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コミューン、キューサイ分析研究所、playgroundの3社が採択!地域版SOIP2度目の挑戦となる<北海道>エリアのビジネスビルドをレポート

コミューン、キューサイ分析研究所、playgroundの3社が採択!地域版SOIP2度目の挑戦となる<北海道>エリアのビジネスビルドをレポート

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「スポーツの成長産業化」を目的に、スポーツ庁が手がけている「スポーツオープンイノベーション推進事業」。その事業の一環として、スポーツ界と他産業が連携し、新たな財・サービスを創出するプラットフォームが、「Sports Open Innovation Platform(SOIP)」だ。

国内各地域におけるSOIP(地域版SOIP)を構築するため、本年度は、北海道、甲信越・北陸、東海の3エリアを舞台に、「INNOVATION LEAGUE SPORTS BUSINESS BUILD 2022」を開催している。

第一弾の甲信越・北陸エリアに続き、北海道エリアを舞台にした「INNOVATION LEAGUE SPORTS BUSINESS BUILD 2022 HOKKAIDO」が、11月16日(水)・17日(木)に札幌市内の会議・研修施設「ACU-A(アスティ45)」で行われた。

北海道エリアのホストチームには、「北海道コンサドーレ札幌(サッカー)」「エスポラーダ北海道(フットサル)」「ヴォレアス北海道(バレーボール)」が名乗りを上げた。各チームが提示したテーマには、合計で70近くの提案があり、その中から6社が選出。2日間にわたり、ホストチームやメンターとのディスカッションを通して提案内容をブラッシュアップし、最終発表・審査会に臨んだ。本記事では、その模様をレポートする。

2日間で徹底的に議論、ひとつのアイデアを未来の事業へとブラッシュアップしていく

DAY1は、主にビジネスアイデアのブラッシュアップが行われた。ホストチーム・応募企業・メンターが徹底的に議論。アイデアを解体・再構築するケースも多く見られた。


DAY2は、午前中のメンタリングを経て、最終プレゼンに向けて万全の準備を整える。ビジネスアイデアの骨子やPoCの計画、社会実装までのマイルストーンなど、事業化に必要なピースを一つひとつ具体化。いよいよプレゼンを待つのみとなった。――次からは最終発表の内容を、採択された企業をメインに紹介していく。


【北海道コンサドーレ札幌】 新たな「地域コミュニティ」で継続的な双方向コミュニケーションを――コミューン株式会社を条件付きで採択

北海道を代表するJ1所属のサッカーチーム、北海道コンサドーレ札幌。北海道全域をホームとして活動し、地元で長く愛され、熱狂的なファンを多く持つ。今回、『チームとファンの新たな繋がりで、次世代の北海道を盛り上げる』という募集テーマを設定し、世代や地域を超えてファンを拡大し、北海道全土を盛り上げるビジネスアイデアを求めた。プレゼンの結果、「コミューン株式会社」の提案が条件付きで採択された。

■コミューン株式会社
提案内容「コンサ・自治体・市民・企業が融け合う地域コミュニティの形成」

コミューンが提案したのは、「双方向性のある継続コミュニケーション」の創出だ。同社は顧客コミュニティ作りに特化したプロダクトを有しており、知見を活かした運用面のサポートも目指す。


スポーツイベントは基本的にはオフラインが中心となるため、運用負荷が大きく、ファンや市民の声を集めにくいのが現状だ。そこで、地域を巻き込んだ新たなコミュニティをオンライン上に形成することで、スポット的な出会いから継続的なコミュニケーションに変え、かつユーザーの声をデータとして蓄積。その上で、最適な活用も狙う。

コミュニティ形成のロードマップとして、まずは北海道コンサドーレ札幌のファンを集め、順次、札幌ドーム周辺の福住から札幌全域へと広げていく計画を示した。オンラインで地域コミュニティを形成することは、コミューンにとって新たなチャレンジとなる。北海道コンサドーレ札幌には、自治体や企業との連携、知名度を活かしたファンや市民への呼びかけなどの役割を担ってもらいたいと話した。


