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and.d、Asian Bridge、エンゲートが採択!地域版SOIP<九州エリア>から生まれる共創事業とは?

and.d、Asian Bridge、エンゲートが採択!地域版SOIP<九州エリア>から生まれる共創事業とは?

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「地域×スポーツ産業」の共創でビジネス創出を目指すプログラム「SPORTS OPEN INNOVATION BUSINESS BUILD」。スポーツ庁が仕掛ける「地域版SOIP」形成に向けた事業の一環として、2021年度より開催されているプログラムだ。地域に根ざした活動を行うスポーツチームと応募企業が、2日間の対面式イベント(ビジネスビルド)で共創事業の骨子をつくり、その後の数カ月で実装を図る。そして、年度末に成果発表を行うという流れだ。

3期目となる今年度は、全国3エリア(東北/関東/九州)が本プログラムの舞台となっている。去る10月23日(火)と24日(水)、九州エリアのビジネスビルド(SPORTS OPEN INNOVATION BUSINESS BUILD KYUSHU)が、佐賀市内にある「SAGAアリーナ」で開催された。九州エリアでは、久光スプリングス(女子バレーボール)、佐賀県山岳・スポーツクライミング連盟(クライミング)、佐賀バルーナーズ(バスケットボール)の3チーム・団体がホストとなり、共創パートナーを募集。

当日は、全41件の応募のなかから選ばれた6社が集まり、スポーツチーム・団体とのディスカッションや、メンターからのアドバイスをもとに、共創ビジネスのアイデアをブラッシュアップ。最終的に事業案を発表し、審査の結果、計3社がアイデアの具体化に進む機会を獲得した。本記事では、2日間のビジネスビルドのハイライトをレポートする。

※関連記事:地域版SOIP キーマンインタビュー【九州編】―女子バレー、クライミング、バスケの3チーム・団体が参戦!佐賀から始まる新しいスポーツビジネスの姿とは?

2日間でビジネスアイデアをブラッシュアップし、事業の骨組みをつくる

DAY1 は、ターゲットと課題の明確化、ソリューションの方向性を検討していく。ホストチーム・団体の現状や課題を聞いたうえで、ターゲットや課題の解像度をメンターの支援を受けながら高めていった。そしてDAY2では前日のディスカッションやアドバイスをもとに、実現に向けたビジネスモデルの骨子を策定していく。

▲ビジネスビルドには、スポーツビジネスや新規事業創出に精通するメンター陣が参加。

最終発表の内容により、ホストチーム・団体と実証に進む企業が決定する。採択基準は、①顧客・課題の解像度、②提案・ソリューションの妥当性、③市場性、④事業拡張性、⑤地域版SOIPとの親和性の5軸だ。――ここからは、次のステップへ進むことが決定した採択企業から順に、最終発表で披露されたビジネスプランの内容を紹介する。

【佐賀バルーナーズ(バスケットボール)】バルーナーズを起点に“佐賀を楽しむ“ をアシストするAIチャットボットへ。~and.dの提案

2018年創設のプロバスケットボールクラブチーム、佐賀バルーナーズ。2022-23シーズンにB2 で優勝し、今シーズンからB1に昇格した。募集テーマは、「地域経済に貢献する『チームの日常化』、地域によりそうファンエンゲージメント創出」。最終プレゼンの結果、株式会社and.dが選出された。

●株式会社and.d

「バルーナーズを起点に“佐賀を楽しむ“ をアシストするAIチャットボットへ 」

EC領域でのアプリ開発を展開する株式会社and.dが提案するのは、AIチャットボットによる地元観光情報などの提供だ。佐賀エリアの経済を活性化させたいというバルーナーズと、地域の事業者のテクノロジーの壁をなくして創造性を解放したいというand.d。両者の力を合わせることにより、「テクノロジーを活用して顧客接点を増やし、佐賀県の滞在価値を高めて地域経済を活性化させていくことを目指す」と、代表の深澤氏は言う。

佐賀県外から佐賀バルーナーズの試合を観戦しにきたファンが主なターゲットとなる。地方に試合を観戦しに行く際、せっかくならば周辺エリアを観光したり、食事をしたりしたいと考える人は多い。しかし、情報の起点がバラバラだったり、Webで情報を仕入れたとしても浅く偏っていたりしたりして、なかなか楽しみ方がわからないという課題がある。それに対するソリューションとして、バルーナーズを起点に“佐賀を楽しむ”をアシストするAIチャットボットを開発するというのだ。

