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【地域版SOIPに迫る<関西編>】万博に向けて盛り上がる「関西」からは、サッカー・ラグビーと学生スポーツ団体が参戦!各チームが提示する共創テーマとは?

【地域版SOIPに迫る<関西編>】万博に向けて盛り上がる「関西」からは、サッカー・ラグビーと学生スポーツ団体が参戦!各チームが提示する共創テーマとは?

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「スポーツの成長産業化」を目的として、スポーツ庁が手がける「スポーツオープンイノベーション推進事業」。本事業では、国の成長戦略に定められた「2025年までにスポーツ市場規模を15兆円規模に拡大」の目標を達成するため、スポーツ界と他産業が連携して、新たな財・サービスを創出するプラットフォームの構築が目指される。このプラットフォームが「Sport Open Innovation Platform(SOIP)」だ。

スポーツ庁は、国内各地域におけるSOIP(地域版SOIP)を構築するため、2021年11月より、アクセラレーションプログラムを始動する。北海道、関西、中国、沖縄の4エリアでプログラムを開催し、各地域においてプロスポーツチームと企業などとの連携を促す構えだ。

TOMORUBAでは、4エリアにおけるプログラムに密着し、その全容を届けする。今回、取材したのは、関西エリアのプログラム「INNOVATION LEAGUE SPORTS BUSINESS BUILD KANSAI」だ。

同プログラムには、ホストチームとして「ガンバ大阪(サッカー)」「NTTドコモレッドハリケーンズ大阪(ラグビー)」「関西学院大学 競技スポーツ局(学生スポーツ全般)」らが参戦。運営パートナーは、大阪商工会議所が母体となる「スポーツハブKANSAI」が担う。そこで、この4者に関西エリアの特徴、現状の課題、共創パートナーに期待すること、いよいよ始動する本事業にかける想いなどを聞いた。

※関連記事:室伏長官と運営事務局に迫る「スポーツ×オープンイノベーションの可能性」。スポーツ庁による「地域版SOIP」が始動!

「スポーツへの注目度が高まる関西から、産業全体を盛り立てる」―スポーツハブKANSAI

――まず、「スポーツハブKANSAI」の概要や活動内容からお聞きしたいです。

倉骨氏: 「スポーツハブ KANSAI」は、2017年に大阪商工会議所が主体となって立ちあげた、スポーツと様々な産業の融合による新たなビジネス創出を促進するプラットフォームです。とりわけ私たちが着目しているのは「スポーツ産業振興」。スポーツそのものを盛り上げる「スポーツ振興」ももちろん大事ですが、私たちはそこではなく、スポーツを核に様々な産業を掛け合わせ、新しい製品・サービスを創出する「スポーツ産業振興」を軸に活動しています。


▲スポーツハブ KANSAI 大阪商工会議所 産業部 スポーツ産業振興担当 副主任 倉骨彰紀 氏

――具体的に、どのような活動を?活動から生まれた事例などがあれば、教えてください。

倉骨氏: 活動内容としては、スポーツチームとスポーツ関連企業のビジネスマッチングを促す定例会などを実施しています。この活動から非常に幅広い事例が生まれています。

例えば、スポーツメーカーが異業種の技術を取り入れて新しいコンセプトのスポーツ用品を開発したり、スポーツチームがICTシステムに長けた企業と組んでコンディショニング、パフォーマンス管理のデジタル化に取り組んだり、あるいは、スポーツチームが化粧品メーカーと一緒に腸内環境に着目した健康食を共同開発した事例もあります。

――幅広く共創事例が生まれているのですね。今回、「地域版SOIP」では全国で同時多発的にプログラムを開催します。「関西エリア」におけるスポーツ産業の現状や特徴についてお伺いしたいです。

倉骨氏: 関西エリアは「スポーツ関連メーカーの集積」が特徴のひとつ。例えば、ミズノやアシックス、デサントのような大手総合メーカーもありますし、SSKやゼット、アウトドアのモンベル、自転車のシマノ、サングラスの山本光学など、挙げればキリがないほど多種多様なスポーツ関連企業が、ここ関西に集まっています。また、繊維や革製品といった産業も古くからあり、これらが下支えする形でスポーツ産業が発展してきました。