将来的には、コミュニティのメンバーが自発的に地域課題を吸い上げ、解決に向けたアクションを取っていくことを理想とする。マネタイズポイントは、企業からのスポンサー料が中心となる見通しと説明した。

<ホストチーム・受賞者コメント>

今回の提案内容では、実現可能性や各社の役割で不透明な部分が多いため、「条件付き」での採択となった。しかし、北海道コンサドーレ札幌は「協力して実現を目指せそう」との手応えを持ったと語る。「クラブが目指している方向性とも一致し、また、斬新なアイデアでゴールイメージが壮大」と評価した。コミューンチームは、「当初の案から二度三度と作り直した。コミュニティとファンの力を信じており、クラブや地域の活性化につなげたい」と意気込んだ。


【エスポラーダ北海道】 「エビデンスのある食育」で観客動員数の増加を図る――株式会社キューサイ分析研究所を採択

エスポラーダ北海道は、フットサルFリーグに所属しており、リーグトップクラスの集客力を有する。フットサルは子どもから大人までが楽しめるものの、ライト層が多く、熱心なファンや本格的なプレイヤーが少ないのが現状だ。同チームは、『フットサル・チームの魅力を“引き出し”“広げる”新たなコミュニケーションの創出』という募集テーマを設定。フットサルやチームへ入り込みやすいコミュニケーションを創出し、すそ野を広げるビジネスアイデアを求めた。その結果、「株式会社キューサイ分析研究所」の提案が採択された。(※2022年11月時点の社名。2023年1月1日より、ユーロフィン QKEN 株式会社に社名変更。)

■株式会社キューサイ分析研究所
提案内容「日本初!?エビデンスに基づいた食育!スポーツ×サイエンス×データ=食育」

キューサイ分析研究所が提案したのは「フットサルとサイエンスを通じた教育の場とマインドセットの提供」だ。同社は食品分析をはじめ、安全安心・栄養・味・品質を評価できる技術を保有している。今回、エスポラーダ北海道が教育事業に力を入れていることから、同社にとって初めての挑戦となる「食育」に行きついた。キューサイ研究所は、フットサルを通じて「早い判断力を育むことができる」と考えており、同社の「サイエンス」と掛け合わすことで、良質な教育を提供できると強調した。


エスポラーダ北海道の課題としては、観客動員数とチケット販売収益が相関していないことが挙げられる。既存ファンの大きな割合を占める30~40代の既婚者とその子ども(小学生)を、食育によってより熱狂的なファンにすることに狙いを定めた。食育は単発のイベントになりがちで、一方向の情報伝達に終始してしまうなどの問題点もあるが、これらの解決を図ると共に、キューサイ分析研究所の技術を活かして「エビデンス」まで提供したいとした。

これにより、エスポラーダ北海道は観客動員数やスクール事業の拡大を図り、ファンは健康や体づくりにつなげることが可能だ。スポンサー企業は、自社商品のPR、ブランド力向上などのメリットにつなげられる。今後は食育イベントを実際に開催しながら、検証を行っていきたいと意気込みを見せた。


<ホストチーム・受賞者コメント>

エスポラーダ北海道 選手兼ゼネラルマネージャー 水上氏は、「教育事業を強化しており、食育との相性の良さを感じる。北海道には良質な食材が多くある。子どもたちにその良さを伝え、地域に広げていきたい」と話した。また、メンターのプラスクラス・スポーツ・インキュベーション株式会社 代表取締役 平地氏は、「自分たちのやりたいことを一旦おいて、ホスト企業と目線合わせをした姿勢と柔軟性が、オープンイノベーションにも適している」と評価。キューサイ研究所チームは、「アドバイスをもらって一晩考え抜いた。それが、この良い結果につながってうれしい。オープンイノベーションで事業化を実現したい」と熱く語った。


