムでは、集客強化にフォーカスしたテーマとしました。

――3つの共創アイデア例を提示されましたが、それぞれについて簡単にご紹介ください。

小竹氏: 1つ目の『チケット購入者増加につながる仕掛け』については、私たちとしても積極的に取り組んでいますが、少数精鋭の運営チームなので一極集中型のアプローチにならざるを得ません。集中的に実施する施策では最大のパフォーマンスを出せるのですが、打ち手が少なくなってしまう点が課題です。ですから、様々なアイデアや私たちには見えない視点を持つパートナーと連携することで、その効果を倍増させたり、打ち手の数を増やしたりすることに取り組みたいです。

現在、当クラブの1試合平均来場者数は820名程ですが、2026年以降のB2ライセンスを取得するためには2400名まで増やさなければなりません。大幅に強化するためには、地道な取り組みも重要ですが、革新的なアイデアも必要です。なので、新しいアプローチ方法を一緒に考えてもらえるパートナーに出会いたいです。

2つ目は『地域活動の情報発信最大化によるクラブ価値の創造』です。多くの地域活動を行っているのですが、専属の広報担当がいないため、私自身がSNSを使って発信する事もあるくらいです。しかしそれだけでは不十分だと思っていて、もっと伝達・拡散できるようなアイデアを求めています。SNS施策に限らず、より斬新なアイデアにも期待しています。

3つ目の『教育×テクノロジーによる新たなファン層の獲得と集客につながる企画』ですが、さいたま市が文教都市ということもあり、教育に熱心なご家庭がたくさんおられます。ブロンコスとしてもこのような層を取り込むために、さいたま市教育委員会と連携協定を結び、STEAMS教育の推進を手助けしています。ですから、教育×テクノロジーをきっかけとしてファミリー層の来場者が増加するようなアイデアを募集したいと思います。

――集客のターゲット層はどのあたりに設定されているのでしょうか。

小竹氏: コアなファンは増やしながらも、ライトなファンも取り込んでいきたいと思っています。とくに当クラブの活動している浦和駒場体育館が、文教都市と呼ばれるエリア内にあり、教育熱心な親御さんが非常に多い地域です。そうしたファミリー層も取り込んでいきたいという狙いを持っています。

――共創アイデアの実現に向け、提供できるリソースにはどのようなものがありますか。

小竹氏: 約300名のスクール生は強みです。スクール生にとっても夢や感動を与えられるような提案であれば、子どもたちや親御さんにとってもプラスになります。また、シーズンオフであれば、選手やコーチの協力も求めることができます。当クラブには、埼玉県出身の選手やコーチも多く、地域の学校に朝の挨拶運動や講演に行くなど地域活動にも積極的ですし、怪我から復帰を目指している選手はその期間、動画などを使った広報活動を担当してくれています。多様な形での協力ができると思います。

さらに、さいたま市やさいたま市教育委員会とは連携協定を締結し、一緒にスポーツ振興や地域振興を推進していくことになっているので、行政との連携も視野に入れられます。また、さいたまブロンコスは「さいたま観光大使」と「所沢市観光大使」を担っているので、観光という切り口でも何らかの協力ができるかもしれません。

――最後に応募を検討する企業に向けてメッセージをお願いします。

小竹氏: 2020年にさいたま市に移転し、クラブの運営体制を一新。大幅なリブランドを行いました。そうしたクラブですから、まだ出来あがっておらず一緒につくり上げていくおもしろさを味わえます。ご提案いただいたアイデアが、当クラブの歴史や文化になっていく可能性もありますから、ぜひ一緒にクラブを成長させてくれる皆さんからの応募をお待ちしています。

取材後記

関東エリアからは、女子サッカー、マラソン、バスケットボールの3競技・4チーム(団体)がホストとなり、共創パートナーを募集することになった。インタビューのなかでも語られたように、関東エリアは圧倒的な人口集積地であることから、マーケットの規模は大きい。とりわけ埼玉は、スポーツに対する熱狂性が際立っているという地域特性もある。そんな埼玉を舞台に、スポーツ関連ビジネスの創出、あるいは加速を目指すことのできるまたとない機会。ぜひこのチャンスを逃さないでほしい。なお、「SPORTS OPEN INNOVATION BUSINESS BUILD KANTO」の応募締切は9/10(日)までとなる。

(編集:眞田幸剛、取材・文:林和歌子、撮影:加藤武俊)

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