関連産業の集積以外では「場所」です。ラグビーの花園(東大阪市花園ラグビー場)、高校野球の甲子園(阪神甲子園球場)は代表例でしょう。また、一般市民が参加できるイベントとして、大阪マラソンのほか、京都、神戸などでも同様のイベントが開催されています。このように、関西エリアは歴史的に見ても、非常にスポーツが盛んな地域です。

昨今の流れで特徴を挙げるとしたら、2024年に先行街びらきを予定している「うめきた2期(大阪駅北地区)の再開発」と、2025年に開催予定の「大阪・関西万博」です。うめきたに関しては、「スポーツウェルネス」がコンセプトのひとつになっていますし、万博に関しても「いのち輝く未来社会のデザイン」がテーマに決まりました。万博では現在、最先端技術を駆使して未来の健康・医療を体験できる大阪パビリオンの企画が検討されています。こうした点も含め、関西は今、スポーツや健康に対する注目度が非常に高まっています。

――今回、3つのチーム・団体が「ホストチーム」として参画することになりました。この3つに決まった背景は?

鈴木氏: ホストチームを選ぶ際、「リアルに課題を抱えているチームがいいよね」という話になりました。例えばガンバ大阪は今、過渡期を迎えておられます。募金で新しいスタジアムを建設したものの、管理・運営面で課題を抱えておられる。なので、ガンバ大阪の話を聞いてもらうことで、実現性の高い取り組みができると思います。

また、レッドハリケーンズは、Bリーグが立ち上がって以来、久しぶりに大きなプロリーグ(JAPAN RUGBY LEAGUE ONE)が発足するタイミングです。今後、どのように自主運営をしていくのか、課題が山積しています。

関西学院大学 競技スポーツ局は、これまで学生が自主的に運営してきた学生スポーツを、学校が管理・統括し、最大限の価値を生み出すことを目指した新しい組織です。レベルが異なる多種多様なアスリートが在籍しているため、汎用性の高いサービスを一緒に構築できる可能性を秘めています。

このように今回は、異なるレイヤーでリアルな課題を持った3つのチームにお声がけをしました。ですから、様々なスポーツの特色や魅力、課題を知っていただく、よい機会になるのではないでしょうか。


▲スポーツハブ KANSAI スーパーバイザー 鈴木康藏 氏

――ホストチームそれぞれに特徴的な課題があるのですね。「サポーター企業」「メンター陣」も豪華です。

倉骨氏: はい。様々なバックグラウンドを持ったサポーター企業やメンターの方々にご参画いただいているので、幅広い産業とマッチングできる点が魅力です。また、スポーツハブKANSAIの活動にご協力いただいているスーパーバイザーの皆さんも、スポーツビジネスに精通する方、スポーツ現場の課題に詳しい方、スポーツ医科学の知見を有する先生など、多面的にサポートができる体制となっています。

――最後にこの取り組みを通じて、どのようなことを実現していきたいのか。本事業にかける期待や想いについてお聞かせください。

倉骨氏: スポーツと異分野の掛け合わせで、新しいビジネスを創出し、スポーツ産業の裾野を広げたいと思っています。これを実現することで、スポーツの参画人口を増やしたり、スポーツの実施率を高めたりすることにもつなげていきたい。今回はチームの課題解決が第一ではありますが、同時に健康課題・地域課題の解決にも発展させていければと考えています。

鈴木氏: 関西は様々なスポーツイベントの発祥の地。例えば、サッカー、ラグビー、野球、アメフトなど、すべて関西から始まっているんです。それに、先ほど倉骨さんがおっしゃったように、スポーツ関連産業の集積地でもある。こういった意味において、関西が歴史的にもスポーツの盛んなエリアであることは確かなので、2025年に万博も開催されますが、ぜひここ関西からスポーツ産業を盛り立てていきたいですね。

「スタジアムから地域に広がる、新たなエンタメ体験」―ガンバ大阪

Jリーグ開幕当時から参画する強豪クラブ(優勝タイトル数:9個)であり、ファンクラブ会員数約3.9万人、1試合平均観客動員数約2.7万人(2019年度実績)を誇るガンバ大阪。今回のプログラムにあたり、以下3つの募集テーマを設定している。