バルーナーズにしかない独自の情報や、バスケットボールファンや地元の人にしかわからない情報を提供してもらい、それをチャットボットを通してライトファンに提供することで、地元の飲食店などへの来店を促すという。さらに、そうした情報を得たライトファンが、コアファンに転換していくことをイメージしている。

このチャットボットをバルーナーズの新たな営業ツールとし、スポンサーを募ることで持続的な運営を目指す。そして2~3年後にはホテルや旅館、飲食店、レンタカーなど地域の企業が広告を出稿することをイメージしているという。最後に深澤氏は「その地域にしかないアセットやスポーツは、地域経済を本当に活性化できると思う」と、プレゼンを締めくくった。

<ホストチーム・受賞者コメント>

佐賀バルーナーズ代表取締役社長 田畠寿太郎氏は、「当初のプランとは異なるものになったが、私たちの課題感を取り入れ、柔軟にビジネスプランをピボットしてもらえた。提案の内容もさることながら、その姿勢がパートナーとして大切だと感じた」と、採択の理由を述べた。and.dの深澤氏は「佐賀バルーナーズとは、フィーリングが合うと感じた。この2日間でのディスカッションを経て、すべてを出し切ったプランができたので採択されて嬉しい」と、喜びを語った。

そしてインキュベーション期間のメンターとなる公益社団法人日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)鈴木氏は、「地域経済のために汗をかいて一緒にやっていくことが大切だからこそ、より共創バリューが高いand.dが採択された。今、深澤さんが『出し切った』とおっしゃっているのを聞いて、伸びしろがまだあると感じた」と評価した。

【佐賀県山岳・スポーツクライミング連盟(クライミング)】佐賀から始めるサステナブルな未来の構築~Asian Bridgeの提案

スポーツクライミングの分野で、世界で活躍する選手を多く輩出している佐賀県山岳・スポーツクライミング連盟。2023年には日本有数のクライミング施設「九州クライミングベースSAGA」も完成する。「クライミング競技の魅力を発信することで、普及・運営・支援に携わる関係人口の増加を目指す」をテーマとして、共創パートナーを募集した。そしてプレゼンの結果、株式会社Asian Bridgeが採択された。

●株式会社Asian Bridge

「佐賀から始めるサステナブルな未来の構築~スポーツクライミング界の壁を登りきれ~」

スポーツに特化したSNSサービス「SportsBank(スポーツバンク)」を展開する株式会社Asian Bridgeが提案したのは、日本屈指のクライミング施設「九州クライミングベースSAGA」をひとつのアイコンとして、地域を巻き込みながら収益化や裾野の拡大につながる持続的な取り組みだ。

クライミングは競技人口が少なく、なかなか参入してくる人がいない。なおかつ佐賀県山岳・スポーツクライミング連盟が抱えている課題は、不安定な収益構造。「競技のプロになるようなコア層が約45名なのに対し、ライト層は60万人。このギャップに着目した」と、Asian Bridgeの小西氏は改善すべき課題を提示した。

クライミング連盟の「九州クライミングベースSAGA」や日本トップクラスの選手の輩出、国スポといった大型大会の開催といったアセットに、Asian Bridgeの「スポーツバンク」を活用したコミュニケーションやイベント企画開催力、メンターなどとのデジタル上でのマッチングといったアセットを掛け合わせて、競技人口の増加や収益の安定をはかる。

ビジネスモデルとしては、大会・イベント・合宿といったリアル面を強く推進していく。ライト層向けの大会を開催することで、コア層とのレベルのギャップ解消を狙う。また、「九州クライミングベースSAGA」を活用した企画の展開や、デジタル基盤を使った情報の拡散や動画配信、旅行イベントの企画実施を行っていく。イベントでは地元商店や企業の出店や、スポーツ関連の体験、プロのデモンストレーションなど豊富な内容を考えているという。そして、そこには地域の協力が欠かせない。地元商店や住民、学校などとのつながりをつくり、地域経済への波及が期待できる。これにより、スポーツクライミングの持続的な発展を目指す。

<ホストチーム・受賞者コメント>

佐賀県山岳・スポーツクライミング連盟ヘッドコーチ樋口義朗氏は、「この2日間、今まで味わったことのない刺激を受けた。大きな大会を複数ひかえている私たちにとって、提案いただいたビジネスプランは非常に心強いものだった」と、採択の背景と提案への感謝を語った。

Asian Bridge 小西氏は「こうしたプログラムに参加したのは初めてだったが、この2日間は考えに考えて非常に辛い想いもした。その中でメンターの方々とクライミング連盟さんに意見をいただいて、やっと形にできたビジネスプラン。これからのインキュベーション期間でさらに良いアウトプットを出していきたい」と、2日間の感想と今後の抱負を述べた。