【ヴォレアス北海道】 「推し」属性のファンを獲得し、「推し活」で地域に貢献――playground株式会社を採択

ヴォレアス北海道は昨季、バレーボールリーグのV2で優勝を果たし、V1昇格まであと一歩と勢いに乗っている。デジタル技術の導入や環境貢献など、先進的な取り組みにも積極的だ。同チームは、『地域とチームの魅力を引き出す。ファンによるファン活性のための仕組みづくり』という募集テーマを掲げ、ファンが主体的に活動する仕組みを作り、新たな魅力をチームと地域に吹き込んでいくビジネスアイデアを求めた。採択されたのは、「playground株式会社」の提案だ。

■playground株式会社
提案内容「【共創型】ファンダム証明書コレクション」

playgroundが提案したのは、共創することに熱狂する「ファンダム」(≒ファン集団)の確立だ。ヴォレアス北海道は、旭川で唯一のスポーツチームとしてスポーツ好きな層を獲得するに至っているものの、いわゆる一般層の獲得は不十分。そこで着目したのが、熱狂的な「推し」を持つ「推し活女子」で、彼女たちを巻き込んでヴォレアス北海道や旭川のファンダムを形成することを目指す。


これを実現するために鍵となるのが、「ファンダム証明書コレクション」だ。試合への来場やグッズ購入、企画への参加などを通じてチームを応援することで、その証明となる選手がプリントされたデジタルカード=ファンダム証明書を手にできる。更に、チームのミッションやヴォレアス北海道が発表したGreen Deal宣言などを体現している地域の店舗や自治体などの利用や企画参加に対してもファンダム証明書を提供。コレクションを楽しむなかでヴォレアス北海道や地元・旭川の発展にアクティブに寄与するファンのコミュニティを生み出し、スポーツチームと地域の相乗効果による地域活性化を生み出したい考えだ。


playgroundは、推し属性の人たちから強い共感を得られれば年間一千万円以上の収益を見込めるとし、また、ファンダムが確立できればスポンサーアクティベーションにも繋げられると自信をのぞかせた。今後2~3月のホームゲームで、実際にファンダム証明書を展開し、ファンの受容度や実行可能性を測る予定だ。「最終的には、旭川発の地方スポーツクラブ×ファン&地域の共創モデルを世界に広げていきたい」と未来へと思いを馳せた。

<ホストチーム・受賞者コメント>

メンターのSpiral Innovation Partners 代表パートナー 岡氏は、「非常に情熱的な印象を受けた。推し活が実現できるようサポートしたい」と決意表明。これに対しplaygroundの伊藤氏は、「今回の提案はエンタメ好きな自分が欲しいものをベースとしていたため最初はやりたいことが多く考えをまとめきることに苦慮していた。様々な観点を持つメンターとの壁打ちを通じて整理でき、アイデアが洗練されたと思う。推しの気持ちを重視し過ぎると、コアファンしかついてこられない内容になる。その点をクリアしてもらえたと思う。旭川市にいるすべての推し属性の人が報われる世界を創造したい」と熱く述べた。


「スポーツビンゴ」「地域貢献のDX化」「スポーツとレジャーの共創」など、ユニークな提案も

今回は惜しくも採択に至らなかったが、株式会社スプリンクル、株式会社SPLYZA、株式会社ORIGRESS PARKSもビジネスビルドに参加し、提案を行った。

■株式会社スプリンクル(北海道コンサドーレ札幌への提案)
提案内容「北海道のスポーツ観戦人口拡大」

スプリンクルが提案したのは、北海道のすべてのスポーツをつなげ、ファンの体験価値を向上させることだ。これは、複数のスポーツチームを保有する北海道コンサドーレ札幌との協業だからこそ、実現が目指せると強調した。ソリューションとして提案したのは、スポーツ(サッカー)ビンゴである。勝敗や特典のみならず、プレーをビンゴの要素として組み込むことで、ゲームを観戦する楽しみを増加させ、さらなる興味喚起につなげる。ビンゴを通じ既存のファンをコアファンに引き上げると共に、新規層の獲得も目指す。実現に向け、PoCで新規のファンがどのような態度変容を起こすか調査したいとした。