・クラブのリソースを活用した地域の社会課題解決、SDGsの実現

・スタジアムと万博記念公園における新たな移動体験の創出とスポーツパーク化

・テクノロジーを活用した選手のコンディション管理

これらのテーマ設定に至る背景や、提供できるリソースなどについて、ガンバ大阪 営業部 部長 伊藤慎次 氏に聞いた。

――言わずと知れた「ガンバ大阪」ではありますが、あらためてチームの特徴をお聞きしたいです。

伊藤氏: ガンバの前身は、松下電器産業(現・パナソニック)のサッカーチームです。1993年にJリーグが発足しましたが、開幕当初から加盟し、今年がクラブ創立30周年の歴史を持っています。

私たちが、クラブ理念であり、大切にしていることは「地域の活性化」と「青少年の健全育成」。特に後者に関しては、下部組織をしっかりと育成すれば、10年後・20年後に変化が生じるだろうという期待のもと、中高生のアカデミー部門に力を入れてきました。おかげさまで、チームの強化・選手個人の強化の両面で結果が出てきています。

また、スタジアムにも特徴があります。万博記念公園の南側にあるホームスタジアム(パナソニック スタジアム 吹田)は、皆様からのスタジアム建設募金で実現したものなんです。募金総額目標140億円を目指し、そのうち個人の寄付金だけで総額6億円以上集めたという点では、かなり注目度が高い事業でもありました。

こうして完成させたスタジアムを行政(吹田市)にお渡しし、当社が約50年間にわたり指定管理をするというスキームで、現在、スタジアム施設管理をしています。


▲株式会社ガンバ大阪 営業部 部長 伊藤慎次 氏

――個人からスタジアム建設募金6億円以上!多くのファンから愛されている証ですね。今回、3つのテーマを設定されました。これらの背景についてお聞きしたいです。

伊藤氏: 1つ目の「SDGs」からお話をすると、すでにガンバは長きに渡り地域貢献活動(CSR)をいくつか実施していますが、今後、さらに力を入れていく予定です。SDGsには17の目標がありますが、自治体・パートナー企業・ガンバの3者に関連した”共創型活動”では、「3番の健康・福祉」「4番の教育」「11番のまちづくり」「17番のパートナーシップ」が当てはまると考えています。

やっている振りではなく真剣に取り組んでいくにあたり、ぜひ皆さんの知見も、お借りしたいというのが、本テーマ設定の背景にある想いです。

2つ目の「パナスタ・スポーツパーク化」ですが、ホームスタジアム周辺には、サッカー以外でも、野球やソフトボール、アメリカンフットボールなど他のスポーツ施設がありますし、広い万博公園外周道路をランニングしている人、ウォーキングを楽しんでいる人、ラジオ体操をしている人などがいます。

こうした特徴を活かし、他のスポーツチームや一般の人たちも巻き込んで、「サッカー」にとどまらず「スポーツ」という括りで何かできないかと思っていますし、可能性は無限大にあるのではないかと考えます。

それとこのスタジアムは、最寄の大阪モノレール・万博記念公園駅から約1.5キロもあるんです。山を越えて下って初めて見えるような場所なので、精神的距離がすごく長く感じます。途中には、サポーターに冗談で、「修行僧の山」と呼ばれている長い階段が148段もあります(笑)。歩くことで健康になるという側面もありますが、中には足の不自由な方もいらっしゃいます。スタジアムへの移動中もワクワクできる時間にして欲しい。

そこで、何か新しい移動手段を考えたいと思っています。それと、大きな屋根に覆われていますので、日照問題での発育課題がある芝生の管理ですね。効率的に育成や維持・管理できるテクノロジーを求めています。

3つ目の「テクノロジーを活用したコンディション管理」に関しては、近年はトップ選手の胸部にGPSをつけ脈拍や走行距離を測っています。また、練習風景はすべて映像で撮影し、リモートで動きを追っていて、選手の動きの可視化や、定量的な数字の取得はできています。

ただ、これらのデータをさらに有効活用し、新たなテクノロジーを掛け合わせること(例えばアカデミーの中高生のトレーニングや体づくりに活かしたり、トップアスリートのケガ予防に活かしたり)での連携が図れないかと思っています。