メンターのパラレルキャリアエバンジェリスト常盤木氏は、「非常に難しい要件の中でも、共創の軸は最後までぶれておらず、メンタリングのしがいがあった。自社がまだたどり着けるかどうかわからないところに目標を設定した勇気をたたえたい。これから一緒に崖を登っていこう」とエールをおくった。

【久光スプリングス(女子バレーボール)】ギフティングによるチーム×地域活性化モデル~エンゲートの提案

1948年に設立した久光スプリングスは、Vリーグの女子チームとして実績を持ち、世界の舞台でも活躍する古豪だ。「『日本一女性が輝いている』チーム・地域へ 地域と“ともに”サステナブルな街づくりを目指す」をテーマに設定し、共創相手を募った。そしてプレゼンの結果、エンゲート株式会社が採択された。

●エンゲート株式会社

「持続可能な形で「女性×スポーツ」を支える→スポーツを愛する女性がイキイキとする地域経済・社会整備のうねりを起こす!in SAGA」

個人がスポーツチームを金銭的に応援できるギフティングのサービスを世界で初めて展開し、国内最大シェアを誇るエンゲート株式会社。久光スプリングスの「女性×スポーツを支える取り組みを推進したい」というニーズを受けて、ギフティングによるチーム×地域活性化プランを提案した。

女子バレーボールは40~50代の男性ファンが多いが、競技者の年齢層は幅広く、それが1つのオポチュニティになると、エンゲートの田村氏は語る。そこに対して、久光スプリングスが提供可能な価値は非常に多い。それを単純に会社の持ち出しで提供するのではなく、ギフティングにより一緒に創り上げていこうというのだ。

市民が応援としてギフティングをし、さらにコアファン以外のファン層も巻き込むべく、ギフティングの支援先を選択するようにする。それによって市民の声が集まるところに集中して支援を行っていく。また、そこに既存のチームスポンサーに入ってもらうことで、市民は日常生活の中でポイントを獲得し、それをチームの支援に活用できるようにする。そしてスポンサー企業に対しては来店・認知促進につなげる。これにより、従来は企業がそれぞれ行っていたCSR活動が、ユーザーやチームと一体となった地域支援へと変革するというのだ。

さらにこの取り組みは、「佐賀県内だけに限らず県外にも展開できる」と田村氏は言う。県外スポンサー、そして県外のファンを取り込むこともできるというのだ。そして佐賀県内のチーム間のクロスセルなど、大きな広がりが期待できるプランだ。

<ホストチーム・受賞者コメント>

久光スプリングス 経営企画室室長 武田雄葵氏は、「当初は社会課題を広く捉えていたが、この2日間を通じて、大きなゴールは共有しながらも、まずファーストステップをどう打ち出すのかというディスカッションをした。地域に還元するという視点で期待ができると考えた」と、エンゲートを採択した理由を語った。

エンゲートの田村氏は、「実現性の高い世界をいかにつくるかがポイントだった。世界初の試みになるが、これから新しい世界に向けて、久光スプリングスさんと共にチャレンジしていきたい」と、意気込みを語った。

メンターとなるスポーツデータバンク株式会社の石塚氏は「様々なことを自問自答しながら進んできた2日間だったと思う。地域にどのように貢献していくのか、地域連携をどのようにしていくか、メンターとして伴走していきたい。ぜひ実現に向け頑張っていただきたい」と、期待を述べた。

地域を巻き込んだ循環モデル、ワールドカップ誘致、ファンによる魅力発信――様々なビジネスプランも

惜しくも採択には至らなかったWED株式会社、waaw株式会社、株式会社日テレアックスオンの3社も、2日間のビジネスビルドでビジネスプランが磨かれていった。ホストチーム・団体各者、「採択には最後まで悩んだ」というコメントもあったほどだった。

●WED株式会社(佐賀バルーナーズへの提案)

「バルーナーズエコシステムにより、地域経済の循環を目指す」

WED株式会社が提案したのは、地域の企業や自治体が佐賀バルーナーズを中心にファンや地域住民を巻き込んだ循環型のモデルの構築だ。B1リーグに昇格したバルーナーズは、これまで以上にファンや自治体、地元企業を巻き込んでいく必要がある。そのうえで、地域やそこで働く人たちへ貢献する取り組みを進めていくというものだ。

具体的には、地域企業や自治体などによるコンソーシアムを組成していく。そして地元企業や店舗を巻き込み、ファンと結びつけるようなコンテンツを展開。最終的にはファンエンゲージメントが上がった状態で観戦される状態を目指していく。