■株式会社SPLYZA(エスポラーダ北海道への提案)
提案内容「スポーツチーム地域貢献のDX化 子供達の熱狂継続」

SPLYZAが提案したのは、一瞬の熱狂を継続的な熱狂に変えることだ。スポーツ競技は、観戦時の一時的な楽しみで終わることが多い。これに対し、同社の提供するプラットフォーム「SPLYZA Teams」で、教育という名目のもと、低学年の小学生と選手間のオンライン交流を行う。この双方向のコミュニケーションによって、楽しみや興味関心の継続を図るだけでなく、フットサルへの理解を深めながら、子どもの主体性を高めることも狙いだ。まずは小学生へのコンタクトを増やしながら、効果検証を行いたいとした。その上で、観客動員数を増やすと共に、将来的には道内小学校への展開も目指したいと強調した。



■株式会社ORIGRESS PARKS(ヴォレアス北海道への提案)
提案内容「スポーツとレジャーの共創。“地域全体“での体験を」

ORIGRESS PARKSが提案するのは、「定額制のレジャー・エンタメ周遊パスポート」だ。発行される月額制のパスポートは、スポーツ・レジャーの空いている席・入場枠と、行き先に悩んでいる人たちをマッチングさせる機能を持つ。人気施設からの回遊を狙えることに加え会員の「元を取りたい」心理が行動を後押し、これまで訪れたことのない施設への訪問を促す。まずはヴォレアス北海道が1試合ごとの空席約400席を埋めるために、800人を目標としてユーザー獲得を目指す。同時に観光施設をはじめ、旭川地域のレジャー施設などと提携を進める方針だ。ORIGRESS PARKSは周遊パスポートで既に実績を持ち、ヴォレアス北海道と共創することで大きな成果を生み出せると強調した。


「今回のつながりを、今後の活動・共創に活かしてほしい」――閉会の挨拶

最終プレゼンテーションと採択企業の発表後、総評が行われた。メンターの一人であり、昨年は沖縄エリアで運営パートナーも務めたスポーツデータバンク株式会社 代表取締役 石塚氏は、「この2日間は非常に実りある期間だった。採択された企業はスタートラインに立ったところ。3月までに何らか成果を残してほしい。また、今回のビジネスビルドをきっかけに、採択企業もそうでない企業も、多くの方とつながれたはず。これをきっかけ・財産として、今後の活動に活かし、何より地域を元気にしていただければ嬉しく思う」と述べた。



地域パートナーである株式会社北海道二十一世紀総合研究所 調査研究部 主任研究員 小川氏は、「地域のために知恵を絞り、これだけの時間を使っていただけたことは本当にありがたいこと。これからもぜひ北海道とつながりを持ち、活動を広げてもらいたい」と伝えた。



スポーツ庁の城坂氏は「採択と不採択の差は本当にわずか。提供価値の面で他サービスとの差別化を図れた点が、採択につながったのではないか。ぜひこの後も、地域と共にミッションを追い、事業共創を実現していただきたい」とエールを送った。



閉会後は、交流の場が設けられた。あちこちで活発に意見が交わされ、ますます熱気に包まれた。地元チームや産業、地産品について熱弁を振るうシーンも多く見られ、地域スポーツの大きな可能性を感じさせる瞬間だった。

取材後記

2日間の熱いビジネスビルドで特に印象的だったのは、多くの企業が、ホストチームやメンターのフィードバックを受けながら、元の案から方向性を大きくピボットしたことだ。チームや地域の課題と真摯に向き合い、熟考を重ねた結果と言える。共創にはこうした柔軟性や適応力こそ求められるのではないか。今後、採択された案は実証へと進むが、どのような成果が生み出されるのかしっかり注目したい。なお、INNOVATION LEAGUE SPORTS BUSINESS BUILDは、2023年3月1日に成果発表の場としてデモデイを予定している。

(編集・取材:眞田幸剛、文:中谷藤士、撮影:齊木恵太)

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