――共創パートナーに提供できるアセットやリソースには、どのようなものがありますか。

伊藤氏: 私たちは、トップチームとアカデミーとに分かれて管理をしているので、ご提案内容に応じた協力が可能です。また、スタジアム自体はデジタル化が進んでいるので、可能なデータの検討もできます。ガンバのパートナー企業は、パナソニックを筆頭に100社近くありますが、そういったパートナー企業と連携しながら、プロジェクトを進めることもできるでしょう。

他には、ガンバ大阪公式ファンクラブですね。有料ファンクラブの会員数は約3万9000人。ガンバのJリーグID(全クラブで200万人)のうち、ガンバを応援する方の登録数は約19万8000人を誇ります。この方たちに何らかの購入を促すメールを送信すると、開封率は約40%あり、案件によっては高い購買行動に動きます。様々なデジタルをご活用いただけるのではないでしょうか。

――最後に、応募を検討されている皆さまに向けて、メッセージをお願いします。

伊藤氏: 私たちはスタジアムの臨場感を活かし、感動的な体験で「ココロを動かす」ようなクラブになりたいと、強く願っています。それが実現できれば、私たちとしても長く取り組んできた価値がある。そんな想いでいるので、ぜひ一緒にガンバ大阪、ひいてはスポーツ全体、そして関西を盛り上げていただければ幸いです。

「変革するラグビーリーグで、新たなビジネス創出へ」―NTTドコモ レッドハリケーンズ大阪

新リーグであるJAPAN RUGBY LEAGUE ONE開幕時(2022年1月)には、最高峰の「DIVISION 1」に所属するNTTドコモ レッドハリケーンズ大阪。シーズン年間16試合以上、最も多い試合では観客動員数1万人が来場する人気チームだ。今回のプログラムにあたり、以下3つの募集テーマを設定している。

・デジタル活用によるスタジアム観戦体験のアップデート

・新たなファン層の獲得につながるソリューション

・チーム・選手のIP(知的財産)やデータを活用したヘルスケアビジネスの創出

これらのテーマ設定に至る背景や、チームの強みや提供リソースなどについて、NTTドコモレッドハリケーンズ大阪 ゼネラルマネージャー 下沖正博 氏、広報 菊地新 氏に話を聞いた。

――まず、チームの特徴からお聞きしたいです。

下沖氏: チームは1993年に発足し、約28年の歴史を持ちます。2011年よりトップリーグに加盟し、そこから昇降格を繰り返してきましたが、昨年より新しいヘッドコーチを招聘。アグレッシブなラグビーを標榜し、1年でトップリーグベスト8まで登りつめたのが現状です。手前味噌ではありますが、勢いのあるチームの一つだと思います。

チームはスタッフも含めて約70名。日本人、トンガ人、南アフリカ人、ニュージーランド人などが在籍する国際色豊かな組織です。また、大阪市、住之江区、大阪観光局と連携協定を締結し、地域の活性化に力を入れていることも特色のひとつでしょう。


▲NTTドコモレッドハリケーンズ大阪 ゼネラルマネージャー 下沖正博 氏

――今回、3つのテーマを設定されましたが、背景についてお聞きしたいです。

下沖氏: 来年2022年1月に、新リーグ「JAPAN RUGBY LEAGUE ONE」が開幕します。この新リーグは「競技性」だけではなく、「事業性」や「社会性」も追求するリーグとして開始します。私たちレッドハリケーンズは、新リーグのトップリーグにあたる「DIVISION 1」に参戦することが決定しました。

そうした中、チームとしても単に勝った負けたの勝敗だけではなく、観客の皆さんに非日常感を得られる体験や、試合を観戦することで元気の湧く体験を提供していきたいと思っています。例えば、日曜日に試合を見たら「また1週間、頑張っていこう」と思えるような体験です。

――体験価値を高めていきたいと。

下沖氏: はい。体験価値の向上に加えて、我々はデータを取得していますが、活用しきれているとは言えません。ぜひこれらを外部の方にも見ていただき、活用していただきたい。チームの中だけではなく、外部に対しても活用していけるような取り組みができればと思っています。

それが結果として、チームの盛り上げ、関西の盛り上げにつながっていけば、我々としてもうれしいですし、そういった観点で、ファンの獲得、チームのアセットを使った新しいビジネス機会の創出などに、どんどんチャレンジしていきたいと思っています。