●waaw株式会社(佐賀県山岳・スポーツクライミング連盟への提案)

「ワールドカップ誘致、佐賀をクライミングの聖地に」

waaw株式会社の提案は、佐賀をクライミングの聖地にするプランだ。ジャパンカップを3回以上開催し、ワールドカップを誘致することを目指す。その実績を作る手前に、地元のファン獲得や普及活動、地元企業のスポンサー獲得、コンテンツ提供といった取り組みを企画した。

普及活動としては、「いつでもどこでも登れる環境」をつくるべく、様々な体験の場を市民に提供する。スポンサーも低額で多数募り、裾野をひろげていく。そして施設や環境の魅力をしっかりと伝えるコンテンツを展開して、スポーツクライミングの聖地としていくと強調した。

●株式会社日テレアックスオン(久光スプリングスへの提案)

「新しい観戦体験によるチームの魅力発見・発信」

株式会社日テレアックスオンは、「強く・美しく・ともに」をチーム理念として掲げる久光スプリングスの魅力を、ファンや市民と共に発信していくプランを提案した。具体的には、選手のプレー以外の素顔や練習シーンなどのコンテンツを試合会場のモニターに投影し、それをファンは視聴しながら好みのシーンを撮影する「ユーザー全員が公式カメラマンになれる」ソリューションだ。

こうした新たな観戦体験を楽しむ仕掛けを作ることで、チームとファン・市民との距離をさらに縮めていく。そうして久光スプリングスが街に浸透し、佐賀県民を応援できる存在へと高めていくことができるという事業プランだ。

「佐賀という地でスポーツ産業を新たに創る」―閉会の挨拶

採択チームが発表された後は、総評が行われた。まずはスポーツデータバンク株式会社 代表取締役 石塚氏が「とてもいい仕掛けの中で事業をブラッシュアップできた。様々な企業とつながりができたことから、このフィールドを活かして色々なことができればいいと思う」と、この2日間を振り返った。さらに、「佐賀県のスポーツ産業は、SAGAアリーナ、サロンパスアリーナ、九州クライミングベースSAGAといったハード面の整備が順調に進んでいる。そこに皆さんが今回提案したソフト面の力が加われば、可能性が広がる。『佐賀ではスポーツビジネスが熱い!』となればいいと思う」と、期待を込めて語った。

続いて佐賀県 SAGA2024・SSP推進局SSP総括監 日野氏は、「ここからがスタート。メンターの方々の協力を得て、これから半年間のインキュベーションに取り組んでいきたい」と、今後を見据えて話した。そして「地域版SOIPの枠組みとしては1年間という期間が区切られているが、私たちSSPとしては1年で終わらせるつもりはない。続けていくことで、佐賀という地でスポーツ産業を新たに創り、イノベーションをおこしていきたい」と、決意を述べた。

最後に、スポーツ庁 参事官(民間スポーツ担当)付産業連携係長 安達氏が登壇。「各地のBUSINESS BUILDを見ていると、それぞれのエリアの特色が見える。佐賀の場合は、地域に対する想いが採択を左右したのではないか。もちろんビジネスモデルは重要だが、やはりどこかで感情が論理を超える瞬間があるのかもしれないと感じた」と、所感を話した。そして2024年3月の成果報告会に向けたサポートを改めて約束し、関係者への感謝を述べ、閉会の挨拶とした。

取材後記

2日間で、ホストチーム、応募企業、メンターが議論を尽くし、時に大きくプランをピボットしながら共創ビジネスの骨子を組み立てていった。「これまでにない刺激を受けた」「正直なところ、ここまでハードとは思っていなかった」と参加企業からの声にもあったように、非常に濃密な時間であった。その結果、地域のスポーツ熱を象徴するような3つのプランが採択された。

次なるステップは、事業化を前提としたスポーツの場での実証となる。そして2024年3月21日(木)には成果発表会(デモデイ)の開催も決定した。そこまでに、今回のプランがどのように進化していくのか、注目していきたい。

DEMODAYの先行申込も受付中。https://forms.gle/5nfQPpXLXQMpWBAA6

(編集:眞田幸剛、文:佐藤瑞恵、撮影:齊木恵太)


シリーズ

【地域版SOIP】スポーツの成長産業化への軌跡

見る者もする者も支える者も、携わるだけで一丸となることができる、究極のエンターテインメント。地域発の「スポーツ×〇〇」のビジネスで、スポーツを成長産業へ。スポーツ庁が推進する『地域版SOIP』と全国各地域でのオープンイノベーションの軌跡に迫ります。