――共創パートナーに提供できるアセットやリソースには、どのようなものがありますか。

下沖氏: 様々なデータを管理しているので、GPSや心拍数といったバイタルデータのご提供が可能です。また、選手や一部のスタッフも、要望によっては協力することができます。あるいは、大阪市住之江区の南港にあるグラウンド内の設備も使用可能。AIカメラも備えるなど環境設備の整ったグラウンドだと自負しています。さらに、今後、自分たちで試合を運営していくことになるので、試合会場を使った実証実験なども一緒に実施できますね。

――南港のグラウンドでは、5Gも使えるのでしょうか。

下沖氏: 5Gのエリア化には、もう少し時間を要するものの、近い将来、5Gの環境下になる予定です。5Gの通信環境が整えば、5Gはもちろん5Gの端末もご活用いただけるでしょう。

――NTTドコモさんならではのアセットですね。最後に、応募を検討されている皆さまに、メッセージをお願いします。

下沖氏: 来年、開幕する新リーグに向けて、我々としては本当に初めてのことばかりですが、とにかく様々なチャレンジをしていこうと思っています。今回、参画してくださるパートナーさんとも、革新的なチャレンジに取り組んでいきたい。そして、ラグビーだけではなくスポーツ、さらに大きく言えば、社会に対して新風を起こしていきたいと思っています。なので、熱く高い志を持って、我々と一緒に取り組んでいただける皆さん、ぜひご応募ください。

菊地氏: 当チームはスローガンに「PLAY TO INSPIRE」を掲げています。色々な方々に影響を与えられるようなチームになりたい。そして、我々から影響を受けた方々も、その先でよい影響を与えていくような、そういった形でつながっていきたいという想いが背景にあります。大阪発・日本発で、スポーツを通してよい影響を与えられるようなものを、一緒に作っていきたいと思いますので、ぜひよろしくお願いします。


▲NTTドコモレッドハリケーンズ大阪 広報 菊地新 氏

「可能性を秘めた学生スポーツの選手・環境強化」―関西学院大学 競技スポーツ局

大学内の様々な競技スポーツ活動及び応援活動を統括・支援する、関西学院大学 競技スポーツ局(KGAD)。同局では、今回のプログラムにあたり、以下2つの募集テーマを設定している。

・テクノロジーを活用したチーム運営の効率化、チーム強化

・選手のコンディション向上・健康管理を実現する、ローコスト・サステナブルなソリューション

上記のテーマ設定に至る課題や目的、提供リソースなどについて、関西学院大学 学生活動支援機構事務部(スポーツ振興・統括課)専任参事 堀口直親氏に話を聞いた。

――関西学院大学 競技スポーツ局(KGAD)とは、どのような団体なのでしょうか。

堀口氏: 関西学院大学 競技スポーツ局(KGAD)は、学生活動支援機構の中に設置された新しい組織です。学内における様々なスポーツ競技活動や応援活動を支援する組織として、今年の4月に発足しました。8月末現在、13競技団体、17チーム、約1084名の学生アスリートが在籍しています。

KGAD立ち上げの背景には、従来、課外活動と位置づけられてきた学生スポーツを、大学の教育プログラムにしていきたいとの想いがあります。というのも、大学には様々な専門知識を習得できる授業がたくさんあるわけですが、スポーツにも社会で必要とされる学びが豊富にあります。特にチームワークやリーダーシップなどは、むしろスポーツを通してこそ、習得できるものなのではないでしょうか。

本学は“Mastery for Service”(奉仕のための練達)をスクールモットーに掲げ、それを体現できる人間の育成を目指しています。そのためには、専門知識ももちろん必要ですが、人間力も同等に重要だと考えています。こうした考えから、KGADは競技スポーツや応援活動を通した教育を目指す組織として発足しました。


▲関西学院大学 学生活動支援機構事務部(スポーツ振興・統括課)専任参事 堀口直親 氏

――今回、テーマは2つです。これらのテーマの背景には、どのような課題感があるのでしょうか。

堀口氏: 学生スポーツは、指導者を含めて運営面でのリソースが乏しい状況にあります。学生だけで運営しているチームも数多くありますので、まずは何よりも専従の指導者を置きたいというのが私たちの夢です。

学生スポーツの場合、卒業生が指導者になることが多いのですが、指導者に対して、大学は資金援助をしていますが、ご本人が自腹を切られることも多く、またはクラブ(OBOG会)が支援している場合もあります。そういう状況だと、活動の幅が広がることは見込めません。学生スポーツの競技力向上や、それを通した教育を見据えたとき、まだまだ足もとの地盤が弱い状態なのです。

加えて健康管理においても、関学生全体で約3割が自宅外通学生で、アスリートもおそらくそれくらいの割合だろうと推測していますが、食生活や栄養面で懸念があります。例えば、野菜類は十分にとれているか、カルシウム不足ではないか、などの心配は尽きません。

また、自宅生に関しても、私自身がそうでしたが、片道2時間かけて通っているような学生もいる。自宅だと食事は十分にとれますが、大学でトレーニングをしても、空腹状態が長く続けば、身につけた筋肉が落ちてしまうんです。こうした課題に対して、何かテクノロジーやサービス・ソリューションを用いて解決する術はないだろうかと思っているところです。

――共創パートナーに提供できるアセットやリソースはありますか。

堀口氏: 学生アスリートとの連携が可能です。スマートフォンやタブレットなどのデバイスを用いてデータを取得したり、アプリを一緒に開発したり、様々な取り組みができると思います。先ほどお話しした通り、8月末現在で、13競技団体、17チーム、約1,084名が、KGADに在籍しています。

特に活発なチームを挙げるならアメリカンフットボール、ラグビー、硬式野球にサッカー。特に硬式野球は今年、ドラフト候補に挙がるような選手も出てきていますし、サッカーは一度、ガンバさんを打ち砕いたこともあります。ラクロス女子やヨットでも好成績を残しています。

――そういった学生アスリートと、例えばどのような共創ができそうですか。

堀口氏: 例えば、それぞれの競技特性に対応した戦術構築システムや動画による分析が可能なシステムは、すでに実装し活用しているチームもありますが、様々な理由から装備していないチームもあります。

あるいは競技特性ごとに必要と考えられる筋力や速さなど基礎部分の達成度を学生自身が確認したり入力したりできるもの、さらには健康や栄養に関するデータを取得・蓄積するものがあれば、指導者が忙しい合間を縫ってそれらの情報を共有しやすくなるでしょうし、そういった可視化できるようなアプリなどを一緒に開発するようなことはできないでしょうか。

すでにそういった既存サービスは存在しており、自前でやっているチームもあるのですが、大半がトップアスリート向けです。学生団体が、限られた資金や時間の中で導入できるようなものは、ほとんどありません。サステナビリティのある仕組み・サービスであることが必要であります。

ですから例えば、トップアスリート向けに開発した知見などを用いて、よりコストのかからないもの。たとえ単価が低かったとしても、学生スポーツ・アマチュアスポーツシーンは競技人口の分母が非常に大きいので、利用ユーザー数といったマーケットの規模でしっかりと利益追求はできると考えております。

できれば月額300円程度で、学生や一般ユーザーが自主的に使えるような汎用性のあるサービスを、共同で開発できればと思っています。

――最後に、応募を検討されている皆さまに向けて、メッセージをお願いします。

堀口氏: 学生スポーツの競技者とシーンは成長に無限の可能性を秘めています。10年後、20年後、世の中を背負っていくような人間を一緒になって育てていく。そういった気概を持って、一緒に取り組んでくださる皆さまに来てもらいたいですね。

取材後記

全国同時多発的に仕掛ける「地域版SOIP」――。関西エリアのホストチームは「ガンバ大阪」「NTTドコモ レッドハリケーンズ大阪」「関西学院大学 競技スポーツ局」の3者だが、それぞれ悩みどころは異なり求めているソリューションも違う。しかし「関西からスポーツを盛り立てたい」という気持ちでは一致しており、「スポーツハブKANSAI」を通じた横の連携も強固そうだ。駅前の再開発や万博の開催も控える関西、ぜひこのエリアに注目してほしい。

なお、「INNOVATION LEAGUE SPORTS BUSINESS BUILD KANSAI」の応募締め切りは10月8日が予定されている。共創の可能性について、検討してみてはいかがだろうか。

(編集:眞田幸剛、取材・文:島袋龍太